聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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本当の友達として

神獣鏡のシンフォギアを纏う未来と向き合う響、響の後ろに黄金聖衣を纏うレグルスが控えていた。

 

「一緒に帰ろう、未来!」

 

「帰れないよ・・・・」

 

響の呼び掛けに未来の顔を覆っていたバイザーが展開され、未来の顔が露らにされたが、その瞳には光が宿ってなかった。

 

「だって、私にはやらきゃならない事があるもの・・・」

 

「やらなきゃならない事・・・?」

 

「このギア<神獣鏡>が放つ輝きはね、“新しい世界”を照らし出すんだって・・・・・・」

 

未来は淡々と話す。

 

「そこには“争い”が無く、誰もが“穏やかに笑って暮らせる世界”なんだよ・・・」

 

「“争いの無い世界”・・・」

 

「私は響に戦ってほしくない・・・だから響が戦わなくて良い世界を創るの・・・その“世界”ならアスミタさんだけじゃない、レグルス君も、エルシドさんも、デジェルさんも、“戦いの世界”しか知らない聖闘士の皆も穏やかに暮らせるんだよ・・・」

 

未来の言葉に響は言葉を詰まらせるが、煙を吹く米国艦隊を見る。

 

「だけど未来、こんなやり方で創った世界は暖かいのかな・・・?」

 

「・・・!」

 

「私が一番好きな世界は、未来が側にいてくれる“暖かい日だまり“なんだ」

 

「でも、響が戦わなくて良い世界だよ・・・」

 

「例え未来と戦ってでも、そんな事させない!!」

 

「私は響を戦わせたく無いの・・・!」

 

未来の言葉に響は少し微笑む。

 

「ありがとう・・・だけど私、戦うよ・・・!」

 

拳をきつく握った響は歌う、『戦いの歌』を・・・。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

響の胸元の傷痕から黄色の光が溢れ、響の服を破り、戦闘服を纏と、腕に、足に、胴体に、機械的な鎧が装着され、頭にヘッドギアを装着し、首に長く太いストールを巻く。

 

「ハッ!ハッ!ハアァッ!」

 

気合いを込めた響は未来のいる護衛艦に飛ぶ。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪!!」

 

「っ!!」

 

フォニックゲインを高める歌を歌う響、バイザーを再び展開させて未来も飛び、響と未来は空中でぶつかった。

 

「始まったか・・・レグルス、手を出すのか?」

 

「・・・・・アスミタ、お前は・・・?」

 

「見届ける積もりだ、あの者が小日向未来の“真の友達”なのか・・・な」

 

「俺も、見届けるよ・・・!」

 

アスミタとレグルスはそれぞれの奏者達の戦いの行く末を見守る。

 

 

 

ー二課本部・ブリッジー

 

二課ブリッジにモニターに『カウントダウン』が表示された。それは“響のシンフォギア装着時間”だ。

 

「カウントダウン、開始します!」

 

カウントダウンに表示された時間は“二分四十秒”と出され、それを見て弦十郎は息を飲む。

 

「レグルス君、見届けるだけなのか・・・?」

 

《此処で俺やアスミタが手を出せば未来は助かる、でもそれじゃ何の“解決”にもならないよ・・・》

 

「・・・・・・・・」

 

《ここからは響と未来の問題だ、俺たちに出来る事は、見届ける事位だ》

 

レグルスはそう言って通信を切った。

 

 

ー響sideー

 

響は空中で未来に拳をぶつけるも、未来は扇を盾のようにして攻撃を防ぎ、二人は護衛艦の上に着地する。しかし、響の身体はガングニールの力の高ぶりに発熱していた。

 

「(熱い・・・! 身体中の血が沸騰しそうだ・・・! )ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・」

 

響の脳裏に弦十郎に提案した“作戦”を思い返した。

 

 

ー数分前ー

 

「あのエネルギー波を利用して、未来君のギアを解除する、だと!?」

 

「アタシがやります! やって見せます!」

 

「だが君の身体は!」

 

「アタシは! 未来の“気持ち”を、未来の“心”と、本当の意味で向き合っていませんでした! ここで動かなきゃアタシは! アスミタさんの言うとおり未来の“友達”だと胸を張って言えません!!」

 

「・・・!」

 

「死んでも未来を連れて帰ります!」

 

「死ぬのは許さん!!」

 

「じゃあ! 死んでも生きて帰ってきます! それは!絶対の絶対です!!」

 

「弦十郎、こうなったら響は聞かないよ・・・」

 

「レグルス君!」

 

「大切な友達の為に命を賭けようとしているんだ! 外野がごちゃごちゃ理屈並べ立てたって無粋なだけだ!」

 

「っ!!」

 

「ッ!!」

 

“師匠”として、“大人”として響を死なせたくないと考える弦十郎と、“仲間”として、“戦士”として“友”の為に戦おうとする響を行かせたいと考えるレグルス、それぞれの“考え”の違いから睨み合う“最強クラス”の二人。

 

藤尭が“過去のデータ”から情報を開示する。

 

「過去のデータと、現在の融合進度から計測すると、響さんの活動限界は二分四十秒になります!」

 

「「「っ!」」」

 

「例え微力でも、私達が響ちゃんを支えてあげる事が出来れば、きっと・・・・」

 

友里も響を行かせて欲しいと伝え、弦十郎はため息混じりに響を見て。

 

「オーバーヒートまでの時間は極限られている、勝算はあるのか!?」

 

「“思いつきを数字で語られるかよ”!」

 

それはかつて、“デュランダル護送任務”の際に弦十郎が語った言葉であった。

 

 

 

ー現在ー

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

弦十郎、友里、藤尭、そしてレグルス、多くの人達から後押しされた響は最高のパフォーマンスで未来を攻め立てるが、未来の一撃で護衛艦の壁に叩きつけられる。

未来は背中から伸びたベルトを鞭のようにしならせながら響を攻撃する。

 

『「胸に抱えるガングニールの侵食は本物だ! 作戦超過、その代償が、確実な“死”であることを忘れるな!!」』

 

「(死ぬ・・・アタシが、死ぬ・・・!)」

 

『「響、死んでも死ぬな・・・!」』

 

弦十郎の忠告と、レグルスの激励が頭を走り。

 

「死ねるかーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

気合いを入れた響は未来の攻撃をはね除け、足のジャッキを展開し、未来に飛び膝蹴りを叩きつけ後ろに飛ばす。飛ばされた未来は『流星』の時のように武装を展開させるとビームを放つ。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!」

 

響は上に飛び上がりビームを回避すると、放たれたビームは護衛艦を撃沈する。未来は小型の鏡を複数放つと、その鏡からビームが発射される。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪!!」

 

響は空中でジャッキを起動させて空中を飛びながら回避する。

 

 

 

ーマリアsideー

 

「・・・・・・・・・・・」

 

響と未来の戦いを飛行艇で見ていたマリアは未来の援護をするべく、飛行艇からシャトルマーカーを大量に射出し、マーカーが空中で展開されると、未来のビームが当たり屈折し、響に向かう。

 

 

ー響sideー

 

ドクンッ!!!

 

響の胸のガングニールから“黄色い結晶体”が生まれる。

 

《間もなく、危険域に突入します!》

 

友里から通信が聴こえるが、未来はそんな響に構うことなく攻撃をする。

 

「戦うなんて間違っている・・・! 戦わない事だけが、本当に“暖かい世界”を約束してくれる・・・! 戦いから解放してあげないと、響やアスミタさん達は永遠に・・・!」

 

未来の後頭部に装備されたヘッドギアが未来の優しさを歪めていた。

 

『「それが君自身の決めた事ならば、君がそうしたい事ならば好きにすれば良い・・・」』

 

だが、アスミタの言った言葉が未来の脳裏を甦る。

 

ぐちゃっ! ギチチ! グチッ!

 

「うっ! うぅっ! うあっ!!」

 

響の身体の内部に木の根のように張り巡っていたガングニールが、響の身体を破り、“黄色い結晶”が響の身体から生えてきた。

 

「(違う! 私がしたいのはこんな事じゃない! こんな事じゃ・・・)ないのにーーーーーー!」

 

バイザーが砕け、露になった未来の瞳には涙が浮かんでいた。

 

「♪~♪~♪~♪~♪!!(誰が未来の身体を好き勝手にしているんだ!)」

 

響はビームの合間を抜けて未来を抱き締める。すると、展開されていた未来の武装が硝子が割れるような音を立てて砕ける。

 

「離してっ!!」

 

「イヤだ! 離さない! もう二度と離さないっ!!」

 

「響ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

「離さないっ!!!!!」

 

すると、シャトルマーカーがレーザーで分子構造物のような形を創る。

 

「絶対にぃっ!! 絶対にぃぃぃぃぃっ!!!!」

 

響は背中のバーニアを吹かせ離脱する。

 

 

 

ーマリアsideー

 

シャトルマーカーの動きを見たマリアは機械を操作する。

 

「来る! 『FRONTIER』へと至る『道』!」

 

 

 

ー響sideー

 

響は泣く未来を抱えて離脱しようとする。

 

「(コイツが聖遺物を消し去るって言うなら・・・!)」

 

分子構造物のシャトルマーカーのレーザーが一つのマーカーに集まる。

 

「こんなの脱いじゃえ、未来ーーーーーーーーーーーー!!!」

 

一点に集約された極太レーザーが響と未来を襲おうとする!

 

「アスミタ!!」

 

「っ!!」

 

レグルスとアスミタは透かさず、響と未来の元に跳び、レグルスは響をアスミタは未来を庇い、レーザーに呑み込まれる。

 

「(くっ・・・! せめて、このシンフォギアだけでも・・・!)」

 

「(大人しくしろ! ガングニール!)」

 

その際、レグルスが響のガングニールと、アスミタが未来の神獣鏡を“破壊”したーーーーーー。

 

 

 

 

響達を呑み込んだレーザーは海面上空を漂っていたシャトルマーカーに当たり、レーザーは海底深くに伸びていきーーーーーー。

 

 

 

そこから、巨大な“光の柱”が天高く伸びていった。

 

 

 

 

 

 

 

その光景を弦十郎達と上空のマリアは愕然と見つめ、弦十郎が不安げに呟く。

 

「・・・・作戦、成功なのか・・・?」

 

 

ーマリアsideー

 

ナスターシャ教授の席からウェルが下劣な笑みを浮かべて上がってきた。

 

「作戦は成功です!」

 

ウェルは下劣な笑みを更に歪めて呟く。

 

「そう、『FRONTIER』の浮上です・・・!!」

 

 

 

 

ー翼sideー

 

交戦中の翼と切歌も戦闘を中断して“光の柱”な方を見つめると。光が収まり、海底から“何か”が浮上してきた。

 

 

“カ・ディンギル”すらも超える程の巨大な、古代の遺跡のような、石造りの神殿のような形をした超巨大な建造物をーーーーーー。

 

「一体なにが・・・!?」

 

驚く翼と切歌は、浮上してきた巨大な建造物を見ると、海面に次々と石造りの柱が伸びる、呆然とそれを見る翼の背後から“赤い銃”が向けられーーーーーー。

 

 

 

 

ズダアァンッッ!!! ダン! ダン! ダン!

 

 

 

 

銃声が辺りに響いたーーーーーーーーーーーー。

 

 

 

「なっ!?」

 

「くっ!・・・うぅっ!・・・!」

 

愕然とする切歌と倒れて呻きながらも背後に見やる翼の目に映ったのは、銃を構えた“雪音クリス”だった。

 

「雪音・・・!!」

 

驚愕する翼に向けて、クリスは無表情に銃を向けて、冷徹に呟く。

 

「さよならだ・・・・」

 

銃声が再び、辺りに響いたーーーーーーーーーーー。

 

 

 

しかしーーーーーー。

 

 

 

 

 

ガキンッ!!

 

 

 

 

クリスの放った弾丸は、護衛艦の甲板を貫いた。

 

 

 

「っ!!」

 

「来やがったか・・・・」

 

驚く切歌と冷静なクリスが離れた場所を見ると、マニゴルドと調を緒川に任せ、急行し翼を抱き抱えたエルシドがそこにいた。

 

「・・・・エルシド・・・!」

 

「・・・・何の積もりだ、雪音・・・?」

 

こんな状況でも、仏頂面のエルシドはクリスを探るように睨む。切歌も我に返り、クリスに問う。

 

「仲間を裏切って、アタシ達に付くと言う事デスか!?」

 

「アイツら<翼とエルシド>が証明書代わりだ・・・!」

 

クリスは翼を抱き抱えたエルシドを睨んで告げる。

 

「・・・・しかしデスね・・・!」

 

「心配無用だぜ、切歌・・・・」

 

クリスの背後からカルディアが犬歯を剥いた笑みを浮かべて現れた。

 

「カルディア、どう言う事デスか・・・?」

 

「ククククク、女心と秋の空ってヤツよ」

 

「“力”を叩き潰せるのは、更に大きな“力”だけ、アタシの“望み”はこれ以上戦火を広げないこと、無駄に散る命は少しでも少なくしたい・・・!」

 

「ここまで言えば分かんだろ? 誰が戦火を広げているか・・・?」

 

「・・・・・・・・(コクン)」

 

カルディアの言葉に切歌は下劣な笑みを浮かべた“クソ野郎”の顔が浮かび頷く。それを見たカルディアも頷き、エルシドを見据える。

 

「つー訳でエルシド、デジェルに伝えておけ、『雪音クリスは俺らの側にいる、そっちにいる調に何かしたら・・・』後は分かるよな? 次いでに、『とっとと決着<ケリ>付けようぜ』っとも伝えておけよ・・・!」

 

「マニゴルドの事は良いのか?」

 

エルシドの言葉に切歌は反応するが、カルディアはにやけ笑みを浮かべる。

 

「調は兎も角、“あの”マニゴルドがどうにか何のかよ? 殺しても死なない処か、自分を殺そうとするヤツを返り討ちにするか、地獄に道連れにしそうなヤツだろうがよ! もしどうにかなんなら寧ろ特等席で見たみたいわ!」

 

「え~~・・・・」っとカルディアのマニゴルドに対する暴言に切歌だけではなく翼とクリスも若干引いた。

 

「良いだろう、ここは退いておく」

 

『FRONTIER』の浮上と、さっき通信で響と未来、レグルスとアスミタの事もあり、エルシドは翼を抱き抱えたまま、海面を走り離脱する。

 

「・・・・(ピッ)アルバフィカ、そっちはどうだ?」

 

《カルディアか、デジェルは引いた。どうやら不本意ながら作戦成功と言った処か・・・・》

 

「これであの野郎<ウェル>ますます調子付くな、あぁヤダヤダ・・・・それはそうと、こっちはおましれぇカードが手に入ったぜ♪」

 

《面白いカード・・・?》

 

「デジェルの“女”♪」

 

《・・・・それは、強力なカードだな》

 

「だろ? んじゃま合流しようぜ」

 

《了解だ・・・・(ピッ)》

 

アルバフィカとな通信を終えたカルディアはクリスに顔を向ける。

 

「良かったなイチイバルちゃんよ、デジェルは離脱していたようだぜ?」

 

「・・・・・・・そうかよ」

 

「・・・・・・・・」

 

「もし、デジェルが此処にいても、お前は俺らに付いたかな?」

 

「テメェの知ったこっちゃねぇだろ・・・! それ以上何か言ったら・・・風穴開けんぞ・・・!!」

 

「おぉっ! 恐や、恐や・・・」

 

銃を構えて睨むクリスの殺気をふざけた態度で流すカルディア、切歌はエルシド達が走り去った先を見つめていた。

 

「調・・・マニゴルド・・・・!」

 

切なそうな切歌の頭をカルディアは優しく撫でた。

 

「一応釘は刺しておいた、調は大丈夫だろう。それに今言ったろ? マニゴルドはそう簡単にどうにかなる柔な野郎じゃねぇってよ。オラ、戻るぞ・・・」

 

「うん・・・」

 

沈んだ表情の切歌を肩に乗せて、カルディアはクリスと共に飛行艇から伸びたワイヤーを掴んで『FRONTIER』へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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