冬休みに入ると私は戦車の訓練をさせてもらえなくなった。
久しぶりに自分の部屋で寝て、起きた。
私は自室に置いてある戦車の本を読みながら今後を考える。
(恐らくこの家から追い出されるだろう。・・・仕方ない。・・・ならそっちが帰ってきてくださいと土下座させるくらいの何かを手に入れたいね。・・・さて、どうするか。)
ペラペラページを捲る。
(なぜかある前世の記憶によると、私が高校2年にプロリーグができるらしい。世界大会はもう有るのに・・・。プロの殲滅戦は前世の戦車ゲームの遭遇戦の時の戦術が生かせる。・・・自分なりに考えておこう。)
ページはソ連軍の戦車の場所だった。
元旦・・・一般的な家庭ではおせちを食べたり、正月特番を見たり、笑点を見たりするらしいが、私の家では違う。
一番上の姉として、お母様の次の家元が私であると言う自覚から、この元旦にある親族や地域支部クラス師範の報告会に参加しなければならなかった。
今回は妹のみほも居るから少しは気持ちが楽だ。
・・・ほむはいないか。
「関東は西住流入門者が年々増加の傾向があり、千葉に大規模な練習場を建造しております。自衛隊や民間のサバイバルクラブ等に貸し出して元をとる予定です。」
「この場において西住流吉田家師範に着くことを家元に宣言します。」
ピリピリとした空気の中、最後に家元であるお婆様が口を開く。
「入って参れ。」
スーーーーパン
襖が開く。
(なぜそこから出てくる!!ほむ!!)
「この度私西住ほむは西住流継承者としての資質がないことから西住を名乗るに値しないと家元から言い渡されたため、今日をもちまして西住ではなく父方の池田に名字を変更し、この家から出ていくことになりました。・・・以上。」
「と、言うことだ。西住に弱者は必要なし。」
「ま、待ってくださいお婆様!!いくらなんでもそれは・・・」
「まほ、お主・・・何を言っておる?ほむも理解してのことだ。」
「この場の皆様に迷惑をかけるので私とお姉様達は退席します。ご無礼をお許しください。」
「ほむ・・・私、ほむが居なくなるなんてしらなかったよ。」
「そうだ。私にもみほにも言わないなんて。」
「私には西住でやっていける才能がない。だから私が必要な技術を身に付けるために家を出る。」
「で、でも。」
「まほは大学で、みほは高校で戦いたいと思う。それまで私は西住を捨てる。」
「それで本当に良いのか?」
「良い。私は揺らがない。」
(・・・高校、大学と言ったけど、この2人に車長として私が勝てる可能性は皆無。・・・最終的に何かしらで勝利すれば良い。)
「よく来たね。」
「久しぶりだなー。」
「今日からよろしく。」
「お袋、親父、ほむを頼む。」
「わかったんだなー。立派に育てるんだなー。」
「任せんしゃい。新潟まで来たんだからゆっくりしていけば良いのに。」
「こっちも色々あるからね。・・・ほむ、お母さんも本当はほむを家に住ませてあげたかったんだよ。」
「わかってる。不器用だけど愛情は感じていた。」
「そうか・・・お母さんに手紙をたまにで良いから送ってあげてくれ。」
「わかった。またね。お父さん。」
「(お父様と言わないか。自分の境遇をしっかり理解しているんだ。この子は。)またな。ほむ。」
「・・・帰りましたね。」
「そうだなー。」
「ほむ、ほむは何かやりたいことは有るかい?小学校も変わるからここで何かしら興味が有ることをしなさい。」
「そうだなー。」
「お爺様に頼みが有ります。」
「ん?」
「私に戦車の整備、塗装、改造を教えてください。お願いします。」
凡人の私は凡人らしく今は裏に徹する。
池田ほむ。
小学1年の冬から彼女の人生は始まる。