「のび太、大丈夫か?」
「うん、っ!」
「ケガしたのか!?」
壊れた車の狭い路地裏。
そこに和人とのび太、そしてピッポが避難している。
ギリギリのところで二人はここまで走り飛び込む形で隠れていた。
獣型ロボットたちから死角になっており、気付かれることはなかった。
和人はのび太の腕から血が滲んでいることに気付く。
顔を歪めているのび太にピッポが心配そうに見ていた。
「大丈夫、かすり傷、だから」
「でも」
「ドラえもん達を助けに行かないと」
「なんでだ!?自分が助かったんだからいいじゃないか」
のび太の言葉にピッポが反論する。
「駄目だよ!!」
ピッポにのび太は叫ぶ。
腕を怪我して痛いのに、彼は必死な表情で立ち上がる。
「ドラえもんは友達なんだ。放っておけない!大事な、とても大事な友達なんだ!」
「なんで、助けるんだ?」
「友達だからさ」
「ピッポ」
困惑するピッポに和人が声をかける。
「のび太はこういったら聞かないんだ。だから、逃げるなら今だぞ」
和人の言葉にピッポは昔を思い出す。
メカトピア時代に歌っていたピッポ、しかし、歌は貴族がたしなむためのもの。
奴隷である自分は電磁鞭で半壊まで追い込まれた。
そんな自分を助けてくれたのはリルルだ。
彼女は自分を助けてくれた。その時。
――理由なんかないわ。放っておけなかっただけよ。
彼女の言葉を思い出して。
「仕方ないな!特別に手を貸してやる!」
「え?」
「それって」
「僕の体は裏山なんだろ?取り戻して手を貸してやるから。その間にお前達の仲間を取り返すんだな!」
「ピッポ……」
「ありがとうピッポ!やっぱり、キミは良い奴だ」
「ふ、ふざけるな!自分のためにやるんだ!お前達のためなんかじゃないんだからな!!」
顔を赤らめながらピッポは叫ぶ。
「じゃあ、俺達はドラえもん達のところに」
「ピッポ、無理しないでね」
「うるさい!」
二人と一匹?は別れる。
和人とのび太が向かうのは改造された町内の基地。
そこにドラえもん達がいる。
一人、裏山へやってきたピッポ。
土砂崩れによって半ば土の中に埋もれているザンダクロス。
獣ロボット達は岩などを退かしていく。
悪態をつきながら彼らは除去作業をしていた。
その隙をつくようにピッポはザンダクロスの足から機械の中へ入っていく。
「こいつはもうゴミだな」
「でかいゴミだな!」
「ガハハハハ!」
外から聞こえてくる声にピッポは体を震わせる。
「違う……」
体を震わせながら自らの体をザンダクロスへ接続させる。
「僕はゴミなんかじゃなぁああああああああああい!」
叫びと共に土砂崩れの中からザンダクロスがその体を起こす。
泥などを退かしていた獣型のロボットは慌てて逃げていく。
滅茶苦茶にザンダクロスは周囲へ光線を放つ。
起き上がり、光線を撃ちながら空へ舞い上がる。
ザンダクロスが暴れていることで前線基地の本部のロボット達は慌てるように外へ飛び出していく。
鉄のボールのようなものに閉じ込められているドラえもん達は異変に気付いた。
「何か、騒がしいね」
「何が起こっているんだ!?」
「今なら外へ逃げだせるかもしれない」
ドラえもんがポケットから道具を取り出そうとした時、こっそりと入り口からのび太と和人が現れる。
「和人、のび太!?」
「お前ら、無事だったのか!!」
「のび太君!和人君!」
「ピッポが外で陽動をしてくれているんだ」
「だからすんなりと侵入出来たんだ。もぬけの殻だ。すぐに抜け出そう」
「任せて、通り抜けフープ!」
取り出した道具を使って檻から脱出するドラえもん達。
そのまま抜け出したところで通信施設のような場所を見つけた。
通信施設では鉄人兵団が出立してワープを繰り返し、まもなく地球へ到着するというメッセージ。
応答がないリルルへの問いかけだった。
逃げ出しても事態は何も変わっていないということをドラえもん達は理解してしまう。
「リルル~~~!」
やってきたザンダクロスからピッポが出ていくとそのままリルルを探しに行ってしまった。
その頃、裏山で直葉としずかの二人はリルルと遭遇。
彼女は腕からケーブルなどがむき出しになっており、ロボットであることが発覚する。
リルルは指から光線を打とうとして意識を手放してしまう。
直葉としずかはリルルを連れて源家へ運ぶ。
「この人、ロボットなんだ」
「これだけ高性能なロボット、はじめてみたわ」
リルルの汚れを取り除いてしずか達はこれからどうするか話し合おうとした。
その時、階下で何かが壊れるような音がする。
「直葉ちゃんはここで待っていて」
「う、うん!」
しずかはゆっくりと階下へ向かう。
源家のリビング。
そこで獣型のロボットがいた。
「!?」
「人間だ!」
悲鳴を上げるしずかに迫る獣型ロボット。
飛びかかろうとした、その時。
砲撃と共に獣型ロボットが機能停止する。
突然の事態に驚くしずか。
倒れた獣型ロボットの後ろ。
そこには空気砲を構えるのび太の姿があった。
「のび太さん!」
涙を浮かべながらしずかはのび太を抱きしめる。
突然のことに目を白黒させながらのび太はしずかを抱きしめ返そうとした。
「しずかちゃん!」
「しずか!?なんで」
壊れた中庭からジャイアン、和人達がやってくる。
慌てて離れる二人。
「お兄ちゃん!」
階段を思いっきり駆け下りて直葉は和人の姿を見つけると一目散に抱きしめる。
「スグ!?」
「怖かった!お兄ちゃんが無事でよかった!」
直葉がいることに驚く和人。
そして、周りがニヤニヤしていることに気付いた。
「おい、何だよ」
「「「別にぃ~~」」」
「だったらその三白眼みたいな目をやめろぉおおお!」
和人の叫びがこだまする横でピッポが二階へ駆けあがっていった。
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