聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

36 / 107
彼等の“出番”はまだ先ですごめんなさい。


歌姫と宣戦布告

響達が乗る装甲列車を追ってノイズ達がトンネルの中を進む。響とクリスは列車の連結部に行くと。

 

「急いで、トンネルを抜ける前に!」

 

響に急かされクリスは連結部分を破壊する。

 

「サンキュークリスちゃん!」

 

響が破壊された連結部分に取りつく。

 

「本当にこんなんで良いのかよ?」

 

「後は、これで!」

 

響が後部車輌を押し出す。後部車輌はノイズ達に向かって行くがノイズ達は躊躇わず後部車輌に突っ込む。後部車輌をすり抜けたノイズ達。響は右手のパーツを大きくして構えていた。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

響は歌を歌いフォニックゲインを高め、必殺の構えに入る。ノイズが後部車輌をすり抜けるのを見計らうと。

 

「飛べーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

右手を突き出しノイズに向かって突っ込む。右手のアームのバーニアに火が灯り、拳にメリケンがセットされる、右手のパーツのタービンが回転する、バーニアの火が更に強くなりスピードを上げて大型ノイズにその拳を突き刺す!拳を突き刺すと同時に右手のパーツはパイルバンカーのように追加衝撃を叩き込む!

すると大型の身体が崩れ大爆発を起こした、他のノイズはその爆発に呑み込まれ次々と爆散して行った。

装甲列車がトンネルを向けて直ぐに爆発が外に出る。雨が止み昇る朝日を背に響は凛然と佇んでいた。その姿を装甲列車から見てクリスは響の作戦を理解した。

 

「(閉鎖空間で相手の機動力を封じた上、遮蔽物の向こうから重い一撃・・・アイツ、どこまで・・・もしかして、あたし達<奏者>の中で一番お兄ちゃん達に、聖闘士に近いのはアイツなのか?)」

 

短時間でこれ程の作戦を閃き実行する響のセンスにクリスは唖然とした。それから響を乗せ装甲列車は再び米軍基地に向かい、“ソロモンの杖”とウェル博士を基地にいた軍人達に渡した。

 

「これで、搬送任務は完了となります。ご苦労様でした」

 

「ありがとうございます」

 

任務完了と聞いて響とクリスも顔を見合せ笑う。そんな二人にウェル博士が話しかける。

 

「確かめさせてもらいましたよ、皆さんが“ルナアタックの英雄”と呼びれる事が伊達ではないとね」

 

「“英雄”!私達が!?いや~普段誰も褒めてくれないので遠慮無く褒めてください~、むしろ~誉めちぎってくださイダッ!?」

 

調子に乗りまくる響にクリスがチョップをする。

 

「このバカ!そう言う所が誉められないんだよ!」

 

「痛いよ~クリスちゃ~ん・・・」

 

「出来ることなら、“黄金の英雄”達にも是非お会いしてみたかったですが・・・」

 

ウェル博士の言う“黄金の英雄”の単語で響とクリスの脳裏に遥か高みに立つ黄金の背中が浮かんだ。

 

「あぁ~、その~、その“英雄”さん達は~」

 

「アイツらは言うなれば“切り札”見たいなモンだからな、こんな簡単な仕事はあたし達だけで十分なんだよ」

 

言い淀む響を退かし事実を話すわけにはいかないので適当に誤魔化すクリス。

 

「それは残念ですね。資料で見せていただいたのですが、彼等は正に、イエ彼等こそ“英雄”と呼ばれても差し支えない人物だと私は考えています」

 

「(確かに・・・)」

 

「(レグルス君達なら“英雄”って呼ばれるのにふさわしい人達だよね・・・)」

 

“ルナアタックの英雄”と呼ばれているが、フィーネを倒し“月の欠片”を破壊したのは彼等なのでウェル博士の言葉に内心頷く。だがウェル博士は堰を切ったように語りだす。

 

「世界がこんな状況だからこそ、僕達は英雄を求めている。そう!誰からも信奉される!“偉大なる英雄”の姿を!!」

 

「あはは、それほどでも!」

 

能天気な響は笑うがどこか狂気染みたウェル博士の話をクリスと友里は訝しそうに見つめる。ウェル博士はにこやかに微笑み。

 

「皆さんが守ってくれた物は、僕が必ず役立てて見せますよ」

 

「不束な“ソロモンの杖”ですが、よろしくお願いします」

 

「頼んだからな」

 

そして響とクリスと友里は基地を後にすると。

 

「無事に任務も完了だ~、そして」

 

「うん!この時間なら“翼さん”のライブにも間に合いそうだ!」

 

日本に帰国している“風鳴翼”のライブがあり、それに間に合いそうなのではしゃぐ響。

 

「二人が頑張ってくれたから司令が東京までヘリを出してくれるそうよ」

 

「マジすか!?」

 

と響が言って瞬間、それは起こった。

 

 

チュドオオオオオオオオオオオオオン!!!!

 

 

突然基地が爆発した!更に基地から大型ノイズが現れた!

 

 

響は唖然として呟く。

 

「マジすか?・・・・・・」

 

「マジだな!」

 

基地に向かう響とクリス。友里は二人を見送る。基地では米軍兵士とノイズが交戦していた。だが“奏者”でも“戦士”でもない兵士達ではノイズに対抗することが出来ない。次々とノイズにやられ黒炭になっていく兵士達、辺りには黒炭へとその死に姿をさらしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー東京ー

 

場所は変わり。ここは東京のライブ会場。スタッフがライブの準備に勤しんでいる会場の観客席で一人の少女が鼻歌を歌っていた。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

女性にしては長身で桃色の髪を猫の耳のように巻いた長髪に水色の花の髪飾りをし、女性の理想的なプロポーションをしたミステリアスな雰囲気漂う少女。

 

 

ピリリリリ、ピリリリリ、ピリリリリ・・・・

 

「ッ・・・」

 

突然携帯が鳴りそれに出る。

 

「《こちらの準備は完了、サクリストSが到着しだい始められる手筈です》」

 

連絡を寄越したのは老婆のような声をした人物、その人物からの報告を聞いて少女はサファイアブルーの瞳を閉じて答える。

 

「ぐずぐずしてる時間は無いわけね。OKマム、“世界最後のステージ”の幕を上げましょう」

 

そう言って少女は電話を切るといつの間にか自分の後ろに立っていた地味な灰色の背広に水色の長髪を後ろに束ね、分厚い眼鏡をした“男性”に語りだす。

 

「いよいよ始まるわ、貴方も“覚悟”を決めなさい」

 

「・・・(コクン)・・・」

 

“男性”は静かに頷いた。

 

 

 

 

 

ー米軍基地ー

 

響達がいた米軍基地はノイズに襲撃を受け、ノイズ達は響とクリスによって倒されたが、駐屯していた兵士達の大半は最初の爆発で瓦礫の下敷きかノイズの攻撃を受けて黒炭になっていた。回収班が黒炭の回収をしているのを尻目に友里は“本部”に連絡を取っていた。

 

「はい、すでに事態は収拾、ですが行方不明者の中にウェル博士の名もあります。そして、“ソロモンの杖”もまた・・・」

 

友里の足元には“ソロモンの杖”が無くなったアタッシュケースが落ちていた。

 

 

 

ー本部ー

 

「そうか、分かった急ぎこちらに帰投してくれ」

 

「《分かりました》」

 

弦十郎は友里との通信を切る、藤尭が弦十郎に話しかける。

 

「今回の襲撃、やはり“何者”かの手引きなのでしょうか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

藤尭の問いに弦十郎は難しい顔を浮かべた。すると“本部”に連絡が入った。連絡を出したのはあまり“本部”と連絡を取り合わない“人物”からだった。

 

「《どうやら、“何者”かにしてやられたようですね風鳴司令?》」

 

「デジェル?お前の方から連絡してくるとは、件の“何者”かに心当たりがあるのか?」

 

「《いえ、そこまでは・・・ただ一つ報告しておきたい事があります》」

 

「報告?」

 

「《先程連絡がつきました、間も無く“エルシド”と“レグルス”が日本に帰国します》」

 

「ッ!・・・“エルシド”と“レグルス君”が?・・・・・あの二人が帰国するということは“何か”が起きようとしているのか?」

 

“ルナアタック事変”以降、殆ど連絡を寄越さなかった二人の突然の帰国に弦十郎は“嫌な予感”を感じた。

 

「《それは何とも、ただ“何か”動き始めているとは思います。そこで風鳴司令、“預けている物”と今すぐ“用意してほしい物”があるのです》」

 

「?」

 

デジェルの言う“預けている物”とは、日本政府からの命令で“デジェル”と“エルシド”と“レグルス”が自由に活動する“条件”として風鳴弦十郎に預けた“鎧”、“用意してほしい物”は“裏の情報屋アクベンス”が送って来た“写真の少女”に近づく為のチケットであった。

 

 

 

 

ーライブ会場ー

 

その日の夕方、日本を代表するアーティスト“風鳴翼”と世界の歌姫“マリア・カデンツァヴナ・イヴ”の合同ライブが始まろうとしていた。

 

「この盛り上がりは皆さんに届いていますでしょうか?世界の主要都市に生中継されている、トップアーティスト二人による夢の祭典、今も世界の“歌姫マリア”によるスペシャルステージにオーディエンスの盛り上がりも最高潮です!」

 

世界的アーティストであるマリア・カデンツァヴナ・イヴのステージに会場は盛り上がりその中継は世界中に生放送されている。そんな中、ステージ裏では日本のトップアーティスト“風鳴翼”とマネージャーの“緒川慎司”がいた。翼はステージに向けて精神統一をし“二課”の諜報員である緒川はこっそり“本部”と連絡を取っていた。

 

「状況は分かりました、それでは翼さんを・・・・」

 

「《無用だ、ノイズの襲撃と聞けば今日のステージを放り出しかねない》」

 

「そうですね。では、そちらにお任せします」

 

翼の性格を知る二人は翼に悟られないように決めた。

 

「《後、“アイツら”がそっちにいる》」

 

「“彼等”が?」

 

「《“アイツら”がいるって事は、そっちに“何か”が起きるかもしれん、十分注意しておけ》」

 

「了解しました」

 

そう言って通信を切った。翼は目を開き。

 

「司令からは一体何を?」

 

「今日のステージを全うしてほしいと」

 

“眼鏡を外しながら”誤魔化そうとする緒川に翼はため息をつきながら詰め寄る。

 

「“眼鏡を外した”と言うことは、“マネージャモード”の緒川さんではないと言う事です」

 

「あッ!?」

 

緒川が翼の性格を理解しているように翼も緒川を理解している。

 

「自分の癖くらい覚えておかないと、敵に足元を掬われ「お時間そろそろです、お願いしまーす」ッはい、今行きます」

 

小言を言おうとするがスタッフから声をかけられ遮られる。思わず緒川を見る翼。

 

「傷ついた人の心を癒すのも風鳴翼の“大切な務め”です。頑張って下さい♪」

 

にこやかに笑いながら誤魔化す緒川を不審そうに見つめる翼だが。

 

「不承不承ながら、了承しましょう。詳しい事は後で聞かせていただきます」

 

「(感ずかれましたかね、こうなったら仕方ないです)そういえば、司令から連絡があったのですが、“エルシド”が来ているそうですよ」

 

「(ドキッ!?)え、“エルシド”が!?な、何で?どうして!?/////」

 

「丁度、帰国してきたようなので翼さんのライブを見てこいと司令が命令したそうなんです」

 

「そそそそうですか、では、“エルシド”に情けない姿を見せるわけには行きませんね//////(ガチガチ)」

 

そう言ってガチガチになりながらステージに向かう翼を緒川は見送った。

 

「(すみません“エルシド”、ダシに使わせてもらいました)ん?あの人は・・・」

 

緒川の目線の先には“マリア・カデンツァヴナ・イヴ”の付き人である“水色の髪の男性”がいた。

 

「(ペコリ)」

 

分厚い眼鏡で顔がよく見えない“男性”は緒川の視線を感じたのか軽く会釈すると立ち去って行った。緒川は少し不審に思うが“マネージャーモード”から“お仕事モード”に切り替えて行動する。

 

 

 

 

 

そしてコンサート会場から離れ場所に何かの“装甲車両”が駐車されていた。その内部ではいくつものモニターが自動で何かを計測しており、一際大きなモニターでは“マリア・カデンツァヴナ・イヴ”のライブ映像が流れていた。そのモニターを見ていたのは車椅子に座った紫の髪に黒い喪服を着た顔の半分を黒い包帯で覆った老婆だった。老婆の後ろのモニターからメッセージを受信した。老婆はそれに目を向けると。

 

『SI Vis Pacem,Para Bellum<汝 平和を欲せば 戦への備えとせよ>』

 

とラテン語で表示されていた。老婆はそれを見てニヤリと笑い。

 

「ようやくのご到着、随分と待ちくたびれましたよ」

 

老婆は“計画通り”と言わんばかりに囁いた。

 

 

 

 

ーライブステージー

 

そこでは“マリア・カデンツァヴナ・イヴ”のステージが終わり、会場は熱気に包まれていた。

 

『マーリア!マーリア!マーリア!マーリア!マーリア!マーリア!マーリア!マーリア!マーリア!マーリア!マーリア!マーリア!マー リア!マーリア!』

 

観客は“マリア”の歌声に熱狂し、あらゆる国のテレビでも報道されていた。そんな中、会場の熱気に浮かれていない“三人”がいた。

 

「あれがマリア・カデンツァヴナ・イヴか」

 

「凄い熱気だよな、流石は世界の歌姫。なぁデジェル?本当にここに“アイツら”がいるの?」

 

「何度か世話になった“情報屋”からのたれ込みだ。信頼できるとは思うが・・・」

 

“レグルス”と“エルシド”と“デジェル”である。三人は弦十郎にライブチケットを用意してもらい、昼過ぎから帰国して来たエルシドとレグルスはその足で直接ライブ会場に行き、先に来ていたデジェルと合流し現在に至る。

 

勿論“目的”はライブではない、マリア・カデンツァヴナ・イヴのSPとして行動している“二人”を探す為だ。

 

「しかしその“情報屋”の名前、“アクベンス”とは」

 

「あぁ、“アクベンス”は“ある星座”のα星の名前だ」

 

その“ある星座”が“アクベンス”が何者なのかを物語っていた。

 

「でもさ、まだあの“二人”が敵になると決まった訳じゃないんだろう?」

 

「そうなのだが、何しろ“我々”の中でも特に“危険”な性質の“二人”だからな。この“世界”には戦女神<アテナ>も教皇様も居ないんだ。すなわちあの“二人”の“手綱を握る人間”がいないと言う事だ」

 

「おい、あれを見ろ」

 

「「!?」」

 

エルシドの目線を追って見ると観客席から通路に繋がる入り口に“目当ての二人”がいた。“二人”ともレザージャケットにジーンズを履き見るからにチンピラかゴロツキのような風貌をしていた。

 

「「・・・(ニヤリ)・・・」」

 

“二人”はレグルス達の方を見ると薄く笑い通路の中に入っていった。

 

「「「(コクン)」」」

 

レグルス達は頷き合うと“二人”を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーライブ会場通路ー

 

目当ての“二人”を追って徐々に薄暗い通路に来てしまった三人は“二人”に呼び掛ける。

 

「おい、どこだ!どこにいる!」

 

「隠れてないで、出てこい!」

 

「“マニゴルド”!“カルディア”!」

 

かつての仲間達の名前を呼ぶが三人の声だけが虚しく通路に響いた。

 

「ここにはいないのかな?取り敢えず、一度外に出て(ガクッ)!?」

 

突然レグルスが膝から崩れた、エルシドとデジェルも崩れる。

 

「な、なんだ?身体に力が・・・」

 

「これは、一体・・・!?」

 

三人の目の前に“薔薇の花びら”が舞っていた。そして三人は事態を理解した。

 

「まさか!・・・・・・」

 

「お前も、ここにいるのか・・・」

 

「アル・・・バ・・・フィ・・・」

 

三人は静かに目を閉じて倒れた、まるで陶酔し眠るようにーーーーーーーーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、観客席にあるゲストルームの個室では、立花響の親友“小日向未来”と立花響の友人“安藤創世”と“寺島詩織”と“板場弓美”がいた。

“マリア・カデンツァヴナ・イヴ”の姿と歌声に興奮冷め止まぬ状態だった。

 

「おお~、流石マリア・カデンツァヴナ・イヴ!生の迫力は違うね~!」

 

「全米チャート登場してからまだ数ヶ月なのにこの貫禄はナイスです!」

 

「今度の学祭の参考になればと思ったけど、流石に真似できないわ」

 

「それは初めっから無理ですよ板場さん」

 

はしゃぐ弓美に詩織が冷静にツッコム。未来は腕時計を見ながらまだ来ていない響を心配する。創世が未来に話しかける。

 

「まだビッキー<響>から連絡来ないの?メインイベントが始まっちゃうよ」

 

「うん・・・・・・」

 

「折角、風鳴さん<翼>が招待してくれたのに、今夜限りの特別ユニットを見逃すなんて・・・」

 

「期待を裏切らないわね~、あの子ってば」

 

暢気に会話する未来達だが、突然辺りが暗くなる。“メインイベント”が始まった。

 

観客の歓声が更に上がるとステージから“マリア・カデンツァヴナ・イヴ”と“風鳴翼”が現れた。マリアと翼はサーベル型のマイクを持って対峙する。

 

「見せてもらうわよ、戦場に冴える抜き身の貴女を!」

 

そして始まった二人の歌姫によるデュエット!

 

「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」」

 

その歌声は優美で可憐で勇ましく凛々しき二人の歌声は会場にいた人々を熱狂させ、興奮させ、燃えるように熱くさせるその姿は正に“絢爛豪華”!

 

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

二人の歌が終わっても歓声は止むこと無くなく続いていた。ゲストルームにいた未来達(特に弓美)も大興奮だった。

 

観客に向けて手を振っていたマリアと翼、翼が前に出て観客に話す。

 

「ありがとう、皆!」

 

翼の感謝の言葉に会場は更に盛り上がる。

 

「私は、いつも皆に沢山の勇気を貰っている!だから今日は、私の歌を聞いたくれる人達の為に!少しでも勇気を分け与えたら良いと思っている!(エルシド、聞いてくれたかな?)」

 

ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

更に会場のボルテージが上がった。そして今度はマリアが前に出て。

 

「私の歌を全部、世界中にくれてあげる!振り返らない!全力疾走だ!着いてこられる奴だけ着いてこい!」

 

イギリスで、アメリカで、エジプトで、女王然としたマリアの言葉を聞いた人達は熱狂をあげる。中には涙を流しながらマリアを拝むものまでいた。

 

「流石に言うね~、うちの歌姫様嫌女王様は♪」

 

その様子を“悪人顔の男”が観客席から眺めていた。マリアは更に言葉を重ねる。

 

「今日のライブに参加出来たことを感謝している。そしてこの大舞台に、日本のトップアーティスト風鳴翼とユニットを組み歌えたことに」

 

「私も素晴らしいアーティストに出合えたことを光栄に思う」

 

二人の歌姫はその手を繋いだ。それにより歓声はまた上がる。

 

「私達も世界に伝えていかなきゃね、“歌には力がある”って事を」

 

「それは世界を変えていける力だ」

 

マリアは翼に背を向けて。

 

「そして、もう一つ」

 

「?」

 

バッ!

 

マリアがドレスを翻すとステージや観客席から光が吹き出し、そこから何と!“ノイズ”が現れた!

 

ウワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

突然のノイズの登場に会場は一気に大混乱した!翼は完全に意表を突かれて呆然としながらマリアを見る。

 

ノイズの襲撃で、会場は地獄絵図へとその姿を変えた。だがマリアが呟き叫ぶ。

 

「狼狽えるな・・・・・・狼狽えるな!!」

 

マリアの叫びで観客達が静かになった。それはまさに、絶対者の一喝!

 

 

 

 

ー本部ー

 

当然、ノイズの出現は本部も検出していた。

 

「ノイズの出現反応多数!場所はクリオブミュージックの会場!」

 

藤尭の報告で弦十郎は席から立ち上がり。

 

「なんだと!?レグルス君達は!?」

 

「それが、レグルス君、エルシド、デジェル、誰とも連絡が付きません!」

 

 

 

 

ートレーラーー

 

トレーラーの中にいる老婆は次の行動に移る。

 

「遅かりし、ですがようやく計画を始められます」

 

老婆の後ろで会場では光景を見ている“二人の少女”と“男性”がいた、二人の少女の胸元には妖しく光る“赤い結晶”が輝いていた。

 

「(ニッ!)いよいよだな・・・・・・」

 

二人の少女の後ろにいた“男性”が犬歯を剥き出しにして笑う。

 

 

 

ーライブ会場ー

 

会場では、観客達がノイズへの恐怖で動けなくなっており、何時またパニックになるか分からない状態だった。その情景を未来達も見ていた。

 

「ア、アニメじゃないのよ」

 

「何でまたこんなことに・・・」

 

「響・・・」

 

すると未来達のいるゲストルームの扉が開いた。

 

「「「「ッ!!?」」」」

 

ノイズと思って扉を見るとそこには。両肩にエルシドとデジェルを担いだレグルスが現れた。

 

「ゼエ、ゼエ、ゼエ、す、すみません、み、水を貰えませんか?」

 

「レグルス君?」

 

「え?あ未来、久しぶり~♪・・・何て言ってる場合じゃないな・・・とにかく水持ってない?・・・この二人にも飲ませないと」

 

「エルシドさん!デジェルさん!」

 

「小日向か?・・・また妙な所で再会したな・・・」

 

「すまない小日向君・・・水を貰えないだろうか?・・・」

 

 

 

 

 

 

レグルス達が未来達と再会している間に響とクリスと友里はヘリコプターで会場に急行していた。

 

「了解です。奏者二名と共に状況介入まで40分を予定、事態の収拾に当たります。聞いての通りよ。昨日の夜と三連戦になるけど、お願い」

 

「「(コクン)」」

 

友里の言葉に響とクリスは気を引き締めて頷く。二人は現場の映像に目を向ける。

 

「又しても操られたノイズ」

 

「詳細はまだ分からないわ。だけど」

 

「だけど?」

 

「“ソロモンの杖”を狙ったノイズの襲撃と、ライブ会場に出現したノイズが全くの無関係とは思えない」

 

友里の言葉に響とクリスも言い様のない不安が生まれた。

 

 

 

 

ーライブ会場・ステージー

 

ステージの上では翼がシンフォギアを起動しようとするが。

 

「恐い子ね、この状況にあっても私に飛び掛かる機を窺ってるなんて。でも逸らないの、オーディエンス達がノイズからの攻撃を防げると思って?」

 

「クッ!」

 

その言葉から翼はマリア・カデンツァヴナ・イヴがノイズを操っていると確信し苦々しい顔を浮かべる。

 

「それにライブの模様は世界中に中継されているのよ。日本政府はシンフォギアについての概要を公開しても、その奏者については秘匿したままじゃないかしら?」

 

奏者の事が知られれば奏者達の力を狙って奏者達や周りの人達にも被害が及ぶ。それ故奏者の事は秘匿状態になっている。

 

「ね、風鳴翼さん?」

 

「甘く見ないでもらいたい、そうと言えば私が鞘走るのを躊躇うと思ったか!」

 

“アーティストモード”から“防人モード”に切り替わる翼はマリアに敵意を向ける。だがマリア・カデンツァヴナ・イヴは余裕の態度を崩さず。

 

「フッ、貴女のそう言うところ嫌いじゃないわ。貴女や貴女が追い付きたいと願う“戦士”達のように、誰もが“誰かを護るため”に戦えたら、世界はもう少しまともだったかもしれないわね・・・」

 

何処か悲しそうにマリア・カデンツァヴナ・イヴは顔を伏せる。その表情に一瞬翼は戸惑い。

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ、貴様は一体・・・」

 

「そうね、そろそろ頃合いかしら」

 

マリアはそう言ってサーベル型のマイクを振り回し、世界に向けて叫ぶ。

 

「私達は、ノイズを操る力を持ってして、この星の全ての国家に要求する!」

 

「世界を敵に回すと言う口上?これはまるで・・・」

 

その頃、“未来からの連絡”を受けてレグルス達に“あるもの”を届ける為に向かっていた緒川も。

 

「宣戦布告・・・」

 

マリア・カデンツァヴナ・イヴは不敵な笑みを浮かべ。

 

「そして・・・・・・」

 

マイクを頭上に振り投げて。歌う、奏者達と同じ“戦いの歌”をーーーーーーーーーーーー。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

ドレスが弾け、マリアの胸元にシンフォギアの結晶があった!

 

「まさか!?」

 

ゲストルームで見ていたエルシドとデジェルも。

 

「!?あれは・・・」

 

「!?・・・」

 

指令部でモニターしていた藤尭が声をあげる。

 

「この波形パターン、まさかこれは!?」

 

レグルスと弦十郎の声が重なった。

 

「「『ガングニール』だと!!?」」

 

マリア・カデンツァヴナ・イヴの身体にアーマーが装備される!それは響のと形状が僅かに異なりより攻撃的なデザインで白いストールではなく黒いマントを翻したその姿は正しく、『北欧神話』の『撃槍ガングニール』!

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

翼も、藤尭も、弦十郎も、そして映像を見ていた響とクリスも驚愕し愕然となる。響が呟く。

 

「黒い・・・ガングニール・・・」

 

愕然となる翼を余所にマリア・カデンツァヴナ・イヴは落ちてきたマイクを掴み、再び世界に向けて布告する。

 

「私は、私達は『fine<フィーネ>』! そう、『終わり』の名を持つものだ!」

 

それはかつて“ルナアタック事変”の際、世界を震撼させ、響達と因縁深く、レグルス達に憧れた“巫女”の名前だった。

 

 

 

 

 

「やっちまったな、もうこれで止められねぇ・・・」

 

「止まるわけには行かないだろう彼女達は」

 

「“世界に宣戦布告”しちまった、この意味がわかってんのかねアイツらは?」

 

「お前こそ解っているのか?」

 

「へっ。ま退屈しないで済みそうだけどな、一応“契約”は守るぜ、報酬もあるしな」

 

「以外にお前も損な性分をしているな」

 

「フン、それよりも」

 

「あぁ、気になるのは」

 

二人の脳裏にまるで“胎児のような異形の生物”が浮かんでいた。そして、トレーラーにいる老婆から連絡を受けて彼等も行動を起こす。

 

この戦いで起こる、空前絶後の“最強対最強”の戦いの秒読みは今正に開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思ったより長くなった、次回で新たな黄金の登場をさせたいです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。