業火なる聖杯。水流なる業火。芽生える緑地。皇后たる閃光。閃黒なる黒月。
天野彗星、迸る采配の紀伝。小郷たる狂乱灯。
死を持って司る大儀なる剛健よ。
死してなお運命を付き従うものに鉄槌を。
俺は今、ニュースを見て驚いている。
俺の隣に座る可愛い女のコ達は、興味無さげに食事の手を動かしながら見ているが、君たち何でそんなにも落ち着いてられるの?
『ーーー今日未明、世界に数十人と居ない男性が、殆どを残してバス事故にあい、乗客員全員死亡。乗車していた男性の数は、6人だそうです』
…………はいぃ!?なんですとぉ!?
『これによって、今この世界に存在する男性は、日本に住む4人だけとなってしまいました。政府は、更なる男性の保護法を見積もっていくようです』
マジか………。
こりゃ死んだ奴乙でーす、とか言ってる場合じゃないな。
やべぇよ。今から俺絶滅危惧種になったよ。
マジリスペクトだわ………。絶滅危惧種の動物達は、こんな緊張感持ってたんだね。俺押しつぶされそうなの……。
「あ、お兄ちゃん、ラーメン冷めちゃうよ。早く食べなきゃ」
「そうそう。そんなニュース見るより、私達とおしゃべりしようぜ」
今日の俺のお隣席に座るのは、奈々美とツーサイドアップのショートヘアの黒髪ちゃんである、凛ちゃんだ。
凛ちゃんは人懐っこくて、しかも俺の面倒を見ようといつも張り切っている。
まぁ、そこがめちゃくちゃ可愛いんですけどね。
「えっ、あっ、うん。ごめん………。なんか今から俺絶滅危惧種になっちまったわ」
軽い口調で周りを乗らせようとする。
しかし、奈々美は「何言ってんだかこいつ」とか言いたげな目で俺を見てきた。
「ーーー涼夜さん、今更絶滅危惧種とか何言っちゃってるんですか?」
と、奈々美がいうかと思えば、朝からお仕置きという名の愛ある営みをしてきた響が答えた。
「ちょっと待って響。いつから俺絶滅危惧種になったの?まだ男居たからまだ絶滅危惧種に決まってたわけじゃないんだけど……」
まぁ准絶滅危惧種って言ったところかな。
絶滅危惧種って付いてるけど。
「ちょっとちょっと。それはアンタ可笑しいわ」
と、頭をタオルでゴシゴシしながらリビングに入ってきたのは、自称帰国子女のイリアだ。金髪で、どこぞのギャルかって言いたかったのは内緒な。今はシャツ1枚とパンツ1枚で過ごしている。しかも、若干まだ濡れてるから、シャツが身体にピッタリとくっついてる。エロい。エロ過ぎる!!
「どういう意味だ?」
「ーーー私達は、貴方という存在が絶滅危惧種だということを言いたいのですよ」
と、イリアの後ろから出てきたのは、肌けた着物をイヤらしく着こなした、高校生とは見えない程の色香を持つ黒髪美少女の、奏美がいた。これもまたうなじに沿って流れる水滴が、色香を醸し出してまぁエロいったら無いわ!!
「俺っていう存在?そりゃ、俺は1人しかいない訳だし、絶滅危惧種ってことも分かるけど。それは他の男も一緒じゃね?」
「正直いってさ、私達って他の男とかどーでもいいのよ。この世界に、アンタと私達が居ればそれでいいと思ってるの」
「私達は、貴方に救われた。これは返しきれる様な物じゃない。一生私の人生をつぎ込んでも届かないほどの恩」
「私利私欲のために私達を使うとか最初は思ってたけど、まさか私達に学校まで通わせて、自分達の帰る場所を作ってくれて、家族になってくれた涼夜には本当に感謝してるんだ」
「あのね、お兄ちゃん。私達は、お兄ちゃんとこれからもずっと一緒にいればそれでいいの。だから、お兄ちゃんは絶滅危惧種。私達にとっての、黒崎涼夜としてのお兄ちゃんは世界にたった一人しかいない」
「だから、涼夜さん。どうか私達を捨てないでください。早く働けるようになって、涼夜さんを養いたいの。…………何なら、欲望を吐き出すための性処理道具として一生ザーメン塗れになってもいいんだけどね」
「こら、響。変な事言わない」
「…………お前ら、何でそこまで言ってくれるんだ?」
正直よく分からん。
何でここまで執着心を持ってくれたのか全く分からん。
何となく政府の人にここで孤児院的なことをしたいから金くれって言って、商店街の人とかと交流して、ちょくちょくこまこまとお金を貯金したり家事したりと色々してきただけなんだけど。
何でここまで好かれるん?
「決まってるじゃない。今ここにいない子達も、きっとそう思ってるわ」
ーーーーーー『貴方を、世界一愛しているから』
何故か、俺の心にその言葉が響いた。
それは、俺が少年時代に受けたかったモノだったかもしれない。
自然と、頬を熱い何かが伝った。
『ーーーそれで?涼夜様の方はどうなのですか?』
「あ〜…………まぁ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
『いえいえ、これも許嫁として、貴方の伴侶となる者の務めでございます。今はニュースで報道されている通り、外国の男は亡くなりましたが、私は彼らと少しばかり接触してしまいました』
若干俺の眉がピクッと動く。
まさか手を出されたなんて事はないよ………な?
「ええ、もちろん身体を許す気はありませんわ。あんなにも女を使い勝手にしてる男に許すわけありません。私は貴方に初めてを捧ぐと約束した身です。例え貴方が毎日のように何処かの女性とやっていようとも、私の初めては奪わせませんわ」
「そ、それは良かったけど……なんか怒ってない?」
『いいえ、怒っておりませんわ。むしろ浮気はなさらないようにと強い視線を送っているだけなのですから』
「ア、ハイソウデスカ」
俺と今会話してるのは、俺の許嫁の1人である、黒菜(クロメ)だ。
今はアメリカで仕事をしているが、今度転勤することになって、日本の超一流会社の秘書に選ばれたとか何とか。
今は久しぶりに時間が出来た許嫁の1人と他愛もない会話をしているだけだ。
『他の許嫁の方とは会いましたか?』
「いや、怜悧(れいり)も風海(かざみ)もアリアも洋梨(ような)も会ってないけど、まだ元気かね?俺以外の男に食われてそうだな」
『全く、涼夜様は考えなしですね。あの4人が男に捕まるとでも思っているのでしょうか?あの4人は本物ですからね、武術の』
「あ、ああ、そうだな」
フゥッ、あの事を思い出すと、ついつい背筋が凍っちまう。
まぁそんだけ怖かったってことだな。
『あ、申し訳ありません。ただ今仕事が入ったもので。また後日にお会いしましょう』
「おう、分かったよ。じゃあまたな」
『ああ、久しぶりに会話できて嬉しかったですわ。また、今度はご自宅にお邪魔させていただきます』
俺はケータイの通話を切った。
さぁ、これからどうなってくのやらと、密かに神頼みで明日の朝を迎えるのだった。
眠…………。