聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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最悪の再会

ー二課仮設基地ー

 

小日向未来が行方不明になって翌日。特異災害対策機動部二課の仮設基地である潜水艦が河川敷に停泊していた。そこで響は弦十郎から緒川が発見した通信端末を渡される。

 

「これは・・・?」

 

「スカイタワーより少し離れた地点で回収された、未来君の通信機だ」

 

『っ!?』

 

弦十郎の言葉に奏者達と聖闘士達が驚く。

 

「発信記録を追跡した結果、破損されるまでの数分間、ほぼ一定速度で移動していた事が判明した・・・」

 

「え・・・」

 

「エルシドがスカイタワーで未来君の遺体らしきモノを発見されていない、この事から未来君は死んじゃいない、何者かによって連れ拐われ、拉致されていると考えるのが妥当だが・・・」

 

「師匠! ソレってつまり!」

 

身を乗り出す響に弦十郎は笑顔で答える。

 

「こんな所で呆けてる場合じゃないって事だろうよ!」

 

「やったな響!」

 

「うん!」

 

レグルスの言葉に頷く響の頭を弦十郎が撫でる。

 

「さて、気分転換に運動するか!?」

 

「はい!」

 

* * *

 

そして奏者達と聖闘士達の特訓が始まった。ランニングウェアを着た奏者達と聖闘士達。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!」

 

そしてそんな一同と共にランニングウェアを着た弦十郎が歌!?を歌いながら走っていた。

 

「イエェイ! 気分が乗るなぁ!」

 

「レグルスはこういう歌がいいのか・・・?」

 

「熱血スポ根モノは少し苦手だ・・・」

 

弦十郎の歌にノリノリのレグルスにエルシドは呆れ、熱血のノリが合わないのかデジェルが辟易した感じでコメントする。

 

「何でオッサンが歌ってンだよ、てかそもそもこれなんの歌だ・・・? 大丈夫か?」

 

クリスも熱血のノリが合わないのか辟易しながら全く気にせず走る響を見る。

 

「たくっ、馴れたもんだな・・・」

 

「(そうだ! うつむいてちゃダメだ! 私が未来を助けるんだ!!)」

 

「「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!」」」

 

遂に響とレグルスまで弦十郎と一緒に歌いながら走っていった。

 

それから奏者達は修行の連続。

 

瓶に入った水を茶碗で掬いながら逆さ腹筋。

 

縄跳び(響と翼はスピーディーだが、クリスだけはノロノロ)。

 

頭と腕と太腿にに水の入った茶碗を乗せて空気椅子(クリスはヨレヨレになり失敗)。

 

冷凍室の肉をサンドバッグのように殴る(ここでもクリスはヨレヨレ状態)。

 

卵たっぷりの滋養ドリンク(クリス、吐きそうになる)

 

締めは山頂までダッシュ(クリス、ついにグロッキー状態)

 

「クリスって、もしかしてスポ根苦手?」

 

「デジェル、少し甘やかしていたんじゃないか?」

 

「・・・・これからは少し、運動もやらせておこう」

 

「どうしたクリス君! デジェル達を見習ったらどうだ!」

 

「嫌、兄ぃ達の方は、あまり見習いたくない・・・・」

 

雑談しながらレグルスは弦十郎の体格位の大岩を担いで指たて伏せ、エルシドは竹槍の切っ先を足の指で挟みながら精神統一、デジェルに至っては凍気で巨大な氷塊を作って素手で破壊するのを繰り返していた。

 

「(ドイツもコイツも、本気で・・・アタシみたいなヤツの居場所にしては此処は暖かすぎるンだよ・・・・)」

 

そして遂にクリスはぶっ倒れた。

 

 

ーマリアsideー

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

マリアは未来が監禁された檻の近くでシンフォギアのクリスタルを眺めながら歌を口ずさんでいた。

 

「っ・・どうしたの?」

 

視線を感じたマリアは未来を見る。

 

「いえ、ありがとうございました・・・」

 

未来はマリアに助けられたと思い、礼を言った。

 

「・・・・・・」

 

マリアは未来に『亡くなった妹の面影』を見たからアスミタから彼女を預かったのだ。

 

「お礼なら乙女座<ヴァルゴ>に言うのね、彼が貴女を助けて、私達に預けたのよ・・・・」

 

「アスミタさん!? あの、アスミタさんは今何処に!?」

 

「生憎、貴女を私達に預けて直ぐに雲隠れしたわ・・・」

 

「そう、ですか・・・でも、どうして私を預かる気に・・・?」

 

「“セレナ”を思い出したからかもね・・・」

 

「“セレナ”・・・・?」

 

「マリアの死んだ妹ですよ」

 

「ドクター・・・・!」

 

二人の会話にドクターウェルが図々しく割り込んだ。

 

「・・・・」

 

未来はドクターウェルに身構える。

 

「彼女を此処まで連行するように指示したのは貴方よ、一体何のために?」

 

「勿論、今後の計画遂行の一環ですよ」

 

ドクターウェルは穏やかな態度で未来に近づく。

 

「そんなに怯えないでください。少しお話でもしませんか? きっと貴女の力になれますよ、フフフ」

 

ドクターウェルは張り付けた笑みを浮かべて未来に話しかける。

 

「(何を考えてるの、この男・・・!)」

 

一応支持はしたが、内心ドクターへの不信感があるマリアは警戒する。

 

 

ー調・切歌sideー

 

調と切歌は飛行艇の外で洗濯物を干していた。しかし切歌は、以前自分が“障壁”を展開した事を思い出していた。

 

「(マリアがフィーネでないなら、きっと私の“中”に、怖いデスよ・・・)」

 

「マリア、どうしちゃったんだろう・・・?」

 

「えっ・・・?」

 

「私は、マリアだからお手伝いしたかった・・・フィーネだからじゃないよ、カルディア達もきっとそう・・・」

 

「う、うん・・・そうデスとも・・・」

 

「身寄りが無くて、泣いてばかりだった私達に、優しくしたくれたマリア、楽しい事を教えてくれたカルディア達、弱い人達の味方だった皆、なのに! マリアは・・・・!」

 

『「力をもって貫かなくては、正義をなす事などできやしない!」』

 

「・・・・・・・」

 

自分達が好きだったマリアの変化に調はやりきれない顔色を浮かべる。

 

「調は怖くないデスか・・・」

 

「え?」

 

「マリアがフィーネで無いのなら、その“魂の器”として集められたアタシ達がフィーネになってしまうかもしれないデスよ・・・!」

 

「・・・・良く、分からないよ・・・」

 

「それだけ!?」

 

「どうしたの?」

 

「っ!!」

 

「切ちゃん・・・!」

 

調は切歌の去った方を見つめていた。

 

「(どう思うよ、切歌を・・・)」

 

「(・・・よもやとは思うが、まさか切歌が?)」

 

「(たくっどうしたもんか・・・・!)」

 

二人の様子を少し離れた場所でマニゴルドとカルディアとアルバフィカが鍛練をしながら眺めていた。

 

 

ー響sideー

 

その夜、響は二課本部の船室で横になりながら行方不明の未来の事を考えていた。

 

「(・・・もう少し! もう少しだけ待って、未来・・・!(ドクンっ!)っ!!!・・・・)」

 

響の胸のガングニールは、今なお響の身体を蝕んでいた。

 

 

ー響の船室の外ー

 

響の容態を船室の外から見守るレグルスにエルシドが話しかける。

 

「・・・・・・・」

 

「(立花の様子はどうだ?)」

 

「(思わしくないね・・・このままじゃガングニールは確実に響を殺す・・・!)」

 

「(・・・・デジェルが医療班と夜通し打開策を探しているが・・・)」

 

「(出来ることなら、打開策が見つかるまで響には大人しくして欲しいけど・・・)」

 

だが、レグルス達の願いも空しく、戦いの嵐はゆっくりと近づいてくる・・・・最悪の形で・・・・。

 

 

ーFIS sideー

 

翌朝、マリア達は再び『FRONTIER』と表示された海域に赴いていた。

 

「マムの具合はどうなのデスか・・・?」

 

「少し安静にする必要があるわ。疲労に加えて、病状も進行しているみたい・・・」

 

「そんな・・・」

 

「つまり! のんびり構えていられないと言う事ですよ! 月が落下する前に、人類は新天地にて! 1つに結集しなければならない! その旗降りこそが! 僕達に課せられた“使命”ですから!!」

 

『・・・・・・・』

 

仰々しく吼えるドクターウェルを切歌と調、聖闘士達は煩わしそうに見ていた。

「これは・・・?」

 

「どうした、マリア?」

 

「皆、これを見て・・・」

 

モニターに映ったモノに驚く。

 

「米国の哨戒艦艇デスか!?」

 

「こうなるのも予想の範疇、精々連中を派手に葬って、世間の目を此方に向けさせるのはどうでしょう?」

 

嫌らしい笑みを浮かべるドクターを見て、アルバフィカ達はブリッジをソっと出た。

 

「そんなのは弱者を生み出す強者のやり方・・・・」

 

「世界に私達の主張を届けるためには、格好のデモンストレーションになるわね・・・」

 

「マリア・・・!」

 

「私は、私達は“fine”。弱者を支配する強者の世界構造を終わらせるの・・・! この道を行く事を畏れはしない!」

 

「・・・・・・・」

 

「(ニヤリ)《ドーーーン!》なんだっ!?」

 

嫌らしい笑みを浮かべたウェルが、突然の破壊音に驚き、モニターを見ると、米国の艦艇から火が上がった。

 

「何事デスか!?」

 

「あ、カルディア達は・・・?」

 

「っ!? まさか!?」

 

「アァアイィツゥラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

アルバフィカ達が何処にいるのか理解したマリア達はモニターを見るがウェルは金切り声をあげる。

 

 

ー米国艦艇内ー

 

「オラオラ! 掛かって来いや! 米国!!」

 

『黄泉比良坂』から艦艇内に侵入したマニゴルド(聖衣無し)が、艦艇内の米国軍人達を殴り飛ばす(気絶する程度に手加減して)。

 

「済まないが、この船は我々が貰おう・・・・」

 

ブリッジに現れたアルバフィカ(同じく聖衣無し)は毒素を抑えた『デモンローズ』の香気で気絶させる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

そしてカルディア(勿論聖衣無し)は、マニゴルドと同じように軍人達を殴り飛ばし全乗組員を気絶させ終えると、急に胸を抑え息切れが起こった。

 

「お~いカルディア、こっちは終わったぞ、そっちは・・・・カルディア?」

 

マニゴルドがカルディアに近づくとカルディアからの“熱気”で何が起きたかを察した。

 

「発作か、何時からだ?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、マリア達が、スカイタワーに行ってた時から、少し、兆候があった、それで今回で、発病したようだ・・・・」

 

「お前何でこの事を・・・!」

 

「あの“ヤロウ”に、弱みを見せる訳にゃ、行かねぇだろうが?」

 

「まぁ、そうだけどな・・・・」

 

「んな事よりもマニゴルド、早く、ブリッジに行こうぜ、今頃アルバフィカが、マリアかウゼェヤロウからの文句に辟易してるだろうぜ・・・・!」

 

たくっと言ったマニゴルドはカルディアに肩を貸して進む。その途中、食堂を見つけミネラルウォーターを飲ませ、氷をカルディアの胸元に当ててブリッジに付く頃には収まっていた。

 

そしてアルバフィカはと言うとーーーーーーー

 

《一体どういう積もりなのですか!? 勝手な行動を!!!》

 

「我々三人で行った方が効率的と判断したまでだ・・・」

 

通信越しで喚き散らすウェル<ウゼェヤロウ>をまるで相手にしていない態度のアルバフィカ。

 

《アルバフィカ・・・・》

 

「・・・・」

 

マリアの声にアルバフィカが目を向ける。

 

《何故勝手な行動を?》

 

「ウェルがノイズを出せば、その出現パターンで二課がやって来る。『FRONTIER』の場所を奴等に知られないようにしたまでだ」

 

《そう・・・でも勝手な行動は慎んで頂戴・・・!》

 

「了解した・・・・」

 

《フギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ!!!》

 

自分を完全に無視しているアルバフィカに、ウェルは歯軋りしながら射殺さんばかりに睨むが、それでもアルバフィカの眼中にウェルは映っていなかった。

 

「(さてと、ノイズの出現パターンは検出されなくても、我々の気配ならどうかな?)」

 

アルバフィカは小宇宙<コスモ>を高める。

 

 

 

ーレグルスsideー

 

その頃、FISを追っていた二課本部の潜水艇でレグルス達が感知した。

 

「ん!?」

 

「っ!?」

 

「はっ!?」

 

「どうした三人共?」

 

「エルシド、デジェル。今の小宇宙<コスモ>は・・・」

 

「ああ、アルバフィカの小宇宙<コスモ>だ」

 

『っ!!』

 

レグルス達の言葉に奏者達と弦十郎達に緊張が走る。

 

「藤尭殿、この付近に艦か、我々以外の潜水艇がいないか調べてくれ・・・」

 

「り、了解」

 

デジェルからの指示で周囲を索的すると。

 

「っ! 米国所属艦艇を確認! モニターに映します!」

 

メインモニターに『火を吹いている米国艦艇』の姿が表示された。

 

『っ!』

 

「この海域から遠くない! 急行するぞ!」

 

「準備にあたります! 行くぞエルシド!」

 

「(コクン)」

 

「翼さん! 私も「響は駄目」レグルスくん!?」

 

ブリッジを出る翼とエルシドの後を追おうとする響の首根っこをレグルスが掴んで止めると、クリスが響の制服の胸元のネクタイを掴む。

 

「死ぬ気かお前!!」

 

「っ!?」

 

「ここにいろって、な。お前はここから居なくなっちゃいけないんだからよ・・・・!」

 

「クリス、行こう」

 

「(コクン) レグルス、頼んだぜ・・・!」

 

「うん」

 

デジェルとクリスもブリッジから出た。

 

「皆、響に居なくなって欲しくないんだよ・・・」

 

「(でも・・・私は・・・!)」

 

レグルスの言葉を聞いても、響の顔はもどかしさに満ちていた。

 

 

ーマニゴルドsideー

 

「オラ、とっとと失せやがれヌケサク共!」

 

マニゴルドは気絶させた米国軍人達を次々と救助艇に放り投げていた。

 

「(たくっ、アルバフィカは米国の連中に触れない、カルディアは発作で動けない、あぁ~、俺って貧乏クジ役・・・・!)」

 

自分の立ち位置にゲンナリしながらも、マニゴルドは米国軍人達を救助艇に放り投げて海に流していた。

 

 

ーマリアsideー

 

「・・・・・・・(ホッ)」

 

マニゴルドが次々と救助艇に米国軍人達を放り投げて海に流す作業を見ていたマリアは内心ホッとしていた。

 

「(ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ!!!!)」

 

因みにその横でウェルが親指の爪をかじりながらモニターに映るマニゴルドを憎々しげに睨んでいた。そんなウェルを無視して調がマリアに近づく。

 

「こんな事が、マリアの望んでいる事なの? 弱い人達を守るために、本当に必要な事なの・・・?」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

マリアは調の言葉に何も答えなかった。調はブリッジを飛び出し、外へのハッチを開ける。

 

「調っ!? 何してるデスか!?」

 

「マニゴルドの手伝いをするだけだから・・・・」

 

調は外に飛び出した。

 

「調っ!!」

 

切歌の制止を振り切り、調を落下しながら歌う、『戦いの歌』を・・・・。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪!!」

 

調の身体を纏う桃色と黒のギア、『シュメール神話の戦女神 ザババ』が振るったとされる二刃の片割れ、“肉体を切り刻む紅き鋸”こと、“シュルシャガナ”。

 

「調っ!」

 

調の後を追おうとする切歌の肩をウェルが掴んだ。

 

「連れ戻したいなら、良い方法がありますよ(あの忌々しい“骨董品共”への“嫌がらせ”も兼ねてねッ!)」

 

 

 

ーマニゴルドsideー

 

「マニゴルド・・・!」

 

「調、お前何で?」

 

着地した調は足のローラーを回してマニゴルドに近づく。

 

「手伝おうと思って、アルバフィカとカルディアは?」

 

「アルバフィカは沈没しないように船の制御に回ってる、カルディアはーーーーーーー」

 

カルディアの事を話すのを渋るマニゴルドに調は首を傾げる。

 

「マニゴルド?」

 

「・・・・“発作”が起こった」

 

「え・・・・!!」

 

「今食堂で身体を冷ましている、こっちは良いからヤロウの所に行け・・・」

 

「うん!」

 

調は大急ぎで艦艇の中に入っていった。

 

 

 

ーカルディアsideー

 

「がっ!・・・ぐぅっ!・・・あ! はぁっ!・・・うぅぅぅ!!!(そろそろ・・・限界ってか・・・)」

 

「カルディアっ!」

 

「調、お前・・・」

 

「大丈夫!?」

 

「バカ触るな! 火傷すっぞ!」

 

「っ!・・・・(キョロキョロ)・・・!」

 

調は冷凍庫から氷を大量に持って来てカルディアの心臓の部分に押し当てた。

 

ジュワアアアアアアアアアアア・・・・・・・。

 

押し当てた氷は直ぐに解けてしまい、直ぐに調は新しい氷を持ってくる。

 

「カルディア・・・」

 

「へへへ、ボチボチ限界が近いみたいだな・・・」

 

「ドクターに見てもらう訳には・・・?」

 

「あのヤロウに? 冗談! ヤロウに身体預けたら心臓に爆弾か遠隔操作のスタンガン仕込まれても不思議じゃねぇぜ・・・」

 

「じゃ、どうするの・・・?」

 

「調・・・」

 

「私、嫌だよ・・・このままじゃカルディアは間違い無く・・・ッッ・・・!」

 

泣きそうになる調の頭をカルディアが乱雑に撫で回す。

 

「1つだけ、方法がある・・・」

 

「え」

 

「調、これから俺の言う事は、マリアや切歌にも内緒にしておけよ・・・」

 

「・・・・うん」

 

「(悪いな、調・・・)」

 

カルディアは調に向けて言葉を紡ぐ。

 

 

 

ーマニゴルドsideー

 

「おう調、カルディアの様子はどうだ?」

 

「・・・・うん少しは落ち着いたみたい・・・」

 

「そうかよ、こっちも今終わった所「調!」切歌か?」

 

声のする方に目を向けると『イガリマ』を纏った切歌が降りてきた。

 

「切ちゃん『プシュ・・・』え・・・?」

 

「は・・・・?」

 

切歌の行動に唖然となる調とマニゴルド。切歌が調の首筋に『注射銃』を押し当てたのだ。

 

「な、何を・・・・?」

 

切歌の脳裏にウェルとの会話が浮かんだ。

 

 

ー数分前ー

 

「LiNKER・・・・?」

 

「いえ、これは“アンチLiNKER”、適合係数を引き下げる為に持ち要ります。その効果は折り紙付きですよ」

 

 

ー現在ー

 

調の足のギアが調の意志と関係無く収納された。

 

「ギアが・・・うっ!」

 

「調!」

 

苦悶の表情を浮かべながらよろける調をマニゴルドが支えた。

 

「切歌、てめぇどういう積もりだ、ああっ!」

 

「アタシ・・・アタシじゃ無くなってしまうかもしれないデス! そうなる前に、何か残さなきゃ! 調やマニゴルドや、皆に忘れられちゃうデス!」

 

切歌は調かマニゴルドに向けて手を伸ばす。

 

「切ちゃん・・・」

 

「お前・・・」

 

「例えアタシが消えたとしても、“世界”が残れば、アタシ達の“思い出”は残るデス! だからアタシは、ドクターのやり方で世界を守るデス・・・もう、そうするしか・・・」

 

ドーーーンっ!!!

 

艦艇近くの海面から“何か”が現れた。魚雷のようなカプセルが2つ、2つのカプセルが分解すると、天羽々斬のシンフォギアを纏う翼と山羊座の聖衣を纏うエルシド、イチイバルのシンフォギアを纏うクリスと水瓶座の聖衣を纏うデジェルが現れた。

艦艇に降り立った翼は切歌に切り込み、クリスとエルシドとデジェルは調を支えるマニゴルドを包囲した。

 

「えい!」

 

「はっ!」

 

切歌の大鎌をかわした翼が切歌を横切りを繰り出すが、切歌は空中反転でかわす。

 

「邪魔するなデス!!」

 

翼の刀と切歌の大鎌が火花を散らす。マニゴルドに抱えられた調は切歌に目を向ける。

 

「切ちゃん・・・・!」

 

「オイ、ウェルのヤロウはここにいないのか!?」

 

「・・・・」

 

「“ソロモンの杖”を持つヤツは何処にいるマニゴルド」

 

「言いたい気は山々にあるンだがな・・・・」

 

マニゴルドが切歌の方に目を向けると切歌の喉元に翼の刀の切っ先が向けられた。

 

「っ!!」

 

「・・・・・・・」

 

《翼さん!》

 

本部のブリッジから響の声が通信機越しで響く。

 

 

ーマリアsideー

 

「切歌っ!」

 

「ならば傾いた天秤を元に戻すとしましょうよ! 出来るだけドラマティックに♪ 出来るだけロマンティックに♪」

 

歪んだ笑みを浮かべたウェルがブリッジのパネルを操作する。

 

「まさか、“アレ”を!?」

 

マリアはウェルのやろうとしている事を察した。

 

 

そして、飛行艇から降ろされ、戦場に響いた・・・“彼女”の歌声がーーーーーーー

 

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

翼が、エルシドが、クリスが、デジェルが、その姿を見て驚愕に染まる。

 

「何・・・だと・・・!」

 

「・・・まさか・・・!」

 

「ウソ・・・だろう・・・?」

 

「・・・バカな・・・!」

 

 

ー響sideー

 

「え・・・?」

 

「・・・そんな・・・こんな事が・・・!」

 

モニターに映っていたのは。

 

『紫のシンフォギアを纏う小日向未来』だったーーーーーーー

 

「未来・・・・・・・!!??」

 

その目には、ハイライトを失った瞳の小日向未来が悠然と立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーアスミタsideー

 

「っ!? 小日向、まさか・・・・っ!」

 

本土で二課とFISの戦闘を傍観していたアスミタは瞳を閉ざし能面のような顔を驚愕に染めた。

 

「このような事になるとは・・・! 行かなければなるまい!」

 

アスミタは自身の身体を耀かせ、戦場へと跳んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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