マリア・カデンツァヴナ・イヴによる突然の世界への宣戦布告。そして響と異なる“黒いガングニール”にレグルス達も驚きを隠せない状態になった。
「何で、“ガングニール”があるんだ?」
「立花君が纏っているのは“神々の大戦<グレートウォー>”で破壊されたガングニールの“欠片”だ」
「成る程、マリア・カデンツァヴナ・イヴの纏うのも同じ“本来のガングニール”の欠片と言う訳か」
レグルス達が纏う“鎧”と違い、響達奏者が纏うシンフォギアはかつて地上を滅ぼそうとした神々と地上を守ろうとする神々によって引き起こった“神々の大戦<グレートウォー>”で地上を護るために戦い砕けた神の武具の“欠片”に過ぎない。
つまりマリア・カデンツァヴナ・イヴの纏っているのも響と同じように“本来のガングニールの欠片”から生まれたシンフォギアだと推察した。
ー司令室ー
“黒いガングニール”の出現に唖然としていた弦十郎達に“防衛省”から連絡が来た。弦十郎の眼前のモニターにざるそばを啜る年配の老人が映った。
「斯波田事務次官!?」
「《厄ネタが暴れてるのはこっち<日本>ばかりじゃなさそうだぜ、まぁ少し前に遡るがな》」
“斯波田賢仁 外務省事務次官”は弦十郎に過去に起こった“事件”を話す。
「《米国の聖遺物研究機関でもトラブルがあったらしい。まぁなんでも今日まで解析してきたデータのほとんどがお釈迦になったばかりか、保管していた“聖異物”までも行方不明って話だ。しかも『fine<フィーネ>』って名前の謎の組織にな》」
事務次官の話から“マリア・カデンツァヴナ・イヴ”の所属する“組織”であると弦十郎も読んだ。
「こちらの状況と連動していると?」
「《蕎麦に例えんなら終わりってことはあるめぇ。ま、二発点そう言うこったろう》」
そう言って豪気に蕎麦を啜る事務次官。
「《後な、4ヶ月程前に別の研究機関では調査中の“完全聖遺物らしき物”があったらしいがそれも行方不明になったらしい》」
「“完全聖遺物らしき物”?」
響達のシンフォギアは“欠片”から生まれた聖遺物。“完全聖遺物”とは“欠片”では無く、“完全な状態の聖遺物”の事である。
「《そのブツは、何でも“星座の紋章が刻まれたレリーフ”らしい。それも“三つ”もな》」
「“星座の紋章が刻まれたレリーフ”ッ!?まさかそれはッ!?」
驚愕する弦十郎に向けてまた蕎麦を啜った事務次官は言う。
「《そう言うこった、もしかすっとおめぇらの“切り札”の同門共が奴さん達の側についてるってこった》」
「何と言うことだ・・・敵側にも“最強の戦士達”がいるとは・・・(これを見越して、デジェル達は“アレ”の使用許可を求めたのか、頼むぞ緒川)」
ーライブ会場ステージー
「我等『武装組織FIS<フィーネ>』は、各国政府に対して要求する。そうだな、さしあたっては国土の割譲を求めようか!」
「バカな!?」
マリア・カデンツァヴナ・イヴは世界に向けて「自分達の国の土地を渡せ」と要求した。
「二十四時間以内にこちらの要求が果たされない場合は、各国の首都機能がノイズによって不全となるだろう」
日本で、アメリカで、中国で、中東でライブ映像を見ていた各国首脳がマリア・カデンツァヴナ・イヴの要求を愕然としながら聞いていた。
「あの子ったら・・・」
トレーラーで聞いていた年配の女性はにこやかな笑顔を浮かべ、ステージにいた翼は戸惑い混じりに呟く。
「何処までが本気なのか・・・」
マリア・カデンツァヴナ・イヴは翼の方に目を向け。
「私が王道を敷き、私達が住まう為の楽土だ!素晴らしいと思わないか?」
ー司令室ー
それを聞いて斯波田事務次官は笑みを浮かべた。
「《へっ!しゃらくせぇなぁ、アイドル大統領とでも呼べば良いのかい?》」
「一両日中の国土割譲なんて、全く現実的ではありませんよ!」
「急ぎ、対応に当たります!」
「《応、頼んだぜ。こんな事態だ“切り札”達に敷かれた諸々の“制約”を解除する。思いっきり暴れてもらいな!》」
そう伝えて事務次官は通信を切った。そしてライブ会場にいるオーディエンス達はノイズに阻まれ避難が出来ずにいた。そんな怯えた人々を見て翼は覚悟を決める。
「何を理としての“語り”か知らぬが・・・」
「私が“語り”だと?」
「そうだ!“ガングニール”のシンフォギアは、貴様のような輩に纏える物ではないと覚えろ!」
“親友”と、“片翼”と同じギアを悪事に使おうとする者に鉄槌を下すために、風鳴翼は歌う、“戦いの歌”を。
「♪~♪~♪~♪~♪~「《待って下さい、翼さん!》」!?」
ギアを纏おうとする翼に緒川からの通信が入った。
「《今動けば、“風鳴翼がシンフォギア奏者”だと全世界に知られてしまいます》」
「でもこの状況で「《風鳴翼の歌は!“戦いの歌”ばかりではありません。傷ついた人を癒し、“勇気づける歌”です。エルシドがこの場にいれば『逸るな』と言う筈です》」・・・!・・・」
緒川の言うとおり、ゲストルームで翼の様子を眺めていたエルシドは。
「翼、逸るな・・・ここで行動を起こせば向こうの思う壺だ・・・」
緒川の言葉とエルシドの諌める声が届いたのか翼は歌を止めた。
「確かめたらどう?私が言ったのが“語り”なのかどうか」
翼とマリア・カデンツァヴナ・イヴがお互いを睨み合う。翼が“ギア”を纏わない事を理解すると。
「なら、会場のオーディエンス諸君を解放する!ノイズに手出しはさせない!速やかにお引き取り願おうか!」
オーディエンス達を解放すると言ったマリアに翼は戸惑い。
「何が狙いだ?」
「フッ」
「《何が狙いですか?こちらの優位を放棄するなど、筋書きには無かった筈です。説明してもらえますか?》」
トレーラーにいた年配の女性はマリアに通信する。
「このステージの主役は私、人質なんて私の趣味じゃないわ」
「《血に汚れる事を恐れないで!》」
それでもマリアは動かなかった。
「《・・・“調”と“切歌”と“カルディア”を向かわせています。“マニゴルド”と“アルバフィカ”も準備を終えてますから、作戦目的を履き違えない範囲でおやりなさい》」
「了解マム。ありがとう・・・」
年配の女性は通信を切った。年配の女性はため息を付き。別の“誰か”に連絡をする。
ライブ会場ではオーディエンス達が慌ずに避難しようとしていた。その光景をオーディエンス達から離れた二人が眺めていた。
「やれやれ、存外うちの女王様も“甘い”ねぇ」
「・・・・・・」
「“汚れる覚悟”も無い癖に悪党なんてヤれんのか?」
「“覚悟”が無ければ所詮その程度と言うことだ。それよりも、もうすぐ“三人”が来る連絡を取っておけ」
「ヘイヘイ、“この世界”では初めて纏うからな、ちょっと楽しみだぜ・・・」
そして司令室では弦十郎がオーディエンスの避難状況を眺めながら相手の行動を推察する。
「“フィーネ”と名乗ったテロリストには、“国土割譲の要求”、ノイズを制御する力により世界を相手にそれなりの無理を通すことはできるだろう・・・だが・・・」
どうにも腑に落ちない弦十郎に緒川からの通信が入った。
「《人質とされた観客達の解放は順調です》」
「分かった、お前は急ぎレグルス君達に“アレ”を渡してくれ。後・・・」
「《翼さんですね。レグルス君達に“アレ”を渡したら僕の方で何とかします》」
そう言って緒川は連絡を切りレグルス達のいるゲストルームに向かった。
そしてその頃、ゲストルームで状況を見ていたレグルス達と未来達は。
「未来・・・直ぐに避難して、俺達も身体の痺れが取れたらすぐに動く」
「でも・・・・・・」
「ヒナ。私達がここに残ってても足を引っ張っちゃうよ」
「ここにはレグルスさん達もいますし、立花さんだって帰国してますけど向かってるんですし」
「期待を裏切らないわよ!あの子やヒーローの皆さんは!」
創世や詩織に弓美に言われ未来は顔を俯かせるが。
「そう・・・だよね。分かった・・・あの、レグルス君、“アスミタさん”は?」
「それが俺達にもこの3ヶ月間全く連絡が無いんだ」
「元々ヤツは通信機なんて持たないからな」
「小日向君、それよりも直ぐに避難するんだ」
「わかりました。皆さん、気を付けて」
「「「(コクンッ)」」」
そう言って創世達と避難しようとするが、未来はそれでも不安そうステージを見つめて。
「(響、早く来て・・・)」
未来は土星の形になった月が見下ろすステージを見つめながら親友の登場を願った。
そして未来達が去って直ぐに緒川がやって来た。
「レグルス君!エルシド!デジェルさん!」
「「「慎司/緒川殿/緒川さんッ!」」」
「お待たせして申し訳ありません。獅子座<レオ>の黄金聖衣、山羊座<カプリコーン>の黄金聖衣、水瓶座<アクエリアス>の黄金聖衣を持ってきました!」
緒川が持った来たのは“最強の戦士”達が纏う鎧、“完全聖遺物 黄金聖衣の聖衣レリーフ”であった。
レグルス達の元に聖衣レリーフが届けられたのと時を同じくして、ヘリコプターで現場に向かっていた響とクリスは弦十郎達からの連絡を受けていた。
「良かった!じゃ観客に被害は出て無いんですね」
「《現場で検知された“アウフヴァッヘン波形”については現在調査中、だけど全くのフェイクであると》」
響は自身の心臓に食い込んだ“ガングニールの破片”に意識を集中させる。
「私の胸のガングニールが無くなった訳ではなさそうです」
「《もう一つの“撃槍”・・・響君のガングニールは“本来のガングニールの欠片”でしかない、と言うことは同じように“欠片”のガングニール・・・》」
「それが・・・黒いガングニール・・・」
響の瞳に不敵な笑みを浮かべ黒いガングニールを纏うマリア・カデンツァヴナ・イヴが映った。
レグルス達に聖衣レリーフを届けて直ぐ、緒川はステージ裏の通路を走っていた。
「(今翼さんは“世界中の視線”に晒されている。エルシド達も中継によって動きが取れない。その“視線の檻”から翼さん達を解き放つには)」
すると緒川の目線の先に、“金髪のショートヘアーの少女”と“黒髪のツインテールの少女”と“群青色の長髪の男性”が階段を登って行くのが映った。緒川は不審に思い後を追う。
「ヤッベェ、アイツ<緒川>こっちにくるデスよ」
「大丈夫だよ“切ちゃん”」
黒髪の少女が胸に下げてる“赤い水晶”を見せる。
「いざとなったら・・・・」
「やめろこのバカ」
長髪の男性は黒髪の少女の頭を抑え、金髪の少女が慌てて“水晶”を隠す。
「わわわ!“調”ってば穏やかに考えられないタイプデスか!?“マニゴルド”や“カルディア”じゃあるまいし、物騒な事考えちゃダメデスよ!」
「おいアホ“切歌”そらどういう・・・」
「どうしましたか!?」
「!?」
「「・・・・・・」」
緒川に声をかけられ金髪の少女はビクッとなり黒髪の少女は無表情に、長髪の男性は素知らぬ顔をした。
「早く避難を!」
「あー!え~とデスね・・・!」
「・・・」
ジーと緒川を見る“調”と呼ばれた少女を“切歌”と呼ばれた少女が背中に隠しながら緒川と話すが“調”は“切歌”の背中から緒川を覗こうとしていた。
「この子がね、急にトイレとか言い出しちゃってデスね!アハハ、ハハ参ったデスよ・・・」
「俺は避難の列から離れようとしていたコイツらが化物に襲われないか気になってついてきたんッスよ」
「そうなんデスよ!このお兄さんも私達を心配してついてきたくれたんデスよ!アハハ・・・アハハ・・・」
「えっ?ああじゃ、用事を済ませたら非常口までお連れしましょう」
「心配無用デスよ!ここいらでちゃちゃっと済ませちゃいますから大丈夫デスよ!」
「俺がコイツらを連れていきますから大丈夫ッス」
「わかりました、でも気を付けてくださいね」
「は、はいデス・・・」
「お気をつけて~♪」
緒川を見送る三人、緒川の姿が見えなくなると“切歌”と言われた少女はホッとし“男性”は緒川の気配を探る。
「ハァ、何とかやり過ごしたデスかね・・・?」
「安心しな、野郎はもう行った」
「ジーーーー」
“調”と呼ばれた少女は“切歌”をジーと見つめる。
「?どうしたデスか?」
「私、こんな所で済ませたりしない」
「・・・さいデスか・・・」
「クククククク」
“調”の言葉にガクンとなる“切歌”と笑いを堪える“男性”。
「全く“調”を守るのが私の“役目”とは言え、毎度こんなんじゃ体が持たないデスよ」
「いつもありがとう、“切ちゃん”」
「コラ!」
ゴン!
「痛ッ!何するデスか!?って“マニゴルド”・・・」
突然後ろから小突かれた“切歌”が振り向くと“青い髪を横に伸ばした悪人顔の青年”がいた。
「遅ぇと思って迎えに来てみれば、何やってんだお前ら?」
「今そっちに行こうと思ってたんデスよ・・・」
小突かれた頭を摩りながら“マニゴルド”と呼ばれた青年に弁解する“切歌”。
「“カルディア”、てめえも“保護者”ならちゃんと監督しとけや」
「うるせぇな、しゃあねぇだろ。風鳴翼のマネージャーに出くわしたんだからよ」
「緒川慎司か?成る程、風鳴翼を縛っている“檻”を壊すつもりか・・・」
「邪魔なら消す?」
「“調”!だから物騒な事は・・・」
「まぁほっといても良いだろ。んな事よりも、“アルバフィカ”も待ちくたびれてるぜ」
「んじゃ行こうか、“パーティー”に遅れちまう」
そして四人は向かう、戦場と言う名の“パーティー”に。
ーライブ会場ー
会場では観客達が避難を終え、ノイズとマリア、翼だけが残され不気味な静けさに包まれていた。
「“帰る所”があると言うのは・・・羨ましいものだな・・・」
マリア・カデンツァヴナ・イヴはどこか寂しそうに呟く。
「マリア・・・・貴様は一体・・・?・・」
「観客は皆退去した!もう被害者が出る事はない、それでも私と戦えないと言うのであれば、それは貴女の“保身の為”。貴女はその程度の“覚悟”しかできてないのかしら?」
「・・・くっ!・・・」
マリアの言葉に翼は歯を食い縛る。次の瞬間、マリアはサーベル型のマイクを武器に翼に襲い掛かる。翼もサーベル型マイクで応戦する。
「・・・フッ!・・・」
「・・・!?・・・」
マリアは回転し伸ばしたマントをまるで円盤ノコギリのようにして翼に襲い掛かるも翼は上体を仰け反ってかわすもマイクは破壊された。翼はマイクを捨てて素手で戦おうとする。
それを中継で見ていた響達はーーー。
「中継されてる限り、翼さんはギアを纏えない!」
「おい!もっとスピード上がらないのか!?」
「後10分もあれば到着よ」
友里の話を聞いて何もできない歯痒さを感じる響であった。
そしてレグルス達もーーーーーー。
「痺れも段々解けてきた、直ぐに翼の所に・・・」
「駄目だレグルス、私達の存在を世界に知らせる訳にはいかない」
「でも・・・・・・」
「落ち着け、緒川殿を信じて機会を待つんだ(翼、持ちこたえろよ)」
マリアは更に翼を追いたてて行く、マリアの剣捌きを翼は紙一重に回避して行き衣装のマントを目隠しにする。
「(良し、カメラの外に出てしまえば・・・・・・)」
翼はステージの外に出ようとするもマリアはマイクを翼の足に目掛けて槍投げの要領で投げるが翼に回避されるが・・・・・・翼の靴の踵が壊れバランスを崩す翼。
「・・・ッ!?・・・」
その隙をマリアは逃さず。
「貴女はまだ、ステージを降りる事は許されない」
後ろに来たマリアは翼の横に回り込み翼の腹部を蹴りステージに戻す。
「フッ!」
「グハ!」
が、蹴り飛ばされた翼の落下予想地点にノイズが集まる、マリアにも予想外だったらしく。
「勝手な事を!」
「翼さんッ!!」
それを見ていた響も悲鳴をあげるが・・・・・・その時彼女は、彼女達は見た。
空中を漂う翼に集う、三つの“黄金の流星”を!
「『乱斬』!!」
「『ライトニング・プラズマ』!!」
「『ダイヤモンド・ダスト』!!」
その瞬間、中継が『NO SIGNAL』と表示された。
「えええーーーーー!!」
「ッ!?」
「何で消えちゃうんだよ!翼さんが!て言うか今の“流星”って絶対!!」
「現場からの中継が遮断された?」
友里の言葉を聞いてクリスは察してニンマリとした笑顔を浮かべた。
「ってことはつまり・・・・・・」
「えぇ」
「え?え?え?」
響だけは分からず戸惑っていた。
ーステージ会場ー
「くっ!もう現れたか・・・・・・」
その姿に、マリア・カデンツァヴナ・イヴは戦慄する。
夜の闇に呑まれた会場を照らす三つの黄金の太陽に、彼等が纏うは太陽のように輝く金色の鎧、その出で立ちは、その雄姿は、気高くも美しい勇士。
遥か古の時代、地上の愛と平和と正義を守る為に戦う戦士達、その拳とその脚は天地を奮わす。星座の聖衣<クロス>を身に纏い、己の内なる小宇宙<コスモ>を爆発させて戦う88の星座の戦士の頂点に立つ、黄道十二星座の“最強の戦士達”。
彼等こそ、戦女神アテナに仕えし聖なる闘士、“アテナの聖闘士”!
獅子座の黄金聖闘士、レオのレグルス。
水瓶座の黄金聖闘士、アクエリアスのデジェル。
山羊座の黄金聖闘士、カプリコーンのエルシド。
翼を襲おうとしていたノイズを一瞬で消滅させた姿に他のノイズ共も退く。翼をお姫様抱っこしていたエルシドは翼を降ろす。
「来るのが少し遅いぞ、エルシド・・・」
「すまないな・・・所で、行けるか?」
「当然だ、聞かせてやろう“防人の歌”を!!」
氷付けになり粉々にされ、キラキラ輝く破片となったノイズの残骸を尻目に、翼は歌う、“戦いの歌”を、“防人の歌”を!
「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」
その瞬間、翼の衣装が弾けて、その身に“蒼いギア”を纏う!“ルナアタック”の頃と細部が異なる“ギア”。本来は“一降りの剣”であるが、翼の“防人の剣でありたい”と願う心に応え、あらゆる刀剣にその姿を変える事ができる“日本神話”のシンフォギア、“絶剣 天羽々斬<アマノハバキリ>”!
「それでは二人とも、大人しくしてた分」
「派手にやれよ、翼!エルシド!」
デジェルとレグルスから激を受け。翼とエルシド、二課が誇る“双刃”が再び戦場を翔る!
「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」
フォニックゲインを高めながら刀を大剣へと変えて飛び上がり、ノイズに『蒼ノ一閃』を放つ翼と己が鍛えし手刀からエルシドが放つ斬撃が重なり十文字の斬撃がノイズ共を凪ぎ払う二人の合わせ技!
『蒼金交閃<ソウゴンコウセン>』
着地した翼はカポエラのように逆さ開脚蹴りをしながら足の刃を展開させて回転しながらノイズを切り捨てる!
『逆羅刹』
エルシドも流水のように流れる動きでノイズ共の間を滑らかそれでいて素早くすり抜けながらノイズの身体は静かに切られていた!
『刀剣流し』
翼のエルシドの視線が交差する。
「(腕は落ちていないなエルシド)」
「(当然だ、そっちも歌やダンスにかまけて“なまくら”かしてなかったようだな翼)」
「(フッ当然だ!)」
3ヶ月のブランクがあるとは思えない“双刃”の演舞に一瞬見惚れるマリアだが、正気に戻り状況を確認する。
「中継が中断された!?」
世界中に中継されていた筈のモニターが『NO SIGNAL』と表示され、そのモニターには何も映っていなかった。中継室では緒川が息を切らせながら中継をストップさせていた。
「シンフォギア奏者だと、世界中に知られて、アーティスト活動ができなくなってしまうなんて、風鳴翼のマネージャーとして許せる筈がありません!」
ー会場外ー
会場の外に避難していた未来達はライブ会場から激しい炸裂音が聞こえた。翼の身を按じる未来は思わず呟く。
「翼さん・・・・・・」
ーライブ会場ー
翼とエルシド、レグルスとデジェルはステージに飛び上がり、マリアを左右から囲む。窮地に立っているにも関わらずマリアは不敵に笑う。
「エルシド、レグルス、デジェル、手を出さないでくれ。この者の“ガングニール”の正体、私が暴く!」
エルシド達はやれやれと言わんばかりな態度を取ったが翼の言葉に頷く。それを見て翼も気を引き締め。
「いざ、推して参る!」
翼が刃を構えマリアに斬りかかるが、上段切り、横凪ぎ、斬り上げと連続斬りでマリアにかかるが、マリアは全て回避し飛び上がるとマントで攻撃する。
「!」
「ぐ!」
マントの攻撃を迎撃しようとするが、翼は押し飛ばされる。
「この“ガングニール”は本物!?」
「ようやくお墨をもらったわ、そうよ!これが私の“ガングニール”!何物をも貫き通す無双の一降り!!」
マリアはマントを武器に翼に襲い掛かる。防戦一方になる翼を見ながら聖闘士達はマリアの戦闘スタイルを分析していた。
「(さっきから“マント”でしか攻撃していないな)」
「(奏のように“槍”を持つわけでも、立花のように“無手”で戦うわけでもない)」
「(あの“マント”が彼女のアームドギアなのか?)」
冷静に分析する聖闘士達をよそにマリアは独楽のように回転し翼とつばぜり合いになる。
「だからとて!私が引き下がる道理等ありはしない!」
回転するマリアに通信が入る。
「《マリア、お聞きなさい。フォニックゲインは現在22%付近をマークしています》」
「(!?まだ78%も足りていない!?)」
通信を聞いて動揺した隙を逃さず翼はマリアと距離を開け、脚の付け根のパーツから二本の刀を取り出した。
「私を相手に気を取られるとは!」
二本の剣をツインブレードのようにして炎を纏わせて振り回し地面を滑るように駆けながらマリアに向かい炎の刃を叩きつける!
『風輪火斬』
翼の新たな決め技がマリアを切り捨てる。
「う、くっ!」
「話はベッドで聴かせて貰う!!」
更にマリアに攻める翼、だがーーーーーーーーー。
「「ッ!!?」」
「翼!後ろだ!!」
エルシドの言葉を聞き後ろを見た翼に無数の桃色の円盤ノコギリが襲い掛かる!
「くッ!?」
翼はツインブレードを回転させ、盾にする。
「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」
『百輪廻α式』
歌を歌いながら“黒と桃色のギア”を纏う黒髪の少女がツインテールに装備されたパーツから更にノコギリを翼に向ける!更にその少女の後ろから“黒と緑のギア”を纏う魔女のような帽子のヘットギアを装備した“金髪の少女”が大鎌を構える。
「行くデス!」
大鎌の刃が三枚になりその刃を翼に向けて降り投げる。
『切・呪りeッ丁ぉ』
三枚の刃はブーメランのように滑空して前方の攻撃を防ぐ為にがら空きになった左右の側面から翼に襲い掛かるが。
「ッ!」
「よっ!」
「デジェル!レグルス!」
デジェルが凍らせ、レグルスが裏拳で破壊する。現れた二人の少女はマリアを庇うように立つ。
「危機一髪・・・・」
「正に間一髪だったデスよ!」
翼とレグルス達は新たに現れた二人に面食らう。
「奏者が三人!?」
「何だあの子達は?」
「新たなシンフォギア奏者?」
「一対一の勝負に横槍を入れるとは、余り行儀が良くないな」
それを見ていた緒川も驚く。何故なら現れた少女達は、先程出会った少女達だったからだ。
「あの子達はさっきの!?」
マリアは立ち上がり不敵に笑う。
「“調”と“切歌”に救われなくても、貴女程度に遅れを取る私ではないんだけどね」
だが、翼もニヤリと笑みを浮かべ。
「貴様みたいな者はそうやって・・・」
「?」
「見下ろしてばかりだから勝機を見落とす!」
「やっと来たな、“響”」
「良いタイミングだ、“クリス”」
「ッ!上か!!」
マリア達が見上げるとシンフォギアを纏った響とクリスが上空から降りて来た。クリスがガトリングを構え『BILLION MAIDEN』をマリア達にぶつける。
「どしゃ降りな!」
調と切歌は下がり、マリアはマントを傘のようにして弾幕を防ぐ。
「ウオオオオオオオオオオ!!!」
更に響がマリアに向けて拳をぶつけようとするが回避される。マリアがマントで攻撃しようとするが響は回避し、翼とレグルス達と一緒にステージを降りクリスと合流する。
「レグルス君!」
「久しぶり響♪後でフランス土産のマルセイユ石鹸とフランスチョコレートやるよ♪」
「え?レグルス君フランスに行ってたの!?」
「お兄・・・デジェル兄ぃ、何でここにいんの?予備校はどうしたんだよ?一応受験生だろ」
「まあまあ、後でちゃんと説明するよ」
「お前達旧交を暖めてる場合ではないぞ、所でエルシド、ステージは見ていてくれたか?」
「マリア・カデンツァヴナ・イヴのステージは見たが、お前のステージは見損ねた」
「(ず~ん)・・・そ、そうか・・・」
敵が目の前にいるのに和気藹々な雰囲気を展開する一同。
「なんか楽しそう」
「奏者の数も聖闘士の数も上回っているから余裕って感じなんデスかね?」
「直ぐにその余裕も無くなるわ」
響達は何かしようとするマリア達に警戒する。マリア達はステージに響くように声を上げる。
「さぁ!ここからが本番よ!貴方達も出てきなさい!!“アルバフィカ”!!!」
「“マニゴルド”!!出番デスよ!!!」
「“カルディア”!!来て!!!」
その瞬間、マリア達の前に“三つの黄金の流星”が舞い降りる!
「「「「「「ッッ!!??」」」」」」
切歌の前に立つは、ヘットギアや肩に刺々しい刺を着けた悪人顔の男。
調の前に立つは、重厚な鎧にヘットギアには尻尾のような物がおさげのように垂れ流した獰猛な笑みを浮かべた男性。
マリアの前に立つは、半魚人のような装飾が施されマスクを目深に被った水色の髪の男性。
「久しぶりだな・・・」
「ククク、待ちくたびれたぜ・・・」
「・・・・・・」
その男達の纏う鎧はレグルス達と同じ“黄金の鎧”。
「嘘・・・?」
「何て事だ・・・!」
「マジかよ・・・!」
響達に戦慄が走る!
「やっぱりな・・・」
「お前達は“そちら側”か・・・」
「やな予感的中か・・・」
“マニゴルド”と呼ばれた男が前に出る。
「そんじゃま、名乗りと行くか。『蟹座の黄金聖闘士、キャンサーのマニゴルド』!!!」
「同じく、『蠍座の黄金聖闘士、スコーピオンのカルディア』!!!」
「『魚座の黄金聖闘士、ピスケスのアルバフィカ』!!!」
今ここに遥か古の“時”を“世界”を越えて“盟友”であり、“仲間”であった“最強の黄金聖闘士”達が敵味方と別れ再会した!
遂にここまで来ました。悔いはありません!