聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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アタバクにオリジナル技を授けます。


登場、聖なる少女!

時は少し遡り、アスミタと未来が二課仮設本部から『FRONTIER』へ転移してすぐの頃。

 

「小日向未来、君にコレを渡しておく・・・」

 

アスミタが未来にレグルスがフランスで見つけた“あるモノ”を渡す。

 

「アスミタさん、これって・・・?」

 

「何、御守り代わりだ。持っておくと良い」

 

そう言ってアスミタは未来を連れて宙を飛びながらレグルス達が戦う場所を目指す、未来はアスミタから渡された“銀製のブローチ”を眺めていた。

 

「(綺麗なブローチ・・・でも、“何か”が彫られている・・・?)」

 

中心部に“星座の線”が彫られていた。

 

 

 

~三年前~

 

ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスが聖闘士の存在を知ったのは、以前からFISがマークしていた“完全聖遺物 黄金聖衣”を纏う闘士、黄金聖闘士の活動映像を見た時だった(その頃には既にアルバフィカ達と接触していたナスターシャ教授が調査していたからだ)。

ウェルキンゲトリクスは自尊心<プライド>が異常に高い人間だった、自分の頭脳に絶対とも言える自信があった。自分が“英雄”と信奉・崇拝される存在になる事ができると狂信していたが、“聖闘士の存在”が彼にとって目障りだった。

所詮“聖遺物の恩恵”で力を手にした“遺物”にして“異分子”、だが“英雄”と呼ばれる存在感が彼等にあった。

 

特に、“射手座<サジタリアス>のシジフォス”。

 

彼はその出で立ち、雰囲気、能力、精神、どれをとっても“英雄”・“勇者”と呼ばれても差し支えない存在であった。しかしそれがウェルの自尊心を大いに逆撫でした。

 

「僕にだって聖遺物が有れば・・・僕にも力が有れば・・・あんな異分子共なんかにぃぃぃぃぃぃぃッッ!!!!」

 

暗い研究室のモニターに映るシジフォスをウェルは不倶戴天の怨敵を見るように睨んでいた。そして、そんなウェルを眺めていた“黒い玉”があった。

 

[・・・・・・・・・・・・]

 

「っ!? な、何だ!? 何だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」

 

“黒い玉”に宿る“完全聖遺物 冥衣”に宿る“悪神アタバク”は、ウェルの身体に自らの冥衣を纏わせる!

 

「・・・・・・・・・へへへへへへへへ、ウヘ、ウヘ、ウヘヘヘヘ、ヒャアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!!!」

 

自らに纏う冥衣に一瞬戸惑ったウェルだか、直ぐに狂笑を上げると“黒い光”に包まれて、転移した!

 

 

~日本海~

 

シジフォスはヘリコプターを操作し、日本海側に現れたノイズの討伐に向かっていると、目の前に“黒い光”が現れ、そこから冥衣を纏ったウェルが出現した!

 

「っあれは冥衣<サープリス>?! 何者だっ!」

 

ヘリをオートパイロットにしたシジフォスは聖衣を纏って、ウェルと対峙する。

 

「はじめまして、射手座<サジタリアス>のシジフォス殿。私はジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスと言います。イヤ~、御高名なアテナの聖闘士の最高峰、黄金聖闘士にこうしてお会い出来るとは恐悦至極・・・!」

 

頭を下げ口調は丁寧だが、どこか慇懃無礼な雰囲気と醸し出される“悪意”と“敵意”にシジフォスは警戒する。

 

「何者なんだ? 私はこれからノイズを討伐しなければならない、悪いが邪魔をしないでもらおう・・・!」

 

「いえね、貴方にこれから・・・・・・消えて貰うんだよッ!!」

 

ゆっくり顔を上げたウェルは醜悪にニヤケた笑みで背中の腕でシジフォスを攻撃しヘリを破壊した!

 

「っ!」

 

シジフォスは逸早く脱出し、黄金聖衣の翼を広げてパラグライダーのように気流に乗りながら飛行する!

 

「なんのつもりだ・・・?」

 

「邪魔なんですよぉ・・・僕が“英雄”になる為には、貴方のような“遺物”の存在が、邪魔なんだぁッ!!!」

 

目を見開き更に醜悪に歪ませた笑みを浮かべたウェルは、次々と繰り出すが、冥衣の腕の攻撃をヒラリヒラリとかわすシジフォスはウェルが纏う冥衣を睨む。

 

「その冥衣を外せ! ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス! ソレは君が使いこなせるモノではないっ!」

 

「ヒャァハハハハハハハッッ!! な~に言ってんだぁ、この異分子はぁ? この冥衣が僕を選んだんだよ! そう! この世界の“真の英雄”であるこの僕になぁっ!」

 

「“英雄”? 何を言っているのか分からないが、“真の英雄”とは自らで称えるモノでは無い! “自らの行い”を人々に認められたモノが“英雄”だっ!」

 

「あー!あー! 聴っこえませ~ん♪」

 

シジフォスの言葉に全く聞く耳を傾けないウェル。すると、シジフォスの目が“ミサイルを取り込んだノイズ”を捉えた!

 

「(あれは、ノイズがミサイルを取り込んでいる!? 不味い! もしもあのノイズが陸地に着弾してしまったら!)」

 

シジフォスはノイズを方へ向かうが、ウェルはノイズの事などお構い無しにシジフォスを追撃する!

 

「イィヒヒヒヒヒヒ!! 逃がすかYO! これは通過儀礼だぁ! 僕が“真の英雄”になる覇道を歩む為の・・・」

 

「邪魔をしないでもらおう!」

 

喧しく吠えているウェルなど、完全に眼中に無いシジフォスは聖衣の翼を動かす!

 

「黄金の旋風よ、邪悪を凪ぎ払え! 『ケイロンズライトインパルス』!!」

 

ブォォオオオオオオオオオオオオンンッッ!!!

 

「ブギャァァァァァァァァァァァァッッ!!!!」

 

黄金の旋風に呑み込まれたウェルはそのまま吹き飛び、“黒い光”に包まれ退散した。

 

「・・・・・・・・・」

 

ようやく“邪魔者”が消えた事を確認したシジフォスは急ぎノイズの方へ向かうが。

 

「このままでは間に合わない!・・・・・・奏、すまない・・・!」

 

シジフォスは流星となってノイズに体当たりをした。するとミサイルが爆裂し、巨大な光が破裂しシジフォスを呑み込もうとする!

 

「(あの男が纏っていたのは冥衣・・・射手座<サジタリアス>の黄金聖衣よ! いずれ来る聖戦に備えて、お前は残れ!!)」

 

射手座<サジタリアス>の黄金聖衣をオブジェ形態になり、天高く飛んでいった。それを見届けたシジフォスは目をつぶり、爆裂の光に呑まれた・・・・・・。

 

 

ーウェルsideー

 

「ギャヒィッ! ひ、ひ、ヒヒィっ!」

 

シジフォスの『ケイロンズライトインパルス』で吹き飛んだウェルは自身の研究室に逃げ込むと纏っていた冥衣が“黒い玉”になり、ウェルの近くに転がった。

 

「へへへへ、コレが有れば僕は英雄になれるぅ♪ な~れ~るゥゥゥ~♪ またコレを使えるようにしないとなぁ♪」

 

鼻唄混じりに狂笑を浮かべるウェルを“黒い玉”となった冥衣に中に宿るアタバクが眺めながらニヤリとほくそ笑む。

 

[クククク・・・]

 

そしてウェルにFISのナスターシャ教授から協力の話が入り、そこで“ネフェリム”の存在を知り、ウェルの“野心”と“欲望”が蠢いたーーーーーーーーーーーー。

 

 

 

ー現在ー

 

『っ!?』

 

アタバクから見せられた“三年前の出来事”から意識が現在に戻った聖闘士達と奏者達(未来も含め)。時間的にはまだ1分も経っていない。

 

「こんな・・・こんな下らない理由で・・・シジフォスを・・・!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

余りにも下らない“嫉妬”からシジフォスの行方不明の原因を作ったウェルを翼とエルシドは目を鋭くして睨む。

 

「あ、あぁ、あああああぁぁぁ・・・!!」

 

「ソイツがシジフォスに“一方的な嫉妬”をしていたのは分かったけど、何故力を与えたアタバク?」

 

「面白いと思ったからだ」

 

自分が“遺物”や“異分子”と貶していた聖闘士に実は“妬み”、“嫉み”の感情を抱いていた。自尊心<プライド>の高いウェルにとって“最大にして最悪の屈辱”に咽び泣く姿を無視しながら、レグルスは割りと冷静にアタバクに問うが、アタバクは息を吐くように簡単に答えた。

 

「面白い・・・?」

 

「他の冥闘士達は、ハーデスが甦る時を待ち、冥衣の中で眠っているが、私は“神々の大戦<グレートウォー>”の時代からずっと見てきた。人間と言う存在をな・・・」

 

「(アタバクを除いた冥闘士達はまだ眠りについていると言う事か・・・)」

 

「(ならば、我等のやるべき事は・・・!)」

 

「この男は非常に“愚か”で“我欲”が強い、己の“我欲”を満たす為にどれ程の事が出来るのか、退屈しのぎに“力”を与えてやったのだよ。私の冥衣をこの男が使えるようにしたのもその為だ・・・」

 

「う、嘘だ・・・! あの時<冥衣を初めて纏った時>僕が冥衣を纏えたのは、僕の中の“秘めた力”が発現したからでーーーーーー」

 

「何処までも愚かでめでたいな・・・」

 

「ヒイイイイイイイイッ!!」

 

吊られたウェルを眼前にまで寄せると、アタバクは嘲弄の笑みを浮かべ、全くの“無感情の瞳”でウェルに告げる。

 

「お前ごときにそのような“力”があると本気で思っていたのか?」

 

「あわ、あわわ・・・!!」

 

「お前など・・・」

 

「やめろ! それ以上言うな! やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

「私が与えてやった“力”で踊り狂っていただけの、“ただの人間”イヤ、それ以下の“道化”風情でしかないわ」

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」

 

自分を“英雄”と自己崇拝していたウェルにとって、“ただの人間”以下の“道化”扱いされ、自分が操っていた“力”はアタバクに“与えられた力”である事や、今までアタバクの掌の上で踊らされていた真実は、アイデンティティを根元から粉砕されたも同然、錯乱したように悲鳴を上げたウェルはそのまま力無く吊るされた。

 

「・・・あ・・・ぁあ・・・・・あぁ・・・」

 

逆さまの状態で涙と鼻水と唾液を滴ながら絶望の表情を浮かべるウェルをアタバクは興味なく一瞥する。

 

「もう少し愉快な踊りが見れると思ったが、ここまでか・・・」

 

「アタバクよ、お前は何の目論見があって甦ったのだ・・・?」

 

「・・・・・・(スッ)」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!

 

アスミタの言葉に無言でアタバクが腕を上げると地響きが『FRONTIER』を揺らした!

 

 

 

 

ー弦十郎sideー

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!

 

「なんだ!?」

 

「司令! あれを見てください!」

 

「っ!? “ネフェリムの心臓”が!?」

 

弦十郎と緒川が見ると、ジェネレーターに張り付いていた“ネフェリムの心臓”が赤く輝き、外に飛び出し、弦十郎と緒川は直ぐにジェネレータールームを脱出した。

 

 

 

ーアスミタsideー

 

「ムッ!」

 

『っっ!』

 

アスミタと再び黄金聖衣を纏ったレグルス達が、近づいてくる“気配”に目を鋭くして睨むと。

 

ズシィィィィィィィンンッッ!

 

ソコに現れたのは“真っ赤に発光したネフェリム”だった!

 

「あれはまさか・・・!」

 

「ネフェリム・・・!?」

 

「デェェスっ!?」

 

「今までとまるで違う!」

 

「つか、何か燃えてるぞ!!」

 

「一体あれって!?」

 

驚く奏者達にアタバクが答える。

 

「“心臓部”に内包していた超エネルギーを解放し形作った、1兆度の超高熱を発する新たな“ネフェリム”・・・そう、“ネフェリム・ノヴァ”とでも名付けようか」

 

「何故お前がネフェリムを使える?!」

 

「簡単な事、コレ<ウェル>がこの『FRONTIER』を操作できたのはネフェリムの細胞から放たれる“波動”を使って操作できた、ならばその細胞よりも強力な“波動”を放てば簡単にネフェリムを操る事が出来る」

 

「そのネフェリム・ノヴァを使い、何とする?」

 

「そうだな、コレを使い、この“バラルの呪詛”に汚染された地上と人間達を・・・焼却処分するか・・・!」

 

『っっ!!??』

 

「(やはりな・・・・・・)」

 

アスミタ以外は驚愕の様相を浮かべ、響がアタバクに向かって叫ぶ。

 

「なんで!? なんで地上や人々を処分するんですか!?」

 

「人間は愚かな生き物だ、今回のような“心の暖かさ”を知っても直ぐに己の“我欲”に呑まれ過ちを繰り返す。ならば、一度“呪詛”に犯された世界を滅却し、“新たな人類”を造り出す方が手早い」

 

「新たな、人類だと・・・?」

 

「何言ってやがる・・・!」

 

翼とクリスもアタバクの言葉に戸惑う。

 

「そんな事無いよ! 誰とだって解り合う事ができる! 貴方とだって!」

 

「ハッ! 自分の“過去”と“真に向き合っていない”小娘が何をほざく?」

 

「えっ・・・?」

 

「君の言葉など所詮、人間の綺麗な心“だけ”を見て、“汚い心”は“見て見ぬフリ”をしている陳腐な持論だ・・・!」

 

「そ、そんな事・・・」

 

「たかだか十数年しか生きておらず、“夢想”に酔っている“だけ”の小娘の言葉など、幾百、幾万、幾億と並べられようとも、私の心に響かぬわ」

 

「・・・・・・・・・」

 

アタバクの見下した瞳と、はっきりとした“拒絶の言葉”に響は押し黙ってしまい、アタバクはアスミタを見据える。

 

「アスミタよ、貴殿はソコの小娘と違い理解している筈だ。今の人類は“バラルの呪詛”に汚染され、人類は果ての無い“過ち”を犯し続けている。このままでは冥王ハーデスが甦る前に人類が地上を滅ぼしてしまいかねない。だからこそ、私“達”のような“大いなる悟り”に近き者が、新たな人類の創造主に成るべきだとは思わないか、アスミタ?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アタバクは同じ“神に近い闘士”であるアスミタを仲間に引き入れようとする。

 

「まさか、ヤツは・・・アタバクは・・・!」

 

「アスミタを仲間に引き入れるつもりか・・・!?」

 

「そうなったら、こっちは“神に近い闘士の二人”と“ネフェリム・ノヴァ”を相手取らないといけねぇな」

 

アルバフィカとカルディア、マニゴルドが警戒し、奏者達とレグルス達もアスミタの動きに僅かに警戒する。

 

「どうだアスミタよ、私と共に新たな人類を生み出そうではないか。私とお前は同じ・・・」

 

「違うッ!!!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「み、未来・・・?」

 

アタバクの言葉を遮るように声を張り上げる未来に、響だけでなく翼もクリスもマリア達は勿論、レグルス達も呆気にとられた。

 

「アスミタさんは貴方とは違う! だってアスミタさんは、“生命の尊さ”を知っているから! そうじゃなきゃクリスのご両親の為に、あんなに優しくて清らかなお経を唱えられる筈が無いもの!!」

 

「あっ・・・!」

 

「ハッ・・・!」

 

未来の言葉にクリスとデジェルは思い出す、クリスの両親の死を悼み、唱えてくれたアスミタの曇りの無い読教を。

 

「そうだよな・・・アスミタはあんな生け好かねぇ上から目線野郎とは違う!」

 

「アスミタは誰よりも、世の無情と、それで傷付く人々の事を想い憂いる事が出来る男だ。お前のように掌で人間を見下す者とは断じて違う!」

 

他の皆は首を傾げたが、クリスとデジェルだけは理解し、未来に同意した。

 

「フゥゥ、凡俗に我らを理解する事など、到底出来はしない・・・」

 

「黙れ・・・」

 

「何・・・?」

 

「黙れと言っている・・・アタバク・・・!」

 

見るとアスミタは小宇宙<コスモ>を高めてアタバクに凄む。

 

「何を言うかと聴いてみれば、とんと下らん話をしてくれる・・・! 人類の創造主だと? 全く詰まらん話だ・・・!」

 

「アスミタよ、貴殿はこの世界をこのままにするのか? “バラルの呪詛”に汚染されたこの世界を・・・!」

 

「私とて初めてこの世界に顕現した時、世界の醜さに失望と徒労に苛まれた。だがな、私はこの世界を滅却しようなどとは思わん・・・! 私には、“大切なモノ”ができ過ぎてしまった・・・」

 

アスミタの脳裏にのれんの向こうにいる人、“おばちゃん”の笑顔と友を想う健気な少女<未来>の笑顔が浮かんだ。

 

「アタバクよ、所詮我らは神に“近い”だけだ、“神”その者になった訳ではない。不毛な事をするな!」

 

「・・・・・・・・・残念だ、アスミタ」

 

失望の顔になったアタバクの背中の腕の何本かが、『FRONTIER』の大地に突き立てられると、地面からおどろおどろしくも禍々しい“巨大な門”が現れ、“門”が開いた!

 

「っ! あれはっ!」

 

「地獄の悪鬼羅刹よ、我に従え!」

 

『地獄門 百鬼夜行』ッ!!

 

グオオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

門の中からまるで日本神話やおとぎ話で出てくるような異形の怪物、筋骨隆々で顔の口からはギザギザの歯が生え、その頭には一本から二本もある角を生やしたそう、“鬼”が現れた!

 

「な、何だあれは?!」

 

「“地獄”の悪鬼達だ・・・!」

 

「“地獄”っ!? んなもんが本当に有るのかよ!!」

 

「原理はおそらくアスミタの『天空波邪 魑魅魍魎』と同じだろう。“地獄の門”を召喚し、地獄の鬼共を従えているんだ!」

 

奏者達はおののくが、聖闘士達はそれぞれ構える。

 

「未来、直ぐに逃げて!」

 

「イヤ!」

 

「イヤ、イヤって・・・」

 

響は未来を逃がそうとするが、未来は頑として動こうとしなかった。

 

「皆が戦っているのに、私だけ逃げられないよ! 私だって戦いたいんだ!」

 

「で、でも・・・」

 

「(私だって、響や翼さんやクリスやマリアさん達を・・・・・・アスミタさんを守りたい!)」

 

シュォォォォォォォォォ・・・。

 

「えっ?」

 

突然、未来の髪と瞳が淡く輝く。

 

『っっ!!??』

 

未来の異変に、聖闘士達の髪と瞳も淡く輝いた。

 

「コイツは・・・!」

 

「おいおいおいおいおい、マジかよ!?」

 

「小日向未来、君は・・・!」

 

カルディアとマニゴルドとアルバフィカが未来を見据える。

 

「小日向に、小宇宙<コスモ>を感じる・・・!」

 

「まさか・・・!」

 

「デジェル、分かった?!」

 

「小日向君は体内に残っていた“LiNKER”を除去する為に、アスミタから“小宇宙<コスモ>”を流し込まれていた・・・」

 

「そうか! それが起因になって未来の中に有る小宇宙<コスモ>が目覚めたんだ!」

 

「未来に、レグルス君達と同じように小宇宙<コスモ>が・・・!?」

 

「何と・・・!」

 

「マジ・・・?」

 

「信じられないデェス・・・」

 

「(じゃマニゴルドの小宇宙<コスモ>を流し込まれた私にも・・・)」

 

「(アルバフィカから流された私にも・・・小宇宙<コスモ>が・・・?)」

 

キュォォォォォォォォォ・・・。

 

何かが“共鳴”する音が聴こえ、未来は懐にしまっておいた“ブローチ”を取り出す。

 

「あっ! ソレ、俺がフランスの露天で見つけた!」

 

「小日向未来! 呼び掛けよ、そのブローチに眠る君の“運命の星座”をっ!!」

 

「アスミタさん・・・わかる、このブローチの中に眠る星が・・・・目覚めて、私の“大切な友達”と、“大切な人”を守る為に・・・・!」

 

そして未来は呼ぶ、己の“星の鎧”を!

 

「琴座<ライラ>ッ!!」

 

未来が叫ぶと、ブローチがまるで聖衣レリーフのように光り輝き、その姿を“白銀の聖衣匣”へと変え、匣が開くとその中から“白銀の琴のオブジェ”が現れた!

 

「あれって!?」

 

「黄金<ゴールド>イヤ、白銀<シルバー>の聖衣!?」

 

「まさかあれが!」

 

「聖闘士の最高峰が黄金聖闘士なら、“正規の聖闘士”の称号である聖衣!」

 

「白銀聖闘士<シルバーセイント>の!」

 

「白銀聖衣<シルバークロス>・・・!」

 

驚く奏者を余所に、白銀の琴が各パーツに分割し、未来の身体に纏う!

 

「未来が、“女性聖闘士”に!?」

 

「イヤ待て! あれは!?」

 

女性らしい細く洗練された曲線になり、身体を包む聖衣の肩や腕のパーツからフリルが現れ、スカートを履いた出で立ちにヘッドパーツはティアラのように頭に装備される。それは動きやすいように“軽装”になる“女性聖闘士”と異なる姿。

 

「あれは、“女性聖闘士”などではない!」

 

「そう、我々聖闘士がアテナを“守る闘士”ならば、アテナを“支える少女”、その名を“聖闘少女<セインティア>”っ!」

 

驚くレグルス達や響達、さらにこの展開に面食らって硬直したアタバクを無視してアスミタは叫ぶ!

 

「小日向未来、彼女こそ新たな“聖闘少女“。琴座の聖闘少女<ライラのセインティア>”だっ!」

 

白銀に煌めく聖衣を纏い、白銀の竪琴を持って佇む未来の姿勢は、まるで“神話の戦乙女”のように勇ましく、凛々しく、そして美しかったーーーーーーー。




『地獄門 百鬼夜行』
アタバクのオリジナル技、原理は『天空波邪 魑魅魍魎』と同じ、怨霊ではなく地獄の悪鬼羅刹を召喚し従える技。

未来の琴座<ライラ>の白銀聖衣は、“琴座のオルフェ”の聖衣をセインティア翔風にアレンジしたモノを想像してください。

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