聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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かなりいい加減に書いちゃったかもしれませんが、G編ラストです!


エピローグ 永遠のブルー

アスミタが異次元から帰還し、夕闇が浜辺を包み込み始めた世界。弦十郎は米国に連行されようとするウェルの姿を見て戸惑う。

 

「これが、ウェル博士なのか・・・?」

 

灰色だった髪がツヤが全く無い無機質な白髪になり、顔は細かいシワが幾つも入っており、狂気と悪意に満ちたまなざしはハイライトが無く虚ろになり、肌も青白くなり、鼻や口から鼻水や涎を垂れ流し、一見すると死人のように見える無惨な姿だった。だが、声だけは発していて、生存している事は分かるがその内容は。

 

「僕は真の英雄・・・僕が真の英雄・・・僕こそが真の英雄・・・僕だけが真の英雄・・・僕のみが真の英雄・・・僕は真の英雄・・・僕が真の英雄・・・僕こそが真の英雄・・・僕だけが真の英雄・・・僕のみが真の英雄・・・僕は真の英雄・・・僕が真の英雄・・・僕こそが真の英雄・・・僕だけが真の英雄・・・僕のみが真の英雄・・・僕がーーー」

 

ひたすら同じ言葉をブツブツと蚊の泣くような声で呟き続けるウェルにはかつての“狂気”と“欲望”と“悪意”に狂っていた姿はなかった。

 

「拘束してからも狂笑を上げていたのですが、突然糸の切れたマリオネットのように動かなくなり、徐々にあぁなってしまいました・・・」

 

「なんとも哀れだな・・・」

 

“ソロモンの杖”で遊び半分とふざけ半分で無辜の命を奪い、マリア達FISの想いを下卑た笑みを浮かべて土足で踏みにじり、未来の“響への友愛”を弄び、幼稚な激情でナスターシャ教授を死なせた“小悪党”の末路は、“地球を滅ぼした悪魔”でも“理想に殉じた英雄”でもなく、“悪神の掌で踊り狂った道化”、“妄想に酔いしれた愚物”と成り果てていた。

プライド<自尊心>とアイデンティティ<存在意義>を根元から粉々に粉砕され、もはや狂気に踊り狂った姿は全く無く、あまりにも“惨めな敗残者”の姿を弦十郎は見据えるが、直ぐに気持ちを切り替えて緒川から現状報告を受ける。

 

「それで、月の軌道は?」

 

「月の軌道は正常値に近づきつつあります」

 

弦十郎は空から見える一部が欠け、土星のような輪っかが広がる月を眺めた。

 

「ですが、ナスターシャ教授との連絡は・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

弦十郎は浜辺で月を見つめるマリアとアルバフィカ、調とカルディア、切歌とマニゴルドと、彼等の後ろに控える響達とレグルス達を見る。

 

「婆さん、逝っちまったか・・・」

 

「うん・・・」

 

「マニゴルド、マムを呼び出せるデスか・・・?」

 

「あのな、“積尸気使い”は迷える魂を“あの世の境目”に送るのが本職だ。婆さんの魂はもう現世に居ねぇよ・・・」

 

「ナスターシャ教授は、尊敬できる人だった・・・」

 

「マムは、未来を繋げてくれた・・・」

 

マリアは優しくも悲しげに微笑み呟く。

 

「ありがとう、“お母さん”・・・」

 

「マリアさん・・・」

 

響がマリアに声をかけ、マリア達は振り向くと、響が“ガングニールのシンフォギアクリスタル”を差し出した、元々マリアから一時的に貸し渡されたので返そうとするが。

 

「・・・・・・ガングニールは、君にこそふさわしい」

 

「・・・・・・・・・」

 

マリアに託され、響はクリスタルを握る。

 

「だが、“月の遺跡”を再起動させてしまった」

 

「そもそも、“月の遺跡”って・・・?」

 

「ウム、“月の遺跡”とは“月の女神 アルテミス”が管理していた“バラルの呪詛”だ」

 

「我等が女神アテナ様の姉君で、人類とりわけ男を毛嫌いする女神か・・・」

 

「“人類の相互理解”はまた遠退いてしまったか・・・」

 

レグルス達の会話に奏者達は不安になるが。

 

「平気・・・へっちゃらです!」

 

『・・・・・・・・・??』

 

『・・・・・・・・・』

 

響の言葉に奏者達は首を傾げ、聖闘士達は静聴する。

 

「だってこの世界には、“歌”が有るんですよ!」

 

「だな!」

 

「響・・・」

 

『フッ』

 

響の言葉にレグルスと未来は同意し、アスミタ達もフッと微笑む。

 

「歌デスか・・・」

 

「・・・・・・いつか人は繋り“大いなる境地”に到達する・・・だけどそれは、“何処かの場所”でも“何時かの未来”でも無い。確かに伝えたから・・・」

 

「うん・・・」

 

響は、微笑む調のその顔に“フィーネ<櫻井了子>”の面影を見た。

 

「“立花響”・・・」

 

響が振り向くとマリアが優しく微笑み。

 

「君に会えてよかった・・・」

 

「・・・・・・」

 

その言葉に響も笑顔で頷いた。

 

「さ~て、俺らもそろそろ身の振り方を考えるかな?」

 

「カルディア、お前はお前の生き方を変えるつもりは?」

 

「全く無い!」

 

断言するカルディアに一同は面食らう。

 

「お前なぁ、俺が拾ってやった命を簡単に捨てるつもりかよ?」

 

「二課の医療チームに診て貰えば治療法も・・・」

 

「要らねぇよ」

 

説得しようとするデジェルとマニゴルドの言葉をスッパリと切り捨てる。

 

「“コイツ<心臓>”とはほぼ生まれた時から一緒だったからな。今更取り除こうなんて思わねぇよ。俺は未来なんざどうでも良い、今この時、この瞬間の戦場で、テメェの命を限界まで燃やし尽くす! それが蠍座<スコーピオン>のカルディア様の“生き様”よ!!」

 

カルディアのその瞳には断固たる“覚悟”と“決意”が燃え上がっていた。

 

「・・・・・・カルディア」

 

「調・・・」

 

「それが、カルディアの望む“生き方”なの・・・?」

 

調の悲しそうに見つめる瞳にカルディアはニヒルに笑いながら調の頭をポンポンと撫でる。

 

「調よ、“人間の最も満足する生き方”って知ってるか?」

 

「(フルフル)・・・」

 

「それはな、“自分の心に正直に生きる事”だ」

 

「“自分の心に正直に生きる”・・・?」

 

「ま、その点に掛けちゃ、ウェルの野郎もソレだわな」

 

「あの“頭脳”と己の“我欲”を貫く姿勢“だけ”なら間違い無く“英雄としての資質”が有る・・・」

 

「しかしながら、彼には自らを“英雄”とする“素質”が無かったがな・・・」

 

調は首を傾げ、マニゴルドとエルシドとデジェルは“敗残者”となったウェルの姿を浮かべたが直ぐに消した。

 

「“心”に嘘付いて生きてるとメチャクチャしんどいんだよ。フィーネの替え玉やらされていたマリアがソレだったろ?」

 

「うん・・・」

 

「あの、私にとってソレは“黒歴史”だからあまりほじくらないで欲しいんだけど・・・」

 

マリアの訴えを華麗にスルーされる。

 

「立花響さんよ、お前だって親友に“戦わないで欲しい”って言われても戦いを止めなかっただろう?」

 

「うっ・・・!」

 

『ウンウン』

 

カルディアが戦う事に口出ししようとした響だがその前に釘を刺され、レグルス達と未来達も同意と言わんばかり頷く。

 

「つー訳だ。俺にとって戦う事は俺の本心からの行動よ、それを自分たちの尺度で善悪と判断するのはちょいと押し付けがましいぜ。それに俺達は直ぐに旅に出ないとイケねぇしな・・・!」

 

「確かにな、俺も直ぐに出立しなければならない」

 

「エルシド?」

 

「私もだ。冥闘士が現れたのならば、我等も行動を起こさねばなるまい」

 

「それって・・・?」

 

「この世界に散らばっているであろう“青銅聖衣<ブロンズクロス>と白銀聖衣<シルバークロス>を回収”と“冥衣<サープリス>ならびに海皇ポセイドンを守護する海闘士<マリーネ>が纏う鱗衣<スケイル>の回収”、もしくは“破壊”だ・・・!」

 

『っっ!!』

 

奏者達が息を呑む。

 

「冥衣の破壊って・・・?」

 

「冥闘士であるアタバクが現世に現れたと言う事はだ、いずれ他の魔星に選ばれた闘士、冥闘士<スペクター>が地上に現れる。数の少ない我等聖闘士は、なるべく冥闘士の数を減らさなければならない・・・!」

 

「だから、俺やアスミタやエルシド・・・出来ればアルバフィカ達も含めて、世界中の何処かに潜んでいる冥衣を破壊しなければならない」

 

「で、でも聖闘士なら未来も居るし・・・!」

 

本当は聖闘士達も戦いなんかしないで欲しいと考える響は引き止めようとするが、アスミタが未来の方を向く。

 

「小日向未来、琴座<ライラ>の聖衣ブローチから聖衣を呼び出してみなさい・・・」

 

「えっ?・・・はい・・・」

 

戸惑いながら、未来は再び聖衣ブローチに呼び掛けるが。

 

「あ、あれ・・・?」

 

聖衣は現れず、未来の身体からも小宇宙<コスモ>が現れなかった。

 

「ど、どうして・・・?」

 

「小日向未来、君は確かに潜在的に白銀聖闘士クラスの小宇宙を持っている。しかし今回は私が君の身体に残ったLiNKERの除去の為に流した小宇宙と君の“友の為に戦う想い”が呼応して偶発的に出現したに過ぎない」

 

「正式に修行を積んだ訳では無いからな・・・」

 

「そんな・・・」

 

アスミタとデジェルの言葉に少しガッカリする未来。話を変えるようにレグルスが切り出す。

 

「それでさ、実はその琴座<ライラ>の白銀聖衣<シルバークロス>は、俺がフランスの露天で見つけたモノだったんだ」

 

「フランスで?」

 

「俺らの黄金聖衣は、この世界に転生した時に直ぐ近くに置いてあったが、どうやら青銅聖衣と白銀聖衣はこの世界の何処かに散らばっているみたいだな」

 

「私達はこれからこの世界に散らばった聖衣の回収に向かわねばなるまい」

 

「どこかの愚か者が悪用しないとも限らないからな」

 

カルディアとアルバフィカ、エルシドが旅に出る意志を奏者達に伝える。青銅聖衣と白銀聖衣、どれも黄金聖衣程ではないが“完全聖遺物”であり、米国やウェルのように悪用する人間が現れる前に自分たちで回収しようと考えたのだ。

 

「だがしかし、マニゴルドにカルディアよ。お前達二人は日本に留まって貰う」

 

「「はっ?」」

 

デジェルの言葉にマニゴルドとカルディアは間の抜けた声を発する。

 

「マニゴルド、お前が我々に協力する“見返り”を覚えているな?」

 

「おぉ、“調と切歌に普通の生活をさせる事”と、“マリアがアーティスト活動を再開する時のバックアップ”だったな」

 

「えっ? 蟹座<キャンサー>のヤツそんな事を“協力条件”にしてたのか?」

 

「あぁ、雪音は居なかったな状況的に・・・」

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴの方は緒川に任せれば問題無いが、その二人には“保護者代行”が必要だろう。それにカルディアは“心臓の事”も有るから聖衣捜索をさせる訳にもいかん。だからお前が責任持ってカルディアとその二人の保護者をやれ」

 

「オイオイオイオイオイ、ってことはなにか!?」

 

エルシドの説明にマニゴルドは調と切歌の頭を掴んで並べる。

 

「俺にカルディアだけじゃなく、この脳筋娘<調>と能天気娘<切歌>の“子守り”までしろってか!!??」

 

「「“子守り”って何(デェスか)ッ!?」」

 

マニゴルドの言いように調と切歌のツッコミが炸裂するがスルーされる。

 

「「「そう言う事だ(ね)」」」

 

「嘘だろォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!!」

 

レグルス・エルシド・デジェルの答えに切実なマニゴルドの悲鳴が響いた。

 

「話は纏まったか?」

 

響と未来は苦笑いを浮かべ、翼とクリスがニヤケ、“脳筋”や“能天気”呼ばわりされてブー垂れる調と切歌をマリアが宥めるのを尻目に、レグルスの背後に回った弦十郎がレグルスの首根っこを掴んだ。

 

「あれ? 弦十郎どうしたの??」

 

「レグルス君、君は確か[俺の“部下”でも無ければ“弟子”でも無いから命令を聞かない]って言ってたな?」

 

「あ・・・」

 

それは調とマニゴルド、響と共に『FRONTIER』に乗り込む際に弦十郎に言った言葉を思い出した。

 

[俺は“弦十郎の部下”でも無ければ“弟子”でも無いんだ!! 弦十郎の命令を聞く“義務”なんか無いだろうがっ!! 以上ッッ!!!]

 

「あぁ、確かに言ったね・・・」

 

「まぁ確かにレグルス君もエルシドもデジェルも俺の部下では無いから俺の命令を聞く義務は確かに無い。だが、協力者として二課に居るならば、それなりの“ケジメ”はつけないとな・・・」

 

「“ケジメ”・・・?」

 

首を傾げるレグルスに弦十郎は“企みの笑み”を浮かべる。

 

 

 

 

こうして、マリアとアルバフィカ、切歌とマニゴルド、調とカルディアは緒川に連れられ司法の裁きを受ける事になり、後に『フロンティア事変』と呼ばれた事件は終結を迎えた。

 

マリアと調と切歌は収容所に送られ自供を続けている。米国政府から“死刑にしろ!”と通達が来たが、斯波田事務次官が。

 

「今大人しくしている黄金聖闘士3人を敵に廻して良いって言うのか? おたくらの軍艦をたった3人で、しかも素手で制圧した手練れ共だぞ?」

 

と言われ米国を黙らせ、マリア達はそれなりに、イヤかなり待遇の良い充実した収容ライフを満喫していた(主に調と切歌が)。

 

アルバフィカとカルディアとマニゴルドは同じように収容所生活をしていたが、“危険性”を考慮されて直ぐに釈放された。

アルバフィカは釈放後、直ぐに世界中に散らばる聖衣の捜索と冥衣の探索に行った。

マニゴルドは表はフリーのジャーナリスト、裏では“情報屋 アクベンス”として活動を行い、調達が帰って来る拠点の為に稼ぎ始め、カルディアは二課の医療チームの治療を断り、現在は警備員のバイトをしながらマニゴルドと共に出稼ぎを始める。

 

ーアルバフィカが旅立つ前ー

 

「マリア達には何も言わねぇのか?」

 

「いずれまた会えるからな。それよりも、お前達もしっかりしろよ」

 

「わぁてるよ!」

 

「フフフ、ではな」

 

そう言ってアルバフィカは旅立ち、マニゴルドとカルディアもその内帰って来るマリア達を出迎える為に働いた。

 

 

 

エルシドは事後処理が終わると直ぐに聖衣捜索の旅へ出かけようとするが。

 

「翼、そう言えばお前はもうすぐ“卒業”だったな?」

 

「あぁ・・・」

 

「・・・・・・今の内に、“限られた時”を満喫しておけ」

 

「エルシド・・・」

 

「俺達は、そんな時間なんて味わえなかったのだからな・・・」

 

そう言って、再び二課の誇る双刃は別れた。湿っぽい挨拶などこの二人には不要、離れていても決して折れない“絆”があるから。

 

 

 

デジェルはマニゴルドとカルディアの“名目上の監視役”をしながら医大を目指して勉強中。なのだが、もう完全に合格ラインを越えてしまっているので、最後の締めくくりをしていた。だが、最近マニゴルドとカルディアの“監視”も有ってクリスとのデートの時間が取れなくなり。

 

「フーーーーン、お兄ちゃんはアタシよりもあの蟹と蠍の監視の方が大事なんだな・・・!」

 

「クリス、そんな事は無いんだ・・・(はぁ、これなら地獄の鬼共と戦っている方が楽だな・・・)」

 

完全に拗ねたクリスを宥めるのに苦労しているようで、心の中でボヤいていた。

 

 

アスミタも再び旅に出てしまい、未来は『ふらわー』のおばちゃんに報告していた。

 

「そうかい、全く忙しないヤツだよ。急に帰って来たと思ったらまたぞろ急に旅に出て・・・!」

 

「おばちゃんは、心配じゃないんですか?」

 

「まぁ少し心配だけどね。全く“放蕩息子をもった母親の気分”だよ! でもま、その内また帰って来るし、未来ちゃんも心配する事無いよ」

 

「・・・はい!」

 

笑い合う二人には、アスミタを心配する気配がまるで無かった。

 

 

 

そして、リディアン音楽院に戻ってきた奏者達。

 

「さて行くぞ雪音。先輩としてお前の世話を焼いてやるからな!」

 

「イヤ何でだよ!」

 

「お前の保護者からも宜しく頼むと言われてるしな」

 

「なにぃっ!?」

 

クリスがすぐさまデジェルに連絡を取る。

 

「(ボソボソ)お兄ちゃん! どういう事だよ!? えっ? イヤ友人関係が上手く行ってないからって、この間の学祭でそれなりに皆とも・・・うん・・・うん・・・はい・・・」

 

結局クリスの方がデジェルの理攻めに白旗を上げた。

 

「さぁ行くぞ、雪音♪」

 

「えぇっ?! ちょっと先輩!!」

 

嬉々としながらクリスの首根っこを引っ付かんで引きずって行かれた。

 

 

ー響sideー

 

そして響と未来はクラスでホームルームが始まると担任の先生がある事を話した。

 

「皆さん、お伝えする事が有ります。実は我が校が近い内に“共学”に成るかもしれません」

 

『えぇえええええええええっっっ!!??』

 

先生の言葉に響達が驚きの悲鳴を上げる。

 

「先生! 何で“共学”になるんですか!? 何かの“陰謀”でも起きたのですか!?」

 

板場弓美が挙手して質問すると。

 

「ただの、“少子化”の影響です・・・」

 

『あ、現実的問題だった・・・』

 

あさっての方向を見ながら言う先生に響達はハモる。

 

「しかし、今すぐと言う訳では有りません。今回“特例”として“男子生徒の留学生”を招く事になり、うちのクラスでその生徒と一緒に学園生活をして貰う事になりました」

 

ワイワイ、ガヤガヤ、ワイワイ、ガヤガヤ

 

「それでは入って来てください」

 

ガラッ

 

「あっ・・・」

 

「まぁ・・・」

 

「あの人・・・」

 

「えっ・・・?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジっすか?」

 

先生に呼ばれ、教室に入ってきた人物を見て弓美と寺島詩織と安藤創世は驚き、未来は唖然となり、響は呆然唖然となりながら、黒板に名前を書き終えて“太陽のように明るい笑顔”を浮かべた人物を見る。

 

灰色のズボンにブレザーとネクタイを締めたーーーーーーーー“レグルス”だった。

 

「はじめまして! 俺、レグルス・L・獅子堂。ヨロシクな!!」

 

『きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!!』

 

明るく爽やかな陽的美少年の登場にクラスメートの歓声がリディアン全体を振るわせた。後にこの事を知った翼とクリスは。

 

「何ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッッ!!??」

 

「マジかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!??」

 

今度は二人の驚愕の悲鳴でリディアンが揺れた。

 

 

 

 

 

 

聖姫絶唱セイントシンフォギアー第二部G編ー 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー『深淵の竜宮』ー

 

ここは、『深淵の竜宮』と呼ばれる。異端技術に関する“危険物”や“未解析品”を収める海底に建造された管理特区。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そしてここに、独房に放り込まれた白髪の男性がいた。ジョンウェイン・ウェルキン・ゲトリクスであった。『フロンティア事変』の主犯格であった彼だが、その左腕には“完全聖遺物 ネフェリム”の“細胞”を移植した事と、その“精神の異常性”から司法では彼を“人間”ではなく響達奏者が使う“聖遺物”と言う“物”として扱われ、この『深淵の竜宮』に保管された。

 

「イヒ、イヒヒヒヒ、イヒヒヒヒヒヒヒヒ・・・そうか・・・そうだったんだ・・・!!」

 

しかし、ウェルにとって“ただの人間以下の物扱い”にされた事等どうでも良かった。今彼の中に燻っているのは、自身の自尊心と野望を全否定した、忌まわしい“神話の闘士達”へと怨嗟の炎だった。

 

「“英雄”には“試練”が必要だ・・・! 有史以来の“英雄好漢”も数々の“試練”を乗り越えてきた・・・! 僕と言う“真の英雄”を完成させる為には、“古き英雄”を倒さなければならない・・・! イヒヒヒヒヒヒヒヒ、イヒャヒャ、イィィイイイヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッッ!! 今の内に一時の勝利に酔っているが良い、“遺物”にして“異分子”共ぉッッ!! 僕は必ず戻ってくる!! 世界には必要なのだ! 僕と言う“真の英雄”がなぁっっ!! ウヒャアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!!!!」

 

生化学者として優れた“頭脳”と“狂気”に染まった精神が再びウェルの“欲望”を甦らせた。

 

 

 

再び聖闘士達と奏者達に“害”を及ぼすために欲望は“悪意の炎”となって燃え上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???ー

 

何処か分からない場所。ソコはマグマが煮えたぎり、噴煙が舞う火山の火口に“一人の男性”が眠っていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

普通の人間では火口の温度と噴煙で生存できないその場所で“男性”はマグマの上に有る大岩に寝そべっており、無表情に眠っていたが、その口元には優しい笑みを浮かび上がった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そして、その男性を見つめる“長髪の男”がいた。男は男性に背を向けて火口から離れて行く。

 

 

 

マグマの海の真ん中に鎮座する“幼い子供二人が刻まれた黄金の匣”を置いてーーーーーーーー。

 

 




これでG編は終わりです。GX編は“絶唱しないシリーズ”を少し書いてからになります。そして“絶唱しないシリーズ”の第一作は、ルナアタック後のデジェルとクリスのデート模様です!

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