聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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今回はデジェルとカルディアのバトルメインです。


熱き天蠍VS凍てつく宝瓶

この世界に来て直ぐに気づいた事、それは俺の心臓が以前のまま、“熱”を持っていた事に気づいた事だった。同じようにアルバフィカも自分の中に流れる“血”が以前のままであると気づいているだろう・・・それを悟った時、俺の心に生まれたのは“絶望”では無く“安堵”だった、物心付く前の頃には診療所での入院生活、窓から眺める事しか出来なかった世界、楽しそうに日々を、“生”を堪能する人達、オレはソコには行けない、ずっとこのままベッドの上で死ぬ・・・そう考えていた。この心臓をポンコツと想った事なんて腐るほどあった・・・だが、“家族”も、“友達”も、“帰る家”すら無かった俺が、唯一持っていたモノが、この“病に犯された心臓”だけ、この“心臓”だけしか無かった俺にとって、最早コイツまで無くす事は己の半身を失うも同然だ・・・! だから“安堵”した。そして、俺はアイツに出会った・・・初めて会った時のサーシャ<アテナ>に似たアイツに・・・アイツと、アイツらとの日々は、正直心が弾んだ、アイツら“と”遊ぶのも、アイツら“で”遊ぶのも楽しかった。でも、それでも、俺の心は燻っていた、俺の“熱”は満足出来なかった、だから、だから俺は・・・・・!

 

 

 

ー弦十郎sideー

 

「っ! 緒川! 車を停めろ!!」

 

「は、はいっ!」

 

車を急停止させた弦十郎と緒川に激しい衝撃波が襲った!

 

「ぐううううぅぅっ!!」

 

「し、指令、これは一体・・・!!」

 

「翼! そっちで何が起こっている?!」

 

《こちら翼! 雪音とエルシドとデジェルと合流しましたが、現在、デジェルと蠍座<スコーピオン>が交戦を開始! その衝撃波により我々も動けない状態です!》

 

「何!? デジェルは蠍座<スコーピオン>を助けるのでは無かったのか!?」

 

《こちらエルシド、遺憾ながらカルディアはデジェルと決闘を望んでいたようだ・・・》

 

「何だと!?」

 

「では、月読調さんにカルディアを救って欲しいと頼んだのは・・・?」

 

《カルディアの目的は、“デジェルとの決闘”だ、それも“命を賭けた死合い”のな・・・!》

 

エルシドからの説明に弦十郎と緒川の顔にイヤな汗が流れる。“最強の黄金聖闘士同士の戦い”、それは千日にも及ぶ大決闘、『千日戦争<ワンサウザンドウォーズ>』が始まろうとしているからだ!

 

 

ーデジェルsideー

 

「「ぐううううぅぅっ!!」」

 

「うおりゃああああああああああっ!!!」

 

「ぬうぅおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

力比べをしていた二人の均衡を先ず崩したのはカルディア、デジェルに向かって蹴りの連発を放つが、デジェルは全てかわす!

 

「ハァアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

「ウオラアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

デジェルが拳を放てばカルディアも蹴りで交えた衝撃により空中で離れる!

 

「へっ、流石にヤるな! 喰らいな! 真紅の衝撃! 『スカーレット・ニードル』!!」

 

ドドドドドドドドド!!

 

カルディアの人差し指から伸びた紅いの爪から放たれる深紅の衝撃がデジェルを襲うが、デジェルは紙一重にかわす!

 

「クッ! なっ!?」

 

「テヤァァッ!!」

 

デジェルの眼前に急接近したカルディアが膝蹴りを放つがデジェルは両腕を交差させて防ぐが膝蹴りにより両腕を上げさせられカルディアはデジェルの頭を掴まえると下を向かせ、デジェルの顔面に膝蹴りを浴びせる!

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!!」

 

「グッ! グアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

「オオォラアアッ!!」

 

「グオアッ!」

 

カルディアの猛撃にデジェルは半歩下がる、それを狙ってカルディアは再び真紅の攻撃をする!

 

「『スカーレット・ニードル』!!」

 

「くっ! 『ダイヤモンドダスト』!!」

 

デジェルの氷雪とカルディアの真紅の爪がぶつかり合うとその衝撃で二人の距離が再び開く!

 

「フッ!」

 

「ハッ!」

 

二人は光の速さ、光速の流星になってぶつかり合いを繰り返す!

一ヶ所に衝撃音が鳴ると別の場所で衝撃と衝撃音が発生し、それが一つ、二つ、三つ四つと何十何百と鳴り響いた!

それによる衝撃波が翼とクリスを襲うがエルシドが盾になる事で防がれた。

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

翼とクリスは、目の前で繰り広げられる黄金聖闘士同士の激戦に只々圧倒されていた。『ルナ・アタック事件』の際、『射手座<サジタリアス>の黄金聖衣』を纏い“黄金聖闘士に近い力を得たフィーネ”とレグルスの決闘を見てあの時も圧倒されたが、今回は完全に実力伯仲の戦いに気圧された。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・・」

 

「フゥ、フゥ、フゥ、フゥ、フゥ・・・・・」

 

再び向かい合う形で睨み合うカルディアとデジェル。

 

「最高だぜ、デジェル・・・こんなに充足感に満ちた戦いは久しぶりだ・・・・・!」

 

身体から“赤い蒸気”を発しながらカルディアは好戦的な笑みを浮かべる。

 

「ンだありゃ!?」

 

「“赤い蒸気”・・・!?」

 

「心臓の“熱”の上昇により血液が沸騰し、それが皮膚から汗となり蒸発して“赤い蒸気”が生まれたのだろう・・・!」

 

「カルディア、そうまでして戦いを望むのか? お前には“他の生き方”がある筈だ! 私がクリスと出会って“新たな夢”を得たように・・・!」

 

「悪ぃなデジェルよ、俺は、この生き方が、俺の生き方なんだよ・・・! 俺が自分の心から望んだ、魂から望んだ生き方を、最後の最後まで貫き生きる!」

 

“迷い無き瞳”で宣言するカルディアを見て、デジェルももう話し合いは不可能と悟った。

 

「分かった、もはやこれ以上何も言わん! 全力でお前の想いに応えてやる!」

 

「それでこそだぜ! デジェルよおおおぉぉぉっ!!」

 

二人の小宇宙<コスモ>が最大限に爆熱する!

 

「煌めけ!!!」

 

「轟け!!!」

 

「「俺/私の小宇宙<コスモ>ーーーーーーーーーー」」

 

二人の小宇宙<コスモ>の高まりに呼応して、水瓶座<アクエリアス>と蠍座<スコーピオン>の黄金聖衣が、遥かな時を重ね、纏う聖闘士の“本気で戦う事を覚悟した時”にその姿を変える奇跡の聖衣!

 

「水瓶座<アクエリアス>のレジェンド聖衣<クロス>!!」

 

デジェルの黄金聖衣は、より重厚感が増し、手首や足首、腰と肩のパーツに翡翠色のエメラルドが嵌め込まれ、紫のマントが靡き、左肩に小さな水瓶が装備された水瓶座<アクエリアス>の聖衣!

 

「蠍座<スコーピオン>のレジェンド聖衣<クロス>!!」

 

カルディアの黄金聖衣は更に重厚な聖衣になり洗練され、額のパーツは太い二又の角に伸び深紅のマントを靡かせた聖衣!

 

「レジェンド聖衣・・・!」

 

「二人共、本気の中の本気って事かよ・・・!」

 

「当然だ。“覚悟”を決めて戦地に立っている戦士を前に、“同情”も“憐れみ”も“優しさ”も、“侮辱”に値する!!」

 

黄金聖闘士が『100%中の100%本気で戦う覚悟』をした時に顕現する“レジェンド聖衣”。破滅の巫女フィーネと対峙した、レジェンド聖衣を纏ったレグルスが圧倒的な強さを見せ付けたが、これから起きるのは“レジェンド聖衣を纏った黄金聖闘士同士の対決”!

 

「これが、これがレジェンド聖衣か・・・! 良いぜ、最高の気分だ・・・!!」

 

すると、カルディアのレジェンド聖衣に“変化”が起きた!まるでカルディアの“熱”が伝達したように、その姿を“赤く”染め、二又の角が真紅に染まり、胸に大きな紅玉<ルビー>が現れた!

 

「蠍座<スコーピオン>の聖衣が赤く染まった・・・!?」

 

「あの姿、まるで『アンタレス』・・・!」

 

「『アンタレス』?」

 

「蠍座のα星、その輝きは真紅に輝く紅玉<ルビー>の星。『スカーレット・ニードル』は相手の身体に蠍座を形作る15の星の位置に爪を突き刺す技、そして『アンタレス』は丁度“心臓”の位置にある星だ・・・!」

 

深紅に染まった蠍座<スコーピオン>のレジェンド聖衣を見据えて、デジェルは両手を握りしめた拳を天に向け、カルディアも爪を突き立てるように構える!

 

「カルディア、お前とは長い腐れ縁だったな。今その腐れ縁を断ち切ろう!」

 

「良いぜ、デジェル! これが最後の勝負だ! 俺の魂、最後まで熱く燃やさせろよ!!」

 

「来るぞっ! 翼、雪音、踏ん張れ!!」

 

「あぁ!」

 

「おおっ!」

 

エルシドと翼とクリスが身構え、二人の小宇宙<コスモ>が高まり、今から繰り出されるは、蠍座<スコーピオン>と水瓶座<アクエリアス>の最大の拳!

 

「全てを凍てつかせ、我が凍技! 『絶対零度<オーロラ・エクスキューション>』!!」

 

「貫け、真紅の衝撃! 『真紅光針<スカーレット・ニードル>』!!」

 

デジェルから絶対零度の氷雪が! カルディアから深紅の流星が! 今ぶつかる!!

 

ドォゴオオオオオオオオオオオオオオオンンッッ!!!

 

二人の最大の拳が、二人の距離の中間地点でぶつかり、カルディアの周辺に爆炎が! デジェルの周辺が氷河が広がる!

 

 

 

 

ーアスミタsideー

 

現在アスミタがいる二課仮設本部では、デジェルとカルディアの戦いで起きる地震と、エネルギー反応で藤尭や友里達オペレーターは騒然となっていた。未来も若干オロオロしながらもアスミタの傍にいた。

 

「アスミタさん、これって・・・・・?」

 

「カルディアとデジェルが戦っているのだろう。このままでは『千日戦争<ワンサウザンドウォーズ>』が発生するぞ・・・・・」

 

 

 

 

ーレグルスsideー

 

マリア達がいるであろう遺跡の入り口に到着したレグルスと響も突然起こった地響きに身を低くした。

 

「レグルス君、これって・・・・・」

 

「・・・・・デジェルとカルディアが戦っている」

 

「えっ!? デジェルさんはカルディアさんを助けようとしてるんじゃないの?!」

 

「イヤ、カルディアの目的はデジェルと戦う事だ。その為に調を利用したんだろうな・・・」

 

「そんな・・・・・!」

 

引き返そうとする響の手をレグルスが掴んだ。

 

「どこに行くつもり響?」

 

「止めなくちゃ、だって調ちゃんと約束したし、こんなの間違っているよ! カルディアさん、“生きるのを諦めようと”しているんだよ!」

 

「違う・・・違うよ響。カルディアは、生きようとしているんだ・・・自分なりに、ガムシャラにね・・・!」

 

「どういう事・・・?」

 

「兎に角、俺達はマリアとアルバフィカのいる所に行かなくちゃいけないんだ。今俺達のヤるべき事は、“カルディアを止める事”じゃない、“この先へ進む”事だ・・・!」

 

「でも、でも・・・!」

 

「調が何の為に俺達を進ませたんだ? 響ならマリアを助けてくれると信じたからだろ? その想いを裏切るつもりか!?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「行くよ・・・・・」

 

言い淀む響の手を引いてレグルスは先へ進んだ。

 

 

 

ーアルバフィカsideー

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

地響きに構わずに歌い続けるマリアを見守りながら、アルバフィカも外の状況を把握していた。

 

「(カルディア・・・デジェル・・・今私のやるべき事は、マリアの護衛だ・・・!)」

 

 

 

ーナスターシャsideー

 

ナスターシャ教授も外の状況をモニターで確認していた。

 

「これが、“レジェンド聖衣”を纏った黄金聖闘士同士の戦い、なんと凄まじい・・・!」

 

 

 

ーウェルsideー

 

「ヒイイイイイイイイイイイィィィィィィイイイイイイイイイイッッッッ!!!!」

 

その頃のウェルはマリア達のいる遺跡の区画の近くで地響きに脅えて頭を押さえて蹲っていた。

 

 

 

 

 

 

ーデジェルsideー

 

真紅のオーラを纏うカルディアの熱気と、翡翠のオーラを纏うデジェルの凍気がぶつかり、カルディアのいる場所には炎が! デジェルのいる場所では氷が埋め尽くす!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

「ヌゥアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

ビキビキビキビキ!

 

『こ、これは!? カルディア(蠍座<スコーピオン>)の爪に皹がっ!?』

 

二人のぶつかり合いが『FRONTIER』を揺らし、力が拮抗するが、カルディアの指の赤い爪に亀裂が走る!

 

「これで終わりだ! カルディア!!」

 

「イヤ、まだだぜ!!」

 

空かさずカルディアは左手の人差し指から伸びた“赤い爪”を突き出した!

 

「左手の『スカーレット・ニードル』だと!?」

 

「残念だったなデジェルよ! “心臓”に近い左手の方が、“心臓の熱”を伝達しやすいんだよ!!」

 

カルディアは『奥の手』を繰り出した!

 

「これが俺の最後の奥義! 『真紅光針・赤色巨星・紅玉<スカーレット・ニードル・カタケオ・アンタレス>』ッッ!!!」

 

カルディアから放たれた燃える深紅の一撃がデジェルの『オーロラ・エクスキューション』を貫き、デジェルの身体を貫いた!

 

「ぐあぁっ!!!」(ドクンッ!)

 

深紅の一撃を受けたデジェルの『オーロラ・エクスキューション』の勢いが弱まり、身体が膝から崩れ落ちそうになるが・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃーーーーーーーーーーんっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!!」

 

クリスの悲痛な叫びが聞こえると、デジェルは立ち直り『オーロラ・エクスキューション』を再び放つ!!

 

「何・・・!? 俺の、『スカーレット・ニードル・カタケオ・アンタレス』が、通じなかっただと・・・!」

 

「イヤ、通じているさ、カルディア・・・!」

 

顔を上げたデジェルの“胸”は、“心臓”は、まるで燃えているように炎が立ち込めていた!

 

「デジェル・・・お前、何でそんな状態で・・・!」

 

「生憎だが、カルディア・・・私はお前とちがって、“死ねない理由”が、“生きる想い”があるんだーーーーーーーーーーっ!!!!」

 

デジェルが更に力を込めた『オーロラ・エクスキューション』がカルディアの『スカーレット・ニードル・カタケオ・アンタレス』を包み込む!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・へっ、何だよ。なにが“死ねない理由”だ、“生きる想い”だ・・・ただの“愛の力”ってヤツじゃねぇかよ、しょうもねぇな・・・調、悪いな・・・“約束”、守れそうにねぇわ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自嘲気味に笑うカルディアは、氷雪の暴風に呑み込まれた!

 

 

 

 

ーマニゴルドsideー

 

「マニゴルド! 調が、調がぁっ!!」

 

「泣き言を言ってる場合じゃねぇんだよ、傷は俺が治癒させるから、調の“魂”を探すんだよ・・・!」

 

『黄泉比良坂』、生と死の狭間の世界にやって来たマニゴルドと切歌は、自害しようとした切歌を庇い、半死状態の調をマニゴルドが担ぎ、マニゴルドは調の背中の傷を小宇宙<コスモ>を流しながら治療し、切歌も調の“魂”を探していた。

 

「何処に・・・! 調の“魂”は何処にいるデスか!?」

 

「・・・こっちだ」

 

調の気配を感知したマニゴルドは切歌を連れて、黄泉比良坂を進んだ。

 

 

ー調sideー

 

そして、魂だけとなった調は黄泉比良坂をさ迷っていた。

 

《(切ちゃん・・・カルディア・・・?)じゃない、だとすると、貴女は・・・?》

 

殆ど生き霊となった調の前に、民族衣装をきた“女性”、“破滅の巫女フィーネ”が現れた。

 

《どうだって良いじゃないそんな事・・・》

 

《どうだって良くない・・・! 私の友達や大切な人が泣いている・・・》

 

《そうね。蟹座<キャンサー>に見つかると消されるかも知れないから、誰の魂を塗りつぶすことなく、このまま大人しくしている積もりだったけど・・・そうも行かないモノね。“魂を両断するイガリマの一撃”を受けて、余り長くは持ちそうに無いか・・・》

 

《私を庇って? でもどうして?》

 

《私の“憧れの英雄<ヒーロー>達”が、貴女を助けようとしている、だからかしらね。それに、あの子に伝えて欲しいのよ・・・》

 

《あの子・・・?》

 

《だって数千年も“悪者”をやって来たのよ。いつかの時代、何処かの場所で、今更“正義の味方”を気取る事なんて出来ないって・・・“今日”を生きる貴女達で何とかしなさい、貴女達が諦めない限り、あの“英雄達”は貴女達を見捨てたりなんかしない・・・!》

 

《立花響・・・黄金聖闘士・・・》

 

《いつか未来に・・・人が繋がり、“大いなる境地”に到達するなんて事は、“亡霊”が語る物では無いわ・・・》

 

そう言って、フィーネは光となって消えた・・・。

 

《・・・・・・》

 

《たくよ、お前何やってんだよ・・・!》

 

調の“生き霊”に、カルディアの声が届いた。

 

《カル・・・ディア・・・?》

 

《ホレ、迎えが来たぜ・・・!》

 

「調ーーーーーーーーーー!!」

 

「調! そこか?!」

 

《切ちゃん・・・マニゴルド・・・!》

 

「よっしゃそのまま! 魂を戻すぜ! 『積尸気冥界波』ッッ!!」

 

調の“魂”を見つけたマニゴルドは空かさず、冥界波で魂を肉体に戻した!

 

「これで魂は戻った筈だが・・・!」

 

「目を開けてよ・・・調・・・!」

 

「泣いているよ・・・切ちゃん・・・」

 

「あっ・・・!」

 

「フゥ・・・」

 

泣きじゃくる切歌に調の優しい声が届いた。

 

「ジーーーーーーーーーーーーー・・・・・・」

 

「(あ、こりゃ怒ってるわ・・・)」

 

起き上がり、無表情に切歌を見つめる調を半眼で見るマニゴルド、構わず切歌が調に抱きつく。

 

「調!! でも、どうして・・・!」

 

「多分、“フィーネの魂”に助けられた・・・」

 

「フィーネに、デスか・・・?」

 

今度は調が切歌を抱きしめる。

 

「皆が私を助けてくれている・・・! だから切ちゃんの力も貸して欲しい・・・! 一緒にマリアを救おう」

 

「あっ・・・! うん、今度こそ、調や皆と一緒に、皆を助けるデスよ・・・!」

 

再び繋がった二人。だが、調は切歌を引き剥がす。

 

「所で切ちゃん、何で自決なんてしようとしたの・・・?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「えっ! イヤ、その、なんと言うか、色々ごちゃごちゃになっちゃってデスね・・・」

 

途端に冷徹な目になって睨む調に切歌はだらだらと滝のように汗を流しながら目を泳がせる。

 

「マニゴルド・・・」

 

「応よ♪」

 

グワシッ!

 

するとマニゴルドは切歌の頭を片手で掴み持ち上げる。

 

「マ、マニゴルド!?」

 

「お前なぁ、勝手に自決とか何考えてんだぁ~?」

 

「アワワワワワワワワワワワ」ガタガタガタガタガタ

 

ぶら下がりながら小刻みに震える切歌にスッゴく良い笑顔を浮かべるマニゴルド、このマニゴルドが一番恐いと言う事知る切歌の顔色は段々青くなる。

 

「調とりあえず、処刑しとくか?」

 

「時間も推してるから手早くね・・・」

 

「オッケー♪(ニッコリ)」

 

ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ!!!

 

「アダダダダダダダダダダダダダダダダダっ!! ごごごごごごごごごごめんなさいデェェェェェェェェェェェェェェスッッッッ!!!!!」

 

「(カルディア・・・大丈夫だよね・・・)」

 

爽やかな笑みを浮かべてアイアンクローをするマニゴルドと、悲痛な悲鳴を上げる切歌を尻目に調は、もう一人の“大切な人”に想いを馳せていた。

 

 

 

ーカルディアsideー

 

「(ハッたくよ、世話の焼ける・・・)」

 

「カルディア・・・」

 

意識を失っていたカルディアが目を覚まし目を開けると、倒れた自分を見下ろすデジェルの姿が映った。

 

「よぉデジェル、お前の勝ちだ・・・俺の“心臓”も、もう限界だな・・・」

 

レジェンド聖衣からノーマル聖衣に戻り胸元を見ると、“心臓の炎”が消えかけている事を確認するカルディア。

 

「カルディア、口では関係無いと言ってはいたが、本当は月読調の異変に、お前は僅かに動揺していた。その僅かな動揺がお前の技から如実に現れていた。さもなければ、私達は同士討ちになっていただろう・・・」

 

「フン、何と言おうが結果はご覧の通りだぜ・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ンなツラしてんじゃねぇよ、俺は満足してンだ、この“結末”によ・・・」

 

「月読調に、何か伝えておく事は無いか?」

 

「そうだな・・・“悪ぃ、“約束”は守れねぇ、生きろよ”と伝えてくれや・・・」

 

「そうか・・・」

 

「あぁ~~いい気分だ・・・これが俺の、“絶唱”ならぬ、“絶頂”だ・・・・・」

 

カルディアは静かに、そして安らかに瞼を閉じた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「お兄ちゃん・・・・・」

 

デジェルに近づこうとするクリスを翼が抑えた。

 

「私にも経験がある、今はソッとしておこう・・・」

 

「あぁ・・・」

 

「正直、蠍座<スコーピオン>を戦闘狂だと思っていた。だが違う、あの男は私達よりも“戦士”だったのかも知れないな・・・(奏の望んだ生き方に近かったのも、蠍座<スコーピオン>だったのかもな)」

 

翼とクリスが見守る中、エルシドも、デジェルの近くに歩き、『オーロラ・エクスキューション』の影響で徐々に凍りつくカルディアを見つめる。

 

「ヤツらしい生き方だったな・・・・・」

 

「あぁ・・・さらばだ、カルディア・・・お前の生き方は、戦いにかける姿勢は、燃え尽きる直前の炎のように、熱く、激しく、そして美しかったぞ・・・!」

 

『氷の棺<エターナル・コフィン>』に包まれたカルディアを、エルシドとデジェルは冥福を祈るように黙祷を捧げながら、その頬に一筋の雫が流れた・・・・・。

 

 

 

月の落下までの時間が迫る中、一人の戦士が眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。

次回でウェルが持つ『黒い玉』の正体を公開したいです。

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