聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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マリア奮戦と風と土

ー響sideー

 

「みんなと一緒に海に来るなんて、思っても見なかった」

 

「うん、そうだね!」

 

買い物に行ったレグルス達を待ちながら、響と未来は海を眺めていた。

 

「ところで響・・・・」

 

「なに?」

 

「いつまでレグルス君を避けてるの?」

 

「うっ!」

 

あのガリィとレグルスが交戦し、マリアがガングニールを纏って戦ってくれた日から、響がレグルスを避けているのは未来だけでなくエルシド達や翼達、弦十郎達すらも見抜いていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・(響らしくない)」

 

黙ってしまう響をジト目で見ながら未来はそう思った。響は皆との“繋がり”を大切にする。皆がキャロルを倒すと言っても、それに納得せずとも衝突しようとはしなかった。

実際未来と気まずい雰囲気になれば響の方から謝るのだが(未来とのそれは9割が響が原因)、しかしレグルスにはそれをしない。まるで意地を張っている。それが未来が気になっていた。が、そんな二人にエルフナインが駆け寄る。

 

「皆さん、特訓しなくて平気なんですか?」

 

「マジメだな~エルフナインちゃんは♪」

 

未来のジト目から逃れるように、響が能天気な笑みを浮かべる。

 

「暴走のメカニズムを応用したイグナイトモジュールは、3段階のセーフティにて制御される危険な機能でもあります!」

 

エルフナインはイグナイトモジュールの危険性を説明する。

 

「だから、自我を保つ特訓はーーー」

 

ドバァアアアアアアアアン!

 

しかし突然、近くの海から水柱が噴出し、青を基調としたゴスロリ風の容姿をし、バレエやフィギュアスケートのような挙動で水柱の天辺に立っているのは、『オートスコアラー ガリィ・トゥーマーン』。

 

「ガリィっ!?」

 

ガリィの登場に、エルフナインと響達は驚き、カルディアは欠伸をしながらビーチチェアに横になる。

 

「アスプロス様の言うとおり。あんな程度でイグナイトモジュールを使いこなした、だなんて思い上がるだなんて滑稽ね。夏の思い出作りは十分出来たでしょう?」

 

「なわけねぇだろ!」

 

クリスと響が、イチイバルとガングニールのシンフォギアクリスタルを構えて、聖詠を唄う。

 

「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」」

 

クリスがイチイバルを、響がガングニールを纏うと、クリスがアームズギアのボーガンを連射してガリィを攻撃するが、ガリィは水となって消えた。

 

「なっ!?」

 

「おいおい、後ろだぜ」

 

カルディアがビーチチェアに寝そべりながら呟くと同時に、ガリィが水しぶきを上げて響とクリスの後ろに現れ、二人を凪ぎ払う!

 

「くっ!」

 

「ぐぁっ!」

 

吹き飛びながら響はマリアに目を向ける。

 

「マリアさん! 二人をお願いします!」

 

「(コクン)」

 

マリアは未来とエルフナインを連れて離脱するのを見ながら、クリスもカルディアを睨む。

 

「蠍座<スコーピオン>! お前も逃げるか戦えよ!」

 

「ああ? なんで俺がお人形さん相手に逃げたり遊んでやんなきゃならねぇんだよ。お人形さんの相手はお前らでも十分だろうが」

 

「テメェな・・・・!」

 

「クリスちゃん! 今はオートスコアラーを!」

 

「チィ! おい蠍座<スコーピオン>! 後で助けくれって泣きついても知らねぇからな!!」

 

「へいへ~い」

 

離脱する事もせず、然りとて加勢しようともしないカルディアは、ビーチチェアに寝転がりながら優雅に響達の戦闘を見物していた。

 

「(フフフ、蠍座<スコーピオン>はどうやら参戦しないようね)」

 

ガリィの前に響とクリスが立ち塞がる。

 

「キャロルちゃんからの命令も無く動いているの?!」

 

「前回の戦闘で聞いてなかったの? 今は双子座<ジェミニ>のアスプロス様が、私達の指揮官なのよ」

 

「じゃ、アスプロスさんが私達を殺せって命令したの!?」

 

「キャハハハハハッ! 思い上がりもここまで来ると笑えるわね~♪ せっかく手に入れたイグナイトモジュールを用いても、アスプロス様の思念体にですら手も足も出なくて惨敗したアンタ達ごときに、アスプロス様が驚異と感じてくれているとでも思ってたの~?」

 

「「っ!!」」

 

ガリィの嘲笑の言葉に、響とクリスを悔しそうに息を詰まらせる。

 

「ククク。所詮アンタ達シンフォギア装者なんてね。黄金聖闘士の背中におてて繋いで連なってくっついているだけの、オマケに過ぎないのよっ!」

 

ガリィは両の手のひらから、アルカ・ノイズの水晶体をばら蒔くと、転移魔法陣が現れ、そこからアルカ・ノイズが現れた!

 

「ハァッ! ハァッ! テヤァッ!」

 

響が正拳、回し蹴り、体術を駆使してアルカ・ノイズを蹴散らし。

クリスがボーガンからガトリングへとアームズギアを変形させながらアルカ・ノイズを粉砕し、空中から襲い来るアルカ・ノイズには、腰アーマーから小型追尾ミサイルを放って粉砕する!

 

「ふぁあ~~ぁ」

 

カルディアは、二人の戦いを退屈そうに見物しながら、自分に襲い来るアルカ・ノイズの身体を指先の深紅の衝撃で風穴を開けて消滅させた。

 

 

 

ー翼sideー

 

クリスのミサイルにより青空に浮かんだ爆発を見て、民間人の野球少年達が騒然となり、翼はサングラスを外す。

 

「あれはっ!?」

 

「もしかして、もしかするデスか!?」

 

「ガリィが現れたか?」

 

「行かなきゃ・・・・!」

 

切歌と調、デジェルは海岸へ向かい、翼とエルシドとレグルスは民間人を避難させようとした。

 

「ここは危険です! 子供達を誘導して、安全なところまでーーー」

 

「冗談じゃない! どうして俺がそんな事をっ!!」

 

「あっ・・・・」

 

自分には関係無いと言わんばかりに逃げようとする壮年の男性。

 

「っ・・・・」

 

バシンッ!

 

「ぐあっ!」

 

「レグルス!?」

 

我が身可愛さで逃げようとする男性の頬をレグルスが叩き、男性は無様に尻餅を付く。

 

「な、何をするんだよっ?!」

 

「(ギロッ)」

 

「ひぃっ!?」

 

叩かれた頬を押さえて怒鳴ろうとする男性だが、レグルスが睨み付けると、小さく悲鳴を上げて身をすくませて黙る。

 

「アンタそれでも“大人”なのかよ。卑怯者めっ!」

 

「・・・・っ!?」

 

自分の半分も生きていなさそうな少年に一喝されて、男性はまるで不貞腐れた子供のように顔を俯かせて、目を反らした。

 

「レグルス・・・・」

 

「そんな男放っておけ。それよりも子供達を避難させるぞ」

 

レグルスの行動に唖然となる翼だが、エルシドと共に子供達を誘導する。レグルスも男性を放っておいて、避難誘導を始める。

 

「・・・・・・・・・・・・クソガキが」

 

男性は立ち上がると、一瞬だけレグルスを恨みがましく睨んで毒づき、自分だけ逃げ出した。

 

 

 

ー???sideー

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

建物の屋上から、レグルス達の様子を窺っている二人の女性がいた。

 

「(チラッ)」

 

「(コクン)」

 

1人が目配せすると、もう1人は今さっき走っていったデジェルと調と切歌の後を追い、残った1人は大剣を取り出して、エルシドを見据えていた。

 

 

 

ー響sideー

 

響とクリスがアルカ・ノイズを蹴散らしていくと、カルディアが気づいたように声を上げる。

 

「おぉ~~い! オートスコアラーはどこ行った~~?」

 

「「っっ!?」」

 

カルディアに言われて響とクリスはハッとなって、辺りを見回しガリィを探すが、ガリィの姿は何処にも無かった。

 

「(引き剥がされたのかよ!?)」

 

「(まさか、マリアさん達の方に!?)」

 

 

 

ーマリアsideー

 

その頃予想通り。未来とエルフナインを連れて避難していたマリアの前に、ガリィが現れた!

 

「「「っ!?」」」

 

未来とエルフナインを庇うように、マリアが前に出る。

 

「見つけたよ、ハズレ装者! しかもエルフナインと琴座<ライラ>の聖闘少女候補までいるとはね~」

 

「くっ!」

 

渋面になるマリアに、ガリィは手から鋭い氷柱の大剣を作ると、マリアに迫る!

 

「さあ、いつまでも逃げ回ってないでーーー」

 

迫るガリィに立ち向かいながらマリアは唄う。戦いの聖詠をーーーーーー。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

ガリィの氷柱を紙一重に回避したマリアは、ガリィの横面に拳を叩きつけた!

 

そして、ガリィを殴った拳から順に、マリアの身体に纏うのは、白銀に煌めくシンフォギア。最愛の妹であるセレナ・カデンツァヴナ・イヴの形見、ケルト神話の神・ヌァザが用いる銀の義手、『アガートラーム』!

 

吹き飛びながらガリィはそのシンフォギアを見据える。

 

「銀の、左腕・・・・!」

 

後方にいた未来も、それを見つめた。

 

「マリアさん! それは・・・・!」

 

「新生アガートラームです!」

 

マリアは新たな力を得て新生されたアガートラームのシンフォギアを纏い、歌を唄う。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

吹き飛んだガリィが、バレエのように回りながら体制を整えて着地する。

 

「あの時みたく、失望させないでよ!」

 

ガリィがアルカ・ノイズを召喚した!

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

しかしマリアは臆することなく、左腕の篭手から引き抜いた小太刀を周辺に展開させ、ガリィにむけて高範囲に放出した!

 

『INFINITE†CRIME』

 

放出された小太刀がアルカ・ノイズの身体を貫通して撃破する!

マリアはアームズギアの短剣を持って、迫り来るアルカ・ノイズ達を次々と斬り裂いていく!

 

「(特訓用のLiNKERは効いていている。今のうちに!)」

 

 

ー弦十郎sideー

 

「オートスコアラーの急襲だと!?」

 

《はい。装者と聖闘士は分断され、マリアさん一人で、ガリィに対応しています》

 

緒川からの連絡に弦十郎は苦虫を噛み潰した顔を浮かべる。

 

「デジェルかエルシドを加勢に行かせろ! イグナイトは諸刃の剣、あまり無茶はしてくれるなよ、マリア君!」

 

 

 

ーマリアsideー

 

迫るアルカ・ノイズに向けて短剣を振ると、短剣は蛇腹状にのように伸びて直角に角度を変化させ、多角的な斬撃でアルカ・ノイズを切り裂いた!

 

『EMPRESS†REBELLION』

 

「うわぁ~、私負けちゃったかも~~。アハハハハハハハハハハハハハハ」

 

わざとらしく笑い声を上げるガリィにマリアは肉薄するがーーーーーー。

 

「何てね♪」

 

「っ!?」

 

向かった来たマリアの攻撃をヒラリと回って回避したガリィは氷柱の大剣でマリアを叩きのめす。

 

「うあっ!」

 

「「あぁっ!」」

 

倒れるマリアを見て、未来とエルフナインも小さく声を上げる。

 

「つ、強い・・・・! だけど!」

 

マリアは胸元のクリスタルに手をかける。それを見てガリィがニンマリと笑みを浮かべた。

 

「聞かせてもらうわ」

 

「この力で決めて見せる!」

 

立ち上がったマリアがクリスタルを外して叫ぶ。

 

「イグナイトモジュール! 抜剣!!」

 

クリスタルを起動させると頭上に投げ、クリスタルが杭のような形態に変形した。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

静かに見据えるマリアの胸元を、イグナイトモジュールが貫いた!

 

「うっ! うあああああああ、ああああああ、あああああああああああああああああっ!!」

 

流れてくる暴走エネルギーの奔流にマリアが膝をつく。

 

「弱い、自分を!・・・・殺す!・・・・あああああああああああああああああっ!!」

 

しかし、マリアの身体は暴走するエネルギーに呑み込まれ、その身が黒く染まって行きーーーーーー。

 

「ガァアッ!」

 

「あれれ?」

 

さすがにガリィもキョトンとなった。

 

「ガアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

まるでケダモノのような雄叫びを上げてガリィに襲い来るマリアだが、ガリィは難なくそれらの攻撃をかわしていく。

 

「ガアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

「獣と堕ちやがった・・・・!」

 

力に呑まれ獣となったマリアにガリィは毒づき。その現場に、カルディアと響とクリスがやって来た。

 

「あれは、暴走!?」

 

「魔剣の呪いに呑み込まれて・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

唖然となる響とクリスとは別に、カルディアは口の端をニィッと上げた。

 

「ウアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

「な~に面白れぇ感じになってんだよ。マリア!」

 

ゲシッ!

 

「ウオアッ!」

 

カルディアが暴走して跳び上がるマリアを蹴り飛ばして地面に叩きつけた。

 

「ウゥゥッ!!」

 

「カルディアさん!」

 

「テメェマリアに何してんだ!」

 

「うるせぇよ。暴走するアイドル大統領を大人しくさせるだけだ」

 

響とクリスがカルディアを諫めようとするが、カルディアは聞く耳を持たず、右手の指先の爪が紅く染まり、鋭く伸びた。

 

「“3発分”って所だな」

 

爪が明滅しながら紅く輝く。

 

「これで頭冷やしな・・・・『クリムゾン・ランサー(威力弱め)』ッ!!」

 

「グァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

深紅の槍のようなオーラが起き上がろうとするマリアを押し潰すと、シンフォギアが強制解除されたマリアが倒れていた。

 

「おい、しっかりしろ!」

 

「マリアさん! マリアさん!!」

 

響達が倒れ伏しているマリアに駆け寄り、カルディアはマリアを一瞥すると、ガリィに向き合う。

 

「よおオートスコアラーちゃんよ。場がかなり興ざめしちまったが、どうするよ?」

 

「ハァ、やけっぱちで強くなれるとでも思ったのかしらね~。このハズレ装者にはホンットガッカリだわ」

 

ガリィは倒れるマリアを落胆したような顔で呆れる。

 

「でもま、こっちとしては“性能テスト”も大分進んだようだし」

 

「性能テスト・・・・?」

 

「そ♪ ファラちゃんとレイアちゃんの“試作機”が出来上がりましたからね~♪」

 

「(ファラとレイアの試作機・・・・)まさか!?」

 

マリアに駆け寄ったエルフナインが、ガリィの言った言葉に反応した。

 

「エルフナインちゃん・・・・?」

 

「ファラとレイアが、『風のエレメントアームズ』と『土のエレメントアームズ』を持って、ここに来ているのですか!?」

 

『っ!?』

 

エルフナインの言葉に響達は愕然となった。双子座<ジェミニ>のアスプロスとキャロル・マールス・ディーンハイムが共同で造り上げたオートスコアラー専用の武装。

レグルスを負傷させ、マニゴルドとアルバフィカを追い詰めた驚異の武器をもって、オートスコアラーが来ている事に戦慄した。

 

「ええ、今ごろは、それぞれの獲物と戦いながら、データを収集しているでしょうね」

 

 

 

 

ーエルシドsideー

 

ガリィの言うとおり、緑色を基調としたフラメンコのような挙動をする『オートスコアラー ファラ・スユーフ』が大剣を持ち、胴体には『緑色のプレートアーマー』を身に付け、胸元の錬成陣が淡く光ると緑色の風の刃を放ち、避難誘導をしていたエルシドに襲い掛かり交戦していた!

 

「くっ!」

 

「エルシド!」

 

「なんだあの風は? まるで風の結界だ!」

 

翼とレグルスがエルシドの服や肌が切られたような傷が走るのを見て驚いていた。

 

「『かまいたち現象』ですよ」

 

「『かまいたち現象』・・・・?」

 

『かまいたち現象』。旋風の中心にできる真空または低圧により、皮膚と肉がカッターで裂かれたような傷ができる現象。または、皮膚表面が気化熱によって急激に冷やされるために組織が変性を起こし、肉体が裂けてしまう生理学的現象とも言われている。

 

「そう。この『風のエレメントアームズ』は気圧を操作し、真空を起こすことによって風の刃を生み出すことができます。山羊座<カプリコーン>。貴方の手刀は私の『ソードブレイカー』の天敵のようなものですが、真空から生み出される刃ならばその手刀すらも斬り裂く事が可能です」

 

以前翼の剣を砕いたファラの能力『ソードブレイカー』はあくまでも『武器である剣』ならば触れた瞬間に破壊することができるが、エルシドの手刀は人体。武器として認識されない故に『ソードブレイカー』は通用しない。

 

「くっ」

 

「翼、エルシドは1対1で戦ってるんだ。手助けしようだなんて考えるなよ」

 

「・・・・わかっている」

 

翼もエルシドの性格を知っているので、手は出さないようにしていた。

 

「しかし侮るなオートスコアラー。我が手刀、この程度の風で防ぐ事はできん!」

 

エルシドが手刀を構えると、ファラも大剣を構えて、二人は接近すると、手刀と大剣をぶつけた!

 

 

ーデジェルsideー

 

「『ダイヤモンドダスト』!」

 

「フッ!」

 

そしてこちらは、海岸に向かっていたデジェルと調と切歌の前に、黄色を基調としたカジノの女ディーラーのような格好したジャズダンスやブレイクダンスのような動きをしながら、コインではなく、『色とりどりの宝石』を弾丸のように放ちながら、『黄色いショルダーアーマー』を身につけたレイア・ダラーヒムと交戦していた!

 

「何あの宝石?」

 

「綺麗だけど危ないデス!」

 

デジェルが放つダイヤモンドのように煌めく氷雪と、レイアの肩のショルダーから黄色い錬成陣が淡く光ると、大地から次々とルビー、サファイア、エメラルド、トパーズ、アメジスト、オパール、ガーネットといった美しい宝石を生まれ、それを弾丸のように放ち、氷雪と宝石がぶつかり合い、幻想的な世界が生まれていた。

 

「それが『土のエレメントアームズ』か? レイア・ダラーヒム」

 

「そう。宝石類は大地から生まれる鉱物、この『土のエレメントアームズ』は鉱物を生み出すことができる。私として、派手な宝石を使えるこの武装はかなり気に入っている」

 

クールに言ってはいるが、レイアは『土のエレメントアームズ』を撫でるその手の動きから、相当気に入っている事がうかがえる。

 

「そして私に地味は似合わない。私とこの『土のエレメントアームズ』の相手には、水瓶座<アクエリアス>のデジェル。貴方が相応しい」

 

「良いだろう。その武装ごと、お前を凍てつかせる!」

 

デジェルが拳から氷雪を放つと、レイアを宝石の弾丸を繰り出した!

 

 

ーアスプロスsideー

 

アスプロスはアジトでファラとレイアの戦闘から、データを収集していた。その近くでは、赤を基調としたゴスロリ服を着て、両手に大きなカギ爪をした大きな縦ロールの髪型をした自動人形『オートスコアラー ガリィ・トゥマーン』が曲芸師のようなポーズを取っていた。

 

「フム。データはこれくらいで良いだろう。ファラ、レイア、ガリィ、データは十分取れた。名残惜しいだろうが帰投しろ」

 

《了解した》

 

《わかりました》

 

エルシドとデジェルから距離を取ったファラとレイアは転移クリスタルを使って退散した。

 

 

ーカルディアsideー

 

「了解、まったく退屈しのぎにもならなかったわ」

 

ガリィは転移クリスタルを地面に叩きつけると、魔法陣が現れ、ガリィはこの場から消えた。

 

「ちっ! 逃げられたか」

 

「うっ・・・・!」

 

「マリアさん!」

 

ガリィが消えると同時に、マリアが目を覚ました。

 

「勝てなかった・・・・私は、何に負けたのだ・・・・?」

 

「(ケッ。こう言う時はアルバフィカの出番だって言うのに、面倒くせぇ)」

 

倒れたマリアは自分の敗北を理解していなかった。

 

 

 

ーアスプロスsideー

 

アスプロスは帰還してきたファラとレイアからエレメントアームズを受け取り、データの解析を行っていると、ガリィも帰還した。

 

「ガリィ。お前の役割は、私とファラのデータ収集の為のサポートの筈。随分と派手に立ち回ったな?」

 

「“もう1つの目的”ついでに、余計な邪魔が入らないようにしただけよ」

 

「自分だけペンダント壊せなかった事を引きずっているみたいだゾ」

 

「煩い! だからあのハズレ装者から一番にむしり取るって決めたのよ!」

 

余計な事をしゃべるミカに、ガリィは口汚く怒鳴った。

 

「ホント、頑張り屋さんなんだから。アスプロス様。我々の“『エレメントアームズ』の完成”はどうでしょうか?」

 

「概ね良好かつ順調だ。後1ピースで完全な武装となる。それまでは試作機で我慢するのだな」

 

アスプロスの言葉にオートスコアラー達は頭を垂れるが、ガリィは別の事を考えていた。

 

(私の『水のエレメントアームズ』の試作機は、獅子座との戦いで戦闘では使えない状態になってしまったけど、一番の座は譲れない)

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アスプロスはガリィを一瞥すると、小さく口の端を上げていた。

 




ー『風のエレメントアームズ』ー

鎧の錬成陣で大気と気圧を操り、風の刃を放ったり、小さな竜巻を起こして空気の壁を作り出す。


ー『土のエレメントアームズ』ー

地面から鉱物を作り出し、武器として扱う事ができ、地面を泥化させたり、磁力を操る事ができる。

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