プラウダ敗退の次の日。
カチューシャから正式に部長の権限をいただいた。
「プラウダを任せたわよ!!」
「Да。」
ただ
「隊長はカッリーネ(mob)にするわ。副隊長はニーナとアリーナ。」
「え!?カチューシャ様わだしらでええんか!!」
「そうよ!!カチューシャの考えを広めなさい!!」
「「ypaaaaaa!!」」
((余計なことを・・・。))
側近のノンナとクラーラは思ったが口には出さなかった。
横で何か秘策でもあるのかいつも以上に能面のほむの顔を見てしまったから・・・。
カチューシャの根本的に存在するカリスマは勝利により作り出されている。
勝利への希望がカチューシャという絶対的な権力者を現す。
しかし、私にはそれがない。
カチューシャからは部長を任命されたが、実力が無いため、実力があり盟友のチルノという力による発言権しか無くなってしまう。
「だからここに来た。」
生徒会室の扉を見ながら・・・
部長になったからには学園艦全体でもある程度の発言力・・・いや、戦車道部の部長なので3か4番目に生徒の中では発言力がある。
生徒会長、風紀委員長、船長、戦車道部長これをトップとし、以下委員会の委員長が連なっている。
なぜ戦車道【部】ごときがこんなにも発言力があるか・・・それは明確な武力を持っているからである。
警察もピストルを持っているが、いくら非殺傷弾とはいえ、市街地で榴弾で砲撃されたら重傷ものであり、建物が崩れて普通に死ぬ。
それとプラウダには3つしかない部活のうち、2千人近くの女子が戦車道をやっているのだから予算も多くなり発言力が自然と強くなるといえば強くなるが・・・。(そんな人数を纏めあげていたカチューシャはやはり常人にはないカリスマが有るのだろう。)
ちなみに残りの部活はチェスと男子だけのスポーツサンボである。
(プラウダの学園艦は他の名門校と比べると小さい。・・・約全長12キロの3段階式に6万人が住んでる。・・・なのに娯楽がすごく少ない。)
私が不満ということは、他の生徒も不満であるということであり、その不満を解消しようと生徒会は頑張るが、訓練用の土地が削減されることに反発してきた歴代プラウダ戦車道部と、風紀が乱れることを警戒して(風紀委員として反対、しかし自分達も娯楽が欲しいため)消極的反対の立場が続いていたため、パワーバランス的に生徒会の改革は進まずにいた。
さらにカチューシャが起こした革命により戦車道部の力が上がったため革命はできないだろう・・・という空気が流れており、生徒会からも完全にカチューシャ主義の側近が部長に就任したことは数時間前に伝わっているため諦めモードになっているらしい。
そんな生徒会・・・役持ち8名の会長、副会長2名、書記長、書記補佐、会計、会計補佐と雑務数十人が集まる部屋に私が単身で行った意味は・・・
ガラガラ
「失礼します。」
「・・・戦車道部の・・・新部長のオットーだね。」
「はい。」
「自己紹介をしておくよ。生徒会長新田だ。まぁ知ってると思うけどね。・・・なんのようだい?言っておくけど土地はもう無いぞ。」
生徒会役員達は不安そうな顔をしている。
まぁ私のことを知らなければ不安になる。
「違う・・・私は新部長のほむ。池田ほむ。生徒会の改革に協力したい。」
「なに?」
生徒会室にいた役員全員が私のことを改めて見る。
「池田くんは・・・カチューシャくんが怖くないのかね?」
「怖くない。カチューシャ様は天才、そしてカリスマがある。しかし、カリスマは勝つことにより生み出していた。革命から始まり、補佐をしていたノンナ様やクラーラ様、他の先輩方の力をうまく吸い上げて優勝に導いた。・・・が、それが西住の次女に負けたことによって若干揺らいだ。・・・ノンナ様、クラーラ様から事務の権限は完全に引き継がれている。何に使おうと自由。」
「反発が凄そうじゃないですかね?」
小鳥と書かれたネームプレートの横に書記補佐と記された先輩は問題点を指摘する。
「戦車道部の部員が移動込みの3日間プラウダから離れる時がある。その時に行えばいい。校長、副校長には手回しして許可は出てる。」
校長は
「えぇよ。」
と即答だった。
熊さんがこだわっているのは生徒の自律性であって、その方向性がどのようになってもそれはそれで生徒の成長に繋がると考えているため賛成してくれた。
カチューシャを支持していたのもカチューシャの革命が生徒が率先した行動として評価したのだ。
「お前、大会で俺の話聞いてたか?」
「聞いてた。だからする。・・・総力戦にするにはその下の段階が必要。基礎がないのにそんなことしたら反発で学校が終わる。でも短期間なら全ての権力を集めることは可能。」
「まぁ見といてやるよ。」
「ありがとう。」
「手始めに第三演習場、校舎の1フロアを生徒会に戻す。それで部活をできるだけ多く復活させて欲しい。パソコン部と社会部(歴史系)、囲碁将棋部、報道部は欲しい。あとはスポーツを沢山。」
「ちょっとまて、ちひろ。」
「はい。創部するのは可能ですが予算が・・・。」
「ん、戦車道部の砲弾代8割、住居修復費を今年度から7割、新規戦車費は10割削っていい。」
「「「はぁ!?」」」
「正気!?あなたは戦車道部の部長なのよ!!」
緑色の守銭奴の別名を持つ千川ちひろ会計補佐・・・彼女はプラウダの少ない財源を効率的に回すことで財政を必死に動かす鬼才であり、私は戦車道部の財源を握っているので把握しているが、生徒会費の限り有る財源まで使って治安維持費に当てていた。
生徒の不満が爆発しないように。
それが監視社会となり、さらに財源悪化の悪循環にもなっているが。
「風呂敷を広げるのは得意。そしてそれを実現するのも。・・・優勝確実だった黒森峰の10連覇阻止・・・裏でどれだけ情報を漁ったことか。・・・黒森峰、継続、サンダース、BC自由、マジノ・・・情報網はあるし、黒森峰以外の戦力拮抗状態にしたのは私。メリットはプラウダの人気が上がる。人が集まれば注目される。注目さればその競技に寄付金が集まる。寄付金をどこに使うかは生徒会のサインが必要。中抜きしてそれを老朽化した施設の改築、娯楽施設を作れば更に人気が出る。施設を建築するからプラウダの金が回る。娯楽施設に部活を当てれば予算カットにもなる。」
「凄いな。カチューシャを越えてる。」
「私は遠くしか見えないし、広げられる手はとてつもなく小さい。道は示すから手伝って。リベラル改革の為に。」
「ふははは!!面白くなってきたじゃないか。」
ドサ
「こちらから誠意を見せる。」
2500万円の札束が置かれた。
これはプラウダのあちこちに転がっていたガラクタ(使えない戦車)を修理して売り払った金である。
知っているのはノンナとクラーラしかいない金である。
「誠意、受け取った。忙しくなるぞ!!」
その日、生徒会選挙の停止が校長権限で決定する。
「選挙なんてやってる暇ないぞ。」
カリカリ
「練習所は更に削る。練習はシミュレーターを使う。ゲームと連動させて模擬弾を装填するだけでゲーム内でも装填される仕組み、車内をイメージするための仕組みもしないと・・・実弾演習なんて1ヶ月に1回でいい。」
ほむの頭の中では新しい練習方法が浮かんでいた。
その為にスポーツ系専門な調理部が必要であり、シミュレーターはパソコン部が必要なのだ。
「どんな部活も無駄はない。」
薄れ始めた前世の記憶に残っていた部活である。
運動部16種、文化部35種と在学していたマンモス高校時代から引っ張り出してきた。
「ただ・・・整備科だけは独立させない。私が戦車道部の部長がやれなくなる。」
こういう内部の改革は上手いほむだった。
「ん?なんかかわいそうなのがいる気がした。」
「姉さんどうしたんすか?」
アンツィオの財政を支えつつ、P-40を揃える資金を稼ぎあげたアンチョビの内政能力は天才的であり、やはりほむは秀才の域を出れない。
「KV-1S買ったけど・・・乗員がいない。」
もう1人の凡人こと安部菜々は凡ミスをしていた・・・
「・・・プラウダ高校から引退する選手を引っ張らせてもらおう。」