聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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今回は“聖闘士伝統”の“アレ”が出ます!


世界の“絶唱”と闘士“本気”

「 痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い! イッダァイィィイイイイイイイッッ!!!」

 

両目に刺さった薔薇を引っこ抜いたウェルは両目を抑えて汚ならしく喚いていた。

 

「あ、あのアルバフィカさん・・・」

 

「流石に両目に薔薇を突き刺すのは・・・」

 

「やり過ぎじゃねぇの? あ、いやアタシもアイツ<ウェル>の事は“ソロモンの杖”を悪用してきたし、生理的にも嫌いだけど・・・」

 

『“ソロモンの杖”の悪用』、『ソレを使った大量殺人(無関係な一般人を含んで)』、『未来を唆して奏者に仕立てたこと』、『『FRONTIER』を悪用』と挙げればキリがない事ばかりしてきたが、流石に気の毒と思う所は、響達の“美点”であり“弱点”でもある。

 

「安心しろ、先程も片目を潰したが、“ネフェリムの細胞”の回復力で再生したのだからな」

 

「成る程、それならば問題無い」バキバキ、バキバキ

 

「って事はさ、“幾ら痛め付けても大丈夫”って事?」ゴキ!ゴキ!ゴキ!ゴキ!

 

「ソレを聞いて安心した。これで何の躊躇なくあの愚か者を殺れる・・・!」ゴキン、ゴキン・・・

 

「「「(アワワワワワワワワワワワワワ・・・)」」」

 

アルバフィカの言葉を聞いて、エルシドとレグルスとデジェルは、拳や指の関節や肩をゴキゴキと鳴らすのを見て、響達奏者はおののいた。

 

グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!

 

『っ!!』

 

エルシドにのされたネフェリムが雄叫びを上げて立ち上がり、片腕を伸ばして攻撃する!

 

すると!ネフェリムの伸ばされた腕にワイヤーが絡み付く!

 

「デエエエエェェェスッッ!!」

 

ワイヤーの先を見ると、切歌が『断殺・邪刃ウォ††KKK』でネフェリムの腕を切断した!

 

「フッ!」

 

空かさず調が『非常Σ式・禁月輪』でネフェリムの腹部を切り裂く!

 

「あっ!」

 

「「っ!?」」

 

「やっと来たか・・・」

 

「フッ・・・」

 

「新たな奏者か・・・」

 

響が顔を綻ばせ、翼とクリスが驚き、聖闘士はフッと微笑む先にいたのは、“シュメール神話の戦女神ザババ”が振るったとされる“二刃”。

 

「“シュルシャガナ”と・・・」

 

「“イガリマ”、到着デス!」

 

『シュルシャガナ』のシンフォギア奏者、月読 調。

 

『イガリマ』のシンフォギア奏者、暁 切歌。

 

「来てくれたんだ!」

 

「あれ? “保父さんその1<マニゴルド>”はどうしたの?」

 

「今はちょっと手が離せないンデスよ」

 

「もうすぐ来ると思う・・・」

 

「とは言え、コイツ<ネフェリム>を相手にするのは、結構骨が折れそうデスよ・・・!」

 

ギュワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっっっ!!!!

 

切歌に切断された腕と調に切られた傷が再生し、雄叫びを上げるネフェリムに渋い顔を浮かべる。

 

 

「だけど歌があるッッ!!」

 

 

突如戦場に響いた声に一同は声のした方へ目を向けると、空中を漂う岩の上に、マリア・カデンツァヴナ・イヴがいた!

 

「「マリアッ!!」」

 

喜色を浮かべる切歌と調、そして響達がマリアの方へ向かう。

 

「マリアさんっ!」

 

「もう迷わない。だって、マムが命掛けで、月の落下を阻止してくれている・・・」

 

マリアが、ナスターシャ教授のいる空を見る。

 

 

「いぃ今更何しに来やがった贋作女がぁ!」

 

両目を再生させ、視力が戻りつつあるウェルはマリアを忌々しそうに睨む。

 

「焼き尽くせ! ネフェリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイムっっっ!!!!」

 

クバアアアアアアアアアアアアアアッッ!!

 

ネフェリムがマリア達のいる岩へ火球を吐き飛ばした!

 

『あっ!!』

 

『・・・!』

 

奏者達の前に聖闘士達が火球の前に立ち塞がる!

 

チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッッ!!

 

火球が当たり、爆裂した!

 

「フヒヒヒヒヒヒヒヒッ! ウワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」ッ!?」

 

ウェルが上げる耳障りな狂笑を打ち消すようにマリアの歌声が響く!

 

「あああんんっ!!?」

 

煙が晴れると奏者達を守るように空に佇む黄金聖闘士と、“光の球体”にいる奏者達がいた!

 

「・・・・・・・・・」

 

“球体”にいるマリアの首には、“傷だらけのシンフォギアの結晶”があった!

 

「(調がいる、切歌がいる、マニゴルドがいる、カルディアがいる、マムとセレナもそして、アルバフィカもついている!! 皆がいるなら、これ位の奇跡!) 安いモノッッ!!」

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

マリアに続くように響が、翼が、クリスが、調が、切歌が、歌を歌う! “希望の歌”を!!

 

「装着時のエネルギーをバリアフィールドにぃぃ!? だがそんな芸当! いつまでも続くモノでは無い!」

 

ウェルは再びネフェリムをけしかけて火球で攻撃させようとする!

 

 

 

「無粋な真似はやめて貰おう・・・」

 

 

 

ビキッ!

 

ゴガッ!? グゲガガガガガガガガガガガガッッ!!

 

「ネ、ネフェリムッッ!!??」

 

突如、ネフェリムの巨体が停止し、その身体が絞られた雑巾のようにねじ曲がる!

 

グガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッ!!!!

 

「ようやっと殻を破ろうとする若人の邪魔をするのは、流石に見過ごせんのでな・・・」

 

「なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!??」

 

驚愕するウェルが辺りを見回すと、別の岩で座禅を組んでいる黄金聖闘士がいた!

 

「ヴ、ヴヴヴヴヴヴヴ、乙女座<ヴァルゴ>ッッ!! 何で! 何でお前まで邪魔するんだああああああああああああああああッッ!!!???」

 

乙女座の黄金聖闘士 ヴァルゴのアスミタとその隣にいる小日向未来を狂気と殺意に満ちた目で睨むが、アスミタはそんなウェルの双眸に少しも臆する事なく毅然と見据える。

 

「この戦いは人類を行く末を決める大事な一戦。座している訳にはいかんからな・・・」

 

「クソ! クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクッッソオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

今度は“神にもっとも近い”と言われている“ホラ吹き野郎”が自分の邪魔をする事に、ヒステリーを起こすウェルは背中の腕でアスミタと未来を攻撃しようとする!

 

「・・・・・・・・・」

 

「安心しなさい、小日向未来・・・」

 

「アスミタさん・・・・・・はい!」

 

一瞬たじろぐ未来にアスミタが優しく囁くと、未来は安心したように微笑む。

 

「『降魔印』!」

 

「グアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

仏敵を払う攻撃に、ウェルは悲鳴を上げて地面に叩きつけられる。

 

「やれやれ、ここまで愚か者だとは思わなんだよ、ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス。お前には“彼ら”が相手になろう・・・!」

 

アスミタの頭上に“黒い渦”が現れた!

 

「な、何だあれはっ!!??」

 

「今まで君が遊び半分とふざけ半分で命を奪われた者達の“苦しみ”と“怒り”と“悲しみ”、その身を持って償うが良い! 」

 

それは冥界をさ迷う亡者の成れの果て怨霊達を呼び出す乙女座<ヴァルゴ>の技!

 

「『天空覇邪 魑魅魍魎』!!」

 

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!

 

「ウゲギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!???」

 

“黒い渦”から現れた怨霊達がウェルに襲い来る!

 

「な、何だコイツらは!? や、やめろ! 汚らわしい! 穢らわしい!! こ、この僕を誰だと思って・・・ゲヤアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

怨霊達に包まれたウェルは汚ならしい悲鳴を上げる、ねじ曲げられたネフェリムは再度身体を再生させながら奏者達を向けて、連射で火球を吐き飛ばした!

 

「『ライトニングボルト』!」

 

「疾っ!」

 

「『ダイヤモンドダスト』!」

 

「『ローリング・ローズ』!」

 

レグルス達 黄金聖闘士が、奏者達を守る! 奏者達は歌を重ねる!

 

「惹かれ合っている理由なんていらない・・・!」

 

「・・・・・・」

 

翼が調と。

 

「アタシもつける薬がないな・・・!」

 

「それはお互い様デスよ・・・!」

 

クリスが切歌と。

 

「調ちゃん! 切歌ちゃん!」

 

そして響と手を繋ぎ、心を繋げる!

 

「貴女のやっている事、“偽善じゃない”と信じたい。だから近くで私に見せて、貴女です言う“人助け”を、私達に・・・」

 

「うん・・・!」

 

奏者達の歌が、フォニクゲインが一つになる!

 

「(繋いだ手だけが、紡ぐ者・・・!)」

 

マリアのフォニクゲインが更に高まる!

 

「“絶唱”の六人分か・・・!」

 

「イヤ、六人だけでは無い。これを見ている多くの人々が、“奇跡”を生み出そうとしている!」

 

「“心を一つにする事で生み出す奇跡”か・・・」

 

「この歌が生み出す“奇跡”の輝き! 俺はこの目で見てみたい! 響達が奏でて繋げて束ねて、生み出す“奇跡の可能性”を!!」

 

次々とネフェリムからの火球を防ぎながら聖闘士達は見守る。新たな“可能性を生み出す者達”を!

 

「(私が束ねるこの歌は! 70億の、“絶唱”だああああああああああああああッッ!!!)」

 

黄色と、青と、赤と、緑と、桃色と、白の流星が天に登り、重なり、奏者は新たな姿となった!!

 

切歌が、調が、翼が、クリスが、マリアが、そして響が、その纏うギアが。

 

 

シンフォギアの最強の姿、XD<エクスドライブモード>へと進化した!!

 

 

「響き合う皆の歌声が!」

 

「「「「「「シンフォギアだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」」」」」」

 

重なった六人が流星となり、ネフェリムを貫いた!!

 

チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンッッ!!!

 

虹色の竜巻が天に登り! ネフェリムを粉砕した!!

 

「やった! 響ッ!!」

 

「えっ? えええええェェェっ!? 未来っ!?」

 

そこでようやく未来が来ていた事に気付いた奏者達と、とっくに気付いていた聖闘士達は地上に降りた。

 

 

 

「消えろ! 消えろ!! きぃいえぇえろおぉおっ!!」

 

ようやく怨霊達を冥衣の力で消したウェルの目に映ったのは、XD<エクスドライブモード>になった奏者達だった。

 

「何だこれは!? ネ、ネフェリムはどうしたあああああああああああっ!!!???」

 

「マリア達によって粉砕された。ウェル、お前の足掻きは此処までだ!」

 

「何なんだよ!! 第一何だ!? マリアのそのシンフォギアはああああああッッ!!!???」

 

往生際悪く喚くウェルにマリアは毅然と向き合う!

 

「このシンフォギアは“アガートラーム”! セレナから託された! シンフォギアよ!!」

 

ウェルに臆する事なく立つマリアのその姿は、先程までの弱々しさが全く無かった。ウェルの目には、マリアのその毅然とした“英雄”のような姿勢が、“ある男”と重なる。

 

ウェルが“最も毛嫌い”し、“最も嫌悪”し、“最も畏れてやまないその男”に!

 

「贋作が・・・贋作が贋作が贋作が贋作が贋作が贋作が贋作が贋作が贋作が贋作が贋作が贋作が贋作が贋作が贋作が贋作がアァアッッ!!!」

 

歯をガチガチ言わしながらウェルが醜悪に顔を歪めまくり狂ったように吠える!

 

「贋作の癖に、偽物の癖にィィイイイイイイイッ!! “あの男と同じ目”でぇ! この僕を見るなあああああああああああああああああああッッ!!!」

 

ヒステリーを引き起こしたウェルは、喚きながら背中の腕をマリアの向けて攻撃するが・・・。

 

ドドドドド!!!

 

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっっっ!!!!」

 

ウェルの身体に“赤い針”が5本突き刺さる!

 

「イヤ~、面白いモノが見れたわ~・・・」

 

『・・・・・・・・・・』

 

「えっ!?」

 

「何っ!?」

 

「マジかよ・・・?!」

 

「あ、貴方は・・・!」

 

“やっと来たか”と顔に浮かべる聖闘士達と驚く奏者達だが、調と切歌は違った。

 

「あっ・・・!」

 

「もう! 遅いデスよ・・・!」

 

二人は声を揃えてその男の名を呼ぶ。

 

「「“カルディア”!!」」

 

重厚な黄金聖衣を纏い蠍の尻尾をおさげのように垂れ流した群青色の癖っ毛を無造作に伸ばした獰猛な笑みを浮かべるその男は・・・・・。

 

『蠍座の黄金聖闘士』、スコーピオンのカルディア!!

 

「おかえり、“保父さんその2”♪」

 

「誰が“保父さんその2”だ、レグルスこの野郎!」

 

「す、スコーピオンっ!? な、なななんで!? 何で生きてんだよおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

「教えてやろうか? ドクターウェルさんよ♪」

 

カルディアの隣に“蟹座<キャンサー>のマニゴルド”が意地の悪そうな悪どい笑みを浮かべて現れた。

 

「マニゴルドっ!?」

 

「ようマリア! 中々似合ってンじゃねぇか、そのオNEWのシンフォギア♪」

 

「“保父さんその1”も来たか・・・」

 

「なんだよデジェル、その“保父さんその1”って?」

 

なんて漫才している聖闘士は、訳が分からないと半狂乱に陥り頭を抱えるウェルを見据えながら、カルディアがデジェルを睨む。

 

「答えはな、デジェル! テメェ俺とガチで殺り合う気無かったのか!?」

 

「失礼な、一応真面目に戦ったぞ」

 

「じゃ何で俺の“星命点”を突きやがった!?」

 

『“星命点”・・・?』

 

「あぁそうだ! デジェルの野郎、俺の星命点を突いて俺を“仮死状態”にしやがったんだよ!!」

 

聖闘士の身体には、聖闘士が己の纏う聖衣のデザインとなった星座の星の位置がツボのように身体にありそれが“星命点”と呼ばれ、血止めの“真央点”や痛覚を麻痺させたり、更には聖闘士の急所にもなっている。

 

「カルディアとデジェルが最後の技を放ったあの時に、デジェルは『オーロラエクスキューション』を放ちながらカルディアの身体の“星命点”を突いて一時的に“仮死状態”にしたのだ」

 

「しかしエルシド、何故そんな事をデジェルは?」

 

「簡単だ。カルディアの心臓の熱はカルディアが小宇宙<コスモ>を燃やせば燃やすほど、心臓はその熱を上げていく、だから“星命点”を突いて“仮死状態”にして心臓の熱を弱らせようとした」

 

エルシドの後をマニゴルドが切歌の頭に肘当てのように腕を乗せて寄りかかりながら話す。

 

「そして、運良く“黄泉比良坂”で調を探していた俺がカルディアの“魂”を見つけてな、現世に戻って氷付けになった身体にカルディアの魂を入れたってこった・・・」

 

ガァウ!と腕を乗せられた切歌がマニゴルドの腕を払い、カルディアが締めくくる。

 

「しかも俺が目覚めて心臓の熱が再燃焼した時に備えて『エターナルコフィン』で氷付けにして、更に腐敗しないように肉体を“冷凍保存”していたんだよ・・・・・・俺は冷凍食品かっ!?」

 

「まだ冷凍食品の方が食べられる分、カルディアよりマシだけどね♪」

 

「うるせぇよレグルス! デジェル、テメェ・・・!」

 

「私は“冷静”に判断したまでだ」

 

「はぁっ?!」

 

「もしも私がカルディアを殺していたら、月読調くん、君はどうする?」

 

「・・・・・この戦いが終わった後で水瓶座<アクエリアス>に決闘を申し込んでいた」

 

「ちょっと調!?」

 

「無謀過ぎデスよ!!」

 

少し考えた後に黄金聖闘士に喧嘩を売る気満々の調に仰天する奏者一同。それを聞いてデジェルはフッと笑みを浮かべる。

 

「と言う訳だカルディア」

 

「どういう事だよ?」

 

「つまりだ、“お前を殺して月読調くんに怨まれるか”、“生かした後でお前からグチグチ文句を言われる”か、どちらが私の今後にとって“最適”か、“冷静”に判断したまでだ」

 

「テンメェ・・・・・!!!」ゴキゴキ! ゴキゴキ!

 

ボスッ、ギュッ!

 

「アン? 調・・・?」

 

したり顔のデジェルを殴ってやろうと拳を鳴らすカルディアの腰に調が抱きつく。

 

「良かった・・・カルディアが無事で・・・本当に良かった・・・!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・まぁ、良しとするか」

 

ガシガシと頭を掻いて、安堵した笑みを浮かべて目に涙を浮かべた調の頭をポンポンと優しく叩くカルディア。そんな二人を聖闘士と奏者達は微笑ましく見つめるが。

 

「ウウウウゥゥッッ!!! なぁにを和んでいやがるウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!」

 

喧しいウェルの金切り声に奏者は警戒し、聖闘士は冷ややかに、鬱陶しそうに見る。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっっっ!!!! 許さない!! アァア許さない!! 何で! 何で何で何で何で何でぇっ! 僕の邪魔をするクソ共がこんなにいるンだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」

 

ガリガリと髪を引っ掻き、ヒステリックに喚くウェルをアルバフィカは冷たく見据える。

 

「人類の大半を月の落下で滅ぼそうとしているならば、我等が敵に回るのは当然だろう!」

 

「人類の大半を!?」

 

「月の落下で!?」

 

「滅ぼすだぁ!?」

 

「あの外道寄天烈、そんな事考えてたデスか!?」

 

「本当なのマリア!?」

 

「ええそうよ。あの男は月を落下させ、“最低限の人間”だけを『FRONTIER』で救済し、自らを“英雄”と崇拝させるつもりだったのよ!」

 

「けっ“救済する最低限の人間”なんて精々、我が身可愛さで、あの野郎に泣きすがり、英雄と崇め奉る事ができる人間共だろうよ」

 

「そんな選り好みで救済しようなどと・・・!」

 

侮蔑の視線を向ける聖闘士達にウェルは顔を醜悪に歪ませ、舌をだして嘲弄するように吠える。

 

「脳ミソの出来が底辺の底の浅い人間共には分からないだろうな! 今の人類の数は増えすぎなんだよ! 有史以来並み居る英雄好漢が人類を統治できなかったのは、人類が多すぎたからだ! ならば簡単! 人類を間引きし、僕が統治できる数の人間達を治めれば! 僕は英雄になれるって事だろうが!!」

 

「そんな事ダメだよ! 自分の選り好みで何も悪い事していない人達を見捨てるなんて!」

 

「貴様がやろうとしているのは“統治”ではなく“支配”ではないか!」

 

「そんなふざけた理由でテメェは、今まであんな非道をやって来たのか?! ふざけんのも大概にしろ!!」

 

「この僕が歴史に名を刻む、崇高かつ壮大な“英雄譚”が生まれようとしているのに、凡夫共には高尚すぎて理解ができないようだなぁ・・・!」

 

響と翼とクリスが訴えるが、ウェルは額に手を当て、やれやれと言わんばかりに見下しながら首を振る。

 

「・・・・・ちっぽけなヤツ」

 

「アァ(ピキッ!)・・・・・?」

 

ボソッとレグルスが呟いた一言に尊大な態度を取っていたウェルの顔に血管が浮かび、デジェルが引き継ぐ。

 

「壮大に言ってはいるが、端的に言うと、〔自分“ごとき”の“小さな器”では、今の人類を支配できないから、“身の丈に合った分の人類”を支配する〕っと言う意味だろう」

 

「自らの“器量の狭さ”を暴露するとはな」

 

「(ビキッビキビキ!)」

 

デジェルとエルシドの呆れ果て、冷めた言い様に更に血管を浮かび上がらせる。

 

「まそう言うなって、所詮あの野郎は“その程度の器の人間”だって事だろうよ♪」

 

「テメェの“狭量”をあそこまで開き直って堂々と言える“人間”はそうはいないぜ♪」

 

「ヤツは“誇り高き矜持”と“傲慢な自尊心”を履き違えた、“安っぽいプライド”しか持ち合わせていない“人間”だからな・・・」

 

「(ビキビキビキビキビキビキッッ!!)」ガチガチガチガチガチガチ!!

 

マニゴルドとカルディアとアルバフィカの侮蔑の言葉に顔中を血管まみれにして歯をガチガチ鳴らす。

 

「まだ〔月を穿って全人類を支配する!〕って言っていた“スペラリ”、“フィーネ<櫻井了子>”の方がスケールの大きい事を言っていたよ。それに比べると、ウェル博士、アンタって“人間”は・・・・・なんて“矮小”なんだ・・・!」

 

「(ブチン!!!) “人間”? この僕を“人間”だとっ!? う、うぅぅ、うううう! ウグガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっっっ!!!! どこまでも!!どこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでとどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもッッ!! テメェ等はこの僕をコケにすれば気が済むんだあああああああああああッッ!!」

 

黄金聖闘士(アスミタは除く)から散々にボロクソ言われ、自尊心<プライド>を逆撫でされまくったウェルはヒステリックに喚き散らせ、殺意と憤怒で醜悪に歪ませまくった形相でレグルス達に憎悪の視線を向ける。

 

「テメェらみたいな“旧時代の遺物”が! この“新世界のスーパーヒーロー”であるこの僕を見下すんじゃねえよおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」

 

「“新世界の”、“スーパーヒーロー”?」

 

「只の“大量殺人の悪党”ではないか?」

 

「所詮“借り物”、イヤ“盗んだ力”で己を“英雄”だと嘯いている誇大妄想に酔った“陳腐な人間”だからな・・・」

 

「アアアアアアアァァアアアアアアアァァァアアアアアアアアアァァァアアッッ!! もういいっっ!! お前らと話すと僕の至高な頭脳が腐ってしまう!! 大体お前ら聖闘士だって! 所詮その“金メッキの鎧”が無ければ、只の“ちっぽけな人間”だろうがよ!!!」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「散々ばら僕に偉そうに説法しているが! 所詮お前らだって聖衣なんて“借り物”で戦うしか能がない連中の癖にっ!!」

 

「ウェル・・・!「それもそうだな・・・」アルバフィカ??」

 

「ハァッ!」

 

バコオオオオオオオンン!

 

アルバフィカの返答にマリアは首を傾げると、アルバフィカはなんと、自身が纏う聖衣を脱ぎ捨てた!!

 

「アルバフィカ!?」

 

「それじゃ、俺達もっ!!」

 

アルバフィカに続くようにレグルスが、エルシドが、デジェルが、マニゴルドが、カルディアが、聖衣を脱ぎ捨てた! 脱ぎ捨てられた聖衣はそれぞれ、獅子、山羊、水瓶を持ったシーマン、蟹、蠍、一匹の魚のオブジェ形態となり鎮座する。

 

「レグルス君達何してるの!?」

 

「聖衣を脱ぎ捨てるなど、聖闘士にとっては裸同然ではないか!?」

 

「あの野郎の口車に乗る事ネェじゃねぇか!?」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

無論、そんな状態の聖闘士達に奏者達は抗議するが、聖闘士達は悠然とウェルに近づく。そしてウェルは歪みきった笑みを浮かべてほくそ笑む。

 

「ケヘヒャハハハハハハハハハハハハっ! まさか、まさかまさかぁ! あんな言葉で聖衣を脱いで裸同然で来るとはぁ♪ プププ、クヒヒヒヒ、ヒヒヒヒ、良いでしょ♪ その愚かな蛮勇に免じて貴方方聖闘士の流儀に付き合ってあげます!」

 

ウェルがネフェリムの細胞を移植した左腕で冥衣を操ると・・・。

 

「「「「「「さぁ、貴方方の大好きな、一対一の戦いをしましょう!!」」」」」」

 

なんと、“6人のウェル”が現れた!

 

「何デスか、あれは!?」

 

「ドクターが増えた・・・?!」

 

「アスミタさん! あ、あれって!?」

 

「騒ぐな、増えたのは“実体のある幻覚”のようなもので本体は一体だ」

 

奏者達と未来は驚くが、アスミタは冷静だった。6人のウェルは、アルバフィカ達と一対一の状態になる。

 

「「「「「「さぁ! これで終わりだぁっ!! 散々この僕に下劣なまでに“屈辱”と“恥辱”と“侮辱”と“汚辱”を味合わせたお前らには! たっぷりお礼をしたやるYOッッ!!! 」」」」」」

 

6体のウェルの背中の腕がアルバフィカ達に襲いかかる!!

 

「「「「「「(ププププ、プヒヒヒヒ、笑いが込み上がって、腹がねじ切れてメガネがずり落ちそうだぁっ! さあ見せろっ!! この僕を辱しめたテメェらの惨めで無様な死に様をををををををををををををををををををっっ!!!!)」」」」」」

 

ウェルの顔が“勝利の喜色”に染め上がり・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グシャッ! ゴギャッ! バキッ! ドゴッ! ベキッ! バゴンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「ハへ・・・???」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

間の抜けた声を上げるウェルの眼前が暗転し、耳には“肉と骨が潰れる音”が聴こえた・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「愚かだな、ウェル・・・お前は自ら、“墓穴の中に入った”のだ・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




“聖衣を脱ぐ”は『聖闘士星矢』の伝統ですね(キリッ)。

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