チートによる自動股 作:さよならデータさん
陽射しの明るさに目が覚めた。
この星に降下して2日も経つ。
唐突ではあるが自分は転生者とよばれる人種である。
よくある大型運搬車に撥ねられ、気がつけば新しい世界に生誕していた。
恵んでもらった能力はもうほとんど覚えていないが確か知能系や資源関係、そして住む環境に関してだったと思う。
生まれた当時から天才児と持て囃され、大規模な技術発展、ブレイクスルーといった貢献を果たしてきた。
二次元や空想でしか実現しなかった機械の友人『アンドロイド』。
それを発展させ、人型機動兵器の開発や自動人形に発展型AI、原子変換器、外宇宙航行艦といった様々な物まで開発、改良した。
━━━自慢話はキリがないのでここまでにしてなんやかんやでそこまで作った自分は狭くなったと感じた地球からでて星から星へと続く長い大航海を始めたのだった。
あっ、ここで終わりじゃないよ。
真面目に話すのはこの辺にしてさっきの特典の話になっちゃうけども住む環境ってとこ。
いわゆるクロスオーバーっていうか多重世界ってやつなんだけどこれがまた厄介なんだかスゴいんだか半々で他の世界に行くなら平行世界を移動する手段が必要なんだけど自分の場合、そうじゃなくてそういった世界が銀河系、惑星として多様に存在している。
つまりこうやって移動することでその世界を堪能できるんだ。
ビバッ、ファンタジー、転生特典ってな感じでね。
まぁ、何故か自分たちが来たときに決まったようにイベント始まったりすることが多いけどそこら辺は気にしない。
気にしたってしょうがないしね。
とにかくそんな感じで色々とありながら(その星に定住したり、自殺や異星人とかと戦って死んだり、新しい船を製造して別の軌道に別れたり)はや1万年くらい。
寿命すらも克服し、新しい旅を続けた我が艦隊は数だけはあるもののもはや乗艦している人間は自分一人であった。
自身の自我もそろそろ自死を考えた矢先に唐突に、それは起こった。
最初は艦隊の長距離ワープが失敗したと副官の自動人形が報告に来たときからだ。
「ワープポイントがずれた?」
「はい、現在規定ルートから外れ別の軌道を進んでいます」
なんでもワープの際に何かに引かれるように転移先がずれたらしい。
なんらかの機材の不具合だろうかと考えて修復指示をだそうとし、副官がポツリと呟いた言葉に塗り潰された。
それと少し先の宙域に地球型惑星を発見しました。
その言葉とともに先程の思考を振り切り、降下準備並びに高度ステルス航行に移すように指示を行う。
交渉するかはその文明の発展度合いによるが暫く暇は潰せるだろう。
そう思った。いつもの様に変わらない、普通の滞在になるだろうと。
「探査ポット射出」
「映像動機します」
「広域スキャン開始、宙域に人工物あり。
建造物のようです」
「大気圏突入、落下地点誘導します」
「謎の機動兵器による迎撃を確認、同時に魔力反応確認! 大型兵器による高エネルギーの迎撃!」
「エネルギー障壁展開! 探査ポット健在、落下地点の大幅なズレが発生、修正を開始!」
「地点確認、落下地点は砂漠になる模様」
はっ?えっ?
「探索、降下に設定した場所は?」
「恐らく日本だと思われます」
副官の言葉に息を飲んだ。迎撃を受けたのは仕方ない。
無理矢理アポイントもとらず押し掛けた此方が悪い、何より不法侵入だ。
撃たれて当たり前である、しかし━━━
何故日本に砂漠があるのか。
今まで来た惑星で毎回なんらかの特異点だったりしたが砂漠は初めてである。
「環境破壊でも進んでるのか? ポットの映像を此方に回せ!」
後からのんびり遊ぶ算段を付けて降りる筈がまさかの事態である。
何があったと思わず大声を出してしまいそうなほどに。
そして確認すればする程にその異常さが増してくる。
「なに、あのメカ沢みたいなの」
「どうやらこの星を支配している生態系の頂点に機械兵器が君臨しているようですね」
「ちょっ、人類負けちゃってるよ。機械に文明乗っ取られてるとか以前に生存競争に負けちゃってるよ!?」
で、肝心の人類は何処にいるんだろうか?
「副官、俺達人類は何処にいんの? 生体反応スキャンできたでしょ?」
結果を副官に急かす、自慢話になるが惑星間を軽々と調べられる程に家の解析装置は強い。
神様チートによる高度文明の機器だ。
技術的に基本、圧倒的に他者を引き離している自分たちはどこに行っても負けた試しがない。
ファンタジーや魔法にもだ。
ただしマグロみたいなオカルトは勘弁な、正直死にかけたので。
「お喜びください、マスター。」
副官の自動人形は嬉しそうに笑いながら告げた。
『どうやら貴方がこの星唯一の人類のようです』
それを聞き、無意識に顔を覆った。
多分、この時目が死んでいたと思う。
「今降ろしたポット、マテリアルボディとか生体部品使ってるのしかないみたいなんだけど…」
地球型惑星と聞いて完全に肉の義体を用意して送ってしまった。
完全に盲点、いや、想像つかないでしょ。
星が機械に支配されてるなんて。
「でしたらそうですね、では今回は見送りましょう」
いつもよりも笑顔で副官が話かけてくる、それはもう嬉しそうに。
ついでに、
「次のポットユニットが落ちるのはいつか分かりませんけど」
とわざわざ付け加えて━━━。
溜め息をついた。
どうしてこんな気になる興味の対象を見過ごさねばならないのか。
何故人類はいないのか? 実はまだなんらかの手段で隠れているだけではないか? あのロボット達はいったいなんなのか?
正直自分は我慢強いタイプではない。
こんななにもかも間に合わなかったケースは初めてであり、貴重なサンプルケース。
多少の危険はなんのその、ただでさえ長い航海で磨耗した精神に栄養が、今は刺激が必要だ。
でなければ━━━また余計なことを考えてしまうだろうから…。
そうと決まれば早速指示を出す。
「いや、戦闘型強行偵察ボディユニット生成を始めろ。
現地を調査する、砂漠に入る前に装備とボディを切り離し、別地点に降下だ」
それに俺の意識データをインストールする。
そう言った俺に副官は猛烈に反対した。
「…。危険過ぎます。
次のポットに護衛機を積みますのでそれまで━━━」
「マスター権限による命令だ。正直もう待てない、意識データを転送して現地調査する」
「━━━分かりました、我々もすぐに向かいます。
あまり無茶は為さらないように」
「あいあい、じゃあ出来たら早速やってくれ」
「了解しました、必ず帰ってくるように。
これは私からの忠告です」
それにわかってると答え、データ転送の為に機器を接続した。
願わくば今の退屈さを凌ぐことができればと思って。
━━━絶対に無事の帰還をお願いします━━━
最後にそんな言葉が聞こえた気がした。
▽
とりあえず探査ポットに意識データを移し、高速機動を行いながら地上を目指していた際にふと何かが軌道降下してくるのが見えた。
黒のカラーリングが主体の恐らく戦闘機。
隊長機もいるのか白にカラーリングされた機体が一機共に航行している。
現地の迎撃部隊だろうか?
しかし、
「何あれ、滅茶苦茶かっくいいんですけど」
ブリキ缶みたいなロボットしかないと思って見ればあのようなカッコいい機体があるではないか。
良かった、正直現存する機械が全部あのブリキみたいな奴等ならどうしたものかなと思っていたところである。
「およっ?」
此方のポットに並んだかと思うと一緒に並行して飛び始める。
そしてなんと変形までしたではないか。
一機くらい持ち帰って調べ尽くしたいものだ。
あれっ?よくよく見てみれば人型が機体に繋がっているではないか。
まさかパイロットだろうか?
この状態でどうやって慣性を消して━━━。
アラートと同時に意識を戻して機体を傾ける。
目の前を大量の光弾が横切った。
迂闊だった、このポットは最初の方で地上から迎撃を受けていた。
すっかり観光気分になって忘れているなんて。
更にアラートが追加表示される。
「前方から高エネルギー反応? 挟み撃ちかよ!」
各所のアポジモータ、スラスターユニットにエネルギーシールドを展開する。
「緊急回避後に加速、その後からジャミングとフレアチャフを巻き、ダミーユニットをボディと同時に別地点に射出。
ボディユニットは光学迷彩とステルスジャマー展開して慣性射出。
タイミングは60後!!」
とりあえずはボディユニットの降下を優先させ、可能ならば敵性機体を排除する。
のだが、
「完璧に油断した、降下及び現地調査を優先したせいで一切武装のないポットだとは!
ちくしょー、ここ最近戦闘なんかなかったから油断したぁ〰️」
まさか完璧なまでに装備がないとは思わなかった。
その代わりに防御性能は高いもののただ殴られるだけではいつかやられてしまう。
なにかないかと搭載ユニットを漁る。
「おっ! 電脳戦用ユニットあるじゃんか、これなら!!」
本来は現地文明の情報を抜き取る為のものだが軍事用のものにも使えなくはない。
相手に早速クラッキング、まぁハッキングを開始。
周囲の機体に電脳戦をしかけ、掌握する。
拍子抜けするほどに簡単に決まったがそれは問題ない。
「どうだ、これなら撃てまい!? 仲間がいてはなぁあ!!」
気分は某御大将、敵性機体をポットの前に壁のように配置する。
どうだどうだ、これならば━━━。
「えっ…」
極大の桃色光線が此方に向かってくる。
思わず緊急回避にスラスターを吹かし、戦闘機達を散開させる。
まさか味方ごと撃ってくるとは。
仕方なくこの機体達はやってくる子機の相手をさせ、ボディユニットを降下というより射出させた。
それと同時にハッキングを解除、コントロールを相手に戻して離脱した。
それにしてもおかしい、敵性機体である戦闘機もブリキ缶型の機械に反撃を受けていたような━━━
先程のハッキングで軽く抜き出した情報も軽くでいいから調べる必要があるな。
振動ともに機体が止まる。
漸く着いたのだ、この星の大地に。
そして私は、
「なんだよ、これ…」
もはや跡形もない文明の残骸を、廃墟として崩壊した都市をこの目で見ることになった。
▽
「2B、司令官からの話どう思います?」
目隠しをした少女に少年は問いかける。
彼らはヨルハ部隊のアンドロイド、少年はスキャナーモデルの9S、少女は戦闘モデルの2Bといった名称をつけられている。
彼らは自分たちの司令官からある話を聞かされていた。
降下作戦時に接触したポット。
これがエイリアンたちの増援か新しく生まれた機械生命体、
もしくは全く関係のない第三勢力になるであろう異星人の可能性があるといった話だった。
2Bと呼ばれた少女はその質問に少し考えて、答えた。
「正直に言えば私はそうかもしれないと思っている」
その言葉に9Sは驚きの声を発する。
だが2Bはそれっきり無愛想に返事を返しただけだった。
さほどの抵抗も許されず、ハッキングされ操られた自分たちの義体。
もしこれが、これを行ったのがあの異星人なら…。
そう考えてその思考を払うように頭を振った。
「もしそうなら友好的な異星人だといいんですけどね」
そう楽しそうに言う少年に視線を向けながら、
「調べれば分かること。行くよ、9S」
そう告げて彼女は格納庫へと向かった。
任務の内容は砂漠に落ちたと思われるユニットと機械生命体の調査である。
こうして少女と少年の物語に異物が混じり始めた。
それはあらゆるモノを変える猛毒かそれとも癒しの霊薬なのか、彼等には分からない。
なんか書いてしまった。勢いが暴走したというか全エンディング見た記念というか。
生きた人間放り込みたくなったんだ、スマソ