FAIRY TAIL ◼◼◼なる者…リュウマ   作:キャラメル太郎

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エドリュウマの武器どうするかにかなり悩みました…

感想などを書いてくださると励みになりますので出来ればよろしくお願いします。




第二一刀  脱出

 

ルーシィ達が地下の坑道で此方の世界のリュウマとエルザに捕まってから少し経った今、ルーシィはたった1人で独房に、ナツとウェンディは別の独房に入れられて離れてしまった。

ハッピーとシャルルは兵隊達に手厚いおもてなしをされながら、ルーシィやナツ達とはまた違う場所へと連れて行かれた。

 

────は~…ハッピーとシャルルがねぇ…

 

「ハッピーとシャルルはエクシードっていう種族…」

 

エクシード…この世界において“天使”のような存在であり、そのエクシードという種族の女王であるシャゴットは“神”と云われている。

 

「神の言葉は絶対であり、人間を管理するのが仕事……その口が“死”を宣告するのであれば、その人間は死ななくてはならない…バカバカしいわ!?どんだけ理不尽なのよ!?」

 

 

「ほう…?よく調べているのだな、この世界のことを」

 

 

1人で文句を言っていると独房の扉が開き、外からルーシィのよく知る顔であるリュウマが入ってきた。

ルーシィは突然の来訪に驚くも直ぐに顔を引き締め、後ろで両手を拘束されているので這いずるように詰め寄った。

 

「みんなは無事なの!?」

 

「あぁ、全員無事だ。捕らえてから傷一つ付けていない」

 

「……よかったぁ…!」

 

────無事ならよかった…ずっと気になってたから一つ安心したわ…。

 

捕まえられたが、傷一つ負っていないというのであれば一安心というもの。

深く息を吐くルーシィに、エドラスのリュウマは訝しげな表情をして問いかけた。

 

「……よくそんな言葉が出てくるものだ。今己自身の置かれている状況を分かっていての言葉か?」

 

「あぁ、うん…そうだね…でも、顔も声もあたしの知ってるリュウマと同じだから気が緩んじゃって…」

 

地上(アースランド)の俺か…」

 

「うん、やっぱりあたしの知ってるリュウマじゃなくても、リュウマだと気が緩んじゃう」

 

自分の世界のリュウマのことを思い描き、エドラスのリュウマにアースランドのリュウマの話をし始めた。

 

「あなたはね、あたし達の世界じゃ妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員なんだよ?」

 

「…何?」

 

「すっごい強くてかっこよくて、スゴい人気で…皆から頼りにされてるの」

 

「……」

 

「でもね、あまり女の子に慣れてないのかな?迫られると動揺するの」

 

「……」

 

「それでね──きゃあ!」

 

ルーシィがエドラスの世界のリュウマについて教えている途中で、アースランドのリュウマに髪を鷲掴まれて引きずられた。

 

「そのうるさい口を閉じろ。言っておくが俺は貴様の知るリュウマなどではない」

 

「痛っ…!」

 

リュウマはルーシィの髪を掴んだまま歩き出した。

そのためルーシィは床を引きずられながら移動する。

 

─────うぅ…リュウマはこんな事しないし、痛い…。

 

「で、でも…!根の部分は同じ気がするの…!あなたは人の不幸を笑うような人じゃない…!」

 

そう言った瞬間、リュウマはルーシィを通路の壁に投げつけ、ルーシィは背中を勢い良くぶつけた。

 

「うぅっ…!力を貸して…お願い!あたしは仲間を助けたいだけなの!!」

 

リュウマはルーシィの手首を拘束している鎖を掴むと、そのまま持ち上げて外へと追いやり宙吊りにした。

ここは城の上の方にあるから下を見てみると人が豆粒のように小さく見える。

万が一ここから落ちた場合、ルーシィはタダでは済まないというのは考えるまでもない。

 

ルーシィは下を見て恐怖を感じながら、エドラスのリュウマに訴える。

 

「リュウマは、無抵抗な人にこんな事しない!!」

 

「……」

 

「リュウマは優しいんだ!!こんな事絶対にしない!!」

 

「……貴様は先程根が同じだと言ったな」

 

「…それがなんなのよ」

 

「─────く…クックック…」

 

リュウマはルーシィが答えると顔を下に俯かせながら肩を震わせて笑った。

ルーシィはなんで笑うのか分からず困惑した表情をしている。

 

「根が同じだというのに優しい…?フン、バカバカしい…!根が同じだと言うのであれば、貴様等が知っている俺はとんだ猫被り者という者だ」

 

「な、なんでそんなことを…」

 

「俺は確かに王の下で働いている。だが…そこに()()()()()()()()()()。なんなら奴などすぐにでも殺せる」

 

そう言いながらリュウマは顔を上げた。

 

だがその顔は…()()()()()

 

驚いて嘘でも言っているのかと思ったのだが、目が本気で言っていると物語っている。

リュウマは本気でこの国に、王に、忠誠など誓っていない。

それ程までに狂気が渦巻く眼をしていた。

 

─────ど、どういうことなの…?このリュウマは絶対におかしい…こんな奴の根があたしが知ってるリュウマと同じなわけない…!大体…!ここはエドラス!あたし達が住むアースランドとは全く違うんだ!

 

「俺はただただ闘いを…殺し合いを楽しみたいんだよ。この国は確かに大きい、だが…どれだけ国が大きかろうと逆らう者はもちろん必ずいる、それが人間だからだ。俺はそんな逆らう奴等を侵略という名目で斬り殺した。魔戦部隊総帥ともなると大抵の事は融通が利く、この国の王も俺を信用しきっているからな」

 

「な…なによそれ…」

 

「最近は逆らう奴も強き者もいないから殺し足りないが、それはこの際我慢する。それと…俺の本質は闇…ただただ黒く、全てを呑み込み塗り潰す闇だ。貴様が知ってる俺は優しい…?それはただ猫を被り、お前達と一時の仲良しごっこをしているだけに過ぎん」

 

────嘘だ…!こっちとあたしの知ってるリュウマは違う…!

 

エドラスのリュウマは今だ嗤いながらも面白そうにルーシィを見ていた。

目いっぱいの涙を溜め、声を震わせながらもエドラスのリュウマを睨みつけた。

 

 

「あたしの大好きなリュウマの顔で…声で…そんなこと言うな」

 

 

精一杯の強がりはしかし……

 

 

「ならば直接本人に聞いてみるのだな────」

 

 

そう言ってエドラスのリュウマは…

 

 

 

「あの世で…な」

 

 

───手を離した。

 

 

ルーシィはそのまま真っ逆さまに下へと落ちていく。

落ちる瞬間見たエドラスのリュウマは既に元の表情に戻り、落ちていくルーシィを無感情な目で見ていた。

落ちていく中、まるで冷静であるように思考していた。

 

────そんなことない…リュウマはそんなこと言わないし、そんなことを考えない…!だってリュウマは優しくて…頼りになって…皆に頼られる人なんだ!

 

 

「ルーシィーーーーーーー!!!!!!」

 

 

「…ッ!!ハッピー!!」

 

落ちていく所を猛スピードで飛んできたハッピーが攫うように受け止めて飛び上がる。

 

と、言えれば良かったのだが、実際はハッピーが勢い余って壁に激突したので代わりにシャルルが受けとめてくれたのだ。

 

──────あれ?てか、ハッピー達羽が…ここに来たときは羽が消えて飛べなくなってたのに…。

 

「羽はどうしたの?」

 

「心の問題だったみたいだわ」

 

「うぅ…久しぶりだから勢いつきすぎたよ…」

 

「コレは一体…その女は女王シャゴット様の命令にて抹殺せよと…」

 

飛んで話しているとエドラスのリュウマが話しかけてきた。

 

「命令撤回よ」

 

「しかし…いくらエクシードの直命であっても、女王様の命令を覆す権利はないはずでは?」

 

「う…っ!」

 

ハッピーが事実のこと指摘されて渋る。

 

ハッピーとシャルルはこの国のエクシードじゃないからバレたら最大戦力に剣を向けられるので失敗する訳にはいかない。

 

「その女をこちらに引き渡していただきたい」

 

エドラスのリュウマは険しい顔で言ってくる。

顔には不信感か出てる。

 

────や、ヤバいよ…バレちゃう…!

 

「頭が高いぞ人間…」

 

「えっ…」

 

「私を誰と心得る!?女王シャゴットの一人娘でありエクスタリア王女シャルルであるぞ…!」

 

「!!!!」

 

え…えええええぇぇぇぇぇぇぇえ!!??

ナニソレェェェェェ!!??

 

ハッピーとルーシィはいきなりのシャルルの豹変ぶりにポカンとしてる。

だがそれも仕方ないだろう。

普段こんな事を言わないシャルルが女王のように言っているのだから。

 

……ツンデレ過ぎて似たようなことを言っているとは言ってはいけない。

 

「はっ!申し訳ありません!!」

 

と、言ってリュウマは跪いた。

 

え、えぇ…?騙せるの…?コレで…?

 

ルーシィは心の中で呆然とさせながらリュウマを見ていて、リュウマとしては信じきっていて本気で跪いている。

 

「ウェン…2人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)はどこ?」

 

「西の塔の…地下牢に…」

 

「今すぐ解放しなさい」

 

「私だけの判断では何ともなりません」

 

「いいからやりなさい!!」

 

 

「総帥様!!」

 

 

「パンサーリリー?」

 

 

と、そこに同じエクシードとは思えない巨大で筋骨隆々のパンサーリリーが険しい顔をしながらやって来た。

 

「アイツもあんたの仲間なの…?」

 

「あ、あんなゴツいエクシードいなかったよ…」

 

 

「その二人はエクシードの“堕天”です!エクスタリアを追放されたもの達です!!」

 

「何だと!?」

 

堕天というのはエクシードの中でも裏切り者の事を言い、所謂エクシードの住まう浮遊島から追放されてしまった者達でもある。

 

「逃げるわよ!!!」

 

「シャルルは姫じゃないの~!?」

 

「堕天って言われたら誰であろうと裏切り者扱いみたい…」

 

「なにそれ!全然ダメじゃない!!??」

 

ルーシィ達はすぐに逃げようとしたのだが、上からエクスタリアのエクシード兵達が追いかけて攻めてきていた。

 

その後に下に逃げようとしたが、城の兵士がもう既に外へと出てきていて下に逃げることも不可能。

万事休すとなったところで、エドラス王国の王が出てきて、何やら巨大なスポットライトのような光をエクシード達に浴びせてラクリマに変えた。

 

ルーシィ達はその時に起きた混乱に乗じて、ナツとウェンディが閉じ込められている西の塔に向かった。

今はその塔の中を走っているところである。

 

「大変なことになってきちゃってるね…」

 

「まさか人間とエクシードが戦争を始めるなんて…」

 

「私達には関係ないことよ、どっちもどっちなんだし勝手にやってればいいのよ」

 

 

「そう簡単に逃がすと思うのか?」

 

 

「えっ?きゃっ!」「うわぁ!」

 

ルーシィ達が走っていると、エドラスのリュウマの声がしたと同時に槍がかなりのスピードで飛んできて足下を砕きながら突き刺さった。

突然のことでバランスを崩してしまい床に倒れ込んだ。

 

「この先へは行かさんぞ」

 

「貴様等はここで終わりだ」

 

その後に出てきたのはエドラスのリュウマとエルザ…あと多数の兵士達だった。

ここは道が一方通行のため、今通って来た道か、兵士達が通って来た道しかない。

 

ルーシィは変な手枷の所為で魔法を使うことが出来ない。

 

例え使えたとしても、相手はエドラスとはいえリュウマとエルザ…今のルーシィ達では抗って抵抗しようとも逃げ果せる事など不可能に近い。

 

「もうあたし達に興味なんてなくなったんじゃないの!?なんでまだ追いかけてくんのよ!!」

 

───キイィン…

 

「えっ!?」

 

さっき飛んできた槍が光り出したと思ったら、大きい爆発が起きた。

まだ近くにいたルーシィ達はその威力に吹き飛ばされる。

 

「ほう…私の魔法を食らっても尚、まだ生きているのか」

 

「しぶといな」

 

 

──きゃああああああああああ……!!!!

 

 

「─────ッ!!」

 

「ウェンディ…?」

 

「近くに…」

 

そこに聞いたことのある少女の叫び声が上がった。

何かやられているのか苦痛の叫び声となっている。

その声に聞き覚えのあるルーシィ達はまさかと思った。

 

────この声…絶対にウェンディだ…!それに苦しそうに叫んでる…!

 

「あんた達…ウェンディに一体なにしてるの…!?」

 

「作戦に必要な魔力を奪っているだけだ」

 

ウェンディの叫び声はずっと続いている。

 

動くこともままならないルーシィ達には聞いている事しか出来ない。

仲間が近くにいて苦しんでいるというのに、何も出来ない自分達に怒りを覚えて顔を歪める。

 

「まあ、案ずるな。貴様等は死ぬのだからな」

 

そう言ってエドラスのリュウマは近くに倒れているシャルルの前まで行き、後ろの兵士から渡された槍を構えた。

 

「まずは貴様からだ…」

 

「シャルルはやらせないぞ!!」

 

たけど、そのシャルルの前にハッピーが出て来て、両手を広げて仁王立ちした。

 

────だ、ダメ…このままじゃハッピーとシャルルが…!

 

 

「─────ならば先に貴様だ」

 

 

エドラスのリュウマは持っている槍を後ろに引いて大きく振りかぶり…ハッピーに向かって振り下ろし───

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい』

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!!」

 

「…ククク…」

 

「何だ…!!」

 

声が聞こえたと思ったら天井が崩れて人が人影が三つ降りてきた。

後ろにいた兵士達はその3人の攻撃によって次々と倒されていく。

 

「オイ…こらテメェ等…」

 

「あがあぁぁぁ!?」

 

「うわあぁぁ!!」

 

一人が兵士を氷づけにしながら言う。

兵士達はなすすべもなく氷のオブジェと化し倒される。

 

「そいつらをウチらのギルドのだと知っててやってんのか?」

 

「ギルドの仲間に手を出した者を私達は決して許さんぞ」

 

もう一人は換装した剣を手に持ち、兵士達を切り倒していく。

 

「我等が何も出来ないことを良いことに、好き放題やってくれたからなァ…報いを受ける覚悟はできたか?」

 

最後の一人は2人が倒して出来た道をゆっくり歩いて近づいてくる。

 

 

ルーシィ達はその3人をよく知っている。

 

 

「貴様等はもはや殲滅対象だ…妖精の尻尾(フェアリーテイル)のなァ!!」

 

 

「グレイ…!エルザ…!リュウマ…!」

 

 

 

 

ルーシィ達の頼もしい仲間達なのだから。

 

 

 

あたしは3人が来てくれたことに安心感から涙を浮かべながら笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────数分前

 

 

 

アースランドのリュウマが街のパレード時に住人へと見せていたラクリマの近くで会ったのは、先にこっちの世界に来ていたガジルだった。

ガジルはミストガンからラクリマから人間に戻す方法を聞いていたらしくすぐにラクリマを人間に戻した。

 

因みに、リュウマはラクリマからの元に戻す方法が滅竜魔法で砕き割るとは思ってもみなかった。

 

しかし、砕いたラクリマから戻ったのはエルザとグレイだったのは良かったとも言える。

フエアリーテイルでもトップレベルの実力者なのだから。

 

直ぐさま状況説明をした後にエクスボールを飲ませ、魔法を使えるようにしてから騒ぎが起きた場所へ急いで向かい、一人の兵士を捕まえて情報を(無理矢理)吐かせた。

 

ルーシィやハッピーにシャルルが逃げて、ナツとウェンディが牢屋に捕まっていることを聞いたリュウマ達は、すぐさまルーシィの魔力を追って西の塔に来た。

 

リュウマ達が天井を破壊して入ったら驚き一点、エドラスの自分とエルザがいた。

ルーシィ達がやられそうになっているのを見ると間一髪だったようで一安心した。

 

「な…なんだ!?エルザ様とリュウマ様が2人!?」

 

「あっちはグレイ・ソルージュか…!?」

 

「違う!アースランドの者共だ!!」

 

「えぇ!?」

 

 

「俺達の仲間は何処にいんだ?ア゙?」

 

 

グレイの放った魔法を合図に、エルザ達は同時に駆け出し攻撃しあう。

攻撃が当たると辺りに衝撃が走り周りの兵士も吹き飛んでゆく。

どちらもエルザなだけあって戦闘力は均衡している。

 

エドラスのエルザの持つ槍が一瞬見えたが、槍の形が変わっては能力も上がった。

つまりエドラスのエルザは槍の形を変えることで多数の能力を付与するようだ。

 

しかし、目の前にいる此奴(リュウマ)は一味違った。

 

「……ククク…気配で天井を突き破ってくるのは分かっていたぞ」

 

「……ほう?なら分かっていて仲間に手を出そうとしたのだな?」

 

 

「…もう少し遅かったら尊い2つの命が消えるところだったな?」

 

「…そうなったらこの城の人間は真っ赤に染まる所だったな」

 

 

「クク…別にこの場にいる人間がどうなろうと興味は無い…だが…貴様には興味以外感じられない」

 

「貴様も結局は俺ということか」

 

 

「リュウマ対リュウマ……」

 

「ルーシィ…行くぞ…ここに居たらオレ達は足手まといだ」

 

グレイはリュウマが言わずとも理解してルーシィを立たせて避難を開始する。

グレイにはナツ達を探すように言ってあった。

エルザ達も俺達が動くと分かったのか、戦闘の最中移動して離れていく。

 

「リュウマ…頑張ってね…絶対勝ってね」

 

ルーシィが行く前に俺の方に向き直り、目に信頼の感情を乗せて応援をしてくれる。

 

「任せておけ」

 

冷たい対応だと分かりつつも簡潔に返事をして返す。

それを聞いたルーシィは満足げな顔をしてグレイ達と離れていった。

 

2人のリュウマ達は互いに半身になりながら拳を構える。

エドラスの己の眼には底知れぬ強者との闘いに対する狂気が見て取れる。

しかし対するアースランドのリュウマは無表情ながらも目には仲間をやったことに対する殺意しかない。

 

「王国軍魔戦部隊総帥リュウマ・エルマディア」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士リュウマ」

 

そして彼等は──

 

 

「「推して参る!!」」

 

 

 

 

────拳を振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人のリュウマ達は互いに拳を振り抜き殴り合う。

エルマディアに一撃を入れようとすれば受け流されカウンターを入れられる。

 

リュウマは返されたカウンターを受け流してカウンターを入れる。

互いが互いであるため、筋力技量観察眼などが全てほぼ同じ。

カウンターをカウンターで返すやりとりが最初からずっと続いていた。

 

互いの拳は何かに当たった訳でもないのに、周りの壁を穴だらけにしている。

これは拳を振り抜いた事で生じる拳圧に他ならない。

 

「まさか俺とここまで拳を交えられるとはな」

 

「それはこちらとて同じこと」

 

拳を受けとめられた。

受けとめられた拳を軸に最短距離で頭に向かって蹴りを放つ。

 

「速いな」

 

が、首をかしげるように最小限の動きで躱される。

 

「お返しだ」

 

エルマディアは膝を腹めがけて放ってくる。

一切加減のない膝蹴りだ。

常人が食らえば肋は折れて一撃で終いだろう。

 

「舐めるなよ」

 

膝蹴りに対して膝蹴りを放ち相殺。

互いの膝蹴りの威力に、辺りの壁が破壊された。

脚は腕よりも3、4倍の威力があると言われている。

そうなれば辺りが吹き飛ぶのも必然と言える。

 

─────拳を交えているが此奴…

 

「何故貴様の世界の魔法を使わない、使えばいいだろう。現にエドラスのエルザ…ナイトウォーカーと言ったか?奴はすぐに使っていたぞ」

 

それなりに離れているはずなのだが、エルザ達の戦闘の音がこちらにも聞こえてくる。

自分であるだけに苦戦しているのだ。

 

「俺は魔法…というよりも武器は一度使うとすぐに相手を殺してしまうからな。殺す前に闘いを楽しんでおきたかった」

 

エルマディアはそういいながら嗤っている。

 

魔法というよりも武器と言ったエルマディア。

この世界では、魔力が籠められたラクリマと武器を一つにすることによって初めて意味を成す。

 

武器と言ったのは、魔法は付属的感覚でしか使わず、本体の武器をそのままに使うということに他ならない。

つまり、アースランドのリュウマのように剣技による戦闘を主としている。

 

─────これだけ打ち合っているにもかかわらず一度も攻撃が入らないとなると…見稽古を使えると見た方がいいか。

 

恐らく、武器は刀。

 

絶剣技なんぞ使ったら最後、恐らく持っているであろう視稽古で覚えられて反撃を食らうかも知れない。

故に導き出されるリュウマの第一の解は…

 

────刀ではない武器での短期決戦…!

 

これ以外無いだろう。

 

絶剣技なんぞまともに食らったらいくらアースランドのリュウマであろうと真っ二つにされてしまう未来が確定する。

絶剣技とはそれ程危険な技だ。

 

「では、異世界とは言え俺自身である貴様に期待して、久方ぶりに武器(魔法)を使わせてもらおうか」

 

エルマディアはそう言い、半身になりながら片手を前に出した状態になる。

 

「顕現せよ──…『菊一文字(きくいちもんじ)』」

 

そして現れたのは一本の刀。

特に特徴的なものは無く、強いて言うならば普通の刀よりは少しだが長いという程度。

この程度の長さの刀ならいくらでもある。

だが、特徴的なものがない故にどんな能力を持つかが分からない。

 

─────ナイトウォーカーの槍は形状を変化させることにより能力を変化させていた。ならばそれと似たようなもの…?

 

「クク…久方ぶりの感触…これを握るほどの相手が居なかったからな。実に気分が高揚する」

 

エルマディアは満足そうに刀を握り…構える。

刀を握り構えただけで先程と比べ物にならないほどの圧力が俺の体にのし掛かる。

 

エドラスの己とはいえなんという剣気なのかと、異世界の己に呆れながら構えた。

常人なら気絶…気弱な者ならショック死する殺気を送ってくるエドラスのリュウマは、アースランドのリュウマが構えたのを見て笑みを深めた。

 

アースランドのリュウマは刀を使うわけにはいかないため、双剣を召喚する。

 

「…!それがアースランドの貴様の魔法か…何も無い空間から黒い波紋のようなものが出て武器が出てくる。便利だな」

 

エルマディアは興味深そうに見ながら観察している。

 

これだけではないが、態々自分の手札を見せるのは愚者のすること。

教えはせず、俺は黙って通す。

 

「では、互いに準備が整ったんだ…」

 

エルマディアは刀を構えながら下半身に力を入れ──

 

 

「殺らせてもらおう」

 

 

──目前に迫っていた。

 

 

「───────ッ!!!!!」

 

 

───ギイィィィィィィンッ!!!!!

 

 

あまりの速さに驚きながらも双剣をクロスさせて反射的に防いでいた。

 

「…やはり防いだか…九割九分はこれで終わったんだがな」

 

残念そうに言うエルマディアだが、その実、顔は笑い目は獰猛な獣のような目をしている。

 

─────なんだ…?今の速度は…?初速からあの速度…縮地にしても速い…一体何が……?

 

エルマディアの足下から薄く煙が立っていた。

ふと思って見てみただけで気づいただけなのだが、足下から出ているのではなく…()()()()()()()()()()()()()()()出ていた。

少し思考することでどのような仕組みになっているのか見破ったリュウマに、エルマディアも気付いた。

 

「まさかもう気づいたのか…?なんという観察眼、流石はアースランドの俺だ」

 

恐らくエルマディアの履いている靴は、靴底から風を勢い良く放出させることにより、爆発的な推進を可能としていると推測し、実際にはその通りであった。

 

「まさか靴にも魔法が付いているとは…」

 

「貴様はいつから魔法は武器にしか付いていないと錯覚していた?」

 

一人1個だと勝手に思い込んでいたことに恥じながらもリュウマは武器を構え直す。

 

「そら、いくぞ?」

 

エルマディアは鍔迫り合いの状態から一気に刀を引き、リュウマの体勢が少しだが崩れた時を狙い袈裟斬りをしてくる。

 

リュウマは態と前に倒れるように体を傾けながら双剣を背に持って行き、刀を背中の前に持ってきた双剣で受けとめる。

そのまま弾き、体を縦回転させて顔に踵を入れる。

 

「フッ…!」

 

だが、分かっていたのか後方へ後退して避けた。

 

振り下ろした踵を止めずに床に叩きつけて衝撃を床を通してエルマディアを狙う。

 

「『地渡り(ちわたり)』」

 

床からの衝撃を刀を地に突き刺して起こした衝撃により相殺された。

衝撃のぶつかり合いによって中心から亀裂が入り崩壊した。

 

─────あの靴が邪魔だな。攻撃をするが、入りそうになる瞬間に靴の推進力を使って避けてくる。

 

「速くて面倒だ。その靴使えぬよう脚を斬り落としてやろうか」

 

「なんとも恐ろしいことを言ってくれる。ならば貴様のその身のこなし…面倒故に真っ二つにしてやろうか」

 

2人はなかなか入らない攻防に少し苛つきを感じて売り言葉に買い言葉をぶつける。

 

「やれるものなら…やってみろ!」

 

双剣を構えながら近づき斬りかかる。

右側と左側とで挟み込むようにして斬る。

 

「『咥型(クワガタ)』!!」

 

「『鎌斬り(カマキリ)』!!」

 

リュウマの斬り込みを、後ろから勢い良く振り下ろして加えた遠心力による縦の斬り込みとぶつかり合わせた。

 

斬撃が飛び、リュウマの斬撃はエルマディアの後ろから左右の壁に斬り込みを、エルマディアの斬撃はリュウマの後ろから天井と床に斬り込みを互いに入れた。

 

─────言えた義理ではないが…なんという威力だ…食らったら縦から真っ二つだ。

 

─────なんだ今の斬撃は?軽量な双剣にも関わらず、俺が刀を使っての斬撃と同等…?

 

エルマディアもリュウマと同じような事を考えていた。

2人は同時に後ろへと跳び距離を取った。

互いに強力な技を繰り出すためだ。

 

「これで終いにしてやる」

 

「残念だが、終いになるのは貴様だ」

 

互いに武器を振りかぶり───

 

 

「オレが止めてやらあァァァァ!!!!」

 

 

─────止まった。

 

 

辛うじて残っている(互いの斬撃のせいだが)通路からナツが叫びながら勢い良く出て来た。

2人はいきなりのことに少なからず驚き、構えたままの体勢で固まった。

ナツは2人いるリュウマが目に入った瞬間固まった。

 

ナツはやがてふるふると震え始めては顔を真っ青にして叫びながら踵を返して走り去った。

 

 

「化け物大決戦だァァァァァ!!??」

 

 

────おい待て。闘いの最中故にこの場から離れてくれるのはありがたいが…化け物大決戦とは何だ。助けに来てやったのに御礼の言葉も無く、挙げ句は顔真っ青にしての化け物か。

 

よろしい。ならば戦争だ(仕置きだ)

 

次会ったらナツに仕置きをしてやることを密かに心に誓ったリュウマであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー真っ青になって逃げたナツ+α

 

 

「まったく、いきなり走ってどっか行きやがって!あのクソ炎が…!」

 

「ナツさん…」

 

「あれ…あの方向ってWュウマ(ダブリュウマ)が…」

 

「は?Wュウマって…ってなんか来るぞ…!」

 

「やだ!また兵士が追いかけて…!」

 

「すごいスピードです…!」

 

 

「あああああああああああああああ!!!!」

 

 

「テメェかよ!?」

 

「ど、どうしたのナツ!?」

 

「ナツさんの顔がこの世の終わりを見たかのような顔に…」

 

「り、リュウマとリュウマが戦ってた…!化け物大決戦だあァ!!!この世の終わりだあァ!!」

 

「「「あぁ…(察し)」」」

 

「そりゃあ…流石に…」

 

「この世の終わりと…」

 

「言わざるを得ないですね…」

 

 

後にお仕置きをされるナツである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナツが(失礼なことを)叫びながら引き返してからというもの、2人のリュウマが居る空間は変な空気になってしまっていた。

エルマディアは最初こそ少し驚いていたが、次に浮かべたのはリュウマをバカにしているかのようなニヤニヤした顔だった。

 

─────なんだ此奴は…!自分と同じ顔だが本気で腹が立つ!!

 

「良い仲間だなァ?ン?」

 

「ぶち殺すぞ貴様」

 

────…ハッ!…危ない…。危なく此奴の変なペースに乗せられるところであったわ…。

 

「邪魔が入ったが…仕切り直そうか」

 

「……いいだろう」

 

エルマディアは菊一文字を鞘に収め、居合の構えをとるがリュウマは構えない。

 

「なんだ、構えないのか」

 

「俺は既に構えている」

 

構えていないというのに構えていると言うリュウマに対して訝しげな表情を向けるエルマディア。

 

本来構えとは、剣の道の基本。

いつ相手が動いたとしても直ぐさま対応するためのルーティーンだ。

 

が、これは言うなれば()()()()()()

 

────貴様はまだ分からないだろうが、知るがいい。剣の道を進む者が必ずや構えるとは限らない…と。

 

とある流派の応用技…

 

「双剣ver 零の構え・蓬莱柿(ほうらいし)

 

「…っ!面白い…。受けて立とう」

 

互いに睨み合う…。

どちらか一方が動けば始まり…そして終わると思わせる…否…終わると解る緊迫した空間。

 

 

─────動いたのは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────ッ!!!!!!!」

 

 

「────────ッ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

───────全くの同時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──独流居合・『死閃(しせん)』!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リュウマの体が二つに斬り裂かれた────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アースランドの俺よ…実に…っ!」

 

─────…いや…待て…居合で斬ったにしろ手応えがあまりにも…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秘剣・『妖炎(カゲロウ)』」

 

 

 

エルマディアが斬ったのはリュウマの創り出した残像。

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

「双秘剣・『双衝塵(そうしょうじん)』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

舞い上がっていた砂煙から一気に駆け抜け、リュウマはエルマディアの胴に双剣による重打撃と重斬撃を同時に入れた。

 

 

「………ゴフッ…まだ………だ……っ…」

 

 

エルマディアは口と腹部から大量の血を流しながらも尚戦おうと刀を構え、続けようとするも…。

 

「………………………………」

 

「…目を開け…更には立ったまま意識を飛ばしたか…その執念…見事なり」

 

目を開け、立ったまま意識を跳ばしていた。

それでも、体からは闘気が消えていなかった。

 

 

 

 

 

アースランドのリュウマとエドラスのリュウマ…リュウマ・エルマディアとの闘いは終わった。

 

 

 

 

 

 




無の構えの実態が解った人は話が合いそうですね~。
やっぱり刀ですよねっ!

前書きでも書いてありますが。
感想や評価お待ちしております。


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