聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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目覚める戦士達

響がフィーネに痛め付けられているのと時を同じくしてレグルスもまた父イリアスに叩きのめされていた。

ライトニングプラズマを食らい続け全身の骨と言う骨を砕かれたような激痛に五感が麻痺してしまいまともに身体が動かなくなっていたが意識だけは漠然と残っていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

もはや声も上げられなくなり仰向けに倒れたレグルスにイリアスは静かに近づき。

 

「レグルスよ。お前は今まで何のために戦ってきた?“我等のいた世界”でも“この世界”でも」

 

「(・・・・・・俺は・・・俺は何のために戦ってきたんだっけ?・・・・・・)」

 

「お前は今まで“私を殺した冥闘士<スペクター>”への復讐の為に力を手にし戦ってきたのだろう」

 

「(そうだ・・・父さんを殺したアイツに・・・・“ラダマンティス”にこの拳を突き刺す為に・・・父さんがされたようにアイツに・・・この拳を突き刺してやる為に俺は強くなって・・・戦ってきた・・・)」

 

「そしてお前は私と同じ獅子座<レオ>の聖闘士になりハーデスとの聖戦で仇と再会し、自らの生命を失いながらもかの者の身体をその拳で貫いた。だがお前は“この世界”へと流れ再び聖闘士として戦おうとしたが、仇を失い“生きる理由”と“戦う理由”を失ったお前はどう生きれば良いのか分からなくなった」

 

「(あぁそうだ・・・俺は“生きる理由”を“戦う理由”を失って・・・どうすれば良いのか分からなくなったんだ・・・ノイズと戦っていたのも自分の中の“迷い”から少しでも目を反らしたかったから・・・俺は・・・俺は・・・何のために戦えばいいんだ?・・・)」

 

仰向けに横たわるレグルスの瞳から涙が流れた。イリアスはそんな我が子の姿を痛々しく見つめる。

 

「レグルスよ、私と共に来い。お前は十分戦ってきた。もうこれ以上戦う事はない。さぁ」

 

イリアスはレグルスに向けて手をさしのべる。

 

「(・・・俺は・・・俺は・・・『♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪』・・・何だこの歌は?・・・心が暖かくなる・・・安らぎに満ちたこの歌は?・・・・・そうだ・・・“あの歌”だ・・・)」

 

レグルスの頭に響く優しい歌。それはレグルスが響達の世界に来た時に聴こえた歌。レグルスが目を覚ます時に聴こえた歌であった。

レグルスは痛む身体の上体を起こして歌が聞こえる方、自分の後ろを振り返るとそこにいたのは・・・。

 

「(・・・ッ!・・・天馬・・・アテナ様<サーシャ様>・・・耶人・・・ユズリハ・・・教皇様<セージ様>・・・ハクレイ様・・・・・・皆!?)」

 

そこにいたのは、“自分達の世界”でお守りしてきた女神と自分達を導いていた教皇と共に戦ってきた戦友達がいた。

 

 

 

 

 

 

ー響sideー

 

「(私、何のために戦ってきたの?どうして・・・どうして・・・翼さんとクリスちゃんが・・・何でこんな事になるの?)」

 

『つくづく情けないな君は』

 

未だに戦意喪失し放心状態の響の頭に“誰か”の声が響いた。

 

「(誰?あなたは誰なの?)」

 

『私の事などどうでも良い。それよりも君はいつまでそうして蹲っているのだ?』

 

「(だって・・・皆いなくなっちゃった・・・未来も創世も詩織も弓美も・・・翼さんもクリスちゃんも・・・皆いなくなっちゃって・・・もう嫌だ・・・どうして皆が・・・)」

 

『本当に君は“中途半端”だな』

 

“声”は響を励ますどころか呆れ果てた声色で響に語りかける。

 

「(“中途半端”?)」

 

『“中途半端な力”と“中途半端な覚悟”、君は戦士としての“覚悟”も“力”も“考え方”も何もかもが“中途半端”なのだ。だから現実に簡単に打ちのめされ、己の感情をコントロールできずに力に呑み込まれ己を見失う。得た力を仲間にまで向けたのが良い例だ』

 

「(・・・・・・・・・)」

 

響は何も言えなかった。ただ涙を流すしかなかった。

 

『だが、そんな君を助けようとしている者達に免じて力を貸そう』

 

「(私を助けようとしている?・・・誰が?・・・)」

 

『少し耳を傾けてみよ。答えは直ぐに解る』

 

そう言われ響は耳に神経を集中させる。

 

 

*

 

 

 

 

 

フィーネはボロボロに横たわった響に語る。

 

「シンフォギアシステムの最大の問題は、“絶唱”使用時のバックファイヤー。“融合体”であるお前が放った場合、何処まで負荷を抑えられるのか研究者として興味深い所ではあるが。ハッ!最早お前で実験してみようとは思わぬ」

 

フィーネは響にゆっくりと近づく。

 

「この身も同じ“融合体”だからな。新霊長は私一人いれば良い。貴様を始末した後は黄金聖闘士達を倒し奴等の黄金聖衣を手に入れれば、もう人の身で私に並ぶ者など誰もいない。私に並ぶ者は全て絶やしてくれる」

 

そう言って、フィーネは四本の鞭を響に向ける。

 

『♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪』

 

「ん?耳障りな、何が聞こえている?」

 

突然聴こえた歌声にフィーネは不愉快そうに顔を歪めるが、響は。

 

「・・・ッ・・・」

 

「なんだこれは?」

 

ほとんど潰れたスピーカーから歌が聴こえた。響が好きだったリディアンの校歌だ。

未来達がいる部屋で未来や創世と弓美と詩織と合唱部の人達が響に向けて歌を送っていた。

 

「(響、私達は無事だよ。響が帰って来るのを待っている。だから、負けないで!)」

 

「(やれやれ。ガングニールの精神に呼びかけ、異次元にいるレグルスにも歌を送るのは少々骨が折れるな。フッ、まさか私がこんな風に力を使うとはな。さて“他の二人”にもこの歌を届けるか)」

 

アスミタも金色のオーラを纏いながら仕事をする。

 

 

そしてフィーネの周辺をオレンジ色の光の粒子が舞う。フィーネはそれに気付かないのか歌の出所を探していた。

 

「どこから聴こえてくる?この不快な歌・・・歌、だと」

 

響の瞳に光が徐々に戻る。

 

「声が・・・皆の声が・・・」

 

朝日が昇り響が拳を握る!

 

「良かった・・・あたしを支えてくれる皆は何時だってそばに・・・皆が歌ってるんだ・・・だから・・・まだ歌える・・・頑張れる!戦える!!」

 

響が叫ぶと青いオーラが響を包みこみその衝撃波がフィーネを吹き飛ばす!

 

「なっ?!」

 

フィーネが目を向けると光のリングを纏った響が立ち上がる!

 

「まだ戦えるだと!?何を支えに立ち上がる!?何を握って力と変える!?先程の不快な音の仕業か?そうだ、お前が纏っているものはなんだ?心は確かに折り砕いた筈・・・なのに・・・何を纏っている!?それは私が造った物か!?お前の纏うソレは何だ!?なんなのだ!?」

 

動揺するフィーネを無視し響は力を込める!

 

すると響がいる場所とカ・ディンギルがあった場所と響のいる場所から離れた場所で“オレンジの光”と“蒼いの光”と“赤いの光”が天へと伸びる!

 

“蒼い光”の柱の根元から翼が!

 

“赤い光”の柱の根元からクリスが!

 

死んだと思われた二人が立ち上がる!

 

三人は天へと飛び新たな姿へと進化したギアを纏い響が吠える!

 

「シンフォギアーーーーーーーーーーー!!!!」

 

今新たな伝説が生まれた!

 

 

 

 

 

 

 

ーレグルスsideー

 

「(皆・・・俺を迎えに来たの?・・・)」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

レグルスの問いに天馬達は答えない。だがアテナは悲しそうにレグルスを見つめ、天馬達は責めるような厳しい瞳でレグルスを睨む。

 

「(・・・・・・・・・わかってるよ・・・あぁわかってるよ・・・・そうだよな・・・“答え”なんて簡単だったんだ・・・・・・情けない姿を見せたな)」

 

そう言ってレグルスは立ち上がりその姿は元の少年の姿に戻った!

 

「(皆ごめん、俺はまだそっちに行けない。“やるべき事”があるんだ、こんな所で寝ていられないな!)」

 

『・・・・(コクン)・・・・・』

 

レグルスがそう宣言すると天馬達は満足そうに頷き霞のように消えた。

 

「レグルスよ。“答え”を聞こう、私と共に行くのか?」

 

「父さん。俺は・・・俺は“俺の道”を行く!」

 

「“お前の道”だと?」

 

「父さんの言うとおり、人の世界は“雑音”だらけだ。でもそんな世界でも真っ直ぐで清らかな音を奏でている人達がいる。世界には嫌、人にはまだ“希望”が・・・“可能性”があるんだ!誰もが内に秘めた“可能性”と言う“光”。その“光”がある限り人の世界を地上をそこに生きる人々を守り抜く!俺は“希望の闘士”、聖闘士だから!!」

 

イリアスは我が子の迷いない瞳を見ると一瞬微笑むがすぐに冷徹にレグルスを見据え拳を構える!

 

「ならば掛かってこい。ここで私を越えられぬ者が“その先”に行くことなどできはしない!」

 

レグルスも拳を構える!

 

「父さん。俺は父さんにはなれないけど、父さんを越えて皆を守り抜いて見せる!」

 

レグルスとイリアスの小宇宙が爆発的に燃え上がり二人は獅子座の最大の技を繰り出す!

 

「「『電光雷光<ライトニングプラズマ>!!』」」

 

無数の光の閃光が二人の間でぶつかり弾ける!

 

互角の力がぶつかり辺り一帯を吹き飛ばす!だが!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

 

レグルスが更に小宇宙を高めるとなんとレグルスの聖衣の“姿が変わった”!?腕が足が胴体がマスクがその姿を変えた!?

 

レグルスの技がイリアスの技を押し返す!

 

レグルスの閃光がイリアスを飲み込もうとする!するとイリアスは微笑み。

 

「良し・・・レグルス・・・それで良い・・・心のままに生きなさい・・・」

 

「ッ!?父さん・・・・・・」

 

「自然のままに、己の心のままに、自由に生きなさい。私は何時でも風の中にいる。大地の中にいる。お前の傍にいる」

 

「父さん・・・ッ!・・・」

 

レグルスの瞳から涙が止めどなく流れる。

 

「必ず守り抜け、“この世界”を・・・今こそお前は“真の獅子座の黄金聖闘士”だ・・・」

 

レグルスの閃光がイリアスごと“まやかしの世界”を飲み込んだ!

 

「ッッ父さあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんッッ!!!!!!」

 

崩壊する世界と共にレグルスが涙を流しながらの慟哭が響いた。

 

 

ー異次元空間ー

 

異次元空間にまで響いた歌声にエルシドとデジェルも反応した。

 

「エルシド、今の歌は?」

 

「リディアンの校歌だ。何故異次元空間にこの歌が?」

 

ビキビキ!

 

「「!?」」

 

首を傾げていた二人の後ろにあった“モルペウスの門”が突然皹が走り門が砕けた!

 

「・・・・・・」

 

「「レグルス!!」」

 

砕けた門からレグルスが現れた。顔を上げたレグルスを見た瞬間デジェルとエルシドは何かあった事を察した。レグルスの顔には一切の“迷い”が無くなっていたからだ。

 

「ごめんエルシド、デジェル。寝坊しちゃったな」

 

「相方の悪い癖が写ったか?」

 

「兎に角無事で何よりだ」

 

お互いに無事を確かめ合った三人は歌の次に来た強い波動を感じた。

 

「この波動は響だ」

 

「翼の波動も感じるな」

 

「クリスのもだ。どうやらまだ戦いは続いているようだな」

 

レグルス達は頷き合うと波動の感じる場所<出口>へと向かった。

 

「翼達の波動が今までとは比べ物にならない程高まっている」

 

「これなら俺達が着く前に響達がフィーネを倒しちゃうかもな」

 

「・・・・・・・・・」

 

爆発的に進化した奏者達に安心感を抱くレグルスとエルシド。だがデジェルは少し浮かない顔をしていた。

 

「どうしたデジェル?気になることでもあるのか?」

 

「あ、いや・・・」

 

「ここまで来て隠し事は無しにしようよデジェル?」

 

「・・・・・・フィーネのアジトを調べた時、ある研究結果を見たのだ」

 

「研究結果?何が書かれていた?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「デジェル」

 

レグルスとエルシドに言われデジェルも観念したかのように呟く。

 

「“ネフシュタンの鎧と黄金聖衣の融合“と書かれていた」

 

「「!?」」

 

デジェルの言葉にレグルスとエルシドは驚く!

フィーネの纏うネフシュタンの鎧は“装着者を喰らう”危険性がある鎧だと言う事は知っていたがまさか黄金聖衣をも取り込む事が出来るとは思わなかったのだ。

 

「なるほど、フィーネが我々の黄金聖衣を狙っていたのはネフシュタンの鎧に喰わせその力を得ようとしたからか」

 

「でも、黄金聖衣は俺とエルシドとデジェルとアスミタのしかないじゃないか、そんな研究結果どうやって出したんだよ?黄金聖衣は・・・・・ ・ッまさか!」

 

「!」

 

言っている途中でレグルスは察した!エルシドも察したのだ!

レグルスの獅子座<レオ>、エルシドの山羊座<カプリコーン>、デジェルの水瓶座<アクエリアス>、アスミタの乙女座<ヴァルゴ>の他に黄金聖衣があったのだ!

 

「そう言うことだレグルス」

 

デジェルは肯定と云わんばかりに頷く。

 

「・・・・・・いそごう!」

 

「「(コクン)」」

 

三人は異次元空間を飛ぶ!フィーネが奏者達に“切り札”を使う前に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでにします。次回はシンフォギアをまたはしょり更に響達をかなり虐めるかもしれません。ファンの皆々様に前もって謝罪しますm(__)m

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