聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

79 / 107
人は“信じていた力”が砕かれると脆くなる・・・。


砕けるシンフォギア

ー弦十郎sideー

 

『タスクフォースS.O.N.G.』の基地である潜水艦のブリッジにいた弦十郎にクリスからの連絡で“錬金術師と名乗る少女”の事が報告された。

 

「“錬金術”。科学と魔術が分化する以前のオーバーテクノロジーだった、あの錬金術の事なのでしょうか?」

 

「だとしたら、シンフォギアとは別系統の異端技術が挑んできていると言うこと・・・」

 

「いやもしかしたら、聖闘士側に近いかもしれん」

 

「「???」」

 

友里と藤尭の憶測に、弦十郎がもう一つの可能性を出した。

 

「かつてシジフォスに聞いた事が有る。聖闘士が纏う聖衣は、かつて地上に存在した伝説の大陸“ムー大陸”にいた古代の錬金術師達によって生成され、それに“戦女神アテナ”がそれぞれの“星座の力”を与えた事で完成された、とな・・・」

 

「伝説の大陸“ムー大陸”ですか?!」

 

「もしそれが本当なら、今回の敵は聖闘士達にも関わりが有るって事でしょうか?」

 

「かつてこの地上に存在し、地上の秩序と平和を守り、“神々の大戦<グレートウォー>”によって消滅し現代に蘇った聖闘士。そして新たな敵は、錬金術師・・・!」

 

弦十郎はメインモニターに映されたレグルスに手を差しのべる“キャロル・マールス・ディーンハイム”と名乗った少女を睨んだ。

 

 

 

ーキャロルとレグルス&響の近くの物陰ー

 

スマホでキャロルの姿を隠し撮りしていた一人の青年がニヤリとほくそ笑みを浮かべる。青年はマンションの火災を見に来たただの野次馬の一人だったが、テレビ局に売り込めるネタを見つけたのでここに来ていた。

 

「へへへ、こういう映像ってどうやってテレビ局に売れば良いんだっけ?」

 

「折角会いたかった少年との感動の出会いを、断りも無く撮るなんて・・・」

 

「っ!」

 

何時からいたのか、青年の横にギザギザとした歯を見せ、メイド服のような青い衣服を身につけた“人形めいた少女”がいた。

 

「躾の程度が窺えちゃうわね♪」

 

少女は青年に近づき、青年の顎を優しく掴むとーーーー。

 

「んっ」

 

唇を重ねた。

 

「んんっ!・・・んっ!!」

 

青年は自身が“吸い上げられている事”を察して逃げようとするが、少女の見た目からは考えられない力で掴まれ振りほどけなかった・・・そして。

 

「うっ!」

 

青年の頭髪と肌が色素を失ったように真っ白になり、そのまま力無く倒れ息絶えた。

 

「ペロッ・・・・ウフフ」

 

少女は舌で唇を舐めると、物言わぬ屍となった青年を見下ろして残忍な笑みを浮かべた。

 

 

ーレグルスsideー

 

「獅子座の黄金聖闘士よ。オレと共に来い!」

 

「えっ?」

 

「何・・・・?」

 

「お前を“真に理解”できるのはオレだけだ! オレとお前は“同志”となれる! レオのレグルスよ! オレの片腕となれ!!」

 

「・・・・“片腕となれ”ってどういう事?」

 

響を攻撃しようとした少女から突然の勧誘にレグルスは一瞬呆気に取られたが、直ぐに持ち直して、“キャロル”と名乗った少女を見据える。

 

「言葉通りの意味だ。獅子座<レオ>のレグルスよ、現代に蘇った“戦女神アテナ”の闘士、聖闘士の中でも最高峰の境地に立つ“十二人の黄金聖闘士”、その中でもお前だけだレオよ、オレが是非“同志”として迎えたいと思ったのはお前だけなのだ・・・・!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

無言になるレグルスにキャロルは両手を広げてゆっくりと近づく。

 

「レオよ、オレと共に世界を壊そう・・・! オレとお前と“あの人”が揃えば「待って!」チッ、うっとおしいゴミがいるな・・・!」

 

キャロルとレグルスの間に入り、キャロルの言葉を遮った立花響をキャロルは目障りそうに睨む。響はそれに気づかず言葉を紡ぐ。

 

「世界を破壊するなんて、何でそんな事考えるの!? 世界を壊したい理由を聞かせてよ!」

 

「っ! 理由を言えば受け入れるのか?」

 

「私は・・・戦いたくない!」

 

響の言葉をキャロルと呼ばれた少女は苛立ち混じりに叫ぶ。

 

「お前と違い、“戦ってでも欲しい真実”が、俺にはある!」

 

「「“戦ってでも欲しい真実”・・・?」」

 

「そうだ、シンフォギア奏者、お前にだって有るだろう? だからその歌で月の落下を防いでみせた。その歌で! シンフォギアで! 戦ってみせた!!」

 

「違う! そうするしかなかっただけで・・・そうしたかった訳じゃない・・・私は、戦いたかった訳じゃない! シンフォギアで、守りたかったんだ!!」

 

響の訴えをキャロルはさらに苛立ったように顔を歪める。

 

「・・・・レオよ、お前もそうなのか? 戦いたかった訳じゃない等と宣うのか?」

 

「・・・・・・・・俺は、戦わなければならない時は戦う・・・・俺の拳は、俺の力は、そのために有るから。地上の平和を乱す者とは、敢然と戦うつもりだ!」

 

「ならば、オレとも戦うか? 世界を壊そうとするオレとも・・・?」

 

「君が世界を壊そうとするなら、俺は君と戦う。それが獅子座<レオ>のレグルスの戦う理由・・・それだけで十分だ!」

 

レグルスの迷いなき瞳に宿る強き意志、そして偽りなき言葉に、キャロルの口元に少し笑みを浮かべる。

 

「やはりオレにはお前が必要だな、その一切の迷いなき瞳と言葉、自身のやるべき事をやって見せようとする強固な意志、ますますお前が欲しくなったぞ。レオよ!!」

 

キャロルの足元に金色に輝く魔法陣いや錬成陣が展開される。

 

「やだよ・・・“人助けの力”で戦うのはヤダよ・・・」

 

「フン! お前も、“人助けして殺されるクチ”なのか!?」

 

この期に及んでも駄々をこねる響に、キャロルは足元の他に、頭上にも錬成陣を展開する。

 

 

ー弦十郎sideー

 

「高質量のエネルギー反応! 敵を前にしてどうして戦わないんだ!?」

 

「ちぃっ!」

 

いくらレグルスがいるとは言え、敵が目の前にいるのに戦おうとしない響に弦十郎達は焦りが生まれる。

 

 

ー響sideー

 

「だって、さっきのキャロルちゃん、泣いてた・・・」

 

「っ!!」

 

「だから! 戦うよりも、その訳を聞かないと!」

 

響の言葉にキャロルは目を見開き、その顔を憤怒と憎悪に染めた。まるで見て欲しく無いもの、知られて欲しく無いもの、踏み込んで欲しく無い“心の場所”に“土足”で入り込まれたかのように。

 

「くっ、見られた・・・知られた・・・踏み込まれた・・・くぅっ! 世界ごと!! ぶっ飛べーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

 

キャロルは左手の指を鳴らすと“ある記号”のようなエンブレムが現れ、頭上の錬成陣の中心部に重なる。すると、2つの錬成陣が眩く輝き、光の奔流が周囲を呑み込もうとした!

 

「響っ!」

 

「うわぁぁぁっ!!」

 

吹き飛んだ響をレグルスが空中で担ぎ、そのまま瓦礫を足場にして上空へ空高く飛んだ。

 

 

ー弦十郎sideー

 

「空間に、歪みが発生しています!」

 

「未確認のエネルギーです!」

 

「響ちゃん! レグルスくん! 応答して! 二人とも応答して!!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

他のオペレーターや友里が騒然となり、弦十郎はキャロルが起こした事象を愕然と見つけた。

 

 

ーレグルスsideー

 

「よっと・・・・!」

 

響を担いで上空に離脱したレグルスは、そのまま重力に従い落下するが、ヒラリと軽やかに着地して、響を近くに横たわらせると、息切れをしているキャロルを見据える。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

「キャロル、何故世界を破壊しようなんて考えるんだ?」

 

「お前なら分かる筈だレオよ・・・お前にもオレと同じく、“父親から託された命題”が有るのだから・・・! そこの奏者にも有る筈だ・・・・!!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「えっ、お父さん・・・・」

 

キャロルの言葉にレグルスは顔を引き締め、レグルスの後ろにいる響は“父親”と言う単語に反応する。

 

「めんどくさいヤツですね~」

 

「「っ!?」」

 

突然その場に響いた声にレグルスと響が目を向けると、キャロルの後ろの建物に座り足をぶらぶらさせた青いメイド服のような服を着た少女がいた。

 

「見ていたのか? 性根の腐った“ガリィ”らしい・・・」

 

キャロルは“ガリィ”と呼ばれた少女に毒づく。“ガリィ”は建物から降りると、キャロルの隣に立ち、バレエでも踊るかのように回転する。

 

「やめてくださいよ~、そう言う風にしたのは“マスター”じゃないですかぁ?」

 

「(キャロルが“マスター”? 彼女は一体?)」

 

「さっさと戻りましょうよ、お目当ての黄金聖闘士とも会えたんだしぃ♪」

 

「“思い出の採集”はどうなっている?」

 

「順調ですよ~♪ でも“ミカ”ちゃん、大食らいなので足りてませ~~~~ん!!」

 

わざとらしく泣き真似をするガリィに、キャロルは冷めた態度を取る。

 

「ならば急げ、今日は此処までだ」

 

「(ケロッ)了解! ガリィ頑張りま~す!」

 

ガリィは紫の小瓶を取りだし地面に叩きつけるとそこから“光の陣”が現れ、その上に立った。

 

「ほいっと、サヨナラ~~」

 

“陣”に立ったガリィはそのまま光に呑まれて消えた。

 

「レオよ、オレは諦めた訳じゃない。その役立たずと共にいてもお前の為にはならん、オレの元に来たくなったらまた会った時に来い、歓迎しよう・・・」

 

そしてキャロルも小瓶を割り、“光の陣”に包まれて、消えた。

 

「“転送”・・・イヤ“転移”したのか?」

 

「託された・・・私には、レグルスくんのように、お父さんから貰ったモノなんて、何も・・・」

 

「響っ!」

 

レグルスは力無く倒れた響を介抱した。

 

 

 

 

ー弦十郎sideー

 

「レグルスくん! 今から回収班をソッチに向かわせるから響ちゃんをお願い!」

 

「(何だ? この拭えない違和感は・・・・?)」

 

言い様のない違和感が弦十郎の心に現れた。

 

 

 

ー翼sideー

 

そしてロンドンのコンサートホールの入り口前では、米国のエージェント達がマリアを監視していたエージェントとの連絡が取れずに騒然としていた。

 

「現在、状況を確認中です!」

 

「Aー3からの出口、封鎖急げ! あっ!」

 

ステージ衣装のマリア・カデンツァヴナ・イヴと風鳴翼が出てくるのを確認した。

 

「エージェントマリア! 貴女の行動は保護プログラムによって制限されているはず!」

 

「今は有事よ、車両を借り受ける!」

 

「えぇっ!?」

 

出入り口に来ていた年配のタクシーの運転手は突然のマリアの言葉に戸惑うが、エージェント達は拳銃を構える。

 

「そんな勝手は許されない!!」

 

「くっ!」

 

「ひぃっ!」

 

歯噛みするマリアと狼狽える運転手。

 

斬!

 

シュッ!

 

ダンッ! ダンッ! ダンッ!

 

すると、エージェント達の拳銃が突然斬られ、粉々に破壊され、さらに弾丸がエージェント達の“影”に突き刺さる!

 

「な、なんだ・・・!?」

 

「銃が破壊されて・・・!」

 

「身体が、動かん・・・!」

 

銃を破壊したのは、逆立てした黒髪に鋭利を眼差しをした武人然とした男性。

 

「エルシドっ!?」

 

「銃を構えたならば覚悟は出来ているか?」

 

そしてもう一人は、ウェーブがかかった水色の長髪をした絶世の美男子。

 

「ア、アルバフィカっ!?」

 

「我々と敵対する意志有りと判断するぞ?」

 

山羊座<カプリコーン>のエルシドと魚座<ピスケス>のアルバフィカ。最強の十二人の二人が翼とマリアを庇うように立ち塞がる。

 

「それに、緒川さん!」

 

「(コクン)」

 

エージェント達の動きを封じたのはマリアと翼のマネージャーでタスクフォースS.O.N.G.のエージェント、そして、飛騨の隠忍の末裔である緒川慎次である(エージェント達を封じたのは『影縫い』。翼も使うが、緒川から伝授された技)。

 

「さっさと出るぞ」

 

「マリア、運転は任せる」

 

「お前達いつの間に・・・・」

 

「行くわよ翼」

 

いつの間にかタクシーの後部座席に座っていたエルシドとアルバフィカに呆れるも、マリアは運転席に、翼は助手席に座り、そのままタクシーを走らせた。

 

「一体なにが・・・?」

 

それを見送った緒川も僅かに戸惑いを浮かべていた。

 

 

ークリスsideー

 

謎の少女を保護した水瓶座<アクエリアス>のデジェルと雪音クリス。

 

「なんだって! あのバカ<響>がやられた!? レグルスが付いて居ながら“襲撃者”にかっ!?」

 

《大した負傷はしていないけど、今救護班が向かっているわ。翼さん達も撤退しつつ、体制を立て直しているみたいなんだけど・・・》

 

「くっ!」

 

友里からの連絡に、クリスは先ほど襲いかかってきた“レイア”と呼ばれた敵を思い出していた。

 

「“錬金術”ってのは、シンフォギアよりも強いのか?」

 

「むっ! クリス!」

 

「あっ!」

 

「っ!」

 

その時、デジェルはクリスと保護した少女を両手に抱えて跳ぶと、デジェル達がいた地点に“何か”が着弾して爆発した!

 

「地面が、溶けている?」

 

「な、なんだコイツは・・・!」

 

デジェルとクリスの目線の先には、着弾した地点に“赤い穴”が拡がり、“赤い爆煙”が立ち昇っていた。

 

 

ー翼sideー

 

マリアが運転するタクシーがロンドンの市街を走り、翼は緒川からの通信を受けていた。

 

《翼さん! 一体何が起きているンですか?!》

 

「すみません、マリアに考えが有るようなので、ソチラは任せます。(ピッ) いい加減説明して貰いたいものだ」

 

「思い返してみなさい。あの時、オートスコアラーと名乗る襲撃者が言った言葉を」

 

「ん?」

 

【待ち焦がれていましたわ】

 

「ヤツの狙いは他でもない、翼自身とみて間違いない。この状況で被害を抑えるには、翼を人混みから引き剥がすのが最善手」

 

「ならばこそ、皆の協力をこじつけるべきだ。今この場には“聖剣”と“毒バラ”もいるのだぞ!」

 

「儘ならない不自由を抱えているのよ。私もエルシドもアルバフィカも・・・」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

* * *

 

それは、保護観察プログラムを与えられる条件として、米国政府から提示された条件だった。タブレットに映し出されたソレを見てマリアは憤慨する。

 

「私にこれ以上“嘘”を重ねろと!?」

 

「君の高い知名度を生かし、事態をできるだけ穏便に収束させるための“役割”を演じて欲しいと要請しているのだ」

 

「“役割を演じる”・・・・」

 

「『歌姫マリアの正体は、我等国連所属のエージェント。聖遺物を悪用するアナキストの野望を食い止める為に潜入捜査を行っていた』と言う筋書きでね」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「大衆にはこれくらい分かりやすい英雄譚こそ、都合が良い」

 

明らかに“FIS”に出し抜かれた国連の不手際を隠すための政治的策略であるのは明白だった。

 

「再び、“偶像”を演じなければならないのか?」

 

「“偶像”? そうだ、アイドルだよ。正義の味方にしてアイドルが世界の各地でチャリティーライブを行えば、プロパガンダにもなる。米国は真相隠蔽の為エシュロンからのバックトレースを行い、個人のPCを含む全てのネットワーク上から、関連データを廃棄させたらしいが・・・・」

 

ピッ

 

「っ!」

 

タブレットに表示されたのは、同じように投獄された調と切歌と、暢気に日常を謳歌し笑う響だった。

 

「彼女や君と行動を共にした未成年の共犯者達にも将来がある。例えギアを失っても、君はまだ誰かを守るために戦えると言う事だよ?」

 

「・・・・あの子達に何かしたら、貴方達国連が最も恐れている“彼等”が黙っていると思うの?」

 

「確かに“彼等”を敵に回すのはリスクがある。だが、彼等が如何に強大であろうと、所詮少数の部隊、今や国連のエージェント達からの監視を受けている身だ。そう易々と安易な行動には走らないだろう。それに、君自身も、彼等の“足枷”になるのは御免被りたいのでは?」

 

「くっ!」

 

そしてマリアは国連からの条件を飲むことにした。

 

 

* * *

 

 

「(アルバフィカ達の“足枷”になんかなりたくない! それでも、そんな事<偶像>が私の戦いで有るものかっ!)」

 

「マリア、前だ・・・・」

 

「っ!」

 

アルバフィカの言葉で前を向くと、そこに襲撃者であるオートスコアラーがウェストミンスラー橋の真ん中で、大剣を構えている姿があった。

 

「ちぃっ!」

 

マリアはタクシーのスピードを上げて、オートスコアラーに迫る!

 

「・・・・!!」

 

オートスコアラーは横一閃でタクシーを斬り捨てた!

 

「・・・・いない?「♪~♪~♪~♪~♪」っ!」

 

しかし、タクシーの中には誰も乗っていなかった。首を傾げるオートスコアラーの頭上から、“歌”が聞こえ、見上げると。

いつの間にか脱出していたエルシドにお姫様抱っこされていた翼が、シンフォギアクリスタルを手に、“戦いの歌”を歌う姿があった!

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

エルシドから離れた翼は、ステージ衣装が弾け、その身体にギアを纏う。日本神話の荒神スサノオがヤマタノオロチを退治するのに用いた剣、“防人の剣”として有りたい剣の想い呼応してあらゆる刀剣に姿を変える絶剣、『天羽々斬』!

 

エルシドと翼、アルバフィカが着ていたコートに包まれ、アルバフィカにお姫様抱っこされていたマリアも、ウェストミンスラー橋に降り立った。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

翼はフォニックゲインの高める為に歌いながら、刀を身の丈以上の大剣に変えて、オートスコアラーと斬り結ぶが、オートスコアラーはほくそ笑む。

 

「剣に剣でも私の剣には通用しない、『ソードブレイカー』」

 

オートスコアラーが静かに呟くと、大剣の刃から“模様”が浮かび光ると、翼の大剣が砕け、元の刀の形態に戻った。

 

「っ!?」

 

驚きながらも、一端距離を空ける翼。

 

「翼の剣が破壊された!?」

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

マリアも驚愕し、基本奏者の戦いにはノータッチのエルシドとアルバフィカも静かに見据える。

 

「(ニヤリ)・・・・・・・・」

 

オートスコアラーは手のひらから“赤い球体が入った小さな結晶”を取りだし、自分の周囲にばら蒔くと結晶が割れて“赤い球体”が地面に染み込み、ソコから赤い光が現れ、光から異形の存在が生まれた。

 

「あれは・・・」

 

「よもや・・・!」

 

「“ノイズ”、どうして・・・!?」

 

それは『フロンティア事変』で『バビロニアの宝物庫』と共に消滅した筈の兵器、“ノイズ”であった。

 

 

ークリスsideー

 

《デジェル! クリスちゃん!》

 

「分かってるって・・・!」

 

「こちらにも現れました・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

三人の目の前に、先ほどの“穴”から現れたノイズ達が前方を囲んでいた。

 

 

ー弦十郎sideー

 

「反応波形合致! 昨夜の未確認パターンはやっぱり!」

 

「くっ! 『ソロモンの杖』も、『バビロニアの宝物庫』も、『フロンティア事変』で破壊されたのではなかったのか!?」

 

藤尭からの報告に、弦十郎は拳を叩き合わせながら歯噛みする。

 

 

ー翼sideー

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

翼はノイズに斬り込んで行く。

 

「貴女の剣、大人しく殺されてくれると助かります」

 

「そのような肩入れを! 私に求めているとは! “防人の剣”は可愛くないと、友が語って聞かせてくれた!」

 

「こ、こんな所で言う所か!?」

 

次々と迫り来るノイズを翼は斬り伏せて行く!

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

カポエラのように回転をしながら脚の剣を展開させて斬り伏せる『逆羅刹』を繰り出す!

 

 

ークリスsideー

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドっ!!

 

「どんだけ出ようと今更ノイズ! 負けるかよっ!」

 

デジェルと少女を後ろに引かせ、クリスは片手のガトリングを展開させて襲い来るノイズを撃ち抜く!

 

 

 

ー翼sideー

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

次々と斬り伏せる翼は“鎧騎士のようなノイズ”が左腕の突起を翼に向けて伸ばし、翼はソレを切っ先で受け止めた!

 

「ウフッ♪」

 

ソレを見たオートスコアラーは笑みを浮かべる。

 

「なっ!?」

 

なんと、突起を受け止めた翼の刀が突起が進むにつれて“赤い粒子”となって消滅していった!

 

「(剣がっ!?)」

 

自身の剣が破壊され反応が遅れ、ノイズの突起が翼に迫る。

 

ガキンッ!

 

ギリギリ回避したが、突然が翼の胸元にあったシンフォギアクリスタルに掠り、皹が走った。

 

 

 

ークリスsideー

 

翼と交戦中のノイズと同じタイプ三体からの攻撃をガトリング砲で防ぐクリス。しかし、そのギアま徐々に赤い粒子となって侵食していくーーーーーーーー。

 

「なん、だとっ!?」

 

侵食されたイチイバルのガトリング砲が消滅し、纏うイチイバルのギアが分解していく。

 

「ノイズだと、括った高がそうさせる」

 

その情景を見下ろすレイアが笑みを浮かべる。

 

 

ー翼sideー

 

同じようにオートスコアラーが、徐々に侵食されて分解されていく天羽々斬を見て笑みを浮かべた。

 

「フフフ・・・・」

 

 

ー弦十郎sideー

 

「どういう事だ!?」

 

「二人のギアが分解されていきます!」

 

「ノイズでは、ないっ!?」

 

弦十郎達もこの異常事態に目を見開いて驚愕の様相を浮かべた。

 

 

ー???ー

 

妖しい光に照らされた王の玉座に座るのは、キャロル・マールス・ディーンハイム。

 

「“アルカ・ノイズ”。なにするものかっ! シンフォギアーーーーーーーーっ!!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

吠えるキャロルの近くの柱の上に、巨大なカギ爪と赤い髪を大きくロールした影が。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

キャロルが座る玉座の近くに侍る蒼い長髪に高身長の男性が薄い笑みを浮かべていた。

 

 

ー翼sideー

 

「ハァッ!」

 

翼はギアが消滅する前に、足から刀を取り出して“アルカ・ノイズ”を切り捨てる。

 

「ぐっ!」

 

遂に翼の身体をを纏っていた天羽々斬が消滅し、翼はその裸体を晒しながら後ろに倒れる。

 

「翼っ!!」

 

ファサッ・・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

倒れる翼に駆け寄ろうとするマリアよりも早く、着ていたロングコートを羽織らせたエルシドが鋭くオートスコアラーを刃のように目を鋭くし睨む。。

 

 

ークリスsideー

 

「あぁっ・・・!」

 

倒れるクリスだが、それを抱き止めたデジェルは、ゆっくりと横にし上着を被せる。

 

「クリスさんっ!」

 

少女がクリスに近づき、デジェルは静かに、冷徹にレイアを見据える。

 

 

英国と日本、それぞれの場所でオートスコアラーと聖闘士が邂逅した。

 

「あらあら、貴方がお相手をしてくれるのですか、山羊座<カプリコーン>・・・?」

 

「地味が似合わない私には、貴方のような美しい戦士こそ相手にふさわしい、水瓶座<アクエリアス>・・・」

 

オートスコアラー達は聖闘士を獲物を見つけた猛禽類のような瞳で睨むが。

 

「“相手”か」

 

「してほしければ相手をしてやろう」

 

「しかし“覚悟”をしておけ」

 

「私はクリスのほど」

 

「「“敵”に対しては容赦などしないのでな!」」

 

聖剣を携えた魔羯、エルシドから蒼色の小宇宙<コスモ>が、氷雪が吹き荒れる宝瓶、デジェルから翡翠の小宇宙<コスモ>が、静かに、力強い輝きを放った!

 




最近シンフォギアを書くモチベーションが上がらない今日この頃。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。