白狼の、幻想行脚。   作:ほすほらす
次の話 >>

1 / 3
もみもみ、幻想郷を、ぶらぶら。させたかっただけです。


第壱話:山を去る。

「聞きましたよ、椛ぃ。」

 椛が自室の整理をしていると、有難くない、聞き慣れた声がした。

「おや、どうも、射命丸様。」

 椛が、お前に構っている暇はないといった、何時も通りの感じで雑に返事をすると、彼女はそれに構わずにずかずかと部屋に上がって来た。

「だーいぶ、派手に暴れたそうですね。」

 彼女は山でも指折りの情報通だ。先日、椛が()()鴉天狗に売られた喧嘩を()()()()に買って、()()()()に痛めつけた事も、彼女の耳には届いている事だろう。

「正しいと感じた事を、行ったまでです。」
「そんな事だから、いつまでも下っ端なんですよ。」

 何時も通りの、お小言に、何時も通りの返答。

「そうですね。」

 そして、何時も通りの質問が椛に投げ掛けられる。

「で、今回は何週間なんですか?」


 その返答だけは、何時もと、違った。




「追放ですよ。」




 空気が静止したような、沈黙。


「…え?」
「ですから、追放ですよ。」
「…此処から?」
「他に何処からです?」

 文は、二、三瞬きをした。

「……またまたまたまたぁ。」

 文が、何時ものように、戯けてみせた。

「そんな冗談、私には通じませんよ?」

 椛は、一瞥もくれる事無く、何時も通りに返答して、荷造りをてきぱきと進めていく。

「…え、本当なんです?」
「えぇ。」

 そこでようやく一瞥をくれると、射命丸様もこんな顔をするのだな、と椛が感じる程に、文が混乱している様が窺えた。

「ちょちょちょちょ、えっ?」
「では、支度は済みましたので。」

 もともと殺風景すぎると噂になるほど物品の少ない椛の部屋には、もう、何も残っていなかった。

「今迄、御世話になりました。」

 椛はぺこり、と浅く御辞儀を済ませると、草鞋を履いて文のもとを後にした。

「……嘘だぁ。」

 そう、呟くのが、文の精一杯だった。









「おーい!」

 山から下る道の途上、椛を引き留める声がした。馴染みの将棋相手の声だった。

「やぁ、にとり。」
「やぁ、じゃないさ!」

 彼女もどこかで噂を耳にしたのだろう、とんでもなくたまげた、という顔をして椛に食って掛かる。

「あんた、なにやってんの!?」
「なに、いつも通りだったよ。」
「いつも通りで、なんで追放されるのさっ!?」
「知らんよ、偉い御仁に聞いてくれ。」

 椛は、何時ものように無機質な返事をした。たまらず、にとりは半分怒りを混ぜて問いただした。

「ていうか、なんでそんなに呑気なのっ。」

 ふぅ、と安堵に近い息をついて、椛は答えた。

「久方ぶりの自由の身だ。」

 にとりの喉から、ひとの気持ちも知らないで、と出かけて、ぐっと押し殺す。

「…この馬鹿狗っ。」
「何とでも言ってくれ。」

「あぁ、そうだ。」

 椛は、なにか思い出したらしかった。にとりに向き直ると、口を動かした。

「この前の勝負、まだ指しかけだったな。」

 にとりは、何も、返事をする事が出来なかった。

「すまんな。」

 なぜ、こうも、何時も通りなのか。にとりには、それを理解出来なかった。だから、表現不可能な感情を、怒りに換えた。

「…もうっ、知らない!」

 大きな緑色の背嚢が遠ざかっていくのを見ながら、椛は大きく溜息を吐いた。











こんな感じでゆるく、おそく、やっていく予定です、どうぞよろしくお願いします。

感想とか、頂けると、とても喜びます。どうぞよろしくお願いします。