次回はGGOのラストの後、短編っぽいのをいくつかやっていきます。
のび太は目を覚ますと、ベッドから放り出されていた。
それだけではない。
どういうわけか列車が逆さまだった。
「あれ、のび太?」
「和人、起きたの、これは一体」
「どうなっているんだ?俺の記憶が確かなら普通に宇宙空間を走っていたはずだ」
「僕はぐっすり寝ていたからわかんないや」
二人がどういうことかと話していると外から話声が聞こえてくる。
のび太と和人が外に出ると車掌と里香、クラインの姿があった。
「気にするこたぁねぇよ」
「非常時だったもの、仕方ないわ」
「ねぇ、これって?」
「実は」
車掌の話によると機関車のエネルギーがヤドリによって抜き取られていたらしく、途中でエネルギーが尽きて、ある惑星に引き寄せられてしまったという。
「みんな!」
逆さまになっている列車からタケコプターをつけたボーム、ドラえもん、明日奈がやってくる。
「部屋中のあっちこっちからタケコプターをかき集めてきたよ」
「あと、列車の乗客の様子を見てきたけれど、薬か何かで眠らされているみたいだった」
「幸いね。みんなが目を覚ましていたら大騒ぎになっていたわ」
『やい!こんなところに閉じ込めやがって!今すぐに出せ!』
すぐ近くの部屋から珪子に憑依したヤドリが叫ぶ。
「ごめん、本当の珪子ちゃんに戻るまで出すことはできないよ」
ドラえもんがそういい、遅れてやってきた詩乃や直葉、琴音たちも集まったことで彼らは列車の外に出た。
「うわぁ、これはひどいね」
のび太達の前に広がるのは砂漠のような山にひっくりかえっている列車だ。
「この灰のおかげで被害が少なかったんです」
「この山、灰なの!?」
「はい、メズラシウムという鉱石をとると、こんな灰が残るんです」
「ということは、ここは禁断の星か!?」
ボームの言葉にのび太達は驚く。
立ち入りが禁止された惑星に自分たちが漂流したということに驚きを隠せない。
「マジかよ!?俺達はこのまま何もできずにこの灰みたいに干からびちまうのかぁ!?」
悔しさを込めた声でクラインが足元の灰を蹴り飛ばす。
「いえ、すぐにはそうならないと思います」
ついてきてください、と車掌の言葉に従ってのび太達は禁断の星の空を飛ぶ。
しばらくして、廃工場のような場所へたどりついた。
「車掌さん、ここは?」
「この星を去る時に機材などがそのまま放置されていたんです。ここは食糧庫で多くのものが保管されています。なので、すぐに飢え死にするという心配はありません!」
和人に車掌が説明する。
「うぉぉおし!早速、調べようぜ!」
お腹がすいていたということで彼らは様々な食事を選ぶ。
クラインはあつあつのハンバーガーを。
和人はチューブ入りスパゲッティ。
明日奈、里香、直葉はデザートを。
詩乃、のび太はパスタを。
ドラえもんと琴音はおいしそうなピラフを。
どら焼きがなかったことでドラえもんは残念がっていた。
それぞれが食事を味わう。
ハンバーガーを食べ終えたクラインはおかわりをするために倉庫へ向かう。
その時、車掌とボームの話声が聞こえた。
「うし」
クラインは決意した表情である場所へ向かう。
「ねぇ、シリカって、お腹がすかないのかしら?」
里香の言葉でのび太達はそういえばという表情を浮かべる。
「ヤドリも、お腹がすくのかな?」
「寄生しているといってもあれはシリカちゃんの体だから、やっぱり空腹はあるんじゃないかなぁ」
「ここにある食事を持っていきましょう」
段ボールをもって、明日奈、直葉、ドラえもんが列車へ戻る。
「二人とも気を付けてね、車内のものがひっくり返っているから転ばないように」
車内に入るとドラえもんが注意を促す。
その時、彼は足元にある何かに躓いて倒れる。
「ど、ドラちゃん!?大丈夫!」
「もう……こんなおもちゃ!」
ドラえもんは列車の扉をあけて足元にあった円盤を放り投げる。
「あれ……風呂を覗いたUFOだよね?ただのおもちゃなのかな?私、ボームさんへ相談してくるわ!」
明日奈は落とした紫のUFOを拾って外へ出ていく。
「シリカちゃん、失礼するねぇ」
「油断しないでね」
先を歩く直葉は警戒しながらドアを開ける。
彼女が襲い掛かってこないかヒヤヒヤしつつも、反応がないことに驚きながら中へ入るとそこには地面に倒れている珪子の姿があった。
「シリカちゃん!?」
慌てて直葉が駆け寄る。
寝ていたと思った珪子が不敵に笑うと額から怪しい輝きが真っすぐに直葉へ放たれた。
光を受けた直葉は動かない。
「どうしたの?」
その様子にドラえもんが尋ねた時、直葉がにこりと立ち上がり。
バコン!
傍にあった箱でドラえもんの頭を殴る。
殴られたドラえもんは悲鳴を上げることなく、床に倒れた。
「いつでも体は入れ替えることができたのさ!」
頭にタケコプターをつけて直葉は空へ飛び出す。
「フィリア、なんとかできそうか?」
「任せてよ!これでもSAOやALOじゃ、トレジャーハンターやっているんだから、今回の財宝は機関車だけど」
遼太郎と琴音はある坑道へ来ていた。
彼は車掌とボームがある地図をみて話をしているところを盗み聞きしていた。この坑道の中央部分に機関車が置いてある。
この星から脱出するためにも必要だと判断して彼らはここへきていた。
遼太郎はヘルメットのライトをつけて、琴音は地図を見ながら暗闇の中を歩き始める。
そのことを和人達は知らない。
「これなんですけど」
明日奈はボームに風呂を覗いたUFOをみせていた。
「これは、ドリーマーズランドのものではありません!」
「風呂に入ってきたのでそこにあった銃の形をしたスプレーみたいなものを吹きかけたら動かなくなったの」
覗き込んだ車掌が叫ぶ。
「おや?何か音がする」
カラカラとなっている音に気付いてボームはUFを揺らす。
UFOの中から丸い小さなものがでてきた。
虫眼鏡のようなものでボームは覗き込む。
「これは……わかったぞ、これがヤドリだな」
虫眼鏡の向こうには小さなお化けみたいなものが泡に包まれていた。
「スプレーって、これじゃないですか?」
車掌が倉庫から青と白のおもちゃみたいな銃を持ってくる。
明日奈はそれをみて頷いた。
「真空スプレーです!泡で体を包み込む道具です」
「そうか、それで、ヤドリが固まったのか」
「ボームさん」
ボームが確信したように言っていると直葉が呼ぶ。
「直葉君?」
「ちょっと、こっちに」
直葉に呼ばれて彼が曲がり角の方へ歩いていく。
横から覗き込もうとした時、直葉がハンマーを振り下ろす。
「直葉君!?」
慌ててハンマーを躱す。
明日奈は咄嗟に真空スプレーを手に取って構える。
放たれるスプレーに気付いて直葉はひらりと躱してしまう。
明日奈がもう一度、構えようとした時、騒ぎに気付いた詩乃がそれを奪い取る。
真空スプレーを構えてスィッチを押す。
放たれたスプレーを顔に受けた直葉はぺたんと地面に座り込んだ。
「え!?私がボームさんを!?ごめんなさい!」
「気にしちゃダメだよ?ヤドリが原因だから」
「それに直葉君のおかげでヤドリの対処法がわかったんだ」
謝る直葉にボームは気にするなという。
「それにしても、流石、シノのんだよね。一発で当てちゃうんだもん」
「私よりものび太の方が規格外よ。GGOでも驚かされてばかり、西部の星でも」
「のび太君、射撃の腕は誰にも負けないからね~。お兄ちゃんも悔しがっていたよ」
三人が話をしているとドラえもんに背負われてやってくる珪子の姿があった。
「おーい、珪子ちゃんが意識を取り戻したよ~」
「皆さん!すいません!私が……」
「アンタのせいじゃないわよ。ヤドリが悪いんだから」
頭を下げる珪子の頭を里香が撫でる。
「そうさ、悪いのはヤドリ。シリカが悪いわけじゃない」
「うんうん!」
「……ねぇ、今更なんだけど、クラインとフィリアはどこにいったの?」
詩乃の言葉に全員が驚く。
「あぁ、そういえば!?」
「二人はどこに?」
夜。
タケコプターで和人達は空を飛んでいた。
彼らは姿を消した遼太郎と琴音の行方を捜していたのだ。
「おーい!クラインさん!フィリア!」
「全く、シリカが元に戻ったと思ったら今度はあの二人なんて!」
「無事、だよね?」
「そう願うしかないわね。仮にも大人のクラインがいるから信じるしかないわ」
「フィリア~!」
彼らが空を飛んでいる中、ドラえもんが慌てた様子で叫ぶ。
「おーい!彼らの足跡があったぞお!」
ドラえもんの言う場所へたどり着くと。
「しまった!坑道に入ったのか!?」
「くそっ!フィリア!クライン!」
「いけません!」
入ろうとしたボーム、和人を車掌が止める。
「危険です!入ったらお二人も迷子になってしまいます」
「だからといって」
「二人を見捨てるわけにはいかない!」
「危ない!落盤だ!!」
ドラえもんの叫びと共に彼らが坑道から離れる。
少しして二人が入っていた入り口が封鎖されてしまう。
「そんな!」
「フィリアさん!」
「ウソ、でしょ!?ねぇ、こんなの!」
「……すぐに別の場所から」
誰もが目の前の入り口が封鎖されたということにショックを受けていた。
その時だ。
目の前の壁から黒い汽車が現れる。
「へ!?」
目の前の事態にのび太が驚きの声を漏らす。
封鎖された場所から現れた黒い機関車の上、そこには巻物を加えている琴音の姿があった。
「忍法、壁抜けの術……ってね」
「フィリア!」
「ウソ!?どういうこと!」
「えへへ、実はね」
琴音はのび太達に説明する。
二人で洞窟の中をさ迷っていたが無事に列車の置かれているエリアへ到着した。
そこにはアストンと共に行動をしていたドンとジェーンの二人と出会う。
彼らは宇宙空間でヤドリに憑依されたアストンに放り出されてしまい、隕石ごと、この星へ引き寄せられたという話だ。
彼らは運よく列車の場所を知っており、二人は喜び、クラインとフィリアは巻物を使って列車を外に出したという。
「驚かさないでよ!」
涙を流して直葉が琴音に抱き着く。
「ごめんね、でも、何もできないのは嫌だったから」
「ま、俺達にかかればこれくらい造作もないってことさ」
「クライン、アンタ、今回は見直したわ」
里香の言葉に遼太郎は胸を張る。
二人が持ち帰った列車と銀河超特急を入れ替えて禁断の星を脱出することとなった。
「おそらくだけど、途中でヤドリに遭遇するんじゃないかと思うの」
ミーティングルームで明日奈を中心に今後のことについて話をしていた。
「絶対、やってくるだろうな。ヤドリは肉体を求めている。この列車にはたくさんの人がいるからな」
和人の言葉に全員が頷く。
「ヤドリと戦うにしても私達だけで相手をしないといけない。武器は?」
「真空ソープをありったけ積んだ。奴らにぶつければ、憑依されていてもなんとかできるよ!」
「銃か、俺達に使えるか?」
「連中に遭遇するまでに私とのび太が教えるわ。射撃なら西部の星で何度もやってきている」
「え、僕も?ま、任せてよ」
「シノンとのび太なら安心ね!」
「よろしくお願いします!」
その頃、ヤドリの乗っている宇宙船と憑依された人間達の乗る海賊船が宇宙を走る銀河超特急を発見する。
ヤドリ達は小惑星群へ逃げようとする銀河超特急に砲撃を仕掛けた。
攻撃を受けた超特急は無人の惑星へ不時着する。
ヤドリ達が不時着した銀河超特急へ向かおうとした時。
「そこまでだ!」
タケコプターをつけて岩陰から姿を見せる和人達。
「待ち伏せか!」
憑依されたアストンが光線銃を構える中、和人達は真空ソープで迎え撃つ。
和人は迫る光線を躱して、真空ソープで人の顔を撃つ。
顔に当たらなくても全身を泡の膜で包み込むことからヤドリに効果は絶大だ。
「剣より使いにくいが、いける!」
「キリト君!」
和人の傍に同じく真空ソープを構えている明日奈が駆け寄ってくる。
「面!」
「リーファ、援護は任せて!」
「俺達が相手してやるぜぇ!!ヤドカリ野郎!」
「ヤドリだよ。クライン」
近づこうとするヤドリのUFOに直葉は竹刀で牽制しつつ、琴音、遼太郎が真空ソープで援護する。
「ひゃああああああ!こ、こないでくださぁい!」
「アンタ、こんなにひっかけるって」
「ある意味、才能ね」
無数のヤドリUFOに追いかけられていた珪子を、里香、詩乃の狙撃で撃ち落とされる。
「贅沢言うなら、狙撃銃の方がいいわね」
「この騒動が終わったら言ってみたら?ボディソープなんだから役に立たないかもしれないけど」
「それもそうね」
「真空ソープをありったけ積んできてよかったね!」
「うん、む!あの金ぴかUFOがヤドリの親玉だ!逃がすなぁ!」
ドラえもんが海賊船へ逃げていく金色のUFOをタケコプターで彼らは追いかける。
ヤドリが海賊船の中へ入った直後。大きな音と共に青銅の戦士が現れた。
それはドリーマーズランドで目撃したロボットだ。
「ヤドリがロボットに乗り移るなんて!?」
「体さえあればヤドリは操ることができるんだよ!ヤドリ本体を倒せば動けなくなる!みんなひるむなぁ!」
焦るのび太にドラえもんが叫び。
全員が真空ソープで撃つ。
しかし、泡が奥にいるヤドリまで届かず、一時撤退となった。
ヤドリが大きな音を立てながら隠れた人間達を探す。
きょろきょろと探していた時、佇んで動かないのび太の姿を見つける。
「一人、隠れておったか。腰を抜かしたか?まぁいい、お前に憑依するとしよう」
のび太をつまみあげて、掌へ置くと青銅ロボットは口を開ける。
そこから金色のUFOが姿を見せた。
「そこだ!」
瞬間、のび太は目を見開き、懐に隠していた真空ソープを撃つ。
真空ソープから放たれた泡は天帝ヤドリのUFOを包み込んだ。
「ンガァ!?ザ…ン…ネ……ン」
音を立てて天帝ヤドリが地面へ落ちる。
「やった!」
のび太が喜ぶのもつかの間、宿主を失った青銅ロボットはバランスを崩して倒れていく。
慌ててタケコプターを出そうとしたのび太を後ろから詩乃が抱きかかえる。
「詩乃ちゃん!」
「ちゃん付けするな!もう、おいしいところ、持って行ったわね」
「いやぁ」
半眼でこちらをみる詩乃にのび太は苦笑する。
ヤドリはのび太達の手によって敗北した。
残りのヤドリは逃げ出し、もう戻ってこないだろう。
のび太達は車掌の操縦する銀河超特急によって二十世紀地球へ戻っていた。
「アストンが、パパとランドの再建を約束してくれたんだ!」
「ほぉ、そいつは良かったな!」
ドンの言葉にクラインが喜ぶ。
「とっても楽しかったからまた戻ってほしいわね」
「また、遊びに行きたいですね!」
里香と珪子は頷く。
「キミ達や色々な人に迷惑をかけたからね。昔者とバカにしてごめん、キミ達の勇気は見習わなくちゃ」
「そうでもないさ、俺達は仲間がいたからなんとかできた」
アストンと握手しながら和人は答え、後ろを見る。
SAO、ALOなどを共に攻略してきた仲間たち。
彼らがいたから、今回の大冒険も無事に終わることができたのだと思っている。
「ランドが再建できたら、キミ達を招待するよ」
「約束だ」
そういって、和人達は到着した二十世紀地球の裏山へ降りる。