聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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それぞれの夜

「気まずい・・・・・・」

 

レグルスに送られリディアン音楽院高等科の女子寮に帰って来た響は部屋に入るのを躊躇していた。自分は親友の未来に嘘を吐いたと言う後ろめたさもあったが意を決して部屋に入るが未来の反応は明らかに『怒っている』様子だった。『一瞬で爆発させるタイプ』の怒りではなく『怒りが冷めず小出しにするタイプ』の怒りである。

 

響が声を掛けようとするも未来の口調は冷めきっており一つ一つの言葉に『棘』があり響の心を容赦無く突き刺す。そして最後の一言。

 

「嘘つき・・・・・・」

 

その言葉が響の心に深く突き刺さる。「仕方なかった」の一言で片付ける事は響の性格が許さなかった。そしてそのまま碌に言葉を交わさず未来と二人で一人分のベッドを使わず響は一人で一夜を過ごした。

 

今回の戦いでクリスの様子から『フィーネ』の狙いが響であると確信したレグルスは寮の屋上で響の護衛をし、鍛えぬかれた聴覚で響達の様子を伺っていた。

 

「(・・・・・・・・・何でだろう?)」

 

レグルスには解らなかった。響が未来に『隠し事』をしていたのは緒川から聞いていた筈、筋も理屈も通っている筈なのに、『仕方ない』の一言で片付けられる事なのに、なんであんなにギスギスするのか、その理由が解らなかった。

 

 

 

雪音クリスは夜の公園をさ迷っていた。『フィーネ』に見限られた事と響の言葉が頭にこびりついていた。

 

『ちゃんと話をすれば、きっと解り合える筈!だって私達、同じ人間だよ!』

 

「(アイツ、くそ!あたしの目的は、戦いの『意志』と『力』を持つ人間を叩き潰し。戦争の火種を無くすことなんだ。だけど)」

 

クリスの脳裏に『フィーネ』の言葉を思い出した。

 

『戦いの『意志』と『力』を持つ者の中で『最上位』に立つ者、それが黄金聖闘士よ』

 

再会した『お兄ちゃん』の姿が浮かんだ。

 

「(だけど、その為にはお兄ちゃんを・・・デジェルお兄ちゃんと戦わなくちゃいけないのかよ)」

 

「えーん!えーん!えーん!」

 

「?」

 

ふと泣き声が聞こえたクリスはそこに向かうとベンチに座り泣いている女の子とそれを宥めている男の子がいた。

 

「おい!コラ!弱いものを苛めるな!」

 

「だって妹が・・・」

 

弁解しようとするが妹は更に喚く。

 

「苛めるなっていってんだろうが!」

 

「うわっ!」

 

思わず手を上げそうになるクリス。だが。

 

「お兄ちゃんを苛めるな!」

 

さっきまで泣いた妹が兄を庇った。クリスは妹の行動に戸惑い。

 

「・・・・・・お前が兄ちゃんから苛められてたんだろ?」

 

「ちがう!」

 

「えっ?」

 

「それじゃどうしたのかな?」

 

「「「?」」」

 

声のする方向に目を向けるとデジェルが現れた。

 

「(デジェルお兄ちゃん?!)」

 

「「・・・・・・」」

 

突然現れたデジェルにクリスは驚き、兄妹は涼やかな雰囲気を纏う美男子に見惚れていた。デジェルはクリスを一瞥した後、腰を下ろし兄妹と同じ目線になる。

 

「驚かせてすまない。このお姉ちゃんも悪気があったわけではないんだ。どうして泣いているのか教えてくれないかい?」

 

警戒させないように、怖がらせないように、にこやかに優しく微笑みながら事情を聞くデジェル。警戒心が薄れた兄が事情を説明する。どうやら父とはぐれてしまい兄妹は途方に暮れていたようなのだ。

 

「迷子かよ、だったらハナっからそう言えよ」

 

「だって・・・だって・・・」

 

悪態付くクリスに妹は泣きそうになる。

 

「クリス、やめないか。勝手に苛められていると勘違いしたのはこっちなんだ」

 

「うっ」

 

デジェルに注意さればつが悪そうになるクリス。

 

「では、私とこのお姉ちゃんも君たちのお父さんを一緒に探してあげよう」

 

「えっ?!」

 

「「本当?」」

 

「ああ、勿論だ。な、クリス」

 

にこやかだが有無を言わせん迫力を出すデジェルと兄妹の捨てられた犬猫のような眼差しに。

 

「あぁー!分かったよ!」

 

クリスも折れた。

 

先ずは交番に行こうとデジェルの提案で交番のある所まで兄妹と手を繋いで歩くデジェルとクリス。

 

「♪~♪~♪~♪」

 

「・・・・・・」

 

思わず鼻歌を歌うクリス。それを眺める妹。

 

「・・・何だよ?」

 

「お姉ちゃん、歌好きなの?」

 

「歌何て大嫌いだ。特に『壊す事しか出来ない』私の歌わな」

 

「・・・・・・」

 

吐き捨てるクリスにデジェルは悲しそうな目をする。交番の近くについた一同の前に警察官ではない男性が出てきた。

 

「父ちゃん!」

 

「あっ!」

 

兄妹の父親がいた。心底心配したと言うような態度で。

 

「お前達、どこに行ってたんだ」

 

「お姉ちゃんとお兄さんが一緒に迷子になってくれた!」

 

「違うだろ?一緒に父ちゃんを探してくれたんだ」

 

父親はデジェルとクリスに目を向け、頭を下げた。

 

「すみません、ご迷惑を掛けました」

 

「いや、成り行きだから、その」

 

「お気に為さらず。私も迷子のこの子<クリス>を探していたところですから」

 

「なっ?!」

 

「やっぱりお姉ちゃんも迷子だったんだ!」

 

「いやだから!」

 

「コラ、お兄さんとお姉ちゃんにお礼は言ったのか?」

 

「「ありがとう!」」

 

「もうお父さんから離れちゃダメだぞ」

 

「なあ、そんな風に仲良くするにはどうしたら良いのか教えてくれよ」

 

クリスの言葉に兄妹はお互いに目を向けるすると妹が兄の腕に抱きつく。

 

「そんなのわからないよ。いつも喧嘩しちゃうし」

 

「喧嘩するけど仲直りするから仲良し!」

 

「心の底から相手を嫌いになっていないから、本当はお互いのことを想いあっているからこそ喧嘩しても仲直りする事ができる。大切なのは自分の気持ちを正直に伝えること、そして相手を思いやれる『心』が重要なんじゃないかな?」

 

兄妹とデジェルの言葉にクリスは唖然とする。兄妹はデジェルの言葉が難しかったのか「?」になっていた。父親はデジェルの言葉に少し感銘を受けた。

 

父親に連れられ兄妹と別れたクリスは気まずい雰囲気になる。数年前に死んだと思った『お兄ちゃん』が目の前に現れ、しかも自分の『標的』である黄金聖闘士だったのだ。今さら何を話したら良いのか分からなかった。

 

「クリス「くーーー」?今の音は?」

 

「////////////!!??」

 

沈黙を破ろうとクリスに話しかけようとするデジェルだがクリスの『お腹から』腹の虫が鳴いた。クリスは腹を抑え顔を真っ赤にする。

 

「クリス、取り敢えず、食事と寝る場所に行くか?」

 

「うん////////////」

 

コンビニでおにぎりや飲み物を買い、ビジネスホテルに泊まる二人。因みにお金はデジェル持ち。デジェルがどうやって金を稼いだかと言うと、ちょっと悪い人達が稼いだお金を失敬したから。ちょっと悪い人達はデジェルが警察に情報を与えた為に今刑務所に服役している。

 

ビジネスホテルの部屋で食事を終えた二人。

 

「こんな形だかまた会えて嬉しいよ、クリス」

 

「お兄ちゃ・・・デジェルにぃはいつからこっちに来てたの?」

 

さすがに『お兄ちゃん』は恥ずかしくなったのか『デジェルにぃ』と読んだ。デジェルはあまり気にした素振りを見せず。

 

「あの『天羽々斬』の少女が『絶唱』を使った日に君を見つけたんだ」

 

「(あのときにか)」

 

「だが、クリスがすぐに退却したから見失ってしまったがな」

 

「デジェルにぃは、シンフォギアの事は?」

 

「“蛇の道は蛇”、いくら情報規制をしても裏の情報網は誤魔化しきれないさ」

 

「・・・・・・にぃはあの日」

 

「あぁ、私もあの日に危うく死にかけていた」

 

突然起こった爆発。デジェルはクリスとクリスの両親を助けに向かおうとしたが崩れた建物の下敷きになり意識を失った。だが生きようとする『想い』に肯応して『水瓶座の黄金聖衣』が反応し聖衣を纏い、窮地を脱したのだ。だが気が付いた時にはクリスの両親や多くの人達はこと切れていてクリスの行方がわからなくなった。

 

「それからは宛もなく君を探していたんだ」

 

「お兄ちゃん・・・・・・」

 

クリスは嬉しかった。両親を失い、多くの人達の『死』を目の当たりにし、『フィーネ』にも捨てられ自分は『一人ぼっち』になったと思っていたのにあの『地獄』で自分を探してくれていた人がいた事に。

 

「でもどうして、もっと早く来てくれなかったんだよ!」

 

「私は確かめたかった。『特異災害二課』と『フィーネ』。どちらに『義』があるか」

 

「『フィーネ』や『アイツら』を?」

 

「クリスが協力している『フィーネ』が信頼に足る人物なのか、かつての盟友達が協力している『二課』が正しいのか。それを確かめる為にな」

 

「・・・・・・明日、あたしはまた『フィーネ』の所に行く。にぃも一緒に」

 

「あぁ勿論だ。もう君を『一人ぼっち』にはさせない」

 

ソッとクリスの頬に手を当てるデジェル。クリスは涙を流しながらその手の温もりを感じていた。その夜はベッドが二つあるにも関わらずデジェルとクリスは一つのベッドで一緒に寝た。その手は二度と離さないように握りあって。

 

 

 

 

所代わり風鳴邸の道場では、胴着姿の風鳴翼が精根尽き果てた様子で倒れていた。

 

「・・・・・・」ぷしゅ~

 

「今日の特訓はここまでだ」

 

「(いつの間にかリハビリが特訓になってるぞ)・・・あ・・・ありがとうございました・・・」

 

ボロボロの状態の翼が姿勢を正しくして全然余裕のエルシドに礼をする。因みにエルシドも胴着姿。

 

「所で翼。『剣に感情等必要ない』とほざいたそうだな」

 

「(ギクッ!何でその事を?!)」

 

実はそれを聞いていた緒川がこっそりエルシドに報告していたのだ。

 

「・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「・・・・・・」ビクビクビクビクビクビク

 

「・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「(この沈黙が辛い!)」ガタガタガタガタガタガタ

 

「・・・・・翼」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「は、はい!!」(ビクンッ!)

 

「一つ、お前に伝えておく」

 

「・・・・・・」

 

「『仁の心無き剣は只の鉄屑と同然』」

 

「仁の心・・・」

 

「いかに鋭き剣も破壊力に優れた槍も使い手に心がない武器はゴロツキやチンピラが振り回す暴力と大差ない。俺もまた、己を『聖剣』と鍛えている身、『仁の心をもって己を研ぐ先にあるもの』。それが『聖剣』だ。お前の目指す『防人の剣』も又、『力なき人々』を守りたいと願う『心』がなければ到達出来ないものだ・・・・・だがお前は更に何かを探しているようだな?」

 

「?!・・・・・・エルシド、お前は『戦いの先』にあるものを考えたことがあるか?」

 

「奏の言葉か?」

 

「あぁ。私は今更『人』に戻って、何をすれば良いのかわからないんだ」

 

「・・・・・・俺の『戦いの先』にあるのは、『更なる戦い』だ」

 

「?!」

 

「ここが何処であろうと。この世界にアテナがいなかろうと。俺は聖闘士だ。地上の平和を守るためにこの身とこの命を捧げる覚悟はできている。聖衣が『死装束』になることもな」

 

「(そうか、エルシドと私とでは最初から『覚悟』に大差があったのだな)」

 

エルシドの言葉に翼は理解した。エルシドは『人』に戻る積もりはない。地上の平和を守るための『聖剣』として生きて行く確固たる『覚悟』を持っている。『人』に戻るか戻らないかと迷っている自分とは格が違う事に。

 

「だが、それはあくまで俺の『生き方』だ。翼、お前にはお前なりの『生き方』がある筈だ」

 

「私なりの『生き方』・・・」

 

「例えこの先お前が『間違った生き方』を選んでも、俺がお前を殴ってでも止めてやる。それだけは覚えておけ」

 

「・・・あぁ(ありがとうエルシド)」

 

自分がどんな『生き方』を選んでも間違った時に叱ってくれる。そんな『相棒』がいる事に翼は感謝した。

 

 

 

 

ー二課 櫻井了子の研究室ー

 

了子はこれまでのシンフォギアや奏者の事を分析していた。だが自分の理論を覆す存在、それが響だった。響は心臓に食い込んだ『ガングニールの破片』が完全に人体と融合した始めての人間。奏と翼やオーディエンスの力で一応起動させた『ネフシュタンの鎧』と同等の力を持つ『デュランダル』をただ一人の力で簡単に起動させた。これは異常な事だ。

 

響の写真で埋め尽くされた研究室に『隠していた』アタッシュケースから『あるもの』を取り出す。

 

「お前ももうすぐ懐かしい彼等に会わせてあげる」

 

愛おしそうに『ソレ』を撫でる了子の顔は妖しい微笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

翌日の学校、響は相変わらず未来と話ができず、ついには弓美や創世や詩織にまで心配されていた。屋上に上がった未来を追った響。未来に『隠し事』をしていた事を謝る響だが、未来は。

 

「これ以上、私は響の友達じゃいられない。ゴメン」

 

涙を流し響から離れる未来。屋上から出た未来の目の前に一人の少年が現れた。

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・あ、貴方は」

 

その少年は響と一緒に戦っている少年 レグルスだ。未来は思わず身構えるがレグルスは未来に構うこと無く屋上に向かう。未来とすれ違い背中越しからレグルスは言う。

 

「響は言ってたよ。君の事『最高の親友』だって、そしてその『親友』に『嘘をついてた』事を響はずっとつらそうにしていたよ」

 

それだけ言うと、レグルスは屋上に向かった。

 

「・・・・・・響」

 

未来の心にレグルスの言葉が泣きそうな響の顔が浮かんだ。

 

レグルスが屋上にいる響に近づくと響は泣いた。『心からの親友』に言われた『決別の言葉』が響の心に突き刺さった。レグルスはソッと響の頭に手をおき、響を抱き締める。

 

「どうして・・・こんな・・・嫌だ・・・嫌だよ・・・うっ・・・うぅっ・・・」

 

レグルスの胸を借りて嗚咽を漏らす響の声が青空に染みる。

 

 

 

 

その日の夕方、フィーネのアジトで英語で誰かと連絡を取っているフィーネ、しかもまた全裸。それは『ノイズを生み出す杖 ソロモンの杖』を米国政府に譲渡するか話をした。突然部屋の扉が開き目を向けるとクリスがいた。

 

「あたしが“用済み”って何だよ?!もう要らないってことかよ?!あんたもあたしを“モノ”の様に扱うのかよ?!」

 

「・・・・・・」

 

フィーネはそんなクリスを冷たい目でみる。

 

「頭ん中ぐちゃぐちゃだ!何が正しくて、何が間違ってるのか分かんねぇんだよ!!」

 

フィーネは電話を切る。

 

「どうして誰も、私の思い通りに動いてくれないのかしら?」

 

振り向くと同時に『ソロモンの杖』を構えノイズを射出するフィーネ。

 

「!?」

 

これがフィーネの答えと理解したクリスの瞳が涙で濡れる。

 

「流石に潮時かしら?そうね、貴女のやり方じゃ争いを無くすことなんて出来やしないわ。精々一つ潰して新たな火種を二つ三つばら蒔く位かしら?」

 

「あんたが言ったんじゃないか!?『痛み』も『ギア』もあんたがあたしにくれたも」

 

 

クリスの言葉をフィーネが遮り。

 

「私の与えたシンフォギアを纏いながらも毛ほどの役にも立たないなんて、そろそろ幕を引きましょうか」

 

フィーネの右手が光り青い粒子がフィーネの身体を覆い形をなす。

 

「私もこの鎧も不滅、未来は無限に続いて行くのよ」

 

クリスが使っていた『白銀』ではなく『金色』となった『ネフシュタンの鎧』をフィーネが纏う。

 

「『カ・ディンギル』は完成しているも同然、もう貴女の力に固執する理由は無いわ」

 

「『カ・ディンギル』?そいつは・・・」

 

「貴女は知りすぎてしまったわ」

 

「はっ?!」

 

そう言って『ソロモンの杖』をクリスに向けるフィーネ。それに答えるようにノイズがクリスを襲おうとするが。

 

「ん?成る程、貴女には彼が付いていたのね」

 

迂闊と呟くフィーネ。クリスは周りのノイズを見るとノイズ達は『氷結』し砕けた。

 

「『グランカリツオー』・・・」

 

呟くクリスの前に黄金の背中が現れた。クリスの瞳に光が灯る。

 

「・・・・・・」

 

「お兄、デジェルにぃ!」

 

外で待機していたデジェルが異変を察知して駆けつけたのだ。

 

「クリス、此処は引くぞ」

 

「にぃ、でも」

 

「言うことを聞いてくれ、クリス」

 

「・・・分かった」

 

デジェルはクリスを抱き抱え撤退しようとする。フィーネはその背中を見て嘲る。

 

「フッ逃げるか?『最強の黄金聖闘士』が情けない」

 

「そう言う台詞はそこから動いてから言え」

 

「何?・・・ッ?!」

 

フィーネの身体は『ソロモンの杖』を含んでみるみる氷漬けになっていた。

 

「私に感付かれるよりも早く、私の身体を凍てつかせるとはね、今の言葉は撤回するわ。流石は黄金聖闘士よ」

 

嘲りではなく素直な賞賛をデジェルに送るフィーネ。だがデジェルは絶対零度の『敵意』でフィーネを睨む。

 

「いい気になるなよ、フィーネ。クリスの想いを利用し弄び、なぶりモノにし、踏みにじった事。必ず報いを受けさせる」

 

その目には絶対零度の奥に『怒りの炎』が宿っていた。

 

「その時を楽しみにしているわ。水瓶座<アクエリアス>」

 

歪んだ笑みを浮かべたフィーネは腕の氷を破り『ソロモンの杖』からノイズを射出するが射出されたノイズは瞬間氷結し砕けていった。だがフィーネは更にノイズを生み出してきたのでデジェルとクリスはアジトを脱出した。

 

「ちきしょう・・・・・・ちきしょーーーーー!!!」

 

デジェルの腕の中で涙を浮かべたクリスの叫びが夕闇の世界に響いた。

 

 

 

 

その日は雨が降り注ぎ、未来は傘を差し登校していた。

 

「・・・・・・・・・」

 

響との『決別』以来彼女の心もこの雨と同じになっていた。

 

「・・・・・・あっ!」

 

「ん・・・」

 

顔をうつむかせた未来は誰かにぶつかった。

 

「ご、ごめんなさい。あ」

 

「おや君は、小日向未来か?」

 

顔を上げた未来の目の前に金糸の髪の青年がいた。

 

「アスミタさん・・・」

 

『お好み焼き店 フラワー』で居候している盲目の僧『アスミタ』だった。

 

「アスミタさん、その」

 

「小日向未来」

 

「は、はい」

 

響と仲直りを進めてくれた人にその響と『決別』した事を告げるか迷う未来。

 

「君は何故、『泣いている』?」

 

「えっ?」

 

「何故君の心は『泣いている』のだ?」

 

「・・・・・・アスミタさん、私・・・」

 

バシャン!

 

「ん?」

 

「?」

 

路地裏で二人の人物を見付ける二人。

 

「クリス、しっかりするんだ、クリス」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

「(一晩中ノイズと戦いながらの逃走による肉体的疲労とフィーネに裏切られた精神的ショックが重なったか、どこか休める場所は)」

 

「あの」

 

「?!・・・君は確か『ガングニールの少女』と一緒にいた「これは懐かしき者と出会ったな」?!お前は?!」

 

フィーネから逃走したクリスとデジェルの前に未来と未来は知らないがデジェルにとって懐かしき者と再会を果たした。

 

「ひさしいな、デジェルよ」

 

「お前も来ていたのか、アスミタ」

 

再会を果たした『水瓶座』と『魔弓』の戦姫は『日だまり』の乙女と『乙女座』に出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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