「・・・は?」
「その反応が普通。」
「いやいやまてまて、何で西住を倒すことになるんだ?池田に名字を変えたといって西住本家であることはかわらないぞ。」
「それじゃ楽しくない。」
「ほむ、何か辛いことがあったのか?」
「辛いと言えば今の現状が辛い。西住は戦車道の才能が無ければあまりに辛い。それを覆す前例・・・いや、弱者救済をしなければいけない。」
「ほ・・・む?」
「私のことを馬鹿にした才能が飛び抜けていても勝てないことを思い知らせたい。」
口調が変わる。
ほむは忙しくて忘れかけていた前世の記憶を思い出す。
その中にはガルパンのアニメや映画の記憶も含まれていた。
「私は馬鹿だ。とんでもないキチガイだ!!そんな言語障害の私でも意地がある。母としてのしほさんには感謝しているが、西住家元としてのしほさんには軽蔑しかない。倒す。まほ姉様、みほ姉様共々、分家も島田も・・・。」
まほの目には妹が狂ってしまったと思えたが、ほむはどんどん冷静になっていった。
(・・・苦難が続くけれど・・・ここさえ乗り越えれば凡人から脱却できる。)
さらに記憶が蘇るにつれて気になったことがあった。
(身体能力・・・あれ?)
今思えばおかしい。
野球を観たとき、フェンスの距離が180メートルが普通だったり、サッカー場が2回りくらい大きかったり、バドミントンのネットの高さが20センチ高かったり・・・前世以上にこの世界の人は丈夫なのだろう。
つまり、私の体がいくら鍛えても上達しないのではなく、この世界の人は成長速度が速いし、成長限界も見えてこないのは世界の理が違うのだ。
「長く話しすぎた。帰る。」
「あ、ああ。」
これで高校の間はとりあえず敵対できるだろう。
やれやれ、甘い姉だよ。
本当に・・・。
「天才は余裕があって羨ましいよ。」
凡人は黒森峰の停泊している港で呟いた。
その背中はとても小さかった。
西住、池田ほむは評価が極端に別れる。
西住本家では祖母以外は申し訳ない思いや、罪悪感だが、家元である祖母は違う。
「無能は百害あって一利無し。」
祖母も辛い思いをしてきた。
祖母の母が西住の基礎を創ったため、若い頃は評価が低く、評価されたのは自分より世渡りが上手い人物ばかり。
それは西住を強めるには有効だったが、乗っ取りの恐怖に駈られた祖母は親族を巻き込み、血縁関係を整理し、外部の野心溢れる者を弾き出し、使える者も飼い殺しにしてきた。
そのため自分の孫でも無能は使う価値無しと冷徹であった。
この性格が災いするのはもう少し後のことである。