聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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蠢く狂気

ー二課・指令部ー

 

響がウェル博士と対峙してしている頃、二課本部では、追跡班との連絡が途絶えていた。

 

「情報部、追跡班との通信途絶!」

 

「ノイズの出現パターンを検知しています!恐らくは・・・!」

 

友里の報告を聞いて、追跡班が全滅した事を悟った弦十郎は顔をしかめた。

 

「ぬぅっ・・・! 翼とエルシド、クリス君とデジェルを現場に回せ! 何としてでも“ソロモンの杖”の保有者<ウェル博士>を確保するんだ!」

 

「ノイズと異なる、高出量のエネルギーを検知!」

 

「波形の照合、急ぎます!」

 

モニターに『GANGNIR<ガングニール>』と映し出さた。

 

「まさか、これって・・・!」

 

「ガン、グニール、だと・・・!」

 

それが響のガングニールの波形だと知り、唖然となる弦十郎は直ぐに気持ちを落ち着かせ。

 

「レグルス君はどうした!?」

 

「別の班と行動しているようですが、間も無く到着するようです!」

 

「(頼むぞレグルス君、このままでは響君は・・・!)」

 

 

ー響sideー

 

響がシンフォギアを纏い、ウェル博士と対峙した。

 

シュイイイイイイイイインン・・・。

 

すると、響の胸元の傷痕が光り、響の身体が光る。

 

「(力が・・・みなぎる・・・!)」

 

落ちてきた落ち葉が響に触れるとまるで炎に触れたかのように燃え尽きた。

 

「な、なんだと!?」

 

それを見たウェル博士は驚愕する。

 

「この熱気・・・!」

 

「立花さんが・・・?」

 

「どうなっちゃってんの・・・?」

 

「・・・・・・」

 

創世と詩織と弓美も戸惑い、未来は不安そうに響を見つめた。

 

「いつも、いつも! 都合の良いところで! こっちの都合をしっちゃかめっちゃかにしてくれる! お前はあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

するとウェル博士は癇癪を引き起こし、“ソロモンの杖”を構えて、代わり映えせずノイズを射出した。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!!」

 

響は真っ直ぐノイズは見据えて、戦いの歌を歌いながらノイズを蹴散らしていく。

 

「っ!」

 

未来は戦う響を見つめ。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!!」

 

響はノイズの大軍に飛びかかり次々となぎ倒して行く。

 

「響・・・・・・」

 

不安そうな未来。

 

「いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!お、お、お、お、おおおおお!」

 

ついにヒステリックに喚きながら、しつこくノイズを射出するも、響にはまるで相手にならず、ノイズは消滅していった。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!!」

 

響は右手を構えると、パーツが展開していき、握り手の甲にナックルダスターが展開し、右腕のパーツが開き、タービンが回転した。

自分に迫り来るノイズに向けて、腰のバーニアが火を吹き、ノイズに迫る!

 

「いっけーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

 

「ままままままままままま、まぁッ!!!」

 

迫る響にウェル博士は止めようと悲鳴を上げようもするも。

 

チュドオオオオオオオオオオオン!!

 

 

光の爆裂が広がり、爆発で生じた煙が晴れると、ウェル博士の前のノイズ達は全て炭素消滅し、ウェル博士が剥き出しになる。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!!」

 

「ウゥワッ!!」

 

自分を真っ直ぐ見据える響を見て、ウェル博士は懲りずに、と言うよりヤケクソでノイズを再三射出する。射出されたノイズはゆっくりと響に向かうが。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪、ハアアアアアアアアアア!!!」

 

響は再び拳を構えて足のパーツをジャッキのように展開させ、ノイズに拳をぶつけようとするがーーーー。

 

「は~い、響、そこまで!」

 

「えっ?」

 

突然、響の腕を誰が掴んだ。

 

「えっ?えぇっ!!? レグルス君っ!?」

 

「レグルス君・・・?!」

 

『あ、あの人・・・!』

 

唖然呆然する響と未来、レグルスと面識がある弓美達の目の前に、片手で響の腕を掴んだレグルス(聖衣装備)だった。

 

「あ、あぁ、あああああああぁぁぁああぁあぁああああああああッッッ!!??」

 

だが、ウェル博士は違っていた。彼の脳裏に、先日の戦いで見たレグルスの『百獣の王』の殺気を纏った姿が甦った。

 

『お前、さっきから煩いよ・・・!』

 

「ヒッ、ヒッ、ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!」

 

無様に尻餅を付いたウェル博士はレグルスから離れようと後ずさる。そんなウェル博士を無視する。と言うより眼中に無いレグルスは。

 

「まったくもう、謹慎中になにやってンの? それに今の勢いじゃウェル博士も殺してたよ」

 

「レ、レグルス君・・・どうしてここに・・・?」

 

「別の場所でウェル博士を捜索していたんだけど、本部からの連絡で急いで来たん・・・だっ!!」

 

レグルスは空いたもう片方の手から『ライトニング・プラズマ』を放ち、ノイズを殲滅した。

 

「それに、あの子達とも戦り合う事にもなってたぞ」

 

レグルスが目を向ける先を見ると、響とウェル博士の間に、桃色の丸鋸が立っており、丸鋸に付いてあるマジックアームの先を見ると、桃色のシンフォギアを纏った調と翠のシンフォギアを纏った切歌がいた。

 

「私の“シュルシャガナ”は、汎用性に優れているから防ぎきれる・・・!」

 

「デスけど、あのまま突っ込まれてたらちょっと危なかったデスけどね・・・!」

 

「調ちゃん、切歌ちゃん・・・!」

 

「“シュルシャガナ”・・・なるほど、君達のシンフォギアは“シュメール神話”の聖遺物か?」

 

レグルスの言葉に切歌と調はギクッとリアクションする。

 

「バレてる・・・!?」

 

「な、何で分かったデスか!?」

 

「この間の橋での戦闘で、切歌が“イガリマ”って叫んでいたからね。君達二人の聖遺物は、“シュメール神話”の“戦女神 ザババ”が振るったとされる二刃、“イガリマ”と“シュルシャガナ”だな・・・!」

 

「「・・・・・・・・・」」

 

二人は沈黙が正解と謂わんばかりに、渋い顔をする。

 

「ギリシャ神話の闘士、聖闘士の最高峰である黄金聖闘士が、シュメール神話の戦女神のシンフォギア奏者と共に行動するなんて、随分パンチが効いてる皮肉だな。そう思わない? マニゴルド、カルディア!」

 

切歌と調を守るように、紙袋を抱えてビーフジャーキーをかじるマニゴルドと林檎をかじるカルディアが立ち塞がった。

 

「まぁ確かに、結構な皮肉だな・・・」

 

「全くようやく見つけたらこんな面倒事かよ・・・!」

 

尻餅付いたままのウェル博士を尻目に、レグルスと対峙するマニゴルドとカルディア。マニゴルドは耳の通信機を操作する。

 

「(ピッ!)婆さん、ドクターは見つけたが、ガングニールとレグルスに見つかったぜ」

 

《そうですか、“櫻井理論”に基づく異端技術は、特異災害対策機動部二課の所有物ではありません。ドクターがノイズを発生させた事で、その位置を絞り込むことも容易い》

 

《だけどマム・・・!》

 

《分かっています。こちらが知り得た事は、相手も又然りです。急ぎましょう》

 

《皆、聞こえてるわね》

 

「あいよ了解(ピッ!)。レグルス、俺らはドクターを回収しに来ただけだ。ここでお前と殺り合う積もりはねぇよ」

 

「・・・・・・その言葉、信じて良いの?」

 

「ここでお前と殺り合っても面白くねぇから「何を悠長な事を言ってるンですかッ!!!」あぁっ?」

 

マニゴルドの言葉を遮るように、大声を上げながら立ちがるウェル博士をマニゴルドとカルディアは鬱陶しそうに見る。

 

「あの二人は! 我々の計画の妨げになる存在なんですよ! いつも、いつも、いつも、いつも、いつも、いつも! 人の都合が良いのを邪魔して! 人の楽しみに水を指しまくるこの二人は! 今すぐにでも殺して(ドゴッ!)(メキっ!)グベェッ!!??」

 

喚き散らすウェル博士の腹にマニゴルドの回し蹴りが、鳩尾にカルディアのつま先蹴りがめり込む。

 

「グブッ・・・ゲ、ゲエェッ! ゲブボオエエエエエエエエエエエエエエェッッッ!!」

 

“ソロモンの杖”を落とし、目が裏返り、痛みで悶絶するウェル博士は四つん這いになって嘔吐する。“ソロモンの杖”は嘔吐した吐瀉が掛かりそうだったのをカルディアが回収した。

 

「わ~~お・・・」

 

「えぇ・・・!?」

 

『うわ~~~~・・・・・・!』

 

「マニゴルドもカルディアも・・・」

 

「結構エグいデスね・・・」

 

一応(本当に一応)仲間である筈のウェル博士に突然暴行したマニゴルドとカルディアにレグルスと響だけでなく未来達や調と切歌もドン引きした。

 

「ゲベエェッ! グゲェッ!ゲホッ! ゲホッ!(ドカンっ!)ゲバァッ!!」

 

四つん這いになったウェル博士の頭にマニゴルドの足が、背中にカルディアの足をのせてウェル博士を踏みつけた。踏みつけられたウェル博士は、そのまま今自分が嘔吐した吐瀉物に顔面から浴びた。

 

「(バタバタバタバタバタバタバタバタ!!!)」

 

鼻に入る酸っぱい匂いと、口に入る気持ち悪い味、目に入る吐瀉物、包帯から染み込み肌に触れる生暖かい感触にウェル博士はもがくように手足をバタつかせた。が、そんなウェル博士をマニゴルドとカルディアは虫けらを見るような冷徹な目で見下ろし。

 

「調子に乗ってンじゃねぇぞ、ドクター・・・!」

 

「俺らは知ってんだよ、前回の決闘の最初から最後までな・・・!」

 

「(ビクンッ!!!)」

 

マニゴルド達から言われた言葉に、ウェル博士は全身が硬直した。

 

「俺らが申し込んだ決闘を横からシャシャリ出て奪って、こっちの“切り札”でもある“ネフェリム”を持ち出してまで挑んだ結果、テメェは何の成果を上げた・・・ああぁっ!」

 

マニゴルドは足に更に力を込めて踏みつける。

 

「(バンバンバンバンバンバン!)」

 

アスファルトを必死に叩くウェル博士を無視してカルディアも足に力を込める。

 

「切り札である“ネフェリム”を失った失態と、レグルスに殴られて無様に醜態を晒し、あろう事かこんな騒動まで引き起こしやがって・・・よぉっ!」

 

「(俺が、ウェル博士を殴った?)」

 

 

カルディアの言葉にレグルスは首を傾げると、ウェル博士は顔を横に向いて喚く。

 

「ま、待って下さい! ネ、“ネフェリム”を失う事になったのは私では無くそこの化け物<立花 響>がっ! そ、それに! “ネフェリム”は・・・!」

 

ウェル博士は自分の左手にある“ネフェリムの心臓部”がくるまった布を出して、響に責任転嫁をしようとするが。

 

「「うぜぇッ!!」」

 

「ぐばぁっ!! あ、あ、ああ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

更に力を込めて踏みつけられて耳障りな悲鳴を上げるウェル博士。

 

「言い訳してんじゃねぇぞ! 人の決闘を奪っておいて、失敗と失態と醜態を晒しやがって!」

 

「本来なら、“ソロモンの杖”を回収して、テメェは良くて顔面変わる程に殴るか、最悪“半殺し”にしても良かったんだぜ、こちとら!」

 

「ヒィッ!ヒヒィッ! ヒヒィイイイイッ!!!」

 

黄金聖闘士二人の殺気を充てられ惨めな悲鳴を上げるウェル博士。

 

「あの~マニゴルド、カルディア・・・」

 

「そろそろ退散しよう・・・」

 

ゴロツキやチンピラ処か、ヤクザかギャングのような二人の威圧感に弱冠引きながらも切歌と調は話しかける。

 

「ああ、それもそうだな」

 

「こんな所でドクターを絞めても時間の無駄だしな」

 

切歌と調の方に顔を向けた二人は途端にいつもの調子に戻り。ドクターから足を退けた。

 

「あのさ、マニゴルドにカルディア・・・」

 

「あん?」

 

「お?」

 

レグルスが二人に話しかける。

 

「さっき聞こえたんだけど、俺がウェル博士を殴ったってほんと?」

 

『は・・・・・・?』

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ?」

 

マニゴルドとカルディアだけでなく、調と切歌まで、レグルスの言った事が理解できずマヌケな声を出す(ちなみに響は腕を噛み千切られたショックであまり覚えていない)。特に殴られたウェル博士はレグルスの言葉に頭が真っ白になる。

 

「レグルス、お前、覚えてないのか?」

 

「イヤ~、あの時は“ネフェリム”って化け物をぶっ飛ばして、ぶちのめすって頭がいっぱいだったから、響が暴走した時以外あんまし覚えてないんだよね~」

 

頭を掻いてアハハと笑うレグルスを見て、マニゴルド達(ウェル博士は除く)は円陣を組み。

 

「(ヒソヒソ)惚けてるのかな・・・?」

 

「(ヒソヒソ)それとも挑発デスかね・・・?」

 

「(ヒソヒソ)嫌、レグルスに惚けるとか挑発だなんて高度な心理戦なんてできる筈がねぇ・・・」

 

「(ヒソヒソ)って事はつまり・・・」

 

ヒソヒソと話す四人はレグルスに目を向けて。

 

『コイツ、ドクターをぶん殴った事、忘れてるな・・・』

 

呆れ目の四人をレグルスは「???」と謂わんばかりに首を傾げた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ウェル博士に至ってはレグルスの言葉が理解できず茫然自失していた。

 

「ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア・・・・・・」

 

「ん、響・・・?」

 

すると息切れを起こした響にレグルスが目を向ける。

 

「うっ、あぁっ!?」

 

突然響が胸を抑えて膝を付く。

 

「響っ!?」

 

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ(ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン!!!)」

 

「響! ここは俺がやるから、ガングニールを解除するんだ!」

 

激しく鼓動する心臓を抑える響にレグルスはシンフォギアを解除するように呼び掛ける。が・・・。

 

「この僕の事を忘れていた・・・? この僕に・・・あんな屈辱を・・・あんな恥辱を・・・あんな侮辱を・・・あんな汚辱を与えておいて・・・・・・・・・・・・忘れていただとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!!」

 

突然吼えたウェル博士はガバッと起き上がると、緑色の液体が入った注射銃を調と切歌に押し付けた。

 

「調っ!」

 

「切歌っ!」

 

ウェル博士は歪んだ笑みを浮かべ。

 

「イヒッ! 頑張っている二人にプレゼントですよ!」

 

切歌と調はウェル博士から離れると注射銃を押し付けられた首筋を抑え。

 

「何しやがるデスか!」

 

「“LiNKER”・・・!」

 

“LiNKER”。それは、適合係数の低いシンフォギア奏者の係数を引き上げる制御薬。

 

「テメェ、何してやがる! 効果時間にはまだ余裕があるだろうが!」

 

カルディアがウェルの胸ぐらを掴む。

 

「貴方達が悪いんですよ! 折角倒せる獲物を前に、退散だなんてつまらない事を言うから! 連続投与をするしか無かったんですよ!!」

 

「ハア!?」

 

「あの化け物達<響とレグルス>に対抗するには、今以上の出力で捩じ伏せるしかありません! その為には先ず、無理矢理にでも適合係数を引き上げる必要がありますからねぇ! さてさてどうします? マニゴルドさん? カルディアさん? まさか・・・この子達だけ戦わせる訳には行かないでしょう・・・!」

 

「テメェ・・・!」

 

「(ギリッ!)」

 

ウェル博士の言葉にマニゴルドとカルディアは忌々しいばかりに歯軋りする。

 

 

「でも、そんな事すれば、オーバードーツによる負荷で・・・!」

 

「ふざけんな! 何でアタシ達がアンタを助ける為にそんな事を!」

 

「するですよ!!」

 

『ッ!!!』

 

「イエ、せざる得ないのでしょう!? 貴方達が“連帯感”や“仲間意識”などで、私の救出に向かうなんて到底考えない事を! 大方、あのオバはん<ナスターシャ教授>の容態が悪化したからおっかなびっくり駆けつけたに違いありません!」

 

「「・・・・・・・・・!!」」

 

「(クソが・・・!)」

 

「(読んでやがる・・・!)」

 

こちらの意図を読んでいるウェル博士に四人は図星とばかりに黙る。

 

「病に犯されたナスターシャには、生化学者である私の治療が不可欠。さあ! 自分の限界を越えた力で、私を助けたらどうですか!! そして! 私に吐き気を催す程の屈辱を与えたあの化け物共を! 見事に打ち払ってくださいよッ!!!」

 

凄まじい程に傲慢な悪意と猟奇的な狂気に満ちたウェル博士はマニゴルドとカルディアと調と切歌に命令する。

 

 

ー二課本部ー

 

その頃、二課本部では、響の異変を当然察知していた。

 

「響ちゃんのコンディションに異常が見られます!」

 

「これは、ガングニールの侵食がもたらしているのか・・・?」

 

「っ・・・翼達はどうなっている?!」

 

クリスとデジェルはヘリコプターで、エルシドと翼はバイクで現場に向かっていた。

 

「奏者二名、聖闘士二名、現場に急行中!」

 

「ですが、到着にはもう少し掛かる見込みです!」

 

その頃翼とエルシドは高速をバイクで移動していた。

 

「立花、早まってくれるなよ・・・!」

 

 

ー響sideー

 

胸の傷口から光が溢れ淡く光る響。

 

「響・・・・・・」

 

「レグルス君・・・お願い、やらせて・・・」

 

「でも・・・!」

 

「お願い・・・!」

 

「・・・・・・」

 

戦おうとする響にレグルスは渋い顔をするがーーーー。

 

「やりたいって言ってんだからよ・・・!」

 

「やらせてやれや・・・!」

 

「っ!?」

 

レグルスの直ぐ目の前に蟹座と蠍座の聖衣を纏ったマニゴルドとカルディアが襲いかかる。

 

「ぐあッ!!!」

 

二人はレグルスを掴んだまま、戦線を離れる。

 

「(調、切歌! こっちは俺らでやる!)」

 

「(何とか持ちこたえてろよ!)」

 

調と切歌は、連続投与の影響で苦しそうに動く。

 

「くっ!・・・ヤろう! 切ちゃん!」

 

「マムの所に、ドクターを連れ帰るのが・・・!」

 

「私達の使命だ・・・!」

 

「ウフフ・・・」

 

健気に立ち上がる二人をウェル博士は澄まし顔でにやける。

 

「“絶唱”・・・デスか?」

 

切歌の言った言葉にウェル博士は更に不愉快な声をあげる。

 

「そう、ユー達歌っちゃえよ! 適合係数が天辺に届くほど! ギアからのバックファイアを軽減できる事は、過去の臨床データが実証済み!だったらLiNKERぶっこんだばかりの今なら!!」

 

歪みきった笑みを浮かべ、更に不愉快な声で雄叫びを上げる。

 

「“絶唱”歌いたい放題のやりたい放題ィィィィィィィッッ!!!」

 

「くっ!・・・後でカルディア達にいじめられるの覚悟で!」

 

「やってやる、デーーーーースッ!!!」

 

そして切歌と調は歌う。“諸刃の歌”をーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーお好み焼き店“ふらわー”ー

 

ふらわーの店主であるオバちゃんは、響達が食べた後の食器の洗いが終わり、一息付いていた。すると、店の扉が開き。一人の男性が入ってきた。

 

「ん? なんだい、帰って来てたのかい。少し遅かったね、先まで未来ちゃん達が居たのにすれ違いになっちゃったよ」

 

「ーーーーーーーーーー」

 

「確かに店回りは酷くなっちゃったけど、それでも来てくれるお客さんがいるからね、ありがたい事だよ。それでアンタは4ヶ月近くもどこをほっつき歩いてたんだい?」

 

「ーーーーーーーーーー」

 

「ふ~ん、諸国を歩いて巡礼の旅って訳か。それで? 何か得た物はあったかい?」

 

「・・・・・・・・・」

 

沈黙する男性をオバちゃんは微笑んで。

 

「ま、答えはそう簡単に直ぐに出やしないさ。お腹減ってないかい? たまにはオバちゃんのお好み焼きを食べてくんな」

 

「ーーーーー」

 

「しかしもかかしもないよ。突然4ヶ月も行方を眩ませてたんだから、これぐらいはやりな・・・!」

 

「・・・・・・」

 

観念したのか、男性はカウンター席に座る。少し待つと、香ばしいソースの匂いがする等分に切られたお好み焼きが、男性の前に置かれる。

 

「オバちゃんが食べさせてあげようか♪」

 

「ーーーーー」

 

必要無いと話した男性は、箸を持ってお好み焼きの一切れを口に入れた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

男性は言葉を失った。口に入れた瞬間、今まで感じた事の無い暖かな感覚が男性の心と身体を包み込んだ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

男性はもう一切れを頬張ると再び暖かな感覚を感じて、安らかな微笑みを浮かべた。その笑みを見たオバちゃんは帰って来た男性に向かって口を開く。

 

「お帰り、“アスミタ”・・・」

 

男性、“アスミタ”もオバちゃんの言葉を返す。

 

「ただいま戻った、店主殿・・・・・・」

 

別の場所では戦いが起こっているにも関わらず、その場所は暖かな世界が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『スーパーロボット大戦X』をやって思ったんですけど、前作のVのヒロインがナインなら、女主人公のアマリがヒロインですね。

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