新潟という寒い環境で、私は祖父母と雪かきをしながら定年して暇になっていた祖父に戦車の技術的なものを習っていた。
その前の基礎をだが・・・。
バーナー等の工具の使い方、図面の引き方、特殊カーボンの加工方法等・・・。
余った時間は学校の勉強(高校レベル)をする。
前世の記憶で英語は早めにやれという嫌な記憶がこびりついて離れないので、英語だけでなく、全部の勉強をしている。
特に化学、物理、数学の3つは戦車の整備に必要なのでとことん詰め込んだ。
学校でも体育以外は全てできるので、天才ちゃん等と呼ばれ、一部の気の強い女子グループからは目をつけられそうになったけど、彼女達と話す事で個別に和解したりして凌いでいった。
『お母様へ
池田ほむは戦車道のプレイヤーとしては最底辺であり、才能も有りません。
しかし、分家の方々の態度や家元の完全実力主義には些か気に食わないところが有るので、私なりに見返してやろうという気持ちがあります。
そこでお願いが有るのですが、裏山に放置されていた3号戦車を私に貸してもらえないでしょうか。
今は言えませんが、私には必要なので・・・すぐにとは言いません。
お願いします。
池田ほむより。』
もう西住の肩書きが無いので様々なことができるが、とりあえず戦車ショップに通っていた。
戦車ショップに売っている戦車の模型は改造や塗装の際に目安にすることができる。
部屋中に置かれた戦車の模型はだいたいここでそろえる。
「いらっしゃい。今日は何が欲しいんだ?」
「ISを頼みます。」
「了解だ。待ってろ。」
45歳くらいの今時珍しいジャージに白のTシャツ、首から下げたタオルには戦車道応援組合と書かれている。
個人経営だから許されるその姿は私には好印象だった。
家の近くに有る戦車ショップは大規模なチェーン店なのでマニュアルに沿った対応しかしてもらえないから時間がかかってもこっちに来る。
「しっかし、嬢ちゃんくらいだよ。こんな小さいのに戦車道の整備員を希望してるなんて。普通花形の車長とか砲主になるからな。」
「・・・人によって役割がある。私には整備員に向いてるから。」
「ま、頑張りなよ!!」
「うん。」
「喝!!溶接が甘い!!」
お爺様は工具を握ると人が変わる。
頑固なジジイになる。
「は、はい!!」
前のように上達していないわけではない。
ちゃんと人並み(お爺様は人並み以上と言っているが孫馬鹿になっているだけだろう)には上達している。
今は怒られたり、殴られたりしても前を目指せる向上心が湧き出てくる。
そうやって前に進んでいく。
3号戦車が届いた。
なぜか新品のように錆びが無くなっていた。
「おぉ、流石ほむなんだなー。仕事で頼まれた戦車を改造するわけにはいかないんだなー。」
「これを教材にする。」
「婆さん、ほむに重機の使い方も教えなくちゃいけなくなったんだなー。帰りはラーメン屋で食べてくるから後で合流するんだなー。」
「竹下さんのところに行くんかい?なら、お酒を持ってっておやりよ。」
「そうするんだなー。」