ライブ会場に今、6人のシンフォギア奏者と6人の黄金聖闘士が揃った。
ガングニールを纏う立花響と獅子座<レオ>のレグルス。
天羽々斬を纏う風鳴翼と山羊座<カプリコーン>のエルシド。
イチイバルを纏う雪音クリスと水瓶座<アクエリアス>のデジェル。
彼等と敵として向かい合うは。
黒いガングニールを纏うマリア・カデンツァヴナ・イヴと魚座<ピスケス>のアルバフィカ。
黒と緑のシンフォギアを纏う切歌と呼ばれる少女と蟹座<キャンサー>のマニゴルド。
黒と桃色のシンフォギアを纏う調と呼ばれる少女と蠍座<スコーピオン>のカルディア。
カルディアは獰猛な笑みを浮かべながら口開く。
「まさかこんなに早く再会できるとは思わなかったっぜ!」
カルディアの右手の人差し指の爪が異常に伸び赤く染まる、そして指差すようにデジェルに向けると衝撃波がクリス達を襲うが。
「こちらとしてはお前達とこんな形で再会したくなかったがっな!」
カルディアから放たれた衝撃波をデジェルの拳から放たれた衝撃波で相殺する。その衝撃が会場を揺らす!
『っ!?』
突然の二人のやり取りに響達やマリア達といった奏者達は面食らった。かつての仲間に躊躇なく攻撃したカルディアもそうだがそれに応戦したデジェルにも驚いたのだ。
「ひゅ~♪腕は鈍って無くて安心したぜデジェル、弱くなったお前を仕留めても意味ねぇからな」
「ほざけ“バカは死んでも治らない”と言うが、我等の世界で死に、この“世界”に来てもそのバカさ加減は治らなかったようだな」
軽口で皮肉を言い合う二人だが、お互いにその目は“殺気”を放っていた。
カルディアから放たれる殺気に充てられた響達は全身が痺れた感覚になり。
デジェルから放たれる殺気に全身が凍結した感覚になるマリア達。
「(なんて圧だ・・・)」
「(お兄ちゃんがこんな殺気を放つなんて・・・)」
「(何で?・・・何で仲間なのにこんな事ができるの?・・・)」
「おいコラカルディア、先走んなっての。仕方ねぇなぁ、俺達も闘るかレグルス?」
「そう言えば、俺達って“宮”はお隣さんだったけどあんまり接点無かったな」
「だな。そんでこんな状況になるとは、神様も予想して無かったろうよ」
マニゴルドとレグルスも軽口を叩きながら、いつでも戦えるように構えてた。そして、エルシドとアルバフィカも。
「「・・・・・・・・・」」
お互いに無言であったがエルシドは手刀を構え、アルバフィカも“黒い薔薇”を構えて相手の動きを見落とさないように構えていた。
今から正に黄金聖闘士同士の戦いが始まろうとしたその時ーーーーーーーーーーーー。
「やめてーーーーーーーーーッ!!」
響が黄金聖闘士達の間に割って入った。
「やめてください!皆さん同じ聖闘士の仲間じゃないですか!?何で仲間同士で戦わなくちゃいけないんですか!?貴方達<マリア達>とだって!私達が戦う理由なんて無い筈だよ!私達、“分かり合える”筈だよ!!」
響がマニゴルド達やマリア達に呼び掛けるが、マニゴルドは小指で耳をほじり、カルディアは欠伸をし、アルバフィカは無言で佇む。
「お~お~ご立派ご立派。こんな状況で話し合いましょうなんてほざくとかご立派なお考え方で・・・」
「あ~あシラケるわ~、俄然殺る気が失せたわ~」
おどけた態度で響の言葉を聞き流すマニゴルドとカルディアの態度に翼とクリスはムッとなる。
「(何だこの二人は、“シジフォス”のような品格もエルシドのような風格も、デジェルのような知性も、レグルスのような純朴さも感じない。まるで無頼漢ではないか・・・!)」
「(こんな奴等がお兄ちゃん達と同格の黄金聖闘士なのかよ・・・!)」
翼とクリスは自然と血が滲まんばかりに手をきつく握る。こんな無礼な二人が自分達が追いかけている“高み”に立っているのに憤りを感じたからだ。
だが、響の呼び掛けに憤りを感じているの者もいた。調が怒りを滲ませながら呟く。
「偽善者・・・」
「え?」
「(お、こりゃ向こうのガングニール、調の地雷を踏んだかな?)」
「この世界には、貴女のような偽善者が多すぎる・・・!♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」
そう呟き調は歌を歌う、それはこの世界に対して怒りをぶつけるように。ツインテールのパーツが開き円盤ノコギリを響達に向けて射出する。
「・・・!・・・」
呆然とする響の前にレグルスが立つ。
「『ライトニング・プラズマ』!」
円盤ノコギリを破壊するレグルス。翼が響に怒鳴る。
「何を呆けている立花!」
クリスがガトリングをマリア達に放つもマリア達は散開してかわす、飛び上がった切歌に向けて銃弾を向けるも。切歌は大鎌を回転させながらクリスに襲いかかる!
「クリス!」
「おっと!デジェル、そっちには行かせねぇぜ」
クリスの元に行こうとするデジェルにマニゴルドが立ち塞がる。
「でい!」
「ちっ!近すぎんだよ!」
切歌の攻撃を跳んでかわすクリスは武装を遠距離戦向けのガトリングからボーガンに変更させる。翼とマリアが交戦する。
「くっ!」
ツインソードを二刀流に変えて応戦する翼。
「ハッ!」
「フッ!」
だがマリアは余裕の態度を崩さず、マントを翻しながら翼と戦う。
「(翼・・・・)マニゴルドとカルディアは兎も角、何故お前が奴等の側に付いている。アルバフィカ」
「・・・・・・」
「お前は誇り高い男だ。このようなテロ紛いの行為に手を貸すとは思えん」
「・・・・・・」
エルシドの質問にアルバフィカは無言で黒薔薇を構えていた。そしてレグルスとカルディアも戦闘を開始していた。
「喰らいなレグルス!『スカーレット・ニードル』!!」
「『ライトニング・プラズマ』!」
真紅の針と閃光の拳が何百何千と空中でぶつかる!
その横で調はツインテールの武装を変形展開し、まるでノコギリを付けたマジックアームのような形となって響に襲いかかる。響はノコギリをかわしながら調に呼び掛ける。
「わ、私は!困ってる皆を助けたいだけで!だから!」
「それこそが偽善・・・!」
「!」
「“痛み”を知らない貴女に、“誰かの為に”なんて言って欲しくない!」
調はマジックアームのノコギリで響に攻撃する。
『γ式 卍火車』
「ッ!・・・響!」
放たれたノコギリをレグルスが破壊するが。すかさずカルディアが襲いかかる。
「甘いな!レグルス!」
「!」
「『スカーレット・ニードル』!」
“3発”の真紅の針がレグルスの身体を貫く!
「ッ!?ウアアアァァァァァァッ!!!」
「レグルス君!」
『ッ!!?』
翼とクリスとエルシドとデジェルは直ぐに響とレグルスのいる所に集う。
「グッ!クゥ!」
「レグルス君・・・」
「だ、大丈夫・・・これ位ならまだ戦える・・・!」
「(立花、心を乱しているな・・・)」
「(“まだ3発”とは言え『スカーレット・ニードル』をマトモに喰らっては・・・)」
マリア達を警戒しながらクリスと翼が響に怒鳴る。
「鈍くさい事してんじゃねぇ!!」
「気持ちを乱すな立花!!」
「は、はい・・・」
自分が呆然としたせいでレグルスが負傷した事に自責の念に捕らわれる響。マリア達も一度集う。
「仕留め損ねたか?カルディア?」
「嫌、レグルスの野郎。ちゃっかりカウンターまでお見舞いしやがって・・・・・・」
マニゴルドの質問を口許から垂れた血を親指で拭いながら好戦的な笑みを浮かべるカルディア。レグルスは攻撃を受ける際カルディアにカウンター攻撃をしていたのだ。
「我々黄金聖闘士の中でも“戦いの天才”と謂われたレグルスだ、油断していると足元を掬われるぞ」
アルバフィカの言葉にへいへいと答えるカルディアに調がソッと近づき小声で話す。
「カルディア、大丈夫?“身体”の方も・・・」
「そうデスよ、あんまり動くとまた“心臓”が・・・」
「・・・・・・」
「つまんねぇ事気にしてんじゃねぇよ。大丈夫だ」
調と切歌の頭をポンポンと叩きながらにかっと笑うカルディア。マリアも心配そうに見るが翼達が向かってきたので気を引き締めて応戦する。
ートレーラーー
トレーラーの中から“マリア”の状態を見ていた年配の女性は苦々しく呟く。
「この伸び率では、数値が届きそうもありません。最終手段を用います!」
そう言って何かを作動させた。
ー会場ー
奏者達と聖闘士達が乱戦する戦場に、先程まで翼とマリアがいたステージから緑色の光が輝き現れた。
『!?』
奏者と聖闘士がステージを見ると緑色の光の中で“蠢く何か”がいた。その“何か”は膨張し、巨大な芋虫のようなノイズになった。
「うわっ!キモッ!?」
「うわ~、何あのでっかいイボイボは!!?」
レグルスと響はドン引きした。調がボソッと呟く。
「増殖分裂タイプ・・・・」
「婆さん始めやがったか・・・!?」
「ちっ!折角盛り上がってきたってのによ・・・!」
「こんなの使うなんて聞いてないデスよ!?」
「マリア・・・・・・」
「(コクン)マム・・・」
「《全員引きなさい》」
「わかったわ・・・」
そう言ってマリアはマムと呼ばれた女性との通信を切り、両腕を合わせると腕に付けた手甲が外れ、空中で合体し“槍”へと変形した。
「アームドギアを温存していただと!?」
「あれがマリア・カデンツァヴナ・イヴの本来のアームドギアか?」
マリアはアームドギアの矛先をノイズに向けて槍の穂が展開されそこから桃色のエネルギー波をノイズに浴びせる。
『HORIZON†SPEAR』
「おいおい、自分らで出したノイズだろ!?」
驚くクリス達を尻目にノイズは膨張し破裂した!その時の閃光に紛れマリアと切歌と調は撤退する。マニゴルド達はレグルス達に目を向け。
「そんじゃまたな♪」
「次は邪魔者抜きでヤろうぜ♪」
「急ぐぞ二人共」
マニゴルドとカルディアとアルバフィカはマリア達を追って撤退した。
「マニゴルド!カルディア!アルバフィカ!」
「ここで撤退だと!?」
「折角温まってきた所で尻尾を巻くのかよ?」
「そんな事言っている場合ではないぞクリス」
「ッ!?ノイズが!?」
「消滅していない?」
響達が散らばったノイズの破片を見ると、破片はグネグネと蠢き膨張し再生しようとする。
「ハッ!」
「疾ッ!」
アームドギアを大剣に変えた翼とエルシドが手刀でノイズを攻撃するがノイズは再生する。
「コイツの特性は“増殖・分裂”・・・」
「放っておいたら制限無いって訳か?その内ここからあふれでるぞ!」
全員の通信機に緒川からの連絡が入る。
「《皆さん聞こえますか!?会場の直ぐ外には、避難したばかりの観客達がいます!そのノイズをここから出すわけには・・・!》」
「観客ッ!?皆が・・・」
響の脳裏、未来達の姿が浮かんだ。レグルスがパンっと拳を叩き合わせる。
「ならコイツが再生できない程に一辺の欠片も残さずぶっ壊す!」
「落ち着けレグルス」
粋がるレグルスをエルシドが抑える。
「迂闊な攻撃では、イタズラに増殖と分裂を促進させるだけ・・・」
「どうすりゃ良いんだよ!?」
「(我々聖闘士が全力で行けば全滅させる事は出来なくもないが・・・だがそれではクリス達の成長の邪魔になるやもしれん、我々はあくまで“マニゴルド達への対策”の為にここに来たからな)」
本来レグルス達黄金聖闘士が奏者達の任務に介入する事を政府が容認しないが、その黄金聖闘士が敵として現れた時の対抗策としてここにいる。そして響が呟く。
「“絶唱”・・・“絶唱”です!」
「“あのコンビネーション”は未完成なんだぞ!?」
クリスが止めようとするが響の目が本気だった。
「増殖力を上回る破壊力にて一気殲滅。立花らしいが理には叶っている」
「おいおい本気かよ!?デジェル兄ぃ達はどう思う?」
「やってみる価値はあるだろう」
「ここは響達に任せて大丈夫と言うことだね」
「・・・・・・」
「エルシド、大丈夫だ。立花君達だって成長している」
「・・・・・・分かった、ここは任せる。俺達は奴等を追うぞ」
この場を響達に任せてレグルス達は撤退したマリア達を追う。
「「「(コクン)」」」
響達はお互いに頷き合い響を真ん中に手を繋ぐ。
「行きます!S2CAトライバースト!」
「「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」」」
そして奏者達は歌う!心を合わせて!
「(我々にはエルシド達のような“原子を破壊する圧倒的な力”は無い・・・)」
「(お兄ちゃん達みたいな“光をも越えるスピード”もあたし達には無い・・・)」
「(私達はレグルス君達に比べたら取るに足らないかもしれない。でも!未来達を、皆を守りたいって想いだけは、負けてない!!)」
全てにおいて自分達は黄金聖闘士達の足元にも及ばない。だが、力無き人々を守りたいと言う曇り無き想いを胸に奏者達の歌が奏者達の身体を光包む!
シンフォギアから流れる力の奔流に顔を歪めながらも歌う!
「スパークソング!」
「コンビネーションアース!」
「セット!ハーモニックス!!」
響の胸のシンフォギアが光輝き、奏者達のシンフォギアから放たれるバックファイアが巨大ノイズを包み込む!
圧倒的な力の奔流にノイズは消滅していくが、その反動が響を襲う
「~~~~~~~~ッ!!」
「耐えろ・・・立花・・・!」
「もう少しだ・・・!」
その光景を中継室から見ている緒川。
「S2CAトライバースト、奏者三人の“絶唱”を響さんが調律し、一つのハーモニーと化す。それは、“手を繋ぎ合う”事をアームドギアの特性にする響さんにしか出来ない・・・だが、その不可は響さん一人に集中する!」
正に諸刃の剣と呼ばれる奥の手。響は襲いくるシンフォギアのパワーに呑まれそうになる。
「ウアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
響のシンフォギアから放たれる光の光景は会場外にまで届いた。不安そうに見つめる観客達。友里と合流した未来達もその光景を見ていた、未来は祈るように手を合わせる。
「響・・・」
そして“絶唱”を喰らったノイズは肉片を失い、背骨のような本体を晒す。
「今だ!!」
「レディ!」
響が構えると足のパーツが、ベッドギアが展開し両手のパーツを合わせ右手の武装にする、会場を包んだ光は響に集まる、響の腕の武装の中のホイールが回転し、武装展開し構える。
あたかも、響自身が“一振りの撃槍”のようにーーーー。
「ぶちかませ!!」
クリスの叫びと同時に響はノイズに向かう!
「これが私達の!」
飛び上がった瞬間、響の腰パーツがバーニアのように火を吹く!
「“絶唱”だあああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!!!」
“絶唱”のパワーを込めた拳をノイズに叩き込む!腕のパーツが展開し回転しパイルバンカーのように追加衝撃をノイズにぶちかます!
その瞬間、虹色の竜巻をあげた響の拳によりノイズは黒炭となって消滅した。竜巻は成層圏を越えて天高く巻き起こる!その光景を未来達は呆然と見つめ、会場の屋根に登っていたレグルス達も見つめていた。
会場から離れたマリア達もその光景を見ていた。
「お~お~♪こりゃ絶景だな~♪」
「何デスか!?あのとんでもは!?」
「綺麗・・・」
「以外にやるもんだな・・・」
「こんな化け物もまた私達の戦う相手・・くっ・・」
「・・・・・・」
歯痒そうに会場の光景を見ていたマリアをアルバフィカは静かに見つめていた。
そして、トレーラーでこの光景を見ていた女性はモニターに映る“異形の胎児”に『COMPLETE』と表示されたのを満足そうに笑い。
「フッ、夜明けの光ね・・・・・・」
ー会場ー
会場ではシンフォギアを解除した響が膝から座り込みながら調に言われた言葉が脳裏に浮かんだ。
『「そんな綺麗事を!」』
『「“痛み”を知らない貴女に“誰かの為に”なんて言って欲しくない!」』
同じくシンフォギアを解除した翼とクリスが響に向かう。
「無事か、立花!」
「平気・・・へっちゃらです・・・」
振り向いた響の顔は涙に濡れていた。
「へっちゃらなもんか!痛むのか?まさか、“絶唱”の不可を中和しきれなかったのか?」
「ううん!」
首を横に振る響は静かに呟く。
「私のしてる事って・・・偽善なのかな・・・ッ!」
響の脳裏に“忌まわしい記憶”が甦る。
『謂われ無き中傷』
『人々の悪意』
『壊れていく日常』
『泣き崩れる祖母と母』
「胸が痛くなることだって・・・知ってるのに・・・ウッ!・・・ヒック!」
泣き崩れる響を翼とクリスはただ見つめるしかできなかった。更にその響の姿を見てデジェル達は。
「あの少女<調>に言われた事が相当堪えたようだな」
「立花はまだまだ精神的に未熟な部分が多すぎる」
「響・・・ッ!?・・・」
レグルスはふと観客席を睨む。
「どうした?」
「嫌、何でも無い・・・(俺達以外の誰かいたような気がしたんだけど・・・それに凄い“悪意”を感じたんだけど・・・)」
会場の通路を“白衣を着た男性”が歩いていた。その手には“ソロモンの杖”を握り、暗く顔は見えなかったが、その口許には歪みきった笑みを浮かべながらーーーーーーーーーーーー。