聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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特異災害機動部2課

訳のわからないまま特務災害2課に連れていかれた響とレグルス(レグルスは能天気に車から見える景色を楽しんでいた)、二人を乗せた車は響と翼が通う『私立リディアン音楽院』に連れていかれた。

 

レグルスは初めて見る建物に興味津々だったが響は困惑していた。

 

「な、何で学院に?」

 

「スッゴいな~、まるで貴族が住みそうな屋敷だ」

 

響はレグルスの言葉に首を傾げていた。日本が鎖国していたことやレグルスはここをイタリアと言っていた事を思い出してレグルスの『何か』に違和感を感じていた。

 

「不思議がるのも仕方ないですよ、何しろ彼の『時間』は300年近くも『過去』の『時間』ですからね」

 

え?とますます分からなくなる響。

 

車から降りた一同(レグルスがはしゃいで何処かに行きそうになり、エルシドが取り押さえると言ったハプニングはあったが)は教師が居る中央棟に向かう。ここまで翼とエルシドとさっき話してくれた『緒川慎次』は無言で進んでいた。翼は響とは目も合わせず、緒川も無言でエルシドに至っては無言&無表情の鉄仮面を貫いていた。

 

「あ、あの~、ここって先生達が居る中央棟、ですよね?」

 

「「「・・・・・・」」」

 

「なぁなぁ響?ここってそもそもなんなんだ?」

 

「え?レグルス君、ここは学校だよ」

 

「学校?あぁ勉強する所か、へぇ~」

 

無言の世界だと言うのに能天気なレグルス。だが響はレグルスの能天気が重苦しい空気を和らげている気がして内心助かっていた。

 

五人はエレベーターに入り緒川が携帯端末をかざすと扉が二重に閉まっり何か取っ手のようなものが現れ翼とエルシドはそれに捕まり。

 

「おぉ!」

 

「あ、あの~」

 

「さ、危ないから捕まって下さい」

 

「え?危ないって?」

 

「余り喋るな、舌を噛むぞ」

 

エルシドに忠告され緒川に手を引かれて取っ手に捕まる響と内心ワクワクしているレグルス。すると突然エレベーターがフリーフォールのように下に降りた(落ちた?)。

 

「ドゥワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

「オオオオオオ!!!何だコレ!!??イィィヤッッッホオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

突然襲われた浮遊感に悲鳴を上げる響と遂にワクワクが爆発したレグルス。

 

「ああ、あ」

 

「面白いなぁ♪なぁ響もう一度やんない?」

 

「やんない!!!!」

 

掛け合い(夫婦?)漫才を繰り広げる二人。

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

そんな二人を緒川は微笑ましそうに、エルシドは無表情だが何処か微笑ましそうに、翼は目も合わせず見ていた。

 

「アハハ・・・」

 

「?」

 

苦笑いを浮かべる響とどうしたんだ?って感じで首を傾げるレグルス。ふと翼が相変わらず目も合わせず口を開く。

 

「愛想は無用よ」

 

「「・・・」」

 

翼の言葉で無言になる響といきなり話し出した翼に面食らうレグルス。するとエレベーターの窓から景色が見えた。何かの壁画のようなものが建物の内部に描かれていた。

 

「うわぁ~」

 

「・・・・・・」

 

呆ける響だがレグルスは壁画を鋭い目で見ていた。

 

「これから向かう所に微笑みなど必要ないから」

 

翼は冷徹に呟く。エルシドはそんな翼を無言で見ていた。

 

「(これから『教皇様』みたいな人にでも会うのかな?)」

 

ふとレグルスはここにはいない亡き教皇の事を思い出していた。

 

エレベーターが止まり扉が開くとそこには。

 

 

 

パン!パン!パン!!

 

 

 

 

ラッパとクラッカーが炸裂し『熱烈歓迎!立花響さま☆レグルスさま☆』とデカデカと書かれた看板(可愛くデフォルトされたネコとライオンの顔のイラスト付き)がかけられ花吹雪が舞い、目の前にシルクハットを被った赤いワイシャツを腕捲りしピンクのネクタイをした鬣のような赤い髪をした服の上からでもわかるほどの鍛えられた身体をした男性がにこやかな笑顔をし、後ろに控える制服を着た人達も拍手し、更に後ろで『ようこそ2課へ』とこれまたデカデカと書かれた看板があった。

 

「ようこそ!人類最後の砦、特異災害対策機動部2課へ!!」

 

 

 

パチパチパチパチパチパチパチパチ!

 

 

 

「オォウ♪」

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

余りの歓迎雰囲気にレグルスは喜んだが響達は唖然としていた。

 

「楽しそうな所だな♪」

 

笑うレグルスだが翼は頭痛を堪え緒川は苦笑いを浮かべエルシドは明後日の方を見ていた。すると白衣を着て茶髪の髪をアップさせた赤い縁のメガネをした女性が響に近づき。

 

「さぁ、笑って笑って♪お近づきの印にツーショット写真♪」

 

と携帯で響とツーショット写真を撮ろうとするが。

 

「えぇ!嫌ですよ!手錠したままの写真なんてきっと悲しい思い出として残っちゃいます!」

 

気にするところはそこか?とツッコミが飛んで来そうなことを言う響。

 

「それにどうして初めて会う皆さんが私の名前やレグルス君の事知ってるんですか?」

 

「我々2課の前身は大戦時に設立された特務機関なのでね、調査等お手のものなのさ♪」

 

「はいこれ♪」

 

シルクハットをかぶり直し杖で手品をする男性、その隣から鞄を持ってきた白衣の女性。

 

「ああ!私の鞄!?な~にが調査はお手のものですか!!鞄の中身、勝手に調べたりして!ってあれ?そういえばレグルス君は?」

 

さっきからいないレグルスに気付く響。

 

「レグルス君ならそこで手錠したままご飯食べてるわよ」

 

白衣の女性が指差した方を見るとリスみたいに口いっぱいに食べ物を頬張るレグルスがいた。

 

「モグモグモグモグ・・・おぉこれ美味い!」

 

「ズコッ!なにやってんのレグルス君!手錠したままご飯だなんて最悪の思い出になっちゃうよ!」

 

「いや~、つい腹が減っちゃってさ~、響も食べろよスッゴい美味いぞ!」

 

「後で食べるよ!」

 

『食べるんかい』

 

2課一同が心の中でツッコム。

 

「それよりも手錠を何とかしないと!」

 

「ん~、確かに食べづらいしな・・・よっと!」ガシャン!!

 

なんとレグルスが両手をくいっとクロスさせると手錠はまるで飴細工のようにバラバラになった。

 

「でええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」

 

『まぁ彼やエルシドや司令ならそれぐらいできるよな~』

 

手錠を力技で破壊したレグルスに響は驚き、他の人達はだろうなって感じで見ていた。

 

「よし、これで大丈夫だな」

 

「ちょちょちょちょっと待ってレグルス君!今何したの!?今何やったの!?今どうしたの!!??」

 

「ん?“手錠壊しただけ”だけど?響もやってみなよ」

 

「え?・・・・・・うーん!(グググググ)うーん!!(グググググ)・・・・・・ってできるわけないよ!私女の子だから!か弱い乙女だから!!」

 

「やっぱダメか。ハハハハハハ!」

 

「ハハハハハハじゃないって!!」

 

レグルスのように手錠を壊そうと一応試したができなかったのでレグルスにツッコミを炸裂させ再び掛け合い(夫婦)漫才を繰り広げる二人(笑)。

 

『仲いいなぁ~』

 

二人の漫才を微笑ましそうに見守る2課の人達。呆れる翼とエルシド。

 

「まったく・・・・・・」

 

「緒川さん、お願いします」

 

「はい」

 

ようやく緒川から手錠を外して貰った響と隣で飯を頬張るレグルス。

 

「ありがとうございます」

 

「いえ、こちらこそ失礼しました。」

 

「モゴモゴモゴモゴモゴモゴ」

 

「食うか喋るかどちらかにしろレグルス」

 

「・・・(ゴックン)ところでいい加減皆の名前知りたいんだけど?」

 

すると赤い髪の男性が前に来て。

 

「そうだな、では改めて自己紹介だ。俺は“風鳴 弦十朗”。ここ(2課)の責任者をしている」(ニッ)

 

「(聖域<サンクチュアリ>で言うと『教皇様』みたいなもんか。それにしてもこの人強いな、多分素の力は青銅<ブロンズ>聖闘士以上はあるぞ)」

 

次は白衣の女性が自己紹介した。

 

「そして私は、“できる女”と評判の“櫻井 了子”、よろしくね」(パチクリ♪)

 

「あぁ、こちらこそよろしくお願いします」(ペコッ)

 

「よろしくな、“弦十朗”に“了子”」

 

「レグルス君いきなり呼び捨て!?ダメだよ!」

 

いきなり馴れ馴れしいレグルスにツッコム響。

 

「いや構わないよ、レグルス君よろしくな」

 

「礼儀が分からないなら、お姉さんがじっくり教えてあげようかな♪」

 

大人の色気を出して巨乳をレグルスの腕に押し付ける了子。

 

「・・・・・・う~ん、何かめんどくさそうだし断るよ」

 

「あら残念♪」

 

にこやかに飄々と離れる了子。

 

「・・・・・・」

 

そんな了子を能天気笑顔で見つめるレグルス。

 

「ところで、君達を呼んだのは他でもない」

 

弦十朗が切り出す。

 

「協力を要請したい事があるのだ」

 

「「協力って?あっ」」

 

響とレグルスは響の身体から生まれた鎧の事を思い出した。

 

「教えてください、“アレ”は一体何なんですか?」

 

響の質問に弦十朗と了子はお互い目配せし了子を頷くと響とレグルスに近づき。

 

「貴女達の質問に答えるためにも、2つばかりお願いがあるの。最初の一つは今日の事は誰にも内緒。そしてもう一つは・・・」

 

そう言うと了子は左手を響の腰に右手をレグルスの腰に伸ばし二人を引き寄せ。

 

「とりあえず“脱いで”もらおうかしら?二人とも」

 

色っぽい流し目でとんでもない事を言った。

 

「え?だから、なぁんでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

もう泣きそうな目で叫ぶ響。

 

「え?脱ぐだけでいいの?んじゃ脱ぐか」

 

「あら♪」

 

『!?』

 

脱ごうとするレグルス。そんなレグルスを凝視する女性隊員達。

 

「ちょちょちょレグルス君!こんなところで脱いじゃダメだよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

再び炸裂の響のツッコミ。この時2課の女性隊員達は“ショタコン”疑惑が上がり男性陣から引かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体検査が終わり寮に戻ろうとする響だが。

 

「あの、レグルス君は?」

 

「安心してくれ、レグルス君は今日の所はエルシドの部屋に泊まるからな」

 

「狭い部屋だが野宿よりはマシな方だ」

 

「おう!世話になるよエルシド。響、また明日な~」

 

「うん!また明日!」

 

そして帰路に付く響、響がいなくなった後レグルスは弦十朗達に向き合う。

 

「ところでさ弦十朗」

 

にこやかに話をかけるレグルス。

 

「何だい?レグルス君」

 

「“シジフォス”はどこにいるんだ?」(スッ)

 

レグルスの目は“戦士の目”に変わっていた。

 

ゴウッッッッ!!!!

 

『!!??』

 

その時翼や緒川や了子やその場にいた全員が肌で感じそして実感した。目の前にいるのは“ただの少年”ではない、“地上最強の十二人”の一角を担う文字通り“百戦錬磨の強者”であると。

 

「何故、俺達が“シジフォス”の事を知ってると思うんだい?」

 

この状況でも平然としていられるのは弦十朗だけだった。

 

「さっき、女性隊員の人達が俺の事『あれが“シジフォス”の甥っ子か』ってこそこそ喋ってたから」

 

『!?』

 

二人の女性隊員が気まずそうに目をそらしていた。

 

「本当は何で話してくれないのかと疑問を持っていたけどエルシドがあんた達を“信頼”しているようだし響も自分の事で一杯一杯だったから何も聞かなかった。でも聞かせてほしいんだ。俺もあんた達を“信頼”したいから」

 

強い“意思”が宿った目を見て弦十朗は降参と言わんばかりに両手を上げだ。

 

「すまなかったなレグルス君、別に秘密にしておこうと思っていた訳ではないんだ。ただ俺達としても“シジフォス”の事は簡単に話せる事じゃないんだ。特に君にとって“たった一人の家族”の事なら尚更な」

 

「レグルスよ。弦十朗殿達は信頼に足る人物達だ、俺が保証する」

 

普段は無口で“己の身の証は言葉よりも行動で示せ”を信条にしているようなエルシドが“信頼されてる”事からレグルスも2課の皆を信じたいのだ。

 

「・・・・・・話してくれ弦十朗」

 

レグルスも意を決する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の“叔父”にして『射手座<サジタリアス>の黄金聖闘士 “シジフォス”』に何があったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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