聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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イグナイト 抜剣

それは、遥か過去の情景。キャロル・マールス・ディーンハイムは風光明媚な世界を最愛の父と共に歩いていた。

 

「パパ、何処まで行くの?」

 

「この先に採れるアレニムと言う薬草には、高い薬効が有るらしい。その成分を調べて、流行り病を治す薬を作るんだ」

 

杖をついて歩く父は、ふと周りの景色に目を向ける。

 

「ん?」

 

「見てごらん」

 

「うわ~~!」

 

キャロルは眼下に広がる風景に感嘆した。野に咲く花々、透き通るような湖、緑萌ゆる木々、雄々しく立つ山々、世界は斯くも美しい。

 

「パパはねぇ、世界の全てを知りたいんだ。人が人と分かり合う為には、とても大切な事なんだよ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「さ、もう少しだ。行こう」

 

その時の父の優しい笑顔は、今もキャロルの心に刻まれていた。

 

 

* * *

 

そして現代。

 

「あぁ行くとも、“思い出”を力と変えて。“万象黙示録”の完成の為に!」

 

玉座から立ち上がったキャロルの宣言をアスプロスは隣に控えながら、小さく笑みを浮かべていた。

 

 

 

ークリスsideー

 

新たに強化されたシンフォギア、『絶剣 天羽々斬』を纏う翼と『魔穹 イチイバル』を纏うクリスは、眼前にいるミカ・ジャウカーンを見据える。

 

「さて、どうしてくれる先輩?」

 

「反撃、程度では生温いな。逆襲するぞ!」

 

「フフフフ」

 

「おっと、その前に」

 

クリスはミカから目を離さずに、インカムで通信する。

 

 

ーマリアsideー

 

《兄ぃ! 後輩達を見るな!》

 

「はっ、男共は見るなっ!」

 

クリスがデジェルに向けての怒鳴りに、マリアも察して怒鳴り声を上げる。エルシドの上着を羽織っている切歌は兎も角、カルディアに抱えられた調は今真っ裸だったからだ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「えっ何で?」

 

「良いから目を閉じていろ」

 

「あぁっ!」

 

弦十郎は目を閉じて、レグルスは首を傾げるが、目を閉じたデジェルが片手でレグルスの視界を塞ぎ、藤尭は顔を少し赤らめて目を閉じた。

 

「うわっ、なななな何で私まで!?/////」

 

「あぁゴメン、つい勢いで・・・・/////」

 

同性なのに何故か未来に目を塞がれる響。

 

「モニターから目を離したままでは、戦闘管制が出来ません!」

 

「何、その必死すぎるボヤキは?」

 

藤尭のボヤキに友里がジト目で見る。

 

「調達が撤退するまでの間よ。それに、今の翼とクリスなら、それくらい問題無い筈」

 

マリアがモニターを見据える。

 

 

ー翼sideー

 

「フン」

 

ミカがまたアルカ・ノイズの結晶をばら蒔くと、そこから再びおびただしい数のアルカ・ノイズが出現した。

 

「慣らし運転がてらに片付けるぞ!」

 

「綺麗に平らげてやる!」

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」」

 

翼とクリスは勇ましくアルカ・ノイズの軍勢に立ち向かい、切り裂き、撃ち抜き、強化型シンフォギアの力がアルカ・ノイズを撃破していく。

 

 

ーエルフナインsideー

 

「天羽々斬、イチイバル共に、各部コンディショングリーン!」

 

「これが、強化型シンフォギア・・・・!」

 

「『プロジェクトイグナイト』は、破損したシンフォギアの修復に留まるものではありません」

 

強化型シンフォギアの性能に驚く一同に、いつの間にか司令室に入ってきたエルフナインが説明する。

 

「出力を引き上げると同時に、解剖機関の分解効果を分散するよう、バリアフィールドの調整も行われています」

 

分解効果の攻撃を防ぎ、切り伏せる翼が映し出される。

 

 

ーエルシドsideー

 

「ここは二人に任せるぞ」

 

「あぁ・・・・」

 

切歌を抱えたエルシドが、調を抱えたカルディアは心臓の熱を抑えるように胸におさえて撤退する。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「調、お前と切歌が時間を稼いでくれたから天羽々斬もイチイバルも復帰できたんだ。自分は足手まといだなんて思ってんじゃねぇよ」

 

「でも・・・・」

 

「今回の戦いで、デジェルが活路を出してくれている筈だ。それに期待しやがれ」

 

「・・・・・・うん」

 

カルディアに言われ、調は少し目を伏せながらも頷いた。

 

 

ークリスsideー

 

「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」」

 

翼が『逆羅刹』を舞い、クリスが『BILLION MAIDEN』を放ちアルカ・ノイズを凪ぎ払っていった。翼はミカの方を睨み、足のバーニアを吹かせ跳び、クリスもガトリング砲を放ちながらミカの方へ向く。

 

『蒼刃罰光斬』

 

大剣を鞘に見立て、抜刀術のように刀を早撃ちし、十字の青い斬撃がミカに向かうが、ミカは寸前で避けて、ミカのいた地点に斬られ土煙が舞う。

土煙から出たミカに、すかさずクリスが『MEGA DETH FUGA』の2つの大型ミサイルを放つ。

 

「およ?」

 

着地したミカにクリスの大型ミサイルが直撃した。

 

「へっ、ちょせい!」

 

不敵に笑うクリスだが、煙が晴れてくると、着弾地点に黄色い障壁が見えた。

 

「いや、待て」

 

「何?」

 

煙が完全に晴れると、ミカを守るように立つ、魔法使いのような大きめのマントを着けた少女がいた。

 

「面目ないゾ」

 

「いや、手ずからしのいで良く分かった。オレの出番だ」

 

そこに現れたのはキャロル・マールス・ディーンハイムだった。

 

 

ー響sideー

 

「キャロルちゃん!」

 

「キャロル・・・・」

 

響とエルフナインがその少女の名を口にした。

 

 

ークリスsideー

 

「ラスボスのお出ましとはな」

 

「だが、決着を望むのはこちらも同じ事!」

 

クリスと翼は、主犯の登場に身構える。

 

「全てに優先されるのは計画の遂行。ここは“オレ達”に任せてお前は戻れ」

 

「分かったゾ! 蠍座<スコーピオン>! 面白かったゾ! また殺ろうナーーーー!!」

 

すでに撤退したカルディアに向けて大声を上げるとミカは転移結晶を砕いて魔方陣が現れて笑い声を上げて消えた。

 

「トンズラする気かよ!?」

 

「案ずるな。オレがここに来たのは“彼”を迎える為だ」

 

「(やはりこの者の狙いは・・・・)」

 

「(レグルスって事か)」

 

「この身一つで、お前達二人を相手にするなど造作もない事」

 

「その風体でヌケヌケと吠える!」

 

「なるほど。ナリを理由に本気を出せなかっただのと、言い訳される訳にはいかないな。ならば刮目せよ!!」

 

キャロルの隣に魔方陣が展開させると、その中からキャロルの身体と同じサイズの竪琴が現れた。翼とクリスが身構えるが、キャロルは構うことなく、竪琴の弦を鳴らす。

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

 

ーデジェルsideー

 

キャロルが奏でた音が特殊な波形であるとモニターに表示された。

 

「アウフヴァッヘン波形!?」

 

「いえ違います! ですが非常に近いエネルギーパターンです!」

 

「まさか、聖遺物の偽装?」

 

「『ダウルダブラ』の『ファウストローブ』?!」

 

「『ダウルダブラ』って!?」

 

「ケルト神話に於ける、ダーナ神族の“最高神ダグザ”が振るう金の竪琴か?」

 

レグルスとデジェルは、モニターに映るキャロルの身体が変化していた。

 

 

ーキャロルsideー

 

キャロルの身体に『ダウルダブラ』の竪琴が変形し、その身に弦が巻き付き、キャロルの身体が“少女から女性へと成長した”。

魔法使いの帽子に赤青黄緑の菱形の付け、その身にまるでシンフォギアのような、黒紫のプロテクターを纏った成人女性の身体になったキャロル・マールス・ディーンハイムがいた。

 

「これくらいあれば不足は無かろう」

 

「「っ!」」

 

声も完全に大人になったキャロルに翼とクリスは驚く。

 

「ハァアっ!」

 

キャロルが腕を振るうと、指先から弦伸びて地面を切り裂き翼とクリスに襲いくるが、二人は寸前でかわす。

 

「ハァっ!」

 

翼に向けて腕を横にふり、5本の線が翼に襲いくるが、翼は身を屈めて回避する。

 

「大きくなったところで!」

 

「張り合うのは望むところだ!!」

 

翼が剣を構えてキャロルに向かい、クリスは4門のガトリング砲を放つ。

 

「・・・・・・・・」

 

キャロルは背中のギアを羽のように展開させると、両翼が竪琴となり、両手でそれを鳴らすと、両隣に赤の魔方陣と青の魔方陣が現れ、赤から火柱が、青から激流が放たれた。

 

「くっ!」

 

「うわっ!」

 

翼とクリスは回避するが、火柱と激流が辺りを破壊する。

 

 

ーレグルスsideー

 

「歌う訳でもなく、こんなにも膨大なエネルギー、一体何処から?」

 

「“思い出の消却”です」

 

「思い出の?」

 

デジェルの質問に、エルフナインは答える。

 

「キャロルやオートスコアラーの力は、“思い出”と言う脳内の電気信号を変換錬成したモノ。造られて日の浅い者には、力に変えるだけの“思い出”が無いので、他者から奪う必要が有るのです」

 

「まさか、今までオートスコアラー達が出現した場所にある、干からびたような死体は」

 

「はい。オートスコアラー達の力とするために“思い出”を吸い付くされたんです。しかし、数百年を長らえて、相応の“思い出”が蓄えられたキャロルは」

 

「それだけ強大な力を秘めている・・・・!」

 

「力へと変えた“思い出”はどうなる?」

 

「燃え尽きて失います」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

「キャロルは、この戦いに結果を出すつもりです」

 

エルフナインが呟くと同時にレグルスはソッと司令室を出た。

 

「(レグルス・・・・)」

 

レグルスが出ていったのを、デジェルだけが気づいていた。

 

 

ーキャロルsideー

 

キャロルが弦による攻撃を繰り出し、翼とクリスが回避すると、辺りの施設を破壊し爆発が起こる。

 

「うわっ!」

 

爆風により翼が吹き飛び、地面に倒れる。すかさずキャロルが背中の弦を鳴らすと、小さく黄色い魔方陣が幾つもの出現し電撃を翼に放った。

 

「先輩!」

 

「その程度の歌でオレを満たせるのかっ!?」

 

キャロルがクリスに魔弦が襲うが、クリスは回避し、空中で弩弓に変形させたギアからクラスター弾としての性質を持った大型矢の『GIGA ZEPPELIN』を放つが。

 

「フン」

 

キャロルは掌に魔弦をジェットエンジンのように回転させてクリスタルの弾丸を防ぐと、今度は腕に巻き付かせドリルのような武装へと変換した。

 

「ちぃ」

 

着地したクリスに向けて、リコイルスターターのように引くとドリルが激しく回転し、緑色の竜巻を放ち、クリスを呑み込む。

 

「うっ! うあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

呑み込まれたクリスは風圧で竜巻の中で動けなくなり、そのクリスにキャロルはドリルを叩きつける。

 

グワシャーーーーーーーーン!!

 

緑色の竜巻が天に伸びて消えると、翼の近くにクリスが仰向けで倒れた。

 

「くっ・・・・くぅっ!」

 

翼は立ち上がろうとする。

 

 

ー響sideー

 

「まだよ! まだ立ち上がれる筈よ!!」

 

「イグナイトモジュールの可能性は、これからです」

 

「イグナイト・・・・!」

 

響はモニターを険しい表情で睨んだ。

 

 

ーレグルスsideー

 

レグルスは自分の右腕と左足に巻かれたギブスを取り外した。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

右掌を握ったり、右腕を回したり、左足でケンケンしたりして、状態を確認する。

 

「うん、問題無し」

 

右腕は凍傷、左足は沸騰による大火傷、普通の人間ならば全治数ヶ月はかかる負傷を、10日足らずで完治させた。まさに医者泣かせ。

 

「・・・・・・・・キャロル」

 

レグルスはキャロルの名を呟くと、戦場に向かった。

 

 

ー翼&クリスsideー

 

「ハァ、ハァ、ハァ、クソッたれがっ!」

 

「大丈夫か・・・・雪音?」

 

「アレを試すぐらいには、ギリギリ大丈夫ってとこかな?」

 

ダメージでボロボロとなった翼とクリスは何とか立ち上がり、それを見てキャロルが見下ろす。

 

「フン、弾を隠して有るならば見せてみろ。お前達に構っているのも、そろそろ飽いてきたからな」

 

奏者達の後ろに控えている黄金聖闘士、中でも自分の陣営に招きたいと思う少年を迎えにきたキャロルにとって、奏者達との戦いは時間潰し半分である。

 

「付き合ってくれるよな?」

 

「無論、1人でいかせるものか!」

 

「「イグナイトモジュール、抜剣!!」」

 

二人が声を重ねると、胸のシンフォギアクリスタルを外すと、クリスタルが杭のような形に展開され、翼とクリスの胸元に深く突き刺さったーーーーーーーー。

 

「ぐっ・・・・がっ!・・・・うぐっ!・・・・がぁぁぁっ!!」

 

「がっ!・・・・あぁっ!・・・・あぁぁぁぁっ!!」

 

翼とクリスが力の奔流に苦しみの声を上げる。

 

「ぐっ!・・・・腸を、掻き回すような・・・・! これが・・・・この力が・・・・!!」

 

 

* * *

 

「『プロジェクト イグナイト』だ」

 

「ご存知の通り、シンフォギアシステムには、幾つかの“決戦機能”が搭載されています」

 

「“絶唱”と・・・・」

 

「“エクスドライブモード”か・・・・」

 

「とは言え、“絶唱”は相討ち覚悟の肉弾。使用局面が限られてきます」

 

「そん時は“エクスドライブ”で!」

 

クリスの言葉を緒川が遮る。

 

「いえ、それには相当量のフォニックゲインが必要となります。“奇跡”を戦略に組み込む訳には・・・・」

 

「役立たずみたいに言ってくれるな!」

 

「シンフォギアには、“もう一つ決戦機能”が有ることをお忘れですか?」

 

『っ!』

 

エルフナインの言葉に全員が、“暴走した響の姿”が浮かんだ。

 

「立花の暴走は、搭載機能ではない!」

 

「トンチキな事かんがえてないだろうな!!」

 

クリスがエルフナインの胸ぐらを掴む。

 

「暴走を制御することで、純粋な戦闘力へと変換錬成し、キャロルへの対抗手段とする。これが、『プロジェクト イグナイト』の目指すところです」

 

 

* * *

 

ーエルフナインsideー

 

《うっ!・・・・あぁっ!・・・・あぁっ!!》

 

《ああぁぁぁぁぁぁぁっ!!》

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

モニターに表示された翼とクリスの苦悶の声を聞き、デジェルは拳をきつく握り、血を滴らせる。

 

「モジュールのコアとなる『ダーインスレイヴ』は、伝説にある殺戮の魔剣。その呪いは、誰もが心の奥に眠らせる闇を増幅し、人為的に暴走状態を引き起こします」

 

《ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!》

 

《アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!》

 

「それでも、人の心と叡智が破壊衝動を捩じ伏せる事が出来れば・・・・!」

 

「シンフォギアは、キャロルの錬金術に打ち勝てます!」

 

「心と叡智で・・・・」

 

 

ー翼&クリスsideー

 

「(あのバカ<響>は、ずっとこの衝動に晒されてきたのか・・・・!?)」

 

「(気を抜けば、まるで、深い闇の底に・・・・!)」

 

二人の意識が、暗く暗転するーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー翼sideー

 

「ん・・・・んん?・・・・ステージ??」

 

目を覚ました翼はステージの上に倒れていた。

 

「くっ・・・・もう一度・・・・! もう一度ここで、私は大好きな歌を歌うんだ・・・・! 夢を諦めて、なるものか・・・・・・・・あっ!」

 

しかし、顔を上げると、観客席には無数のノイズが犇めいていた。

 

「私の歌を聴いてくれるのは、敵しかいないのか・・・・!?」

 

翼の心は暗い場所に落ちていく。

 

「新たな脅威の出現に、戦いの歌を余儀なくされ、剣に戻る事を強いられた私は・・・・!」

 

顔を上げた翼は幼くなり、父八紘の姿があった。

 

「お父様!」

 

「お前が娘で有るものか。何処までも穢れた風鳴の道具に過ぎん!」

 

「う、うぅっ・・・・(それでも認められたい。だから私は、私はこの身を剣と鍛え上げた。アイツのように、自らを聖剣と鍛えるアイツのように・・・・!)」

 

翼の脳裏に背中を守り続けたいと想う、1人の背中がーーーーーー。

 

「そうだ。この身は剣・・・・! 夢を見ることなど許されない道具・・・・! 剣だ・・・・!!」

 

しかし、翼の目の前に片翼として共にいた親友、天羽奏が現れる。

 

「あっ・・・・! 奏!!」

 

翼は奏を抱き締めるが、奏の身体は切り裂かれたかのようにバラバラとなった。

 

「剣では・・・・誰も抱き締められない・・・・! うっ、うぅっ、うあああああああああああああああああっ!!」

 

 

ーデジェルsideー

 

イグナイトモジュールを起動させた翼とクリスのバイタルは異常を示すようにけたたましいアラームが鳴り響く。

 

「システムから逆流する負荷に、二人の精神が耐えられません!」

 

「このままでは、翼さんとクリスちゃんが!」

 

「・・・・暴走!」

 

「やはり、ぶっつけ本番では・・・・!」

 

藤尭と友里の報告を聴いて、弦十郎と緒川が苦々しく顔をしかめる。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

デジェルはエルシドを呼び出す。

 

「エルシド、聴こえるか?」

 

《どうした?》

 

「クリス達の所に戻ってくれ。私も今から向かう」

 

《分かった。カルディア、暁を任せる》

 

《おう行ってこいや》

 

通信を切ると、デジェルも司令室を出ていく。

 

「デジェルさん・・・・!?」

 

「聖衣を纏うことができない我々は、今自分にできる事をやるだけさ」

 

そう言って、デジェルは司令室を出ていった。デジェルが出ていくのを見たエルフナインは呟く。

 

「あの人達ならできるかもしれません。闇に堕ちる奏者に手を伸ばし、その手を握り引っ張る事が・・・・」

 

闇に堕ちていく剣と穹に、聖剣と宝瓶が手を伸ばす。




今回はここまで。

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