鉄人兵団を書こうとするとなぜか、モチベが下がるという呪いが発生している。
どういうことだろうか。
年内最後になるかもしれません。
桐ヶ谷家
「お兄ちゃん~、今日の予定、忘れていないよね?」
桐ヶ谷和人は妹の直葉の言葉に顔を上げる。
「ああ、それにしても、クリスマスが終わって、すぐにこんなクエストがでてくるとは……なんか、悪意を感じるな」
「お兄ちゃん、言っていたね。大掃除をさぼろうとしたらとんでもない事態に巻き込まれたって」
「まあ、あれの良き思い出だけどな」
苦笑しながら和人は時計の時間を見る。
「クエスト開始まで三十分前か、そろそろログインしよう」
「うん!」
頷いた二人は自室へ戻り、アミュスフィアを装着する。
野比家
「のび太~、大掃除は終わったの?」
「今日のノルマは達成、そういう木綿季の方はどうなったの?」
「ボクのところは姉ちゃんと頑張ったよ!二人だけだし、使っている場所が少なかったからすぐに終わったし」
「そっか」
「楽しみだね!緊急クエスト」
「うん……」
「どうしたの?」
木綿季はのび太が少し気落ちしていることに気付いた。
二年間、共に戦ってきた仲間でありこの程度の気分の変化はすぐに見抜ける。
「なんというか、このタイミングで、クエストの内容に少し悪意を覚えたと言いますか」
「内容?」
「まあ、話はエギルさんのお店へ行ってから話をしようか。多分、みんなに話さないといけないことになるから」
「やあ、ごめんごめん、遅くなったよ」
襖をあけてドラえもんがやって来る。
三人はアミュスフィアを装着してVRMMO“アルヴヘイム・オンライン”の世界へ飛び込む。
エギルが経営しているお店へノビタニアン、ユウキ、ドラモンの三人は中に入り込む。
「プリヴィエート!ノビタニアン君」
「うわっ!?セブン!」
ドアを開けたところで飛び込んできたのは少し前までクエスト勝負を競っていたシャムロックのリーダーセブンだった。
あの時は色々あったが、仲間とレインたちの奮闘によってなんとか騒動を終えたことは記憶に新しい。
尚、その際にノビタニアンは何故か、“セブン”に気に入られている。
横でユウキが頬を膨らませているがドラモンがまぁまぁとなだめていた。
「あれ?今日のクエストは難しいかもって」
「そうだったんだけど、なんとか予定ができたからログインしたの!それに……」
セブンは頬を赤らめながらぼそぼそとつぶやいた。
「お姉ちゃんにも会いたかったし」
「ああ、じゃあ、彼女も?」
「うん!ログインするの!もうすぐ、キリト君と一緒に来るはずよ」
その言葉通り、ドアを開けてスプリガンのキリトとウンディーネのアスナ達がやってくる。
「あ、ノビタニアン君、セブンちゃん」
「先に来ていたのか」
「うん、キリトは今?」
「いや、少し前にアスナとアイテムの補充を、武器はリズに預けたか?」
「ここへ来る前にね。フルメンテを終わらせたらもってきてくれるって」
「リズも大変だよね。このタイミングで全員の武器を見るなんて」
「だが、フルメンテしてもらっていないと何が起こるかわからないクエストだからな」
「……サムライアントマンズの討伐。名前はともかく、アレだよね?」
「ああ、アレだ」
過去の出来事を思い出してノビタニアンとキリトはため息を零す。
「二人だけで黄昏続けているんじゃないわよ」
「そーだぞ!俺達にもとっとと内容を聞かせろ。お前らの大冒険の一つだろ?」
そんな二人にシノンとクラインが呆れたように尋ねる。
「大冒険って、そんなものじゃないよ」
「まー、きっかけはのび太だけどな」
「それは否定できない」
キリトの言葉にのび太は頷いた。
少しして、フルメンテを終えたリズベット、外にいたフィリア、リーファ、シリカ、ユイ、ストレア、最後にレインがやってくる。
「よし、全員そろったな」
「キリの字、ノビ公!クエストの内容に覚えがあるんだろ?話してくれ!」
「うん」
クラインに急かされてのび太は答える。
「はじまりは年越す直前、僕達は家の大掃除をさぼるために学校へ遊びに来ていたんだ」
「そこで、先生が学校の掃除をしていてな。俺達も手伝いをしていたんだが、当然、さぼる目的でいたから飽きた。そこでのび太がドラえもんの四次元ポケットの道具でガラパ星からきたセールスマンから生物進化研究所。そこの話を聞いて、アリを進化させて掃除を手伝わせようと考えた」
「それが騒動の原因だったんだけどね。僕達が選んだアリは実はサムライアリでね。他のアリを奴隷として攫う、乱暴者達だったんだ。進化したサムライアリは鞭で僕達を奴隷にしようとしたんだ。サムライアリ達をなかったことにしようとした僕達はもう一度、ガラパ星へ行ったんだけど、そこは女王アリに占拠されていた。ドラえもんを残して僕達は繭に閉じ込められちゃったんだ」
「そこからは僕が話すね。過去へ戻ろうとした僕はサムライアリ達が張っていたバリアで少し前の過去に飛ばされてしまうんだ。そこで僕はサムライアリ達の弱点を見つけるんだ。ジャイアンの歌というものをね」
「……あれは兵器になりうるわね」
ドラモンの言葉にリズベットが同意する。
他のメンバーも頷く。
「僕は過去の仲間を未来へ連れて、もう一度、ガラパ星へ向かったんだ。そこで繭に閉じ込められていた仲間たちを解放して、サムライアリ達を無力化して元に戻すことへ成功したんだ」
「今回のクエスト、サムライアントマンズの討伐クエストは、悪さを働くサムライアントマン達を制限時間内に倒すというクエストだ。アントマンは鞭を使う他、NPCを拉致して仲間にしようとする」
「おそらくだけど、女王アリの鞭裁きは普通のアントマンよりも強敵だと思う」
「ALOはSAOのデータを基にしています。そして、SAOのデータは……その、パパ達の話を基にしたものもあるらしいので、おそらくこの話もノビおじちゃんから聞いたものをベースにしたんだと思います」
ナビゲートピクシーの姿をしているユイの言葉にストレアも頷いた。
「他の連中は苦戦するかもしれないけど、俺達には頼りになるメンバーがいるからな!」
「そうです!」
「大丈夫だよ!私達ならできる!」
「後方支援は任せて」
シリカ、
フィリア、
シノンが頷いた。
「さ、暴れるわよ!」
リズベットの言葉を合図に全員が立ち上がる。
「さあ、行こうぜ!」
クエストの内容はスヴァルトアルブヘイムの平原。
存在する村を襲撃しようとするサムライアントマンズを討伐する制限時間つきのクエスト。
クエスト失敗はサムライアントマンズが村に入りNPCをすべて拉致されたら、プレイヤーサイドの勝利条件はサムライアントマンズを駆逐、もしくは制限時間内まで生き残ることとなっている。
村は周囲を木の塀で囲まれているのみ、入り口は一か所しかない。
「ちなみにだけど」
二刀流の剣を構えながらレインが尋ねる。
「ノビタニアン君やキリト君達が体験した時はどのくらいの数がいたの?」
「……えっと」
「だいたい、五匹か六匹くらいだよな?」
「そんな感じだったね」
「うーん」
「どうしたのよ?」
レインの考えるような仕草にリズベットが尋ねる。
「いや、このクエストが緊急と制限時間がついているって意味を考えていて」
「意味?」
アスナが首を傾げる。
「緊急と制限時間、村の規模が小さいことから、アンタ達の過去経験よりも数が多い可能性っていうのも……」
シノンの言葉と共にクエスト開始時間となる。
ボコンと彼らの前の地面が盛り上がった。
そこから現れるのはコケ茶色の姿をしたグンタイアリ。
「クエスト開始……って!!」
キリトは目の前の光景に叫ぶ。
盛り上がった地面の穴は軽く二十を超えていた。
「多すぎでしょ!?」
続けて現れる穴に流石の数にユウキも叫ぶ。
「こりゃ、死ぬ気でやらないといけないな」
クラインも刀を構える。
「過去話をどうやったらこんなことになんのよ!?」
「製作者の悪意を感じますよ」
「……私とアスナ、ドラモンは後方支援ね」
「その方がいいかもね」
「ノビタニアン君!頑張ってね!」
薄情者!とノビタニアンは叫びながら剣と盾を構える。
出現したサムライアントマンは三十体以上だった。
「年末とはいえ、暴れ甲斐のあるクエストだぜ!」
「そうだ!ノビタニアン!ボクがノビタニアンより多くの敵を倒したらパフェをおごってね!」
「え!?」
「いいわね、私も乗った」
「ええ!?」
「私も、私も!」
「えええ!?」
「わ、私だってやります!頑張ろうね!ピナ!」
ノビタニアンを置いていつの間にかパフェ争奪戦が勃発していた。
「なら、私が一番ね」
遠くからシノンの射る矢がサムライアントマンの一体を貫く。
砕け散るサムライアントマンの姿を見て茫然とする一同。
「ボクも負けないぞぉお!」
駆け出すユウキ。
続けて、キリト。
その後にみんなが続く。
年末最後のクエストはとてつも波乱だったということをノビタニアンはのちに語った。
尚、財布の中はすっからかんになったらしい。