ダンジョンに勇者がいるのは間違っているだろうか   作:とぅいか

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第1話【やって来ました異世界】

普段は肌がジリジリと焼ける様な日差しをプレゼントしてくれている太陽が大きな雲に隠れ地上から顔を隠しその光が雲越しで大地に降り注いでいるそんな今日この頃。

 

所謂曇り空と呼ばれている天気だ。このジメジメした空気が好きではない人はかなり多いのではないだろうか。逆に

晴れ晴れした天気だと気分も晴れ晴れするなどと言う奴はいるだろう。逆に雨が降っている状態が好きだと言う奴もいるだろう。だが、よく考えてみてほしい。

雲一つない天気なんて、暑いだけだし。雨が降っていたら濡れないように対策しないといけない。その点曇りは何もしなくていいから楽でいい。楽というのは人間とは切っても切れぬ山よりも高く海よりも深いもので結ばれていると言えるだろう。

人は楽をする時にだけ技術を磨く。

それは人の歴史が証明している。地球でも前にいた世界でも、そしてこの世界でも人は楽をするために技を身につける…と、まあこんな意味の無いそこらの石ころ程度しか価値のない思考をダラダラと続けているのには理由がある。

 

それを説明するにはこれまでにあったことを説明する必要がある。今から約一ヶ月前の話。

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 

 

「ん…んぅ。…ここは」

 

俺が今いるのは何処だろうか。答え、物陰一つ見えない原っぱ。

 

確か神に別の世界で生きろ(強制)と言われた記憶があるが、この記憶が本物である筈がない俺自身が記憶を捏造しているとか実はただの夢で起きたらカーテンから漏れる朝日に目を細めるとかに違いない。ここが別の世界とかある訳が無い。無いったら無い。

 

絶賛現実逃避をしていると座り込んでいる自分の手元に紙切れが落ちているのに気がつく。

こんな原っぱにわざわざ郵便してくれるとは何ともまあ勤勉な奴もいたものだ。この手紙が俺宛であることは一目瞭然。嫌な予感がする上に何故か全然見てみたくないがしかし現状を理解するのにこの手紙は読まなければならないだろう。

覚悟を決め手紙のようなものを顔の前に持っていく。

 

 

『はいは〜い!読んでるぅ?いぇーいかみどぅぇーす!さっきぶ』ぐしゃ

 

 

思わず紙を握り潰してしまった。これ以上目を通したら思わずこの紙切れを紙屑に変えてしまいそうになりそうだ。どうするべきか。読むか読まぬか。

 

かれこれ数10分ほど悩んだが今日の天気は晴れ。こんな木陰どころか自分以外の影が見えない場所にずっといる理由にも行かない。取り敢えず移動しながら手紙に目を通すことにした。

 

 

 

『はいは〜い!読んでるぅ?いぇーいかみどぅぇーす!さっきぶりじゃないか!いや〜世界は狭いというが本当に狭いのかもしれないね!まあ、僕からすれば世界なんて玩具箱みたいなものだから狭いもクソもないんだけどね!はっはっはっ!ま、そういう話をしている時間もないから早速本題にいくかい?僕としてはもっともっと書きたいことはあるんだけどなにぶん無駄話がすぎると君がこの手紙を破り捨ててしまいそうで僕としては不安でしょうがないのさ!』

 

 

こんなキャラだっただろうか。喋り方が渋い感じだっただけに本当に同一人物か疑ってしまうレベル或いは二重人格だろうか。それに一人称は私だったはずなのに。僕になっているとツッコミどころ満載だがまあ、神が二重人格だろうがどうでもいい事か。続きに目を通す。

 

 

 

『君にはもう一度生きて貰う。これは強制で断ることも逆らうことも出来ないと先に言っておくよ?まあ、今の君にはこの世界での生を断ることも逆らうことも出来ないと思うけどね!色々大変だったんだよ?本当に色々ね。なんせ今の君は生きるの怠いし自殺しようとか考えるだろ?だから、死なないようにしておいたからね!神からの祝福さ!嬉しいだろう?まあまあ、そんなに褒めないでくれよ照れるじゃないか!』

 

 

一瞬意味がわからなかった。と言うか、今も意味がよく分かっていない。何度も何度も目を通してようやく頭に文字が入ってそしてその意味を理解する。理解するとその言葉の意味することに気づく。この言葉が本当なら神の生きろという命令は文字通りどうすることも出来ないということだ。死なないようにしたというのがどういうものかは要検証する必要がありそうだ。

もうこの時点で手紙を破り捨ててこの溜まりに溜まったイライラを吐き出そうかと思ったがもしかしたらまだ大事な事が書いてあるかもしれないと思い直し続きを読む。

 

 

『でも、勘違いしたらだらダメだよ?別に不死身って訳では無いからね!そんなことしても面白くないからそんなことはしていないよ!限りなく不死身に近い人間ってだけだから。それとこれはサービスだけどこの世界なら、今の君が死ぬ方法も見つかると思うよ?君への祝福についてはこのぐらいでいいかな?後は勝手に調べておいてね!最後に君の勇者としての力についてだよ?心して聞いてね?今の君は勇者として活躍していた頃の力はないよ!正確には勇者としての力は封印してる感じかな?なんせ、君は強すぎるからね!そんな状態じゃワンサイドゲームになって面白くないからそういう措置をとらせてもらったよ!とはいえ君の力をすべて抑えきれなかったから少しは漏れてるし何なら封印も君なら少しの時間なら解くことができそうだよね!神の封印を破れる人間ってやばいよね!マジぱない!君の天井知らずの才能と少しの努力の賜物だよね!長くなりすぎたかな?そろそろお別れといこうか!じゃっ!元気で面白おかしくやってくれよ?ずっと見てるからな!』

 

 

こんなに長い文を読んだのは久しぶりではなかろうか少し疲れた。そのせいだろうかほかの要因か手紙が紙屑に大変身を遂げている。何故だろう不思議だ。別にいらいらしていたとかそんなことは無い。

 

 

これが、一ヶ月前の話。そして、冒頭に戻る。

 


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