ー翼sideー
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
翼は道場で瞑想しながら、先日イグナイトモジュールの起動に成功したマリアの言葉を思い返していた。
【マリア、何故イグナイトモジュールを起動できたのだ?】
【そうね。強いて言うなら、“弱い自分を受け入れよう”と思ったからかしら】
「(“弱い自分を受け入れる”・・・・。言葉にするのは簡単だが、実際は難しい事だ・・・・)」
翼の脳裏にアスプロスに言われた言葉が浮かんだ。
【お前達は自分達の心の闇と真に向き合って乗り越えた訳ではない。ただ遮二無二に闇から逃げ、走り抜いただけだ】
「っ・・・・・・・・・・・」
アスプロスに言われた言葉を肯定する訳ではないが、確かに自分は遮二無二に走って逃げただけで、マリアのように向き合い、受け入れた訳ではない。
しかし、自らの心の弱さと向き合う気持ちが出来ず、翼は歯痒そうに唇を噛んだ。
「・・・・・・・・・・・・」
そして陰ながらエルシドが見ていたが、翼の様子を見てやれやれと肩を落とした。
ーデジェルsideー
「フム。完成だ・・・・」
「お、ようやくか」
そしてここはS.O.N.G.本部のデジェルの部屋。
以前から開発中だった代物が出来上がり、部屋に来ていたカルディアがデジェルの机に近づく。
「コイツがそうなのか?」
「ああ、データ不足でマリアの分はまだだが、調君と切歌君の分だけは完成できた」
デジェルは『完成した代物』をカルディアに渡す。
「ありがとよデジェル」
「だが楽観はするな。まだちゃんとテストした訳ではないからな」
「みみっちい事言ってんなよ。あのうるせえ保護者気取りの司令達に邪魔されない内に、渡しておくわ」
カルディアはそう言って部屋を出た。おそらく調と切歌に渡しに行ったのだろう。
「しかし・・・・何故ヤツは『あのデータ』をマニゴルド達に渡したのだ?」
ー響sideー
そしてリディアン音楽院では、今日の授業が終了し、教科書を鞄に仕舞い、帰る準備を始める響の姿があったが、どこか暗い雰囲気の彼女に気づいた未来が、彼女の元へと近づく。
「私、余計なことをしたかもしれない」
「えっ? そんなことないよ! 未来のおかげで私も逃げずに向き合おうって決心がついた!」
前回の海での特訓で響は自身の父である、『立花 洸』から「少し話さないか」という連絡を受けて、響はこれから、ファミリーレストランで彼と会うことになっていた。
「ありがとう! 未来!」
「・・・・うん、分かった」
明らかに無理をしているが、響は笑みを浮かべて未来にそう言い残し、響は未来に手を振って待ち合わせの場所へと向かった。
「・・・・・・・・」
ただ1人、レグルス・L・獅子堂こと、獅子座<レオ>のレグルスがいつもより大きめの鞄を肩にかけて、チラリと未来に目を向けると、未来とレグルスは無言で頷いた。
* * *
そして待ち合わせ場所のとあるレストランにて・・・・。
響と洸は席に向かい合う形で座っており、その場には少しばかり重い雰囲気が漂っており、響も少し顔を俯かせて険しい表情を浮かべていた。
「・・・・前に月が落ちる落ちないと騒いでた事件があっただろ?」
「っ・・・・」
『フロンティア事変』の事だ。
「あの時のニュース映像に映っていた女の子がお前によく似ててな・・・・。 以来お前のことが気になってもう1度やり直せないかと考えていたんだ」
「やり直す・・・・?」
洸は今日響をここへと呼んだ理由を話し、それを聞いて響は小さく呟いた。
「勝手なのは分かってる。でもあの環境でやっていくなんて、俺には耐えられなかったんだ・・・・!」
3年前。あのツヴァイウイングのライブで起こったノイズ襲撃事件による影響で、当時の世間から迫害されていた悲惨な状況を考えれば、常人には先ず耐えられない環境なのは確かであるし、彼が出て行ってしまうのも無理はないかもしれない。
しかしそれでも、当然響もそう簡単に許せるはずもなく、彼女はプルプルと手を僅かに震わせていたが、構わず洸は口を動かす。
「なっ? またみんなで一緒に・・・・! 母さんに俺のこと伝えてくれないか?」
「・・・・無理だよ、1番一緒にいて欲しい時にいなくなったのは・・・・お父さんじゃない?」
顔を俯かせたまま苦しそうに、振り絞るように、そう口にする響に、洸は一瞬何も言えなくなってしまうが、すぐに「あはは・・・・」と苦笑いをする。
「やっぱ無理か! なんとかなると思ったんだけどな・・・・。“いい加減時間も経ってるし”・・・・」
まるで他人事のような軽い口調でいけしゃあしゃあと喋る洸の無責任な態度に、響は苛立ちを覚えたのか、彼女の両手は拳を作り、拳と肩を震わせる。
「覚えてるか響? どうしようもないことをやり過ごす“魔法の言葉”・・・・。小さい頃、お父さんが教えたろ?」
「っ!」
「待ってくれ響!」
すると響は苛立ったままその場を立ち上がり、鞄を持ってその場から立ち去ろうとするのだが、それを見て洸が慌てた様子で響を媚びるような声で呼び止める。
「持ち合わせが心許なくてな・・・・」
「っ・・・・・・・・」
申し訳無さそうな顔を浮かべながら、洸は自分が注文していたサンドウィッチのレシートを彼女に見せ、謝ることもすらせず、娘に金を払ってくれと言った。
勝手なことばかり言う上、果てには実の娘に料理を奢らせるといった彼のふざけた態度に、響は怒りの表情を見せつつも乱暴にレシートを受け取って、その場を走り去って行くのだった。
そしてそんな彼女に対して苦笑する洸は、再びサンドウィッチを口の中へと頬張るのだったが・・・・。
「おい」
「んっ?・・・・ひぃいいいいっ!!」
いきなり誰かに声をかけられ、声のした方へと顔を向けるとそこには、前回の海で自分を殴った<叩いた>少年、私服に着替たレグルスが立っていた。洸はおののいて悲鳴を上げる。
実は響がここで洸と会うことを事前に未来から聞かされており、以前(『フロンティア事変』が終わってしばらく経った頃)から『裏の情報屋 アクベンス』であるマニゴルドから、響の過去のことを教えて貰っていた。
【響が、響の家族が、あのノイズ襲撃事件で、世間から迫害されていた?】
【ああ、敵対していた時に敵装者の情報を知っておこうと思って調査したらな。デジェルとエルシドも知ってるぜ】
【何で・・・・何で響が迫害されるんだ? むしろ響は被災者の筈なのに・・・・】
【まあ。“他に被害に合った遺族連中のやり場の無い怒りと悲しみと八つ当たりの捌け口にされた”。“マスコミが面白おかしく記事を書いて焚き付けた”。“暇人の馬鹿共の退屈しのぎの道具にされた”。他にも理由が有ると思うがな。かなりえげつねぇ目に合わされたようだぜ】
【・・・・こんなの、地震や津波の災害が1人の人間のせいで起きたんだって、言ってるような物だろう?】
【そうだな、だが覚えておけレグルス。人間ってのは“自分より弱い立場の人間”、“傷つけても誰も咎めない人間”、“自分の方が正しい”と大義名分を持てば、何処までも残酷になる一面も持ってんだよ】
【・・・・響の父さんは、響達家族を見捨てたのか?】
【・・・・何でもよ、仕事先の取引相手の遺族も、その襲撃事件で命を落としてな。その逆恨みで取引を断られたり、他の取引相手との関係も危ぶまれ、会社の人間達からも冷遇されて父親は会社を強制解雇。仕事を失うわ、世間からは迫害を受けるわと、精神的に追い詰められてな。家庭内暴力も振るうようになって、とうとう家族を見捨てて自分だけ逃げたそうだ】
その父親が、よりにもよって海で自分だけ逃げた卑怯者の男だった。
レグルスも響の事が心配で、鞄に隠していた私服に着替えて様子を見に来ていたのだが、父親の響に対する態度が腹に据えた。
「お、お前は、あ、あの時の・・・・!!」
「クソガキ!」と叫ぶ前に、レグルスは洸の胸ぐらを乱暴に掴みあげて立ち上がらせて、洸を静かに、冷たく鋭く睨み付ける。
「お、お客様!?」
「(キッ!)」
「ひっ!!」
それに対し、店員の1人が止めようするが、レグルスに一睨みされて黙り、他の客もなんだなんだと目を向けるが、レグルスは止まらない。
「アンタ・・・・父親なのに、娘に、響に謝ることすら出来ないのか? 果てには響に飯を奢らせるって何処まで屑なんだ?」
「な、なんだ君は!? まさか、娘の彼氏かなにかか!?」
「そんなんじゃない。でも友達で、仲間だ」
レグルスは冷酷な眼差しで洸の胸ぐらを締め上げる。
「アンタさ、響達家族を見捨てて、自分だけ助かって、のうのう3年も雲隠れしておいて、今さらどの面下げて家族に戻ろうなんて言えるんだよ?」
「ぐっ・・・・ご・・・・があぁっ・・・・!!」
締め上げられて呼吸が苦しくなってうめき声を上げる。洸の胸ぐらを少し緩めるが、その目は冷たい光に満ちていた。
「置いていかれる、って言うのは凄く辛いんだよ。怖いんだよ。アンタは家族を守らなければならなかったのに、あろうことか逃げ出した臆病者だ」
「お、俺だって・・・・! 被害者だったんだよ・・・・! 辛かったんだよ・・・・!」
「アンタ以上に辛い思いをしたのは響だ」
「ぐぅっ・・・・!」
「今すぐアンタを殴ってやりたいけど、本当は殴りたいのを必死に耐えていた響の気持ちを無下にはできない。でも、もしまた響と会って、ちゃんと向き合おうとせず、またさっきのようなふざけた事をするようなら、アンタが響の父親だろうが関係なく、俺がアンタをブン殴ってやる。分かったか?」
「わ、わわわわ、分かった! 分かったから!!」
レグルスの百獣の気迫に押され、洸は冷や汗を大量に流し、身体をガクガクと震えながらも頷き、レグルスは洸の胸倉を離すと、洸は無様に尻餅を付いてゲホゲホとむせる。そのままレグルスは洸を侮蔑の眼差しで見下ろすと、レストランを出て行くのだった。
「ち、ちくしょう・・・・! 野蛮人め・・・・!」
去っていくレグルスの後ろ姿を洸は恨みがましく睨んだ。
ーアスプロスsideー
チフォージュ・シャトーの玉座で、マリアとの戦闘で損傷したガリィと、別任務で不在のミカを抜いた、ファラとレイアがそれぞれの台座に立ち、玉座に続く階段の前に、アスプロスが立っていた。
「ファラ。例の物を」
「ハッ」
ファラは前回の戦いで手に入れたマイクロチップを口に入れると、口を開き、歌を歌うように声を上げるとーーーーーー
筑波の聖遺物研究所で調査していた、『フォトスフィア』を現れた。
ファラは『フォトスフィア』をオートスコアラー達の台座の中央に固定すると、その形状を大きくした。
「筑波で地味に入手したらしいが・・・・」
「強奪も有りでしたが、エレメントアームズ無しで黄金聖闘士とやり合うリスクと、防衛の為にデータを破壊されてしまっては元も子もありません」
「良くやったファラ。これが、この『フォトスフィア』に表示された一本一本の線が、地球に巡らされた血管、FISの優秀な聖遺物研究者ナスターシャ教授がこのラインに沿わせ、フォナックゲインを『FRONTIER』へと収束させた、地球の地脈の地図、『レイラインマップ』。世界の解剖の為に必要なメスは、このチフォージュ・シャトーに集まりつつある」
「そうでなくては、このままだと暴れたりないと、『妹』も言っている。アスプロス様。『完成品』はいつ頃の仕上がりで? また私に派手な宝石を与えて欲しい」
余程『土のエレメントアームズ』の宝石の弾丸が気に入ったのか、レイアが催促するが、アスプロスは余裕の笑みを浮かべていた。
「ふふふふふふ、そう急かすなレイア。『完成品』はまだ出さん。そう、今はまだ尚早なのだ」
アスプロスは企みに満ちた笑みを浮かべながら、『フォトスフィア』のレイラインを眺めていた。
ー切歌&調sideー
その頃、同じく学校帰りの切歌と調は自販機でジュースを買っていた。
「今朝の計測数値なら、イグナイトモジュールを使えるかもしれないデス!」
「後は、ダインスレイフの衝動に抗えるだけの強さが有れば・・・・ねえ切ちゃん」
「・・・・これデェス!!」
リンゴジュースを一口飲んだ調は切歌に話しかけるが、切歌は飲みたいジュースを選びきれず、ボタンを何個も同時押しをして、結局ブラックコーヒーを購入した。
「だああぁっ! 苦いコーヒーを選んじゃったデスよーーー!!」
「・・・・誰かの足を引っ張らないようにするには、どうしたら良いんだろう?」
アホな相方に呆れる調だが、気を取り直して、シンフォギアクリスタルのペンダントを取り出す。
「きっと自分の選択を後悔しないよう、強い意思を持つ事デスよ・・・・! およ?」
ブラックコーヒーを飲むことに強い意思を持たねばと言わんばかりに、切歌はコーヒーの蓋を開けると、無理して笑みを浮かべる切歌の手から、コーヒーを抜き取り、自分のジュースと交換した。
「私、ブラックでも平気だもの」
「ご、ごっつぁんデス」
お互いにジュースを飲むとーーーーーー。
ビー!ビー!ビー!ビー!・・・・
「っ!」
「うわっ!」
突然、S.O.N.G.の通信端末からの警報音に、調と切歌が驚くが、すぐに、端末を取り出すと弦十郎の声が響いた。
《アルカ・ノイズの反応を検知した! 場所は地下68メートル、共同溝内にあると思われる!》
「っ? きょうどうこう??」
「なんデスか? それは?」
《電線を始めとする、エネルギー経路を埋設した、地下溝だ。すぐ近くにエントランスが見えるだろう》
弦十郎に言われ、その場所に行くと、確かに出入口らしき施設が有り、今度は本部にいるマリアと翼とクリスの声が聴こえた。現在本部にはマリアと翼とクリス、聖闘士はエルシドとデジェルがいた。
《本部は現場に向かって航行中!》
《先んじて立花とカルディアとレグルスを向かわせている》
《緊急事態だが、飛び込むのはバカ達と合流してからだぞ!》
ーカルディアsideー
カルディアは調達のいる現場に向かいながら、懐に手を入れて、『二つの注射銃』を取り出す。
「さぁ~て、お披露目といくかね♪」
ニヤリと笑みを浮かべるカルディアは、先日『デジェルが完成させた物』を持って、現場に向かう。
ー響sideー
「へいきへっちゃら・・・・! へいきへっちゃら・・・・! へいきへっちゃら・・・・! へいきへっちゃら・・・・!」
3年ぶりに再会した父親の姿を振り切ろうと、走りながらそう呟く響の目元には、涙が溢れ、それを拭いながら走り・・・・。
「こっちデースっ!」
合流するも、二人を通り過ぎ、エントランスの門前に立つ。
響より少し遅れて、レグルスとカルディアも合流する。
切歌と調に背中を向けて目元を拭うが、通り過ぎる際に切歌と調は見てしまった。響が辛そうな表情を浮かべていたのをーーーーーー。
「何か、あったの?」
「・・・・何でもない」
それを見て調が心配して問うが、ぶっきらぼう気味に、調達に背中を見せた状態で答えるが、響の両手の拳はワナワナと震わせていた。
「とてもそうは見えないデス・・・・」
そんな響の様子に切歌がそう声をかけるのだが、響は苛立ちに気に声を張り上げる。
「皆には関係のないことだから!!」
それに響に対して、事情を知っているレグルスとカルディア以外は驚いたような表情を浮かべ、レグルスはそんな響の肩を宥めるように優しく叩く。
「関係ないけどさ、仲間を心配するのは当然だろう?」
「っ・・・・!」
「確かに、私達では力になれないかもしれない。だけど、それでも・・・・」
「ごめん・・・・どうかしてた」
レグルスと調の言葉を聞いて響は顔を俯かせつつも怒鳴ったことに対して謝り、坑道の中へ入っていった。
「(拳でどうにかなることって、実は簡単な事ばかりなのかも知れない・・・・だから・・・・! さっさと片付けちゃおう!)」
拳を握り決意する響だが、その心には暗雲がたちこめていた。
ーレグルスsideー
坑道の奥へ向かいながら、レグルスはカルディアに目線で会話し、響と父・洸の会合の詳細を話した。
「(成る程な。「3年前の事件のほとぼりが冷めたから、もう一度家族に戻りましょう」って事か。ずいぶんと都合の良い事をほざくクソオヤジだな)」
「(ついでにあの人は、海で翼が避難誘導の手伝いを頼んだけど、自分だけ逃げ出したんだ)」
「(ああ、それは駄目だわ。また同じ事を繰り返すだろうな。まあ娘に飯をタカってる時点で完全にアウトだけどな)」
そんな父親の見苦しい姿を見た後では、あんな情緒不安定な態度になるのも無理はないと、カルディアも理解した。
「(大丈夫なのかねぇ~。あのガングニール、簡単に感情に左右されやすい性格だからな。大ポカやらかすかもしれないぜ?)」
「(・・・・・・・・・・・・・・・・)」
「(ま、その程度で潰れるヤツならソコまでだな。さてと・・・・)」
等と二人が目線で会話を終えると、カルディアが調と切歌に、先頭を歩き、物思いに耽っていた響に感づかれないように、こっそりと話しかける。
「調、切歌」
「何?」
「デス?」
カルディアは、『デジェルが完成させた物』を二人に手渡した。
「これって?」
「“LiNKER”って事は・・・・?!」
「おう、デジェルがフィーネ、櫻井了子の研究データや他のデータから作った、デジェル特性のLiNKERだ。今回が実戦だからな、あまり無理に使うなよ」
「うん!」
「デェス!」
ドクターが作った物ではなく、デジェルが作った物なら二人は不満無しに受け取った。
そして、共同溝の地下へ通じる道が螺旋状に作られた通路に出て、響が一同に振り替える。
「行くよー二人とも!」
笑顔を見せる響はペンダントを構え、歌を歌う。
「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」
響の衣服が弾け、その身を『撃槍 ガングニール』のシンフォギアを纏う。
調と切歌も、『デジェル特性“LiNKER”』が入った注射器を打ち込み、歌を口ずさみ、シュメール神話の戦女神ザババの『双刃 シュルシャガナとイガリマ』のシンフォギアを纏った。
レグルスとカルディアも地下へ向かおうと、手すりに足を乗っける。
「響」
「あっ・・・・」
響はレグルスに話しかけられ、少し身体を固くする。
「・・・・無理はするなよ」
「・・・・平気、へっちゃらだよ!」
まるで見透かされているようなレグルスの態度に、少しむっ、となりながらも、響は笑顔で大丈夫だと主張するが、レグルスとカルディアは無理しているのがバレバレで、調も切歌も響の様子がおかしいとある程度は察した。
ー???sideー
「(ゴキンっ! ゴキンっ! ゴキンっ!)」
「(グッグッグッ・・・・)」
とある火山で療養していた二人は、麓に下りて、鈍った身体をほぐしていた。そしてその二人に近づく1人の人物。
「フム。二人ともようやっと身体の傷が完治したようだな」
「ーーーーーーーーー」
「いや、私はまだ“あの者”と“彼”を見ていよう。早く行くと良い」
その人物がそう言うと、1人が“黒い渦”を生み出すと、荒涼とした大地が広がる空間が開かれ、二人はその中に入っていった。
「さて、君もそろそろ動くべきではないかね?」
それを見届けた人物は、火山の山頂からこちらを見つめている人物を見据えるが、山頂にいた人物は静かに消えた。
今回はここまで。
双子座<ジェミニ>のアスプロスと、もう1人の双子座<ジェミニ>の黄金聖闘士のCVは決まりました。
『小西克幸』さんに決まりました。
声のイメージとしては、『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』から、『ブローノ・ブチャラティ』と魂が入れ換わった『ディアボロ』です。ディアボロ本人よりもカッコいいです。