聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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想い届ける為に

翼の歌声に反応したのはエルシドだけではなかった。イリアスと共に森の奥へ行こうとしていたレグルスも歌声に反応したのだ。

 

「今のは?」

 

「レグルスよ、惑わされるなと言った筈だ。それらは只の『雑音』「『雑音』なんかじゃない」・・・・・・」

 

あくまで『雑音』と言うイリアスの言葉を遮るレグルス。

 

「父さん、『雑音』なんかじゃないんだ。これは『歌』だよ。『命』を燃やした者が奏でる事が出来る『想い』だ」

 

するとイリアスの目が冷徹になりレグルスを睨む。

 

「やはりお前もシジフォスと同じかレグルス?私の細胞を受け継いでいると言うのにお前は『私』になれないのか?」

 

「父さん?・・・ッッ!!」

 

突然イリアスの拳が光るとレグルスは後方に吹き飛んでいった!

森の木々を巻き込んで吹き飛んだレグルスは倒れた木々の上に倒れながら自分の腹部から走る激痛にむせかえる。

 

「ゲホッ!ガハッ!アッ!と、父さん。一体何を!?」

 

突然の父からの攻撃にレグルスは困惑するがイリアスは構うことなく悠然とレグルスの少し前に立っていた。

 

「レグルスよ、私にはお前が『人の世界』という森のなかで『雑音』に惑わされているように見える」

 

「『雑音』だって?」

 

「私と同じ『大地』や『風』と対話ができるお前ならば分かる筈だ。世界は人の発する雑音に満ちていると。人は弱く、脆く、儚く、己の弱さに敗北しやすい生き物だ。それ故人は大地を忘れ己すら見失う」

 

「・・・・・・・・・」

 

「その様な『雑音』に満ちた『人の世界』よりも私と行く『世界の探求』の方がお前の為になる」

 

「父さん、人は確かに弱いよ。ちょっとしたすれ違いで大切な友達と決別したり、自分の考えを押し付けるために他者を傷つける。自分の感じる幸せが他者の幸せと決めつける。確かに世界はそんな人の雑音に満ちているのかもしれない・・・でも・・・それでも・・・俺は・・・俺はッ!」

 

「お前は自分が聖闘士として生きていく事に迷っているのだろう?」

 

「!?」

 

「私と共に行けばそんな迷いに苦しむこともない。だが人の世界にいればお前もいずれ己を見失う。親として父としてそんなお前を見るのは忍びない。人の世界を選ぶというならば、私の手で大地に還してやる。安らかに眠れ我が息子よ」

 

イリアスは右手をそっと突き出す。

 

「『ライトニングプラズマ』」

 

無数の光の閃光がレグルスに襲い掛かった!

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!(翼、クリス、未来、二課の皆・・・・・・・・・・・響ッ・・・・・・・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー響sideー

 

そして暴走していた響はシンフォギアが解除され元の姿に戻るが目の前に広がる翼が命を賭して破壊した『カ・ディンギル』の残骸とその破壊の余波で吹き飛ばされた母校の無残な姿と翼が命を散らせた『現実』にその顔を絶望に染めた。

 

「あ・・・あぁ・・・翼さん・・・・・・」

 

その光景を見ていた弦十郎達も、藤尭は天羽々斬の反応の途絶を報告する。それは『翼の死』を意味していた。弦十郎も藤尭も友里も悲しむ。未来達もその報告を聞いていた。

 

「身命を賭して『カ・ディンギル』を破壊したか翼。お前の歌、世界に届いたぞ。世界を守りきったぞ!」

 

そう言って弦十郎は両の手をきつく握った。

 

「分んないよ。どうして皆戦うの!?痛い思いして怖い思いして死ぬために戦っているの!?」

 

「分からないの?」

 

狼狽し涙を流しながら言う弓美に未来は涙を流しながら毅然と言って弓美の肩を掴む。

 

「分からないの?」

 

「うっ・・・うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

弓美も本当は分かっている。分かっているがどうにもならない現実にただ涙を流すしかなかった。

 

フィーネは爆発に呑まれる一瞬馬型のノイズに救出されていた。馬型から降りるとフィーネは忌々しそうに鞭を地面に叩きつける。

 

「ええいッ!何処までも忌々しい!!月の破壊は『バラルの呪詛』を解くと同時に、重力崩壊を引き起こす惑星規模の天変地異に人類は恐怖し狼狽えそして聖遺物の力を奮う私の元に規準する筈であった!『痛み』だけが人の心を繋ぐ『絆』!たった一つの『真実』なのに!それを!それをお前は!お前は!!」

 

「ッ!!」

 

絶望にうちひしがれた響をフィーネが蹴り飛ばす。うつ伏せに倒れた響の頭をフィーネは掴み無理矢理に頭だけ起こす。

 

「まぁそれでもお前は役に立ったよ、『生体』と『聖遺物』の初の『融合症例』。お前と言う『生命』がいたからこそ私は己が身を『ネフィシュタンの鎧』と同化させる事ができたのだからな。そして黄金聖衣を手にいれる『理由』ができたのだからな。月を破壊し貴様達『虫けら』を駆除したあと異次元にいる奴等<黄金聖闘士>を倒し黄金聖衣を手に入れようとした私の目論みもこれで大きく狂わされた」

 

フィーネは掴んだ響をそのまま乱暴に放り投げた。だが響は何もしなかった。その瞳は光が宿っておらず『現実』にうちひしがれていた。

 

「翼さん・・・クリスちゃん・・・二人とももういない・・・学校も壊れて・・・皆いなくなって・・・私・・・私はなんのために・・・なんのために戦っている・・・皆・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーアスミタsideー

 

「情けない」

 

絶望にうちひしがれ戦う気力すら失ってしまった響をアスミタは冷たく言う。未来達はアスミタを見つめる。

 

「戦場に出る者は『相手を傷つけ傷つけられる覚悟』、『仲間が傷つき倒れ死ぬ覚悟』、『自らが死ぬ覚悟』位は最低限持たなければなならないモノだ。ガングニールはそのいずれかの覚悟を持っていなかった。力を手にし自分の都合の良い事ばかり考えていたが故に現実に打ちのめされた。天羽々斬もイチイバルも見事な戦士だがガングニールは、戦士を名乗るのもおこがましい未熟者よ」

 

「アスミタ!お前!」

 

「司令!」

 

弦十郎がアスミタに詰め寄ろうとするが他の部屋を捜査していた緒川が多くの民間人を連れて戻ってきた。

 

「周辺区画のシェルターにて生存者を発見しました」

 

「そうか、よかった」

 

弦十郎は顔を緩めて微笑む。民間人の中に響が初めてシンフォギアを纏った時に助けた少女がいた。少女はモニターに映る響を見ると。

 

「あ!お母さん!カッコいいお姉ちゃんだ!」

 

「あっちょっと!待ちなさい!」

 

母親の静止を聞かず少女はモニターに近づく。

 

「すみません」

 

「ビッキーの事知ってるんですか?」

 

創世に聞かれ母親は思い出そうとして話す。

 

「詳しくは言えませんが、家の子はあの子に助けていただいたんです」

 

「え?」

 

「自分の危険を省みず助けてくれたんです。きっと他にもそういう人たちが」

 

「響の人助け・・・」

 

母親の話に弓美は思わず呟く。モニターを見ていた少女は振り向き。

 

「ねぇ!カッコいいお姉ちゃん助けられないの?カッコいいお兄ちゃんもいないよ?」

 

少女の疑問に詩織が答える。

 

「助けようと思ってもどうしようもないんです。私達には何もできないですし」

 

「じゃあ一緒に応援しよう!ねぇここから話しかけられないの?」

 

少女は藤尭に聞くが「できないんだよ」と言われた。だが未来は。

 

「あッ!応援。ここから響に私達の声を無事を知らせるにはどうしたら良いんですか?響を助けたいんです!」

 

「助ける?」

 

「学校の施設がまだ生きていれば、リンクしてここから声を送れるかもしれません」

 

藤尭の答えに未来は満足気に頷きアスミタの方を向く。

 

「アスミタさん」

 

「・・・・・・」

 

「アスミタさんにとってこの世界は“守る価値”があるか見定めているのですよね?」

 

「(コクン)」

 

「アスミタさんにこんな事を頼むのは筋違いかもしれませんが、お願いします!響を助けるのに協力してください!」

 

未来はアスミタに頭を下げる。

 

「響はアスミタさんの言うとおり、覚悟もできていない未熟者です。でも未熟な響だからこそ私達が助けて上げないといけないんです!だから、だから!」

 

未来は必死にアスミタに懇願する。レグルス達がいない響も戦えない今、最も頼りになる戦士に助けを求める。アスミタは。

 

「(友のためにどんな危険も省みず行動するこの少女も似ているな。天馬星座<ペガサス>に)良かろう。君には借しがある」

 

『!?』

 

「だが勘違いするな小日向未来、私は『ガングニールを助けに行く』のではない」

 

「?」

 

「『君<小日向未来>の友を助けに行く』のだ』

 

「アスミタさん・・・・・・はい!」

 

アスミタの言葉に未来は涙ぐみながら微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー響sideー

 

太陽が登り始めた世界。フィーネは放心状態のままの響を背にして語る。

 

「もうずっと遠い昔。“あのお方”に使える巫女であった私は、いつしか“あのお方”を“創造主”を愛するようになっていた。だがこの胸の内を告げることができなかった。その前に、私から、人類から言葉が奪われた。バラルの呪詛によって唯一“創造主”と語り合える統一言語が奪われたのだ。私は数千年に渡りたった一人バラルの呪詛を解き放つため抗ってきた。それを・・・あの忌々しい『女神』の愚行で・・・」

 

徐々に涙ぐみながら語るフィーネに響は目を向ける。

 

「いつの日か、統一言語にて胸の内の想いを届けるために・・・」

 

「胸の想い・・・・・・だからって・・・」

 

フィーネは涙混じりの怒りの形相を響に向ける。

 

「是非を答だと!?獅子座<レオ>への恋心を理解できないお前が!!」

 

そう叫ぶとフィーネは響の頭を掴み振り回す。何も理解できない何も知らない餓鬼に自分の想いを恋心を否定された事をフィーネは怒ったのだ。

 

 

 

 

ー未来sideー

 

アスミタと未来と創世と詩織と弓美は緒川と一緒に施設の調査をしていた。

 

「この向こうに切り替えレバーが?」

 

「こちらから動力を送ることで学校施設の再起動ができるかもしれません」

 

「でも緒川さんだとこの隙間には」

 

切り替えレバーがある区画への扉は僅かな隙間しか開かず緒川の体型では入れなくなっていたのだ。弓美が決意を持って口を開く。

 

「あ、あたしが行くよ!」

 

「弓美?」

 

「大人じゃ無理でも、あたしならそこから入っていける。アニメだったらさ、こういう時身体のちっこいキャラの役回りだしね。それで響を助けられるなら!」

 

「でもそれはアニメの話じゃない」

 

「アニメを真に受けて何が悪い!ここでやらなきゃあたしアニメ以下だよ!非実在青少年にもなれやしない!この先響の友達として胸を張れないじゃない!」

 

「・・・」

 

「(先程まで恐怖に震えていた少女が戦おうとしている)」

 

弓美の言葉に未来は顔をほころばせアスミタは顔には出さないが弓美の行動に驚く。すると今度は詩織が口を開く。

 

「ナイス決断です。私もお手伝い致しますわ」

 

「だね。ビッキーが頑張っているのにその友達が頑張らない理由にはならないよね」

 

創世も賛同する。

 

「皆・・・」

 

「フフ」

 

「そこの盲目の金髪イケメンさん!」

 

「私の事か?」

 

弓美はアスミタを指差す。

 

「響はヒナの友達であるように私達の友達でもあるんだからね!助けてくれるんならよろしく頼むよ!」

 

そう言って未来と弓美と創世と詩織は区画に入っていく。

未来と創世と詩織を台にして弓美は切り替えレバーを切り替える。

すると電力が回復し、区画を明るく照らした。未来達はお互いに微笑み合う。

 

「来ました!動力、学校施設に接続!」

 

「校庭のスピーカー、いけそうです!」

 

「やったー!」

 

「フッ」

 

友里と藤尭からの報告に少女は喜び弦十郎は満足気に微笑む。

それぞれの人達が想いを届けるために力を合わせていた。

 

 

 

「(たった一人の友の為に恐怖を乗り越える事ができるのか?アテナ、人にはまだ可能性があると言うのですか?・・・・・・ならば私も『眠れる獅子』を起こすために少し力を貸そう)」

 

 

『神に最も近い男』も『若獅子』を目覚めさせるために遂に動く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。久しぶりの投稿なのでモチベーションを維持できず稚拙な文になりました。申し訳ありませんm(__)m

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