聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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久々に奏者に聖闘士設定。


倒れる撃槍

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「(く、空気が重い・・・!)」

 

調と切歌が“絶唱”を行うとする少し前、雪音クリスと水瓶座<アクエリアス>のデジェルは、響達が交戦している現場にヘリに乗って向かっていた。

だが、響を戦列から外した事をデジェルが賛成した事に腹を立てているクリスは、デジェルと距離を置き、顔をムスッとさせ、腕を組んで不機嫌オーラを出していた。

当然デジェルも分かっているが、事情を説明をする訳には行かないので、詩集を読みながら黙秘を貫き、それが更にクリスを不機嫌にさせて空気が重くなり、パイロットはその空気に当てられて参っていた。

 

「あいつ<響>を支えてやれば良いつったのは誰だったけ・・・!」

 

クリスが吐き捨てるように、デジェルに向かって言う。

 

「何も戦いだけが支えになる訳では無いだろう・・・」

 

デジェルは詩集から目を離さずに答える。

 

「だけど、あいつ凄く落ち込んでいたんだけど?」

 

「響君は、“対人戦闘に対する覚悟”が出来ていない。だから思い通りにならない事態に対して簡単に暴走してしまう。前回は“ネフェリム”という“獲物”とレグルスという“抑止力”がいたから大事には至らなかったが、下手をすれば君や翼にも牙を剥いていた」

 

「・・・・・・」

 

実際に“ルナアタック事変”の際に、自分が月を破壊せんとする“カ・ディンギル”の砲撃を防ぎ、その行為を嘲ったフィーネに対して響が暴走を起こし、翼を負傷させた事を聞いていたし、前回の決闘で暴走を見せたので、デジェルの言い分にも一理あると考えるが、それでもクリスは納得できない。

クリスの心情を察しているデジェルは、詩集から眼を離し、クリスを真っ直ぐ見つめる。

 

「私はなクリス、例え君に嫌われようとも、君に襲いかかる危険はできるだけ遠ざける積もりだ。それが響君を傷付ける事になってもな・・・!」

 

デジェルの言葉にクリスは髪を乱雑に掻き。

 

「~~~~~~ッッでも、それであたしが納得するとでも?」

 

「勿論、納得するとは思わない。だが、少し待っていてくれ、折を見てちゃんと説明する」

 

「なんだよソレ・・・・・・」

 

不貞腐れたクリスは窓の景色を見つめていた。

 

 

ー未来sideー

 

響とレグルスが交戦している場所から少し離れた位置にいる未来と弓美と創世と詩織は、響とレグルスの戦いを見守っていた。

 

「・・・何か、ヤバそうな人達<マニゴルドとカルディア>が出てきたけど、大丈夫だよね・・・?」

 

「当たり前です! 立花さんやあの殿方<レグルス>が、負ける筈ありません!」

 

不安がる弓美を詩織が叱咤した。

 

「でも、私が此処にいたら、ビッキー達の邪魔になっちゃうよ。今の内に避難しよう!」

 

創世の言葉に頷いた弓美と詩織は、創世と一緒に避難しようと走ろうとするが。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

未来は響達の方を茫然と見ていたが、創世達と共に後ろ髪引かれる思いで、その場を離れた。

 

 

 

ー響sideー

 

「うっ・・・くっ・・・!」

 

レグルスがマニゴルドとカルディアに捕まり、引き離された響は溢れる程の光を放つ胸元を抑えていた。すると、響の耳に、切歌と調の歌が聴こえた、『諸刃の歌』が・・・・・・。

 

「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」」

 

「っ!? まさかこの歌って・・・“絶唱”・・・!?」

 

調と切歌の方を見ると、二人の身体が淡く光っている姿が映った。

 

 

 

 

ーレグルスsideー

 

響達のいる地点から少し離れた場所で、レグルスとカルディアが交戦し、マニゴルドはその戦いを一歩引いた場所にいた。

 

「『ライトニング・プラズマ』!!」

 

「『スカーレット・ニードル』!!」

 

黄金の閃光と紅い閃光が空中でぶつかり合い、その衝撃波によって、アスファルトや建物の壁や窓ガラスが震え、中には罅が走り、二人は近距離戦闘に入った。

聖闘士の戦いは一対一が基本なのでマニゴルドは二人の戦いを観戦している。

 

「ちょっと、戦り合わないんじゃなかった、のかッ!」

 

「こっちにも事情が、あんだよッ!」

 

「事情ってなに、さッ!!!」

 

「言える訳ねぇだろう、がッ!!!」

 

口喧嘩しながら近距離で拳と蹴りをぶつけ合う二人。レグルスの肘打ちとカルディアの膝蹴りがぶつかり、その衝撃で二人は距離をあける。そして三人にも聴こえた、『諸刃の歌』が。

 

「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪・・・」」

 

「「「ッ!!??」」」

 

その歌声を聴いて、レグルスとカルディアは戦闘を中断させ、マニゴルドも歌声の聴こえる方へ目を向ける。

 

「この歌って、まさか! “絶唱”かっ!?」

 

「あのバカ娘共・・・!」

 

「策があるから大丈夫って言っていたが、策って“絶唱”の事かよ・・・!」

 

マニゴルドとカルディア、レグルスはお互いを見ると。

 

「「「(コクン・・・)」」」

 

頷き合うとその場所に向かった。

 

 

ーナスターシャ教授sideー

 

『「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」」』

 

それをモニターで見たナスターシャ教授も戦慄する。

 

「私は、あの子達にまで・・・・・・!」

 

 

 

ー響sideー

 

響は“絶唱”を放とうとする切歌と調の姿に、二年前の情景が脳裏によみがえった。

 

『崩れ行く天羽奏』

 

『泣き崩れる翼』

 

「駄目だよ・・・LiNKER頼りの“絶唱”は! 奏者の命をボロボロにしてしまうんだよ!!」

 

「女神ザババの“絶唱”に! 二段構え! この場の見事な攻略法! これさえあれば! コイツ<ネフェリム>を持ち帰る事だって・・・!」

 

響の叫びを無視して、ウェル博士は二人の命等眼中に無いと言わんばかりに、布にくるまった“ネフェリムの心臓部”を撫でる。

 

「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪・・・ぐっ!」」

 

歌を終えた二人の身体が強く光ると、切歌と調のギアが変形した。

 

調の頭のギアがハサミのように展開し、手や足のパーツが変形してノコギリのような武器に展開する。

 

「(“シュルシャガナ”の“絶唱”は、無限機動から繰り出される果てしなき斬撃! これで膾に刻めなくとも、動きさえ封殺できれば・・・!)」

 

続いて切歌の持っていた大鎌が変形し、大鎌にとっつきのように変形した。

 

「(続き! 刃の一閃で、対象の魂を両断するのが“イガリマ”の“絶唱”! そこに、物質的な防御手段等あり得ない! まさに、絶対の絶対デスッ!)」

 

そして、二人が構えるのを見た響はーーーーー。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

「くっ・・・!」

 

「くっ・・・ぐっ!」

 

「・・・うえ!?」

 

“絶唱”の負荷に耐える切歌と調、その二人をにやけ笑みで見ていたウェルも、響の方に目を向ける。

 

「エネルギーレベルが、“絶唱”発動まで高まらない・・・あぁっ!」

 

「減圧・・・あっ!」

 

調の手足の武装が、切歌の武器が元の形に戻った。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

響と調と切歌は、お互いを見据える。そして響が。

 

「セット! ハーモニクスッ!!!」

 

響を中心に波動が広がり、二人の“絶唱”エネルギーを取り込む。

 

「コイツが、エネルギーを奪い取っているのデスか・・・?」

 

「ッ!・・・ッ!」

 

響の胸から“絶唱”エネルギーが赤黒い光りとなり溢れ、足元が発火する。

 

「二人に・・・“絶唱”を使わせない・・・!!!」

 

胸元の光が強くなり、足のパーツが展開し、頭のパーツも展開し、両手を構えると、右手のパーツが変形しタービンが回転する!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

 

右拳を天に向けて虹色に輝く“絶唱”エネルギーを放出する!すると、巨大な虹色の竜巻が天に昇る。

 

「「あっ!・・・」」

 

切歌と調が自分達に放つと思っていたエネルギーを天に放出する響を唖然と見つめる。

 

 

ー未来sideー

 

未来達の目に巨大な虹色の竜巻が映った。それを見て、未来の心に不安が広がった。

 

「嫌だ・・・響が遠くに行っちゃうなんて・・・!」

 

未来はそのまま響の元へ走っていった。

 

「小日向さん!」

 

「どうしたの? ヒナ! そっちは!」

 

創世達は走り行く未来の背中を見送るしかなかった。

 

 

ーマリアsideー

 

虹色の竜巻が終わり、マリアとナスターシャ教授、アルバフィカはモニターで響の様子を見ていた。

 

「吹き荒れる破壊のエネルギーを、その身に無理矢理抱え込んで・・・!」

 

「つまり繋がることで、“絶唱”をコントロールできるあの子<響>にとって、これくらい造作も無いと言う訳ですか・・・・・」

 

「(あの少女<響>、調と切歌を守ったのか?)」

 

「ウッ! ゴホッ! ゴホッ!」

 

「マムっ!?」

 

「教授・・・!」

 

「心配、入りません・・・!」

 

ビコン! ビコン! ビコン!

 

警報が鳴りレーダーを見ると、響のいる地点に向かって天羽々斬とイチイバルの反応が出た。

 

「この反応は・・・!」

 

「天羽々斬とイチイバル、恐らくエルシドとデジェルもいるだろう」

 

「追い付かれたようですね・・・!」

 

 

 

ー響sideー

 

「響!」

 

「レグルス君・・・」

 

レグルスは“絶唱”エネルギーを放出した響を支える。

 

「またこんな無茶を、無茶をするなとは言わないけど、時と場合を考えなよ!」

 

「でも・・・こうしなきゃ切歌ちゃんと調ちゃんが・・・」

 

「・・・・・・」

 

レグルスは切歌達の方に目を向けると、調と切歌の身体に“あるモノ”が浮かんでいるのが“見えた”。

 

「(ッ! あれって、うさぎ座<レプス>に小熊座<ウルサミノル>の守護星座か・・・!)」

 

調の身体にうさぎ座<レプス>の守護星座が、切歌の身体に小熊座<ウルサミノル>の守護星座が浮かんでいた。

 

 

 

ー切歌・調sideー

 

「切歌!」

 

「調!」

 

「げっ! マニゴルド!」

 

「カルディア・・・!」

 

ゴン×2

 

「「ギャフンッ!」」

 

ようやく着いたマニゴルドとカルディアは、有無を言う暇を与えず、切歌と調の脳天に拳を振り下ろし打撃音が響いた。

 

「あ、あぁ、あ・・・!」

 

「うぅ~・・・!」

 

蹲った二人の頭には物の見事なタンコブが出来上がり、湯気が立っていた。

 

「とりあえず今はこれで良いな・・・!」

 

「後で勝手に“絶唱”を使った言い訳をたっぷり聞いてやる・・・!」

 

「「(ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ!!)」」

 

目をギュピーンと光らせたマニゴルドとカルディアの迫力に切歌と調はお互いを抱き合いながら涙目で震える。すると、ナスターシャ教授からの通信が入る。

 

《皆、聴こえて・・・!》

 

「婆さんか?」

 

《ドクターを連れて、急ぎ帰投して・・・!》

 

「だけど今なら・・・」

 

《そちらに向かう高速の反応が二つ、恐らくは天羽々斬とイチイバル》

 

「ッ!?」

 

「て事は、エルシドとデジェルも金魚の糞のように一緒にいるだろうな」

 

《切歌と調もLiNKERの過剰投与で不可が掛かっているのです。指示に従いなさい・・・!》

 

LiNKERの過剰投与により満足に戦えない奏者二人と、万全の奏者二人に黄金聖闘士が二人、不利は否めない状況に全員が頷く。

 

「分かったデス・・・!」

 

「切歌、俺にしがみつけ、運んでやる」

 

「調は俺が運んでやる、立ってるのもやっとだろう?」

 

頷いた切歌はマニゴルドの首にしがみつき、カルディアが調を片手で抱える。しかし。

 

「オイ! 何を言ってるんだ!」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 

ウェルが喚き始め、四人はウンザリと言わんばかりにウェルを見る。

 

「今が好機だろうがよ! 他の邪魔者が来る前にあの化け物共を始末すれば万事上手くグエッ!」

 

喚き始めるウェルの喉元をマニゴルドの空いた手で掴んだ。

 

「オイ、いい加減にしろよテメェ、俺らもうプッツン寸前なんだけど・・・!」

 

「グエッ! ケゲェッ! グゲガッ!」

 

少しずつウェルの首を掴んだ指の力を強めるマニゴルド。カルディアも赤い爪をウェルの眼球まであと数ミリの間隔まで近づける。

 

「大方調と切歌を唆して“絶唱”を使わせようとしてこの場を切り抜けようとしたんだろう?・・・あぁ!」

 

「こ、この場で僕を殺せば、あのオバハン<ナスターシャ教授>がどうなると・・・!」

 

「婆さんの事があるからまだ我慢できてんだぜ俺たちは・・・!」

 

「俺とマニゴルドは“ロクデナシ”だからよ、気に入らねぇ野郎に容赦しねぇんだ。そんな俺たちに“理屈”が通じるとでも?」

 

「ヒ、ヒヒィ・・・!!!」

 

「分かったらこれ以上ガタガタぬかすなや・・・!」

 

「(コクンコクンコクンコクンコクンコクン!!!)」

 

底冷えする声色と冷徹にして冷酷な殺気を出す二人に気圧されたウェルは怯え始めて首を縦に振る。

 

「オラ、とっととトンズラすっぞ」

 

マニゴルド達の頭上に、ナスターシャ教授達が乗る飛行艇が現れ、ワイヤーロープが垂れ出される。マニゴルドは首にしがみついた切歌と片手で後ろ首を掴んだドクターを連れ、もう片方の手でロープを掴み。カルディアを調を抱えてロープを掴み、離脱した。

 

「「・・・・・・」」

 

調と切歌は響に目を向けるが、ハッチを閉じ、ウェルは着替える為に(マニゴルドとカルディアの傍にいたくないからが本音)その場を離れる。切歌は自分の身体の調子を確認する。

 

「どうした?」

 

「身体、思ったほど何ともない。“絶唱”を口にしたのにデスか?」

 

「まさか、アイツ<響>に守られたの? 何で、私達を守るの・・・?」

 

「ま、そういう“甘ちゃん”も世の中にはいるってこったな」

 

「そんなヤツがいるの?」

 

「いるもんなんだよ。敵だとしても助けようとする救い用のねぇ“甘ちゃん”が・・・」

 

どこか遠い目をするカルディアを調達は見つめる。そして、飛行艇はステルス機能をフルに使って空の中に消えていった。

 

 

ー未来sideー

 

「ハア、ハア、ハア、ハア、ハア・・・」

 

未来が響達の元に走り、そこに映っていたのは。発光する響と響から少し離れたレグルスだった。

 

「響!」

 

「未来!(ヤバい! これを見られたら!)」

 

レグルスの目線の先に、響の胸元の傷痕から生えた『結晶体』が映った。

 

「未来! 来ちゃダメだ!」

 

「嫌! 響!」

 

レグルスの静止を聴かず響に近づこうとする未来。

 

「止せ! 火傷じゃ済まないぞ!」

 

発光し、高熱を発する響に近づこうとする未来をギアを纏ったクリスが抑えた。

 

「でも! 響が!」

 

「デジェル・・・」

 

「・・・・・・」

 

デジェルは『カリツォー』で響を冷まそうとするが、『カリツォー』は、響の身体を包む前に響の発する熱で蒸発してしまう。『ダイヤモンド・ダスト』を使うかと考えるが。

 

「ハッ!」

 

クリスの目線の先にバイクに乗った翼とエルシドが現れた。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

翼がギアを纏うと、バイクの前輪の前に天羽々斬の足パーツが刀の切っ先のように展開し、飛び上がると響の頭上のビルの貯水タンクを切りつける。

 

『騎刃ノ一閃』

 

切りつけられたタンクの中から大量の水が響に降り注いだ。すると響に浴びせられた水が蒸発し、水蒸気が辺りを包んだ。

 

「響! 響!」

 

響の元に行こうとする未来をクリスが羽交い締めする。バイクを降りたエルシドと翼は響の元に行くと顔を険しくする。

 

「私は、立花を守れなかったのか・・・!」

 

「・・・・・・・・・」

 

俯く翼の肩にエルシドが手を置く。デジェルはレグルスに目を向け。

 

「レグルス、お前が付いていながら・・・!」

 

「・・・・・・ゴメン」

 

「守れなかった・・・?」

 

クリスは未来から離れて、翼に掴みかかる。

 

「何だよソレ! お前! あのバカがこうなることを知ってたのか!? エルシドもレグルスも知ってたのかよ?!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「オイ!」

 

「止めろクリス!」

 

「兄ぃも知ってたのに、どうしてあたしには言ってくれないんだよ!」

 

クリスはデジェルに詰め寄ろうとする。レグルスは濡れた響を背負い、未来は響に呼び掛ける。

 

「響、響、響イイイィィ!」

 

未来の悲痛な叫びが青空に響いた。

 

 

 

 

 

ーFISsideー

 

その日の夕方、山間に潜めた飛行艇の中で、顔の包帯を新しくしたウェル博士はナスターシャ教授の措置が行われていた。

 

「数値は安定、年齢の割に対して体力です。それとも、振り絞った気力でしょうか?」

 

「良かった・・・」

 

「本当に良かったデス!」

 

イヤミの含んだウェル博士を無視して調と切歌が安堵の声を上げる。ナスターシャ教授はマリア達に目を向け。

 

「(私は、優しい子達に一体何をさせようとしたのか! 所詮テロリストの真似事では、迫り来る災厄に対して、何も抗えないことに、もっと早く気付くべきでした・・・!)」

 

ナスターシャ教授はウェルが妙な真似をしないように監視しているアルバフィカ達に目を向ける。

 

「(無頼を気取っても、マニゴルドもカルディアも心根は真っ直ぐな人達、アルバフィカも、心優しい気高い人、そんな彼等に私は汚名を着させようとしている・・・!)」

 

ナスターシャ教授はアルバフィカ達にも申し訳無い気持ちでいっぱいになっていた。

 

「さてと、そろそろ行くか・・・」

 

「だな・・・」

 

「「(ず~~ん)」」

 

「「「???」」」

 

マニゴルドとカルディアが調と切歌の首根っこを掴んで別室に移動するのをアルバフィカとマリア、ナスターシャ教授は訝しそうに首を傾げた。

 

 

 

ー響sideー

 

二課本部の潜水艇の中にある手術室で、響の身体から生えた『結晶体』が摘出されていたが、響の胸元の傷痕は発光を続けていた。

 

 

ー未来sideー

 

未来は本部の待合室で、響の手術の無事を祈っていた。するとレグルスがやって来て。

 

「当座の応急措置は終わったよ・・・」

 

「レグルス君・・・響は無事何だよね?」

 

「・・・あぁ」

 

未来に響の身に起こっている事を話す訳にはいかないレグルスは歯切れ悪く答えるしかなかった。

 

「未来・・・ゴメン、響を守れなくて、本当にゴメン・・・!」

 

「レグルス君・・・」

 

手をキツく握り血を滴らすレグルス、辛そうに俯きながら未来に謝罪するレグルスを未来も辛そうに見つめていた。

 

 

 

 

 

ーFISsideー

 

「・・・・・・・・・・・・何これ?」

 

「マリア~~~」

 

「お助けデ~~ス」

 

ナスターシャ教授をアルバフィカに任せ、別室に移動したマニゴルド達を呼びに来たマリアの目の前に映ったのは。

 

『縄で縛られ(亀甲縛りで)逆さ宙吊りになっている調と切歌』

 

『その二人の足元(頭の下?)でババ抜きしているマニゴルドとカルディア』

 

余りにカオスな光景にマリアは一瞬唖然呆然するが、何とか気持ちを切り替えて。

 

「マニゴルド、カルディア、何なのこれは? 何で切歌と調は縛られて(しかも亀甲縛りで)逆さ宙吊りになってるの?」

 

「あん? 勝手に“絶唱”使ったアホ共に虐めじゃなくてお仕置きをしてるんだよ」

 

「(今確かに虐めって・・・)でも、やり過ぎなんじゃ・・・」

 

「これでもマシな方だぜ、本当ならお尻ペンペン百連発の刑にしようと思ってたんだからよ」

 

「だから、ごめんなさいって言ってるのに~~」

 

「聴いてくれないんデスよ~~」

 

情けない声を上げながらマリアに助けを求める調と切歌。

 

「マニゴルド、カルディア、二人も反省している事だし、それに逆さ宙吊りは長時間やると命に関わるのよ・・・」

 

「分かってる。だからこのババ抜きが終わったら解放してやるよ」

 

「早く助けてマリア、あっ! うぅっ・・・な、なんか変な気持ちに・・・あぁっ!///」

 

「な、縄が食い込んで、アウッ!・・・変な扉が見える・・・デス・・・うぅっ!///」

 

「直ぐに縄をほどいて二人共! 調と切歌が『イケナイ世界』に行っちゃうわ!!」

 

頬を赤らめ艶っぽい声を出す調と切歌を見たマリアの慌てる声が部屋に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




調と切歌の守護星座は直感と偏見で生まれました。

中々ストーリーが進まない(T_T)

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