チートによる自動股 作:さよならデータさん
「おやっ? これは━━━水?」
その日、空から落ちてきた水滴にパスカルは疑問を浮かべながら上を見上げた。
いったいどういうことだろうか?
見上げた先には今まで見たことがなかった雨雲が空を覆い、大量の雨水を降らせていた。
何かあっては大変だと急遽、見張りに雨具を、自分たちは家の中に避難する。
そう、これは間違いなく【人為的】に行われた現象だ。
そもそもここでは地軸のズレにより基本的に夜が訪れることもないし、天気が変わることもほとんどない。
そして、これを自分たち機械生命体が起こしたとは考えられない。
ましてやアンドロイドの人達には━━━。
だとするならばこれを起こしたのは人間さん、ということになる。
だがいったい何の為だろうか?
そう考えている内に何かが空を切り裂いて堕ちてきた。
流星とは違う、機械生命体ともアンドロイドとも違う人間さんの造り出した【巨大な船】が。
▽
「まさかの大当たり、真実が彼方から転がり込んでくるとは━━━」
助けてもらって何だが少し拍子抜けである。
しかし、やはり人類は絶滅していた。
この事実に衝撃は隠せなかった。
塩の柱になって崩れる病、聞いた覚えも見た覚えもあるような感じだ。
大分前の惑星探査で何度か同じものにあった記憶がある。
多分、どれか近しい現象がデータベースにあるだろうが今調べに戻るのも少々面倒だ。
「……雨?」
落ちてきた水滴を眺めながらふとこれと同じ降下用のパッケージがあったのを思い出した。
案の定、レーダーを確認するがどれもノイズが走り始めている。
雨雲を発生させると同時にあらゆる観測機に干渉させるチャフや粒子を広範囲に撒き散らすこのレインパッケージ、本来はエネルギー兵器に対する煙幕に近い兵装何だがこの星ならば相当有効だと思う。
基本的にこの星では近接兵装やミサイル以外はほとんどエネルギー兵器らしく、このパッケージのお陰でまともに運用は出来ないだろう。
これならばこの視認性の悪さもあって発見率も下がる。
━━━のだが、
少しして降下してきた武装輸送船を見て溜め息をついた。
おそらくは目視による自分の現在地、現在状況を確認する為に来たんだろうが、
「いくらなんでも大袈裟だろうに━━━」
輸送船から青いスキャナー光が辺りをサーチし、此方にポッドを射出した。
射出されたポッドはそのまま慣性によってこちらに落ちてくるとホバリングを初めて、緩やかに降下していく。
それにすかさずデータリンクを開始し、パワーアーマーやスーツ、ストレージを交換して観測ポッドとしての設定をした。
もしかしたら壊れただろう一番目の観測ポッドの代わりになることを期待しながら姉妹のアンドロイドを背負い、パスカルの村へと向かう。
あの二勢力がこの豪雨となった砂漠で自分たちを見つけることは無理に近いが一応は警戒しておく。
さて、これからどうするかな?
姉妹の中の情報にあった人類滅亡のデータの裏取り、機械生命体の製作者の探索、アンドロイド達の言う嘘と月にいる人類を語るなにか。
機械生命体のネットワークも怪しすぎる。
こういうのは大抵、上位のAIか個体に支配されているのが落ちだ。
「……っと、言ってる側からか」
幼い少年と女性、機械音声が先の道でそれぞれ聞こえてくる。
光学迷彩を貼ろうにも豪雨の中だし、何より新しいスーツのセッティングはまだ途中だ。
後、二、三分だがどうにも避けきれそうにない。
姉妹もストレージに格納してはセッティングが止まってしまうだろうし。
「まぁ、会ってみるか。
最悪戦闘でもいいし」
前回とは違う、より戦闘に最適化した新型スーツ。
あらゆるグレードも前回の物とは比べ物にならない多目的用の最新型。
もう負けるわけにはいかない。
ただただ前へ、退くことだけはしない。
そして、━━━そこで二人のアンドロイドと出会った。
▽
「貴方は……」
その機会は唐突に訪れた。砂漠地帯に落ちた衛星兵器の攻撃理由の調査、【人間さん】に何かあったのかもしれないと近辺を移動していた私達はその緊急要請を受諾し、同時にそれを調べにきた機械生命体と交戦した。
何かあるとは確信していた、そしてこの攻撃がその人間さんによるものだとも。
だから、唐突な出会いとはいえ、これは必然、運命だったのだと頭の片隅でどこか感じていたのだ。
知らない筈のない、ずっと探していた人物。
だが、そんな彼からは思いもしない言葉が返ってきた。
「よりにもよってヨルハとは―――」
ツいてないな―――そんな台詞を聞いて私たちは胸が苦しめられる様に感じた。
否定されている、それがどうしようもなくただただ辛い。
「そ、その、何か僕たちに出来ることはありませんか!?」
その険悪になっていく雰囲気に堪えられなくなったのだろう9Sがすこし大きな声で彼に尋ねた。
私も気持ちは分かる、話すたびに彼からは猜疑心と嫌悪感の様なものが私達に、ヨルハ部隊に向けられているのが苦しいのだ。
私達は貴方の力になれる、私達は人類の味方だと証明しなくてはならない。
6Oの言葉を思い出す、人類は私達アンドロイドと機械生命体の区別がつかないのだと―――。
だからこそ、証明しなくてはならないのだ。
「―――9S!]
話すのに夢中な9Sに注意を促して武装を展開する。
それに数瞬遅れて機械生命体が砂地から飛び出してくる。
「アンドロイドダ!コロセー!!」
物騒な機械音声と共に襲い掛かってきた奴らは直ぐ様私達で鉄屑へと変えた。
この人には触れさせない、必ず守り通してみせる。
「僕たちの後ろへ!」
9Sが声をあげると同時に私が斬りかかる、人類を守っているという高揚感が私達を支配する。
機械生命体が全滅するのにあまり時間はかからなかった。
だけどもそれを警戒しながら眺めていた人間さんはこちらに何もいっては来ない。
言い知れぬ不安が私達を蝕んでいる時それは来た。
「あのー、もしかしてなんですけど貴方は人間さんだったりしませんか?」
破壊した機械生命体から転がりだした不気味な形をした球形の存在。
それは自身をエミールと名乗った。
▽
それはある意味必然だったのかも知れない。
あれだけの子機がいたのだ、まだあるには違いないと思っていたがまさか機械生命体の中から出てくるとは思わなんだ。
これは幼体だったりするのか?もしくは機械生命体に寄生して成長する第3種なのか?もしくは羽化した機械生命体の新種、進化種なのか?
謎が更に謎を呼んでしまった、人類が造り出したカウンター的な敵性種なのか。
ましてや側に置いたとして成長すれば襲い掛かって来るのではないか?
だが、
(少なくともアンドロイドの味方ではない、か……)
見れば先程名乗りをあげたヨルハ機体達があの不気味な悪趣味の顔面、【エミール】を警戒している。
勿論俺自身もだ。
なんせこいつの親玉?に撃たれて死にかけたのだ、あまり冷静には対処出来ないかもしれない。
「そうだとしたらなんなんだ、何か用か」
自分でも思うくらいに少し冷たい声をかけてしまっているが仕方ないとは思う、なのにそんなに気にしていないのか彼?は元気よく此方に返答してくる。
「やっぱりそうなんですね!!うわー、僕初めて人間さんに会いましたよ!!
人類は絶滅していなかったんですね!!」
などと宣ったのだ。
「2B! やっぱり壊しましょう、コイツ絶対新種の機械生命体ですよ!」
こんなことを言うもんだから只でさえ怪しんでいたアンドロイド側の不快指数が振り切れてキレてしまっていた。
「同感、人間さんには下がって欲しい」
武器を構えて、俺を下がらせようとする二人を俺は逆にデポル、ポポルを預けて逆に問う。
お前は何故そんな事を知っているのかと―――。
その問いにエミールはこう投げ返した。
「うーん、ごめんなさい。なんだか思い出せないんです。
そもそもなんで僕はここにいるんでしょうか?」
―――マジかよ、今時記憶喪失なんて流行らないぞ。
▽
その後は紆余曲折ありはしたが結局、ヨルハ機体の言葉に堪えられなくなったのだろうエミールは泣き出して土煙をあげながら走り?去ってしまった。
貴重な情報源であったのにこの2人は―――。
ともかくこうしていても仕方がない、敵の増援や余計なイベントが始まる前に俺は2人の提案により、通称キャンプと呼ばれるアンドロイド達の集落へと移動日することになった。
しかし、ポッドの言葉を聞くにあのエミールは不可思議生命体と呼称されているとこを見るとやはりあのエミールは更なる謎を解く鍵になるのは間違いない、この星には何かがある。
恐らく機械生命体、アンドロイドの知らない何かが―――。
どこか思い出せぬ即知と見知らぬ未知に揺らぎながら、私はどこかでこの事象に興奮と、哀愁を感じていた。
▽
しかしなんでヨルハの機体だけ機械生命体のコアを再利用してるんだ?
例の二人をそのまま自分で持ち替えてようやっと会話してくれた人間さんにそう問われた時、僕たちはその場で固まってしまった。
人間さんは知らなかったのか、と僕たちに再び問いかける。
そんな筈はない、僕たちのブラックボックスがそんなもので出来ているなんてあり得ない。
「そんな筈ありませんよ、僕たちはアンドロイドでヨルハ部隊の一員なんですよ?それがあんな奴らの部品を使用しているなんて―――」
「いや、思えばなんでそんなに嫌がってるんだ?」
人間さんはそれを不思議そうに首をかしげる。
そんな行動に僕たちどこか傷ついていた。
そんな中、人間さんは言葉を続けていく。
「戦争しているんだろう?だったら尚更だろうよ、戦えば戦う程に武器やパーツは磨耗していく、ならどこかでその物資は抑えなくてはいけない。なら―――」
敵と味方の物資が少しでも使えるように共通化していくのが自然だろうよ。
例えば弾薬、弾がなくなれば撃てない。だが目の前に敵の弾薬があってそれが撃てるなら?
例えばネジ、廃棄された車両から回収して戦地で部品取りが出来たなら?
「そうやってどんどん効率化してより良く殺していく、それが戦争ってもんだろう」
そうして替えの部品、替えのないものがなくなるまで戦い続ける。
虚しくならないのかお前達は?
そう、問いかけられて僕たちは言葉を返せなかった。
キャンプへとたどり着くまで僕たちは無言でただひたすらに歩くしかなかった。
何処までこの戦いは続くのか、終わった後はどうするのか、そして―――どうしてブラックボックスに機械生命体のコアが使われているのか。
僕たちは、ヨルハとは?
そんな無言で自問自答を繰り返す僕を悲しい目で見る2Bに僕は終始、気付けなかった。
それを鋭い目で観察していた人間さん以外は―――。
こんな作品に今も感想くれるかたに感謝を―――。
ありがとう、そして失踪するかもしれませんが宜しくお願いします。
「あの、その二人ってデポルさんとポポルさんで合ってますか?」
何処か困惑したように尋ねてきた9Sにどこか苦虫を噛み潰した表情で(人間さんってこんな表情をするんだなと感心しながらその表情を見ていた)説明してきた。
曰く彼女らは自分の恩人なのだと、そしてこのままだと二人は助からないから持っていた義体に移し替えたのだと。
「えっと、どういう機能がついた義体何ですか、僕人間さんが創った義体に興味があるんですよ!」
そんなことを聞いた僕に人間さんはただ一言返した。
「エロガキめ―――」
「えっ、エロガキ……」
何故そんな事を言われたのか全く分からないままに彼等はキャンプを目指す、エロガキと言われてショックを受けた9Sとその言葉に首を傾げながら着いていく2B、そんな一行に担がれてもうすぐ目覚める双子の姉妹。
奇妙なメンバーは遂にキャンプへとたどり着く、判明する生きた卵子、丁度良くいる男性、今こそ人類最高の時は始まる。
次回【さきっちょ、さきっちょだけですから!】
人間さんに変態アンドロイド6Oの魔の手が迫る!
嘘です。