幼女ルーデル戦記   作:com211

3 / 20
書き溜めしていたものを予想以上の反響に答えて放出します。
但し、これを投下したら次は月曜日までないです。多分。

そして今回は視点と人称がぐるぐるかわーる




3:北方研修

"ハンナ・ルーデル一号生は特別選抜候補生として8ヶ月の北方管区研修とする"

 

これが空戦訓練と対地攻撃訓練の結果から判断されたハンナ・ルーデルの処遇である。

普段から非常に優秀な成績を収めているうえ、特別空戦指導教官の立場も本人は拒否。

 

とするならば、士官学校に置いておく意味は無いと判断された。

 

士官学校から要確認として提出された評価資料を人事局は虚偽若しくは判断ミスとして

当該資料を書いた教官に処罰を与える予定であったが、

人事局は実際の演習を見て評価を一転。

北方国境地域への研修と相成り、実質的な配属となった。

 

――――――――――――――――――――――――――――

1923年2月某日 北方ノルデン マルメ港

 

私を含めて准尉候補生の全員が6ヶ月の北方管区研修でスカンジナビア半島の南端、スコーネまで行くこととなった。

陸軍との連携訓練が目的だとしてもまさか国境地帯でやるとは。

 

今更ながら帝国の国土状態を確認するが、

ちょび髭伍長閣下要らず。最初から我らの帝国は大ドイツ仕様である。

 

"二重帝国"の部分はご丁寧に異民族部分だけ分離されており、

北の海沿いは西はベルギーから東はメーメルまで。

『分割済み』ポーランドとネーデルラントと大ドイツを足したような状態にある。

更にユトランド半島とスカンジナビア半島の間にある島々に加えスコーネ地域も帝国の領土となっている次第だ。

 

ちなみにこっちの世界に"道"を含む低地諸国は存在しない。

 

 

本土からスコーネまでは鉄道を使う場合、最低2つの海峡を渡らねばならない。

我々が乗った列車はいわゆる"渡り鳥回廊"を通った。

 

まずブットガルデンからロービュまで連絡船に乗ってフェーマルン海峡を渡り、

さらにエーレスンド海峡を渡るのでコペンハーゲンからマルメも連絡船だ。

数年前までは更にもう一度、ストーストレム海峡を渡るための連絡船があったのだが、

補給能力の増強のために北方島嶼地域に複数の鉄道橋が建設され、手間が一つ減った。

 

だが通ってきた状況を見るに、恐らくこれでも不十分。

 

あくまで既存の戦争形態では余裕が出るように建設されているのだろうが、

私やハンナが予想する通り、次の戦争が複数の国家総力戦が発生する"世界大戦"だった場合、

補給能力は確実に不足する。

 

いや、そもそも補給能力は多いに越したことはない。

欲を言えば大ベルトとエーレスンドの2つの海峡に鉄道橋が欲しいものだが、

現行の技術と予算では難しいだろう。

 

かつて一次大戦において、部隊の再配置と補給と食料輸送を同時にできずに国内の一般市民に餓死者を出した国もあった。

まあ他ならぬドイツなのだが。

…というか"帝国封鎖"が実施された場合、食料は大丈夫なのだろうか。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

同日 北方方面軍スコーネ駐屯地仮設乗降車場

 

「久しぶりだな"姉様"。出迎えに来てやったぞ」

 

先に到着していた"姉妹"が出迎えに来た。

 

「それやめてくれハンナ。そういう"癖"は直らないのか?」

 

「任務に支障がないなら直す意味もないからな。これはこれで楽しいもんだ」

 

幼児退行が趣味なのかストレス性なのか現実逃避なのかもう分からないな。

 

「全く、威厳もへったくれもない。それで部下が付いてくるのか?」

 

「お前らだってターニャより私の下の方が良いよな?」

一緒に来た他の候補生が一斉に頷く。

 

「つまりそういうことだ」

 

「貴様ら…」

振り向いて睨むと一斉に視線を外された。クソッ。

 

「そもそもターニャのやり方が極端過ぎる。

前も言ったが、戦場に出るまでに直しておかないと後ろから撃たれるぞ」

 

…流石に6年間近く、最後は第2地上攻撃航空団(S G 2)を率いて世界大戦を戦い抜いた男の言葉は無視できない。

 

「…分かった、善処しよう」

今後どのように接するべきかは後で考えるべきか…

 

「とりあえず移動するぞ―」

 

 

 

「君がターニャ・デグレチャフ候補生だね?」

師団本部に移動している途中に現れた男は大佐の階級章を着けていた。

 

「はっ、小官がターニャ・デグレチャフであります」

反射的に敬礼をする。慣れたものだ。

 

 

「君宛てに装備局から荷物が来ている、付いてきたまえ。ルーデル君も」

 

佐官が態々いち候補生のために荷物の案内…?

 

―――――――――――――――――――――――――

 

集積所で渡されたのは小銃だった。

我々が普段使っているGewehr(ゲヴェーア)21よりも幾分短い。カービンか?

 

「知っての通り、現在我が国では魔道師戦力の拡充のために"拡大志願"を実施している」

要するに魔導師としての素質を持つ人間の"動員"のことだ。

名目上志願になってるがあれでは徴兵と大して変わらん。

 

「今まで女性魔導師は後方任務に回される場合が多く、特段問題は起きなかったが、

今回は"志願"が多く男性同様の前線配置を予定している」

 

「しかしながら、女性の体格はどうしても男性に劣ってしまい

小銃の取り回しに問題があるという話が上がったため、我々装備局は小銃を新たに開発した」

ああ、なるほど。

 

「それで、我々ですか」

 

「その通り。女性で、さらに身長が低い君達こそ新しい小銃を試すのには最適だと判断し、

こうやって引き渡しに来たわけだ」

今まで扱っていた小銃は非常に扱いづらい。銃剣込みの全長が身長に対して9割近くに達するのだ。

自動小銃であるGewehr21はまだ扱いやすい方で、歩兵用のボルトアクションライフル、Gewehr98に至っては銃剣を付けてると自分の身長よりも長い。

 

「当然、問題点を発見した場合やその他の意見などは遠慮なく言ってくれて構わない。

むしろ言わないことは帝国の不利益になる。軍人としてあるまじきことだ」

 

「大佐、この小銃はGew21と同様に扱って良いのですか?」

ハンナが口を開いた。そういえばまだこの小銃そのものについては何も聞いていない。

 

「見てもらって分かる通り、Gew21の銃身を切り詰めて調整しただけだ。

名称もGewehr(ゲヴェーア)21K(クルツ)

我々としては全く新しい小銃を用意したかったのだが時間の問題で単なる騎兵銃(カラビーナー)になってしまった。

取り扱いはGew21と変わらないから覚えることが少なくて悪くはないと思うが」

 

「早速ですが意見よろしいでしょうか」

 

この後、我々2人は文字通り遠慮なく様々な意見を述べ続けた。

帝国の魔導師戦力と私の生存のためには遠慮している場合ではないのだ。

 

要約すると、

・上下逆にしたときの排莢不良が多い。現在は近接制空戦は主流ではないが、

演算宝珠の高性能化に伴い高速化すれば航空魔導師の戦いは近接制空戦が主流になる。

このため、機動条件下での動作は必ず改良するべき。

・銃は制空戦闘用と対地攻撃用に分離するべき。

・曲銃床では反動制御が難しい。ピストルグリップと直銃床の組み合わせの方が良い。これは地上攻撃用装備も同様。

・近接制空戦中は弾切れが命取り。装弾数は取り回しに支障がない範囲で多い方がいい。30発程度。

・近接制空戦闘中にフルオート射撃が可能な方が良い。

・制空用の銃は反動制御を容易にするため短小弾。但し投射魔力量と弾道特性を確保するため口径はそのまま。

 

以上が主だった意見ではあるが、

察しの良いあっちの世界の人物が聞いていたならば、もう分かったかもしれないが、

要するにStg44とFG42を作らせようとしているのだ。

制空戦用にStg44、対地攻撃用にFG42といった具合だ。

 

あまりにも具体的に、そして大量に意見を述べているので最後には

「後ほど書面で出してくれ。可能な限り要望には応えよう」ということになった。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

1923年6月某日

北方ノルデン地域第八警戒区

 

ここ数日、どうもきな臭い。

夜には友軍の訓練もないのに遠くから砲撃音はするわ、

哨戒飛行のときに当たる北風から明らかに硝煙の匂いが混じっている。

 

現在の状態は、帝国と協商連合がそれぞれ陸軍部隊を部分動員充足状態で国境線上に貼り付けている状態。

最早いつ開戦しても不思議ではない。

 

『こちら北方方面ノルデン地区航空指揮管制(ノルデンコントロール)。フェアリー08、定時連絡』

 

『こちらフェアリー08、感度良好。異常なし』

 

『ノルデンコントロール了解。所定経路での哨戒任務を継続せよ』

 

『フェアリー08了解』

 

「暇だ。ポーランドの長距離偵察を思い出すほど暇だ。

このままこっちでも偵察や観測の仕事ばかりに回されるなら航空魔導師やめようか」

 

 

我々研修生の一部は哨戒任務を任されていた。

2人組での哨戒任務なのだが、例によって相棒はハンナ。

 

この"空飛ぶ非常識"は我々が到着する前に陸軍との連携訓練を終えており、

研修生は研修生同士で班を組むために2ヶ月ほど、待機命令が出続けていた。

それで相当退屈したらしく、

終いには"自主的な飛行訓練"と言って駐屯地を抜け出し海を渡ってコペンハーゲンまで本を買いに行っていた。

――それが許されるのが全くもって謎だ。

 

 

それはそれとして、軍法会議にかけられる前に同期に忠告をしておく。

 

「研修生が哨戒任務を実施するような状況で退役が許されると思うか?」

 

開戦すらしていないが魔導師の人的資源は実質、徴兵によって全て利用することになり、

魔導適性のある子供は皆幼年学校とやらに送られた。

 

「学費を払わされるだけで済むわけが無い。

既に魔導適性がある者は徴兵され、幼年学校で立派な、いや中途半端な新兵が急造されてる真っ最中。諦めろ」

 

特にこの前線配置中に退役など願い出たら、

逮捕で済めばまだ良いが状況によっては敵前逃亡として処刑もありうる。

 

「もし仮に戦争が起きなければ、また哨戒任務に縛り付けられ終わるわけか…」

 

ポーランド侵攻からバルバロッサまでの期間のことを思い出しているのだろうか。

その顔からにじみ出ているのは悔しさか、出撃への執念か。

 

『ノルデンコントロールより全空域に通達。哨戒班が協商連合軍陸上部隊の越境を確認。哨戒任務中の各班は交戦規定(ROE)を防空哨戒戦に移行する。別命あるまで待機せよ』

 

「待ってました!」

戦闘狂め。

 

やたらとタイミングよく越境してきたが、連中は帝国に勝つ見込みがあってこんなことをしているのか?

どっかの大国から協力や義勇兵、レンドリースの約束を取り付けでもしない限りこんな真似は普通できない。

 

例えば、もし仮に南半分に米軍が駐留してる状態の朝鮮半島においてDPRK単体では戦争を起こせないが、

これにPRCが義勇軍を派遣することを確約すれば話は変わる。

――まあ実際には米軍はほぼいなかったし、DPRK単体で南進して釜山まで追い込まれ

PRC義勇軍の派遣はスレッジハンマー作戦の後になるわけだが…

 

これらを現在の状況に当てはめればDPRK単体で38度線を越えて南進している"ように見えている"段階だ。

どうせ"ブリテン"か"フレンチ"辺りが焚き付けたのだろう。

若しくは協商連合では救いようのない馬鹿共が政治を行っているか。

 

『ノルデンコントロールよりフェアリー08、観測任務に切り替える。事前射点群G(グスタフ)へ向かえ。

以後はゴリアテ07に引き継ぐ。周波数そのまま』

 

『フェアリー08、観測任務、地点G、周波数維持』

通信内容を再確認(リードバック)

 

「地点G、方位20だな」

ハンナは通信を聞きながら移動を開始していた。

到着までハンナが先導、私は通信に集中する。

 

以前はこれを全部一人でやらされていたらしいが、流石にどうかと思う。

 

『こちらゴリアテ07、フェアリー08応答せよ』

砲兵部隊から連絡。周波数そのままだと通信相手ごとに切り替えなくて済むから本当に楽。

 

『こちらフェアリー08、感度良好。まもなく観測地点に到達する』

 

『確認。砲撃は事前試射に基づき転移射で行う。但し目標が射点群より1km以上離れる場合は通常の観測射撃に移行する』

 

『フェアリー08了解』

 

転移射とは事前の観測射点を基点に目標位置、気象条件等を考慮し補正し、

観測射無しで効力射を実施する方法である。

今回に関して言えば事前に歩兵が通過しやすい地点を確認し、

そこに演習弾を用いて試射を何度か行い、それを基準に転移射を実施する。

 

『フェアリー08からゴリアテ07、観測地点に到達』

眼下に広がる北方国境の森の中には幾つかの道があり、

その中の一つに整列して移動する歩兵を見つけた。

なんだあれは。他国の領土に武装して侵入しておいてパレードでもしているつもりなのか?

 

ハンナは既に地図を出して位置を確認していた。変人だが流石に仕事が早い。

「街道の方だな。街道G-3上、G-3-11から3-9にかけて」

 

私が地図を見る必要すらない。

 

『フェアリー08よりゴリアテ07、目標地点はG-3-11からG-3-9の間を南方へ行軍中、旅団規模、速度1』

 

『ゴリアテ07了解』

 

この場合、行軍で移動することを見込んでG-3-12からG-3-10を目標地点とする。

通常であれば位置を確認するのに多少時間が掛かるが、街道上だとすぐに場所がわかる。

お陰で連中は既に死んだようなものだ。

相手のレベルが低いと考えるべきか、時代のせいだと考えるべきか。

 

次は砲撃の観測に入り、ハンナは周辺警戒を行う。

――やっぱりこれ一人だと危なくないか?

 

『ゴリアテ07よりフェアリー08、転移射を開始。観測求む』

 

『フェアリー08了解』

 

微かに砲弾の風切り音が聞こえ、直後に歩兵隊の中心で砲弾が炸裂し人が吹き飛んだ。

遠くから複数の乾いた炸裂音が聞こえる頃には

歩兵がまるで水を注がれた蟻のように混乱し逃げ惑っていた。

 

試射も無しに大量に撃たれた砲弾は、見事に敵歩兵隊を射界に捉えており、

1分としないうちに散り散りに逃げ始めた。

早くも連中は組織戦闘能力を喪失したと考えていいだろう。

 

『こちらフェアリー08、敵歩兵隊は散布界内にあり。射撃を継続されたし』

私は慈悲深いからな。

敵とは言え、開戦早々、中途半端に生き残って後方勤務という不名誉を防いでやるためにも

あの歩兵隊には"名誉の戦死"をさせてあげようではないか。

 

『ゴリアテ07……い』

ん?

 

『こち……ノ………探……迎……』

なんだ? ノイズだらけで聞こえない。ECMか?

 

「ECMだな。方位340から魔導師部隊」

ハンナが目視で確認したようだ。妨害で聞こえなかったのは敵魔導師発見情報だったか。

「数は?」

 

「恐らく一個中隊。推測距離11000、進行方向がずれているがこのままでは見つかるだろう。

接敵するまで3分と言ったところだ」

 

まずい。流石に2人で一個中隊を相手にするのは宜しくない。

その片割れが人外の類であったとしても、信頼に値する成果が無い以上は後退するのがセオリー。

足元の歩兵隊は最早壊滅したが、その後ろにいる連中も砲撃目標。

だがそれを観測するのは増援と合流してからでも遅くはない。

 

『フェアリー08からノルデンコントロール。点群Gより方位340、距離9000、高度4200。敵一個魔導中隊が接近中。一時後退する』

 

『こちらノルデンコントロール。後退は許可できない。遅滞戦闘に努めよ』

――何?

 

『フェアリー08、ノイズが酷い。再送求む』

実際にははっきり聞こえているが理解が及ばない。

この状況で後退を許さないというのはシンプルにまとめて"死ね"ということだ。

 

『ノルデンコントロールからフェアリー08、サブチャンネルで通信障害は確認できない。

後退は許可できない。繰り返す。後退は許可できない。遅滞戦闘に努めよ。増援は600以内に到着する』

 

つまり、10分間、一個中隊と戦えと? 2人で?

600秒。それだけあればカップラーメンの湯を沸かして注いで食べて片付けまでできる。

6倍の敵と600秒交戦して生き残れと? 何を言ってるんだこの指揮官は。

死ねと言いたいなら素直にそういえば良い。何も得られないのに死ねと言うのなら

抗命の正当な理由にもなるだろう。軍法会議で弁明できる。

 

だが敵は目前、下がれば友軍に被害が出る。

 

 

 

――引けば敵前逃亡。処罰は言うまでもない。進めば、一応死なずに済む"かもしれない"

 

『……フェアリー08了解。せいぜいあがいてみせましょう』

 

『幸運を祈る。神は我らと共に』

 

scheiße(シャイセ)!」

クソッタレクソッタレクソッタレ! 態々意図的にこんな状況に放り込むクソッタレな神など

碌でもないゴミに決まっている!

そんなのが一緒に居たら心地悪いうえいつ死ぬか分かったものじゃない!

神は我らと共にぃ? そんなんで勝てるか戦争に!

 

「仕方ない。私が低空で接近して突き上げる。連中が陣形を乱したところを狙え」

流石に30回撃墜されて死線を何度もくぐり抜けてきた奴は安定感が違う。

 

「…それが最善か。自分が囮になる。感づかれるなよ」

 

「見えても対応できんよ」

そう言うとハンナは急降下で加速し高速低空飛行に入った。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

同年同日

 

協商連合軍第五魔導大隊本部小隊及びA中隊

 

帝国軍北方ノルデン地域第八警戒区

 

 

 

『師団本部から全隊へ! 一時後退し再編成を』

 

『こちら第4連隊、現在砲撃されており死傷者多数、行軍不ザッ』

 

『第4連隊どうした!』

 

『第8連隊、敵の砲撃により死傷者多数、後退もままならない!敵砲兵をなんとかしてくれ!』

 

『こちら第1砲兵、敵に捕捉され砲撃を受けている!』

 

 

協商連合軍の広域通信は混乱する一方であった。

無線越しにも聞こえる砲撃の音、壊滅しても後退できず一部の連隊は通信が途絶えていく。

 

「カニンガム! 地上の状況は」

 

「現在、第3,4師団の作戦区域下において4,5,8の各歩兵連隊が壊滅、

その他砲兵旅団のうち第1が砲撃を受け後退中、第2及び3が対砲兵射撃を行うため再配置中。

全体的に混乱していて本当にこれで合ってるかどうかすらわかりませんが…」

 

政治が国内の不満を国外に逸らすため、帝國との係争地であるスコーネ地域を奪還するという目標を掲げ、

威勢よく陸上部隊を進めたはいいが、予想外の反撃により一部の部隊が壊滅。

まるでフォークランド紛争のような流れだ。

 

尚、開戦の実態はアルゼンチンより遥かに愚かな有様。

 

帝國を取り巻く情勢を見れば、共和国と連合王国辺りに話を持ちかければ

各種支援や万が一の場合の同時宣戦布告、独立保障などの約束を比較的容易に取り付けられたはずだが、

それを全くせずに動員をかけて越境しているのだから無能以外の何物でもない。

防戦の準備? 戦争するのは計画に含まれないので当然していない。

 

そしてそのツケは現在進行形で協商連合の兵士、いや国民が血と命で支払っている真っ最中。

このうえ戦争が長引き、アカいエージェントが混じった日には革命不可避である。

 

「政治家共め、何が"緊張感ある軍事演習に過ぎない"だ!」

 

協商連合軍で第五魔導大隊を率いるアンソン・スー中佐はその無能共を呪っている最中であった。

だがそんなことをしても現状は変わらない。

 

『大隊各騎、我々は友軍の後退を援護するため敵の観測手を排除、敵軍砲兵隊の位置情報を友軍に通達した後離脱する』

 

「これが我々が今できる最善だと信じたい」

マイクを外して呟く。

 

『B中隊了解』『C中隊、了解』

 

『敵砲兵隊捜索中に敵の迎撃があった場合は各中隊長の判断で離脱せよ、以上だ!』

 

 

対砲兵射撃よりも友軍の撤退援護及び観測妨害のための航空戦力の温存を優先するという判断である。

 

 

「大隊長! 2時方向に観測手を確認! 距離4000!」

 

「よし、排除して敵砲列の捜索に「下方敵騎!」

 

しかし対応は間に合わず。

中隊は下方から3発の射撃を受け、3つの爆発は容易に防殻を突き抜けた。

 

初撃で3人が空から消え、敵魔導師は速度を維持して中隊の上方に離脱、

様子を窺うかのように緩く旋回し始めた。

 

「敵騎左上方!」「撃ち落とせ!」

幾多の弾が上方に向けて放たれるが一発たりとも当たらない。

上を取られ、その回避運動と高速性能の前にアンソンは焦っていた。

 

相手は普通の魔導師ではない。

その異様に低い身長からひと目で子供だと分かったが

だがそれに関して考えている余裕はもはや無く、

敵観測手と同時にあの子供の相手をして、更に敵の増援が来る可能性が高い。

 

『大隊長からB中隊へ!A中隊は奇襲を受け交戦中、後退を援護してくれ!』

『B中隊了解』

 

アンソンは更に指示を飛ばしまくる。

「ラガルド! お前は小隊を率いて観測手の相手をしろ!」

「了解大隊長! 任せてください!」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

用語解説

 

・歩兵銃

名前の通り。歩兵が持ってる小銃。

帝国軍ならばGewehr 98のこと。

 

・Gew98/Gewehr 98(ゲヴェーア98)

実在するマウザー製ライフル。1898年制式化された歩兵銃。

本体だけで全長1250mm。銃剣も着けると更に150-300mmほど長くなる

二次大戦では主に騎兵銃のKer98kが使われたが、Gew98とは異なるので注意

 

・騎兵銃、カービン、カラビーナー(Karabiner)

名前の通り。騎兵のための銃。

標準型が歩兵銃で、それを短くして作ることが多い。

日本ならば38式歩兵銃と騎兵銃の関係がそれに当たる

カービンは英語、カラビーナーはドイツ語。

 

・Ker98K/Karabiner98 kurz

PUBGで有名になったかもしれないドイツ軍の二次大戦における主力小銃。

長すぎて取扱の難しかったGew98を短縮した騎兵銃。

Kurzも「短い」を意味するドイツ語で、「1898年制式採用の短縮型騎兵銃」の意味になる

 

・Gew21/Gewehr 21

独自設定。「1921年制式採用の歩兵銃」を意味する。

Gew43とほぼ同じ仕様の自動小銃。

 

Gew21kは「21年制式採用の短縮型歩兵銃」である。

作中では騎兵銃と呼ばれているが、

あくまで試作品扱いで制式化されていないため名称がおかしい。

Gew21kという名称は装備局が勝手につけた仮名だろう。

 

メタ説明:

アニメ版で使われているメキシコで設計開発されたモンドラゴンM1908が

技術力も生産力もあって戦時ではない段階で用意された帝国軍の自動小銃が

帝国で開発生産されたものではないという事に違和感があったために

上乗せされた独自設定。

 

 




何故こんな中途半端な所で終わってるかって?
そりゃこの続き書けなかったんだよ!

まあココを無理して書いてたら匙投げてたかもしれないし、仕方ないかなと。
今後もちょくちょく飛ばしていくのでエタ回避のためだと思ってご了承ください…






感想の返信は完全に気まぐれです

・0405追記
方針転換。基本全部返信していきますやたら遅れて返信する事があるかも。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。