ドラえもん のび太と仮想世界   作:断空我

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次の大長編、何するか決定しました。

次の大長編は過去話になります。

SAOで出てくるのは桐ヶ谷兄妹です。




42:開かずの扉

「(やぁ)」

 

 のび太の部屋。

 

 くつろいでいたのび太とドラえもんの前に姿を見せたのはドラニコフだ。

 

 彼はドラえもんズの一員で、メンバーにおいて無口で謎の人。

 

 そんな彼が何を言いたいのかドラえもんズのメンバーは理解できるという。

 

「暇だから遊びに来たみたいだよ」

 

「じゃあ、何かで遊ぶ?」

 

 ドラえもんの言葉にのび太が尋ねると、ドラニコフは四次元マフラーからアミュスフィアを取り出す。

 

「どうやら、ドラニコフはALOの世界に行きたいみたいだよ」

 

「ALOに?」

 

「(コクン)」

 

 頷いたドラニコフはアミュスフィアの装着準備を始める。

 

「そうだね。僕も行こうか……ドラえもんは?」

 

「ごめん、僕は用事があるからお願いしていいかな」

 

「うん、わかった!」

 

 頷いてのび太はアミュスフィアを装着する。

 

 空都ラインへ行けば、誰かいるだろう。

 

 そう考えてのび太はドラニコフと共にALOへログインする。

 

 空都ラインへインプのノビタニアンが到着すると先にログインしていたドラニコフことニコフが待っていた。

 

 彼は現実の服装と大差ない姿だ。ちなみにケットシーだ。

 

「ド、ニコフはどうしたい?ラインを散歩してみる?」

 

「(コクン)」

 

 ニコフは頷くとノビタニアンと一緒に空都ラインを散歩する。

 

「おや、お前はノビタニアンではないか」

 

 呼ばれてノビタニアンが振り返るとサラマンダーのプレイヤーがやって来る。

 

「ユージーン将軍」

 

 サラマンダーの最強プレイヤーといわれるユージーン将軍がやってくる。

 

 彼は赤い甲冑に身を包み、今はないがレジェンダリー・ウェポンの魔剣グラムを操る。

 

 実のところ、ノビタニアンは一度、ALOに初ログインしてから少しした時にユージーン将軍と出会い、デュエルして勝利を収めた。

 

 その時にどういうわけか気に入られて何度かデュエルを申し込まれてしまう。

 

「あぁ、悪いですけれど、僕は今日予定があって」

 

「安心しろ、今日は領主会談があり、お前とデュエルしている暇はない」

 

「あ、そうですか」

 

「何とタイミングの悪いことか、次こそは」

 

「あ、はいぃ」

 

 半ば尻込みしながらノビタニアンは頷く。

 

 彼は残念そうに肩を叩いて去っていった。

 

「(?)」

 

 ニコフが不思議そうに尋ねてくる。

 

「えっと、デュエルして、色々と目を付けられちゃってね」

 

 ノビタニアンが苦笑していると彼に声をかける者たち。

 

「あ、ノビタニアンさん!」

 

「やぁ、シリカちゃん。キリト、アスナさんも」

 

「こんにちは……そちらの人は」

 

「ニコフだよ」

 

「あぁ、ドラモンの友達か」

 

 やってきたのはシリカ、アスナ、キリトの三人だ。

 

「三人はこれから攻略?」

 

「開かずの扉へいってみようと思ってな」

 

「開かずの扉って……?」

 

「氷山地帯に氷に閉ざされた扉が発見されたそうなんです。周りに強い敵がいるわけではないので、扉まで行くこと自体は難しくはないらしいのですが……」

 

 氷を溶かす方法がわからないのでその先へ行くことができないという。

 

「何か、キリトが喜びそうな話だね」

 

「うふふ、やっぱり、ノビタニアン君はキリト君のことをよくわかっているね~」

 

 アスナがからかうように二人へ言う。

 

「おいおい、やめてくれよ」

 

「そうだよぉ」

 

「新しい攻略にキリトさんは目がないですから。それで、その扉を調べに行くことになったんです!それで」

 

「僕とニコフも暇だから、行ってみようかな?」

 

「(コクン!)」

 

 キリト、アスナ、ノビタニアン、シリカ、ニコフの五人は目的の場所へ向かう。

 

 途中、モンスターが現れた。

 

「なんというか……その」

 

「シリカは知らなかったな。ニコフは丸いものを見るとスーパーウルフマンに変身するんだよ」

 

 キリトの言葉にアスナは苦笑するしかできない。

 

「え、あの、ニコフさんって、ドラモンさんと同じネコですよね?」

 

「そこは気にしないで上げて」

 

 道中、丸いモンスターが現れたためにニコフが狼男へ変身してしまうという問題が発生しながらも目的の扉の前に到着した。

 

「これは力ずくでどうにかできるものじゃないね」

 

 ノビタニアンの前に広がるのは分厚い氷の壁で閉ざされたドアだ。

 

 試しにノビタニアンが氷に触れてみた。

 

「何か仕掛けがあるって考えて、まず間違いはないと思うけど」

 

「少し、調べてみましようか」

 

「(コクン)」

 

 扉周りを調べていた時。

 

「あ」

 

 アスナが声を漏らす。

 

「何か見つけたか?」

 

「みんな見て!この扉、よく見たら表面になにか書いてあるみたい」

 

「本当ですね!氷のせいでかなり見づらいですね」

 

「でも、手がかりを見つけたね!」

 

「!!」

 

 キリトが扉の文字へ目を凝らす。

 

「妖精族の…、…腕を広げ、…を抱かん。想いし心……囁けば、扉……開かれん……」

 

「うーん、肝心なところがわからないね。何を示しているのかな?」

 

「これだけじゃ、情報が足りないね。他に手がかりはないかなぁ」

 

「いえ、あたし、なんとなくわかった気がします!」

 

「!?」

 

「え、本当?」

 

「これは多分……『抱き合って思いの丈を囁けば扉が開く』ってことなんじゃないでしょうか?」

 

「きゅる!」

 

「……………………えっ?」

 

「い、いや、シリカ?それはさすがにないんじゃないか?」

 

「ま、まぁ、今の文だけなら、そう考えるかもしれないけれど……」

 

「?」

 

「確かに、それみたいな文面をしているけれど、そのままの意味じゃないんじゃないかな?」

 

「そうでしょうか?でも、試す価値はあると思います」

 

 シリカは力説する。

 

「本当の気持ちを囁く。それができるプレイヤーが居なくて、今まで扉は開かれなかった。そう考えることはできないでしょうか?」

 

「うーん、まぁ、試す価値がないでもないか。じゃあ、試しにやってみるか?」

 

「ま、まぁ、やってみるだけなら」

 

「とはいってもどんなことを言えばいいのかな?」

 

 首を傾げるアスナ。

 

「想いし心ですから、相手を思う気持ちがあれば、どんな囁きでもいんじゃないでしょうか?」

 

「相手を思う……かぁ」

 

「あ、あの!もし、よければ、あたしからノビタニアンさんへの思いで試させてもらえませんか?」

 

「え、僕?」

 

「あっ、ぅぅ、他意はないんです!もちろん、こういう場合、キリトさんとアスナさんがいいっていうのはわかっていますよ!」

 

「し、シリカ!?」

 

「や、やだな!何言っているの!?」

 

「(ポッ)」

 

「ニコフ!?」

 

 顔を赤くして二人を見守るニコフの姿を見てつい、ノビタニアンが叫ぶ。

 

「感謝の気持ちは本物ですから……お願いです!やらせてください!」

 

「うん。いいよ、シリカちゃん」

 

「そんな風に言われたら断れないな。な?」

 

「わ、わかったよう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「シリカちゃんの気持ち、ちゃんと受け止めてあげないとダメだからね」

 

「う、うん……えっと、おいで?」

 

「は、はぃ……」

 

 ノビタニアンが手を広げるとシリカはおずおずとその腕の中へ入っていく。

 

「ノビタニアンさん、いつも、いつも、あたし達のこと守ってくれて、ありがとうございます。あたしも、これから一生懸命、ノビタニアンさんのお役に立ちますから!だから、これからもたくさん一緒に冒険してくださいね」

 

「ありがとう、シリカちゃん、僕もシリカちゃんがいてくれて、とても助かっているよ。これからもよろしくね」

 

 ノビタニアンの言葉にシリカは顔を真っ赤にしてより強く抱き着いた。

 

 しかし、扉に変化はない。

 

「なにも、起きないみたいね?」

 

「そうみたいだな」

 

 キリトが扉を見てから、シリカへ声をかける。

 

「シリカ?」

 

「きゃあああ、ご、ごめんなさい!いつまでもくっついたままで!や、やっぱり、あたしじゃダメみたいですね」

 

 顔を赤くしてシリカは下がる。

 

「うーん、そもそもの条件が違うんじゃないか?」

 

「いえ、まだわかりません!思の丈が足りなかったかも!」

 

「きゅる!」

 

 シリカに同意するようにピナも頷く。

 

「そうだ、お互いを思いあう気持ち……わかりました!ここはキリトさんとアスナさんの愛の力じゃないと開かないんですよ!きっとそうです!」

 

「あ、愛の力!?」

 

「そうです!それがわかれば善は急げですよ!」

 

「何か……歯止めがきかなくなってきているみたいな?」

 

「あははは」

 

 ノビタニアンの言葉にキリトは苦笑する。

 

「シリカ……本当にこれで扉が開くのか?」

 

「ま、まぁ、二人ともやってみてよ」

 

 そういわれてアスナとキリトは互いを見る。

 

 ノビタニアンとシリカは少し離れた。

 

「あっ、あ、あたし、後ろ向いてますから!」

 

「僕も……ほら、ニコフも」

 

「(しょぼん)」

 

 三人は後ろを向きながらも耳を澄ませる。

 

「そうだね、分かった。シリカちゃんが頑張ってくれたのにここであきらめちゃダメだよね」

 

 二人は距離を詰めていく。

 

「はぁ、仕方ない。わかった、やろう」

 

「キリト君。愛しています。これからもずっと、キリト君の隣にいたいな」

 

「俺もだよ、アスナ。これからも絶対、手を離さないから」

 

「キリト君……」

 

 互いに顔を見つめあう。

 

 その瞳はゆらゆらと揺れている。

 

 もし、誰もいなければ、キスをしてしまいそうな空気だ。

 

「はぅぅ」

 

「きゅるぅ」

 

「いやぁ、これは」

 

「(ポッ)」

 

「や、やっぱり何も起こらないね!」

 

「そ、そうだな、ほら、シリカ、やっぱり条件が違うんだよ」

 

「うぅぅ、こんなにロマンティックなお二人の囁きでも扉が開かないなんて」

 

「シリカちゃん、顔真っ赤よ?」

 

「アスナさんも真っ赤です。うう、自分で告白するのも、お二人の告白を聞いているのも恥ずかしかったです」

 

「俺も久々に精神力を削られた気持ちだよ」

 

「僕も、疲れたよ」

 

「今日のところは一度、街に戻らないか?」

 

「賛成~」

 

「うん、そうだね。そうしよう」

 

「うぅ、わかりました、そうしましよう」

 

 この時、ニコフがじぃっと壁をみていることに四人は気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

 エギルの店でくつろいでいたキリトへアスナがあるものをみせる。

 

「ねえねえ、キリト君、シリカちゃん、ノビタニアン君!これ」

 

「MMOトゥモロー、ALOの攻略記事か、どれどれ?」

 

「あ、これ、この前の開かずの扉ですか!」

 

「そうなの!やっぱりあれ、全然違う条件があったみたい」

 

「攻略されちゃったのかぁ」

 

 ノビタニアン達は記事を読む。

 

「成程、あの扉のすぐそばに雪に埋もれた妖精のレリーフがあったみたいだな」

 

「そうなんですか!?全然、気が付かなかった」

 

「情報通りだと初見だと見落としそうな位置だなぁ」

 

「クリアされていないクエストだったし、うまく隠されていたみたい」

 

「その妖精のレリーフの手に愛の唄ってアイテムをはめ込めばクリアだったらしい」

 

「囁くのは、自分たちの想いじゃなかったみたいだね」

 

「だな」

 

「中々に、恥ずかしい体験だったな」

 

「次からは慎重に行きましょ」

 

「それで、これを攻略したのはぁあああああああああああああああ!?」

 

 キリトが大声を上げる。

 

「ど、どうしたの?」

 

「これを見ろ!」

 

 三人がのぞき込み、同じように声を上げる。

 

 攻略者のところに載っている人物。

 

 ニコフ、ドラモン、キッド、マタドーラ、ドラメッド、ドラリーニョ、王の七人だった。

 

「油断ならないなぁ」

 

 記事を見て、キリトは小さくため息をこぼした。

 

 

 


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