聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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両親の『夢』

ーとある漫画喫茶ー

 

翼の復帰ステージから数日が過ぎ。デジェルは漫画喫茶の個室に備えてあるパソコンからとある“情報屋”のサイトにアクセスし、ある“裏情報”をメールで確認した。

 

「遂に米国が痺れを切らしたか・・・・そろそろフィーネも動くな」

 

クリスが店に備えられているシャワー室から戻ってきた。

 

「ああ~、さっぱりした♪お兄ちゃん、どうしたの?」

 

「クリス、どうやらフィーネが本格的に動くかもしれん」

 

デジェルの言葉にクリスの顔に緊張が走る。

 

「それってどういう事?」

 

周りの人達に聴こえないようにデジェルはクリスを引き寄せ小声で話す。

 

「ある情報屋からの裏情報だ。日本に潜伏しているフィーネと手を組んでいた米国の工作部隊に『フィーネに預けてある“ソロモンの杖”を回収せよ』と本国から命令が来たようだ」

 

「“ソロモンの杖”を?でもフィーネはアレを米国に渡すつもりはないって言ってた」

 

クリスの言葉にデジェルは渋い顔をする。

 

「嫌な予感がする。クリス、フィーネのアジトに向かおう」

 

「え?」

 

「どの道このまま逃げていてもフィーネのノイズ達の追撃は止まないんだ。ならばいっそこっちから攻めに転じるべきだ」

 

「・・・・・・・・・」

 

クリスは迷っていた。いくら利用されていたからと言っても“力”をくれた恩人でもあるフィーネと戦う事に僅かな迷いがあったのだ。だがこのままでは無関係な人達まで巻き添えをくらう。そう考えたクリスは顔を上げ頷いた。

 

「良し、では行こう」

 

そう言ってデジェルはパソコンをシャットダウンさせ会計を済ませクリスと共に店を出た後、クリスを抱き抱えて<お姫様抱っこ>ビルの上を飛びながらフィーネのアジトに向かう。

 

「お兄ちゃん、その“情報屋”って信用できるの?」

 

「あぁ、シンフォギアや二課の事はその“情報屋”から聞いた。最もメールでのやり取りだけで顔は見たことがないんだが。名前は確か・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「“アクベンス”と名乗っていた」

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてフィーネのアジトでは。アジトである屋敷の前で帽子を目深く被り防弾チョッキにマシンガンを構えた男達が潜んでいた。

 

フィーネはだだっ広く妙な機械が置かれたホールでコンピューターを弄っていた。そんなフィーネの後ろの扉やホールの窓を蹴破り男達が突入してきた。

 

「!!」

 

驚くフィーネをよそに突入した男達はフィーネに容赦なくマシンガンの弾を撃ち込んだ!

 

「あっ・・・・・・」

 

崩れ落ちるフィーネにリーダー格の男が近づき英語で喋る。

 

「手前勝手が過ぎたな。聖遺物に関する研究データは我々が活用させてもらおう」

 

血を流しながらフィーネが口を開く。

 

「掠める準備が出来たら、あとは用無しってわけね。徹底しているわ・・・・・・」

 

リーダー格の男はフィーネを仰向けにしようと蹴り、脇腹を撃たれ血を流すフィーネの姿を嘲笑う。

 

だがフィーネはクワッと目を見開くと傷口に手を当てると傷口に青い粒子が集まる。他の男達はマシンガンを構えるが横から現れた“ナニか”がマシンガンを弾き飛ばす!

 

『!!』

 

馬の形状をした青いノイズが現れた。男達の注意がノイズに向けられたいる内にフィーネの身体がビキビキとまるで亀裂のようなものが無数に走った!

 

「それも、わざと痕跡を残して立ち回るあたりが、品性下劣な米国政府らしい」

 

フィーネはゆっくり身体を起き上がらせるとリーダー格の男を睨む。リーダー格の男はマシンガンをフィーネに構える。

 

「ブラックアートの深淵、覗いてすらもいない青二才のアンクルサムがーーー」

 

フィーネはゆっくり立ち上がり男達を睨む。そしてリーダー格はマシンガンをフィーネに・・・・・・“櫻井了子”に向け撃つ。銃声がホールに響き血しぶきが舞っていた。

 

 

 

 

ーリディアンー

 

日直の仕事で職員室に来ていた響と未来は職員室を出て教室に向かおうとしていたが、響は合唱部が歌っている校歌に耳を傾け、鼻歌を唄う。

 

「♪~♪~♪~♪」

 

「何?合唱部に触発されちゃった?」

 

「ん~、リディアンの校歌を聞いてるとまったりするって言うか、凄く落ち着くって言うか、“皆がいるところ”って考えると安心する。“自分の場所”って気がするんだ。入学して、まだ2ヶ月ちょっとなのにね」

 

「でも色々あった2ヶ月だよ」

 

シンフォギアを得て、聖闘士に出会って、ノイズと戦って、憧れの翼とも仲良くなって、クリスと戦って、未来とすれ違ったりと響や未来にとって余りにも多くの出来事がこの2ヶ月で起こった。

 

「うん、そうだね」

 

大変な事、辛かった事、悲しい事、嬉しい事、楽しい事、本当に色々な出来事が起こった。それらを思い返し響は微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーフィーネのアジトー

 

静寂に包まれたフィーネのアジトに到着したクリスとデジェル。

 

「!」

 

突然、デジェルが異変に気付く。

 

「どうしたのお兄ちゃん?」

 

「何度も紛争地帯で感じた匂いだ。“血”と“硝煙”の混じった匂い、遅かったか」

 

「!!」

 

クリスとデジェルは急いでフィーネのいるであろうホールに向かう。ホールに着いた二人の目に映ったのは。機械が破壊され血塗れで倒れている米国の工作員達であった。

 

「全員、死んでるな」

 

「何がどうなってやがんだ?」

 

ガタッ

 

「「!!」」

 

後ろから物音が聞こえ振り向くとそこには、弦十郎が険しい顔で立っていた。

 

「・・・・・・」

 

弦十郎は無言のまま現場を見ていた。

 

「違う!あたし達じゃない!やったのは・・・・」

 

「大丈夫だクリス」

 

「デジェルにぃ・・・」

 

弦十郎の後ろから二課の諜報部が現れクリスとデジェルに見向きもせず工作員達の方へ向かった。

 

「・・・・・・」

 

「風鳴司令」

 

「!」

 

無言で近づいた弦十郎はクリスの頭を撫でる。

 

「誰もお前らがやったなどと疑ってはいない。全ては君や俺達の側にいた“彼女”の仕業だ」

 

「え?」

 

「やはり気づいていましたか?」

 

「ある程度はな」

 

そう呟く弦十郎の顔は悲しそうだった。すると部下の一人が弦十郎を呼び、工作員の死体に置かれたメッセージが書かれた紙があった。

 

『I LoVE YoU SAYONARA<さよなら、愛してるわ>』

 

部下がそのメッセージを取ると。

 

ピー!

 

「ッ!罠だ!」

 

デジェルが叫ぶのと同時にホール内で爆発が起こった!

 

 

 

 

 

 

 

ドカーーーーーーーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

天井やら壁やらが崩れたがデジェルはクリスを庇い、弦十郎は二人の上に落ちてきた破片を片手で止めた!?他の部下達はデジェルが張った小型の氷のドームに守られた。氷のドームはデジェルが指を振るうと粉々に砕かれた。

 

「どうなってんだよこいつは・・・」

 

「衝撃は八剄で掻き消した」

 

「(見事なクンフーだ。童虎がいれば良い勝負ができたろうに)」

 

ホントにアンタ人間か?とツッコミたくなるようなことを平然とやってのける弦十郎と的外れな事を考えるデジェル。

 

「何でだよ。何で“ギア”も“聖衣<クロス>”も纏えない奴があたし達を守ってんだよ!」

 

敵側だった自分を助けた。しかも“力”を持っていない人間がクリスには理解できなかった。弦十郎は瓦礫を捨ててクリスに向き直る。

 

「俺がお前を守るのは“ギア”の有る無しじゃなくて、お前よか少しばかり“大人”だからだ」

 

その言葉にクリスは敵意を強める。

 

「“大人”・・・あたしは大人が嫌いだ!死んだパパとママも大嫌いだ!あたしはアイツらと違う!センチで難民救済?歌で世界を救う?良い大人が“夢”なんて見てんじゃ「クリス!」?!お兄ちゃん・・・」

 

クリスの声を遮りデジェルがクリスと向き合う。

 

「クリス、それ以上の事は言ってはいけない。君が両親の“夢”を否定してはいけないんだ。君は両親が大嫌いと言ったが本当は」

 

「だって・・・だって・・・」

 

「!」

 

クリスの頬に一筋の涙が流れた。泣きそうな声でクリスは吐き捨てる。

 

「本当に戦争を無くしたいのなら“戦う意志と力”を持つ奴ら片っ端からぶっ潰すしかないじゃないか、それが一番合理的で現実的だから・・・だからあたしは・・・」

 

「それがお前の流儀か、なら聞くがそのやり方でお前は戦いを無くせたのか?」

 

「!それは・・・」

 

弦十郎の言葉にクリスは言葉を濁す。

 

「確かに“歌で世界を救う”なんて幻想なのかもしれない。だがなクリス、私は知っている。君の両親の“夢”と君の“歌”に救われた者がいる事をな」

 

「え?・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

デジェルの話しをクリスと弦十郎は黙って聞く。

 

「ある少年がいた。その少年は遠い昔からある“夢”を持っていた。“友”との夢、明日は未来はきっと希望があると信じてその少年は戦ってきた。だが少年は現実に絶望した。“大義とエゴを履き違えた大人達の身勝手な戦争”、“繰り返される憎しみの連鎖”、“不条理で理不尽に奪われる生命”、少年はこんな未来の為に戦ってきた訳ではなかった。その少年の“友”も“仲間”も“恩師”そして“大切な人”もこんな未来を夢見て戦ってきた訳ではなかった。少年は生きる気力も希望も失い、抜け殻のようになっていた。そんな時に現れてくれたのが君と君の両親だった」

 

「!」

 

「その少年は君の両親の掲げる“夢”に感銘を受けた。こんな世界でも希望を捨てずに生きる人達がいるんだと、そして君の歌で少年は生きる想いが沸いて来たんだ。クリス、君の歌は“破壊の歌”なんかじゃない、両親から受け継いだ“希望の歌”なんだ」

 

「お兄ちゃん・・・・・・」

 

「デジェル君、その“少年”はどうしたんだい?」

 

「今、その“希望”をくれた少女の為に戦おうとしている」

 

デジェルの言葉に弦十郎は満足気に頷きクリスは見る。

 

「そうか、クリス君。“良い大人は夢を見ない”と言ったな。だがそうじゃない、“大人”だからこそ夢を見るんだ。大人になったら背も伸びるし、力も強くなる。財布の中の小遣いだってちったぁ増える。子供の頃は只見るだけだった夢も大人になったら叶えるチャンスが大きくなる。夢を見る意味が大きくなる。お前の親はただ夢を見る為に戦場に行ったのか?違うな、“歌で世界を平和にする”って言う夢を叶える為に自ら望んで“この世の地獄”に踏み込んだんじゃないのか?」

 

「何でそんな事を・・・」

 

「お前に見せたかったのだろう。“夢は叶えられる”と言う揺るがない現実をな」

 

「?!」

 

「クリス、君は嫌いと吐き捨てたが本当は違うだろう?」

 

デジェルに言われクリスは以前アスミタが両親に弔いの経を読んでもらった時に見た両親の姿を思い返していた。自分を愛しく見つめる両親、優しく微笑んでいた両親、愛をくれた両親。

 

「あたしは・・・あたしは・・・」

 

泣きそうになるクリスをデジェルが優しく抱き締める。

 

「うっ・・ううっ・・うあああ!」

 

クリスの泣き声が崩れたホールに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引き上げようとする弦十郎達。車に乗り込もうとする弦十郎にクリスとデジェルは・・・。

 

「やっぱりあたしは・・・」

 

「一緒には来られないか。デジェル君、君はどうする?」

 

「聞くまでもないでしょう?」

 

クリスの肩を抱くデジェル。クリスも顔を少し赤らめながら微笑む。

 

「クリス。お前はお前が思っている程一人ぼっちじゃない、お前達が二人で道を歩いていくとしてもその道は遠からず俺達の道と交わる」

 

「今まで戦ってきた者同士が一緒になれると言うのか?世慣れた大人がそんな綺麗事言えるのかよ?」

 

クリスの言葉に弦十郎はフッと笑い。

 

「ホント、ひねてんなお前。デジェル君も苦労が絶えないな。ホレ」

 

通信機をクリスに投げ飛ばす。

 

「あっ・・・通信機?」

 

「そうだ。限度額内なら公共交通機関が利用できるし、自販機で買い物もできる代物だ。便利だぞデジェル君にたかってばかりじゃいけないしな」

 

「んなッ!」

 

「ハハハハ・・・・・・」

 

車に乗り込んだ弦十郎はエンジンを起動させる。クリスが弦十郎に“アル事”を告げる。

 

「“カ・ディンギル”!」

 

「「ん?」」

 

「フィーネが言ってたんだ。“カ・ディンギル”って、それがなんなのかわからないけど、“ソイツ”はもう完成しているみたいな事を」

 

「“カ・ディンギル”・・・」

 

「(“カ・ディンギル”。バビロン市の古代語で『神の門』を意味しているが一体?)」

 

弦十郎とデジェルはそれぞれに考えるが弦十郎は何かを決意した。

 

「後手に回るのは終いだ。こちらから打って出てやる!」

 

諜報部と一緒に弦十郎は去って行った。

 

「「・・・・・・・・・」」

 

それを見つめるクリスとデジェル。だがデジェルはフィーネのアジトに戻ろうとした。

 

「お兄ちゃん?」

 

「すまないクリス。もう少しフィーネの手掛かりがないか調べて見ようと思う」

 

そう言って屋敷の中に入るデジェルとその後を追うクリス。デジェルはホールのコンピューターから復元できるデータをギリギリまで復元させようとしていた。

 

「ここまでか・・・・・・」

 

「なにか分かった?」

 

今にも崩れそうな屋敷に不安を抱きながらデジェルのそばにいるクリス。

 

「いや、何かのレポート見たいだが・・・・何々?『ネフシュタンの鎧とーーーーーーー』!?」

 

「お兄ちゃん、これって?!」

 

フィーネの企みの一部を知った二人に戦慄が走る!

 

「もしも“これが”本当なら、我々、黄金聖闘士でも。フィーネに勝てないかもしれない・・・・・・」

 

僅かに声を震わせてデジェルが呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。

話しがほとんど進まない(ToT)

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