初戦継続高校はやはりというか持久戦を挑んできた。
その為比較的居住性の良いSU-100Yを休憩車両に指定し、対策もしてきた。
「・・・美琴や幽香に効くと思うなよ。」
西住しほとほとんど姿が変わらないほむは観客席近くの杉の木の下に椅子を置き、ラジオ放送をイヤホンで聞きながら、近くの大型モニターを眺める。
「まず私達は既に手を縛られているわ。速攻か持久戦か。思考がこれに固まってしまうの。」
紫が相手の心理を語る。
「じゃあどうすればいいのかー?」
「奇襲をするわよ。」
「奇襲か?朝駆けでもするのか?」
「いいえ、奇襲には2つの要素があるの。時間と場所よ。今回は場所を使うわ。この積雪30センチの場所もあれば2メートル近くの場所もある。奇襲し放題じゃない。駆逐戦車を囮にするわ。バレるかバレないかのギリギリのラインで見つかるの。後退してここのポイントまで下がり、釣られた敵を面白おかしく食べるわよ。」
雪雪崩・・・紫は自然現象を人工的に起こし、地形を変えることにより奇襲を成功させた。
駆逐戦車隊が思うように釣られなかったため第二の策だったが。
「もう、危ないじゃないですか。」
駆逐戦車隊を率いていた楓がゆっくりしたトーンで紫に文句を言うが、全く怖くない。
「あらあら、でも楓の腕を信じていたからできた策よ。楓もとっさに作戦を変えてくれたの気づいてくれてありがとう。」
そう言われると怒れない楓である。
継続はフラッグ車を含めて雪雪崩に巻き込まれないように逃げたら雪のあまりない凹地に入ってしまい、出れなくなる。
プラウダは温存していた自走砲や戦車で凹地に相手から撃たれない角度、距離から集中砲火を喰らわしてゲームセット。
「・・・。」
椅子を持ち上げ、ほむはゆっくりと学園艦の方に歩き出す。
ザッザッザッ ピタ
「・・・オレンジペコ。」
「オットーと呼んだ方がよろしいかしら?それともスターリン?小モルトケでも良いわね。」
「彼らのような偉人ではない。本質はただの凡人だ・・・今のプラウダを見ればわかるでしょ。・・・何もかも中途半端。男性を戦車道に参加させるために創った参謀本部は生徒会から今学期限りで解体命令が出た。存在意義を見いだせないだと。才能が無くても1流半にはなれることを証明させようと育てた南は死んで、改革でプラウダの特色は薄れてしまった。」
「あら?その改革の失敗で残ったカスでも私達は包囲網を作らないといけないほどなのよ。」
「・・・私にとってはそれだけは成功かもしれない。まぁ経験はできたし、コーチとしての人材も、数年間は覇権を維持できるだけの人材は用意できた。」
「ふーん。・・・纓田よ。」
「・・・本名か。池田いや、西住でも良い。纓田、日本の戦車道を数年間託す。来年には日本から消える。」
「わかったわ。楽しみにしてるわよ。」