聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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今回、響の父が・・・・。


狂いし父と狂人の雷鳴

ーレグルスsideー

 

「あいたたたた・・・・。みんな大丈夫? なんか天地がひっくり返ったようだな」

 

「レグルス。実際ひっくり返っているぞ」

 

『深淵の竜宮』から本部に“転移された”レグルス達は、そのまま『レイアの妹』によって本部は破壊され、指令部のみが脱出し、その衝撃でレグルスは逆さまの状態で壁に寄りかかるように倒れていた。

 

「ああデジェル、そっちは大丈夫?」

 

「何とかな。大丈夫かいクリス?」

 

「う、うん・・・・/////」

 

レグルスの隣にいたデジェルは、弱冠顔を赤らめたクリスを抱き締めるように抱えて、壁に寄りかかっていた。

 

「他のみんなは? カルディアと調は?」

 

「こっちも大丈夫・・・・」

 

「おい調。早く俺の腹から退け」

 

横に倒れるカルディアの腹部に、調が腰を落としていた。どうやらデジェルのように抱き締められず、受け止める形になったらしい。

 

「マニゴルドと切歌は?」

 

「おうこっちも大丈夫だ。丁度良いクッションがあったからなぁ」

 

「何でアタシ、こういう扱いなんデスかっ!?」

 

レグルスが声のする方に目を向けると、尻餅をついているマニゴルトの尻の下では、うつ伏せに倒れている切歌がおり、その腰にマニゴルトが尻を乗せている状態だった。

 

「ウンウン切歌。身を呈して俺の座布団になるとは見上げた心意気だぜ」

 

「何が心意気デスかっ!? 早く退くデス!!」

 

「あん? そんな事を言うと、こうしてやるぞ?」

 

マニゴルドがニンマリと笑みを浮かべると、切歌な太腿の辺りを、ギュムッとつねった。

 

「はぅんッ!♥・・・・って、それで誤魔化されないデスよ!」

 

「んじゃこっちか?」

 

「あふぅぅんんっ!!♥♥・・・・だ、だからやめるデェス!!」

 

今度はお尻をつねり上げたると、切歌はさらに嬌声をあげる。

 

「マニゴルド。それじゃお仕置きじゃなくてご褒美になっちゃうよ」

 

「そうだな。バカはここまでにして、エルフナインはどうだデジェル?」

 

切歌とバカやってるマニゴルドに、調が静かにツッコムと、切歌の腰から立ち上がったマニゴルドは、エルフナインの方を見る。

エルフナインは剥がれた天井の一部から、友里を身を挺して庇い、彼女に覆い被さって代わりに天井の一部を身体に受けてしまったのだ。

 

「うっく・・・・エルフナインちゃん!?」

 

「だ、大丈夫です・・・・僕は・・・・誰に操られた訳でもなく・・・・」

 

エルフナインはそれだけを言い、デジェルがエルフナインの容態を診る。

 

「外傷はほとんど無し。どうやら、何かがエルフナインの身体を守ったようだ」

 

「“何か”って、まさかーーーー」

 

レグルスが起き上がり、エルフナインに近づこうとすると、レグルスの身体を光が包み込んで、レグルスが指令部から消えたーーーー。

 

「レグルスくんっ!?」

 

『っ!?』

 

弦十郎が叫ぶと同時に、全員がレグルスに目を向ける。

が、デジェル、マニゴルド、カルディアは、冷静だった。

 

「アスミタか?」

 

「のようだな」

 

「一体何の用でレグルスを連れていったのか?」

 

 

 

 

ーアスプロスsideー

 

日が登って間もない時間帯、アスプロスはとある路地裏で“ある人物”に、話しかけた。

 

「今日はお嬢さんとお会いになるそうですね?」

 

「ーーーーーーーー」

 

アスプロスが紳士的な笑みを浮かべ話すと、その人物はコクコクと頷く。

 

「もしも、またお嬢さんとの話し合いを邪魔する輩が現れたら、これを使用してください」

 

「???」

 

その人物はアスプロスが 、“『深淵の竜宮』で見つけた代物”を渡した。

 

「それを使えば、貴方はすべてを取り戻せます。保証しますよ」

 

アスプロスは一瞬、その人物を“指差す”。

 

「・・・・・・・・っっ!」

 

その瞬間、その人物は、ぼぅっとなるが、すぐに正気に戻った。

 

「では、ご成功を祈ってますよ。・・・・立花さん」

 

「は、はい・・・・(これを使えば、元通りに、なる)」

 

 

 

 

ー響sideー

 

昼時。

響は、せめてもう1度、前回訪れたレストランに来ており、父親の洸と会っていたが、また響が奢る形で父親・洸と食事をしていた。

 

「悪いな、腹減ってたんだ」

 

「・・・・・・うん」

 

響はまた娘にタカる父親の醜態に沈んだ気持ちで応対した。

 

 

ーレグルスsideー

 

一方。響が父親・洸と会う事を心配した未来がアスミタに頼み。指令部から転移されたレグルスがTシャツとジーパンを着用し、帽子とサングラスで変装した格好で、響達から少し離れた席で様子を見つめていた。

また娘にご飯を奢らせている洸を見て、目を細めた。

 

「(未来が心配してるから一応来ては見たけど・・・・)」

 

レグルスは洸の胸ぐらを握り上げたい気持ちになるが、グッとこらえ、鍛えた聴覚で二人の会話に耳を傾ける。

響は一瞬、スマホの画面を見ると、そこには未来から送られて来たメッセージが表示されていた。

 

《へいき、へっちゃら》

 

という文字が書かれており、ほんの少しだけそれを見つめると、彼女は意を決した表情を浮かべて洸に話しかける。

 

「あのね、お父さん」

 

「どうした?」

 

「本当に、お母さんとやり直すつもり?」

 

「ホントだとも!」

 

その響の問いに洸は頷いて答える。

 

「お前が口添えしてくれたらお母さんも・・・・・・」

 

「だったら! 始めの一歩は、お父さんが踏み出して? 逃げ出したのはお父さんなんだよ? 帰って来るのも、お父さんからじゃないと・・・・・・」

 

響の言うことは正論たった。

逃げたのは自分なのだから、帰って来るのも先ずは自分からでなくては筋が通らない。

 

「それは、嫌だなぁ・・・・」

 

しかし、洸は暗い表情を浮かべながら答える。

 

「何より俺にも、“男のプライド”がある」

 

その瞬間、レグルスは眉を寄せ、唇を噛み締める。

娘に食事を奢って貰い、家庭をメチャクチャにし、家族を見捨てて自分だけ逃げ出した卑怯者が、“男のプライド”をほざく事に、怒りを覚える。

レグルスは沸き上がる怒りを抑えてきつく拳を握り、爪が掌の肉に食い込み、血が滴り落ちる。

 

「私、もう1度やり直したくて勇気を出して会いに来たんだよ?! だからお父さんも、勇気を出してよ!!」

 

「響・・・・だけど、やっぱり俺1人では・・・・」

 

響は自分は勇気を出して洸に会いに来た。だから洸も勇気を出して家族と向き合うべきだと訴えた。

が、それでもやはり洸は臆病風に吹かれているのか、勇気を出すことが出来ないでいた。

 

「1度壊れた家族は、元に戻らない」 

 

「っ・・・・あっ・・・・」

 

そんな彼に、響は残念そうな顔を浮かべ、洸はそんな響に何か言おうとするのだが、言葉が見つからず、黙ったままになってしまう。

その時、ふと外の方に洸が顔を向けると、そこには一組の親子がいて、男の子の手には風船が握っていた。

しかし、そこで男の子がつまずいて転んでしまい、手に持っていた風船が男の子の手から離れて空へと飛んでいってしまう。洸は思わずその風船を目で追った。

 

ーーーーその瞬間。

 

空に浮かんでいた風船の先の空が、突然ヒビが入り、空間が割れたのだ。

 

「っ・・・・なっ、なんなんだ!?」

 

「空が、割れる・・・・!?」

 

空が割れるという現象を目撃し、驚きの声をあげる洸と響。

レグルスもその光景を見て、割れた空を睨んだ。

 

「あれが、『チフォージュ・シャトー』っ!?」 

 

しかし、そこから現れたのは、巨大な城、『チフォージュ・シャトー』である。

 

 

ーキャロルsideー

 

『チフォージュ・シャトー内部』。

そこではキャロルとアスプロス。そしてオートスコアラーが二人の側で控え、アスプロスが小さく何かを呟きながら、装置を起動させていた。

 

「ワールドデストラクター、セットアップ完了。 シャトーの全機能オートモードに固定する」

 

アスプロスはすでに『チフォージュ・シャトー』を掌握しており、最終調整を始めていた。

 

「いや~、これが『チフォージュ・シャトー』ですか? まさかこれほどの物があったとは、まさに驚きの極致!!」

 

と、そこでアスプロス達がいる広間に、左腕を異形の怪物、『ネフェリム』の細胞を移植し、肌も灰色になった皺まみれの顔と禿頭のドクターウェルが、下卑た笑みを浮かべて、慇懃無礼な態度でキャロルとアスプロスのいる中心部に近寄る。

 

「「「「・・・・・・・・」」」」

 

レイアとファラはウェルを冷めた目で見据え、ガリィは汚物を見るようにゲンナリとして顔をし、ミカは興味なしの態度であった。

オートスコアラー達と同じ思いだが、キャロルは淡々と声を発する。

 

「オートスコアラーによって、呪われた旋律は全て揃った。 これで世界はバラバラに噛み砕かれる・・・・!」

 

「あん?」

 

そんなキャロルの言葉を聞き、ウェルは顔をキャロルの方に向ける。

 

「世界を、噛み砕く?」

 

「・・・・父親に託された“命題”だ」

 

【生きて、もっと世界を知るんだ・・・・】

 

ウェルにそう答えるとキャロルは目を瞑り、亡き父親の言葉を思い出し、目からは光が無くなっていた。

 

「わかってるって!! だから世界をバラバラにするの!! 解剖して分解すれば万象の全てを理解できるわ!!!」

 

「・・・・・・・・」

 

突然、狂ったように、何時もと違う雰囲気でそう語り出すキャロル。

アスプロスは操作を一度止めて、キャロルを後ろから抱き締めるように包む。

だが、ウェルはそのことにまるで気にも止めず、ニヤリと笑みを浮かべ、キャロルに尋ねる。

 

「つまりは至高の英知!! ならばレディ? その知を以て何を求める?」

 

「何もしない」

 

「あぁ??」

 

その問いかけの答えに対し怪訝な表情となるウェル。

 

「父親に託された命題は『世界を解き明かす事』。それ以上も以下もない」

 

「Oh・・・・! レディーに『夢』はないのか? “託されたもの『なんか』”で満足してたら、底もてっぺんもたかが知れる!!」

 

「っ・・・・!」

 

そんなウェルの言葉を聞いた瞬間、キャロルの中でナニかが弾け、彼女はウェルを睨み付ける。

 

「『なんか』・・・・と言ったか?」

 

「あっ?・・・・ひっ!!」

 

キャロルに目を向けたウェルは小さく悲鳴を漏らした、何故ならば、キャロルの身体から、どす黒いオーラが立ち込めていたからだ。

 

 

ー響sideー

 

場所は響達のいるレストランへと戻り。

 

「響っ!」

 

「あれ、レグルスくん!? な、なんでここに・・・・?」

 

緊急事態故に、レグルスは変装を解いて響の元へと駆け寄り、響は父親と話がついたら仲直りしようと思っていたレグルスの登場に驚く。

 

「アスミタに連れてこられたんだ。未来がさ、響が心配だからって、響の様子をこっそり見守って欲しいって頼まれたんだ・・・・」

 

「(未来・・・・わざわざレグルスくんを送るなんて・・・・)」

 

おそらく、父親と話を終えたらその足でレグルスとも仲直りさせようと考えて、レグルスを送ったと思った。

 

「兎に角、響。外に出るよ!」

 

「う、うん!」

 

響はレグルスと共に外に出ていった。

それを見て、洸は愕然と響の背中を見つめる。

 

「何で・・・・何であのクソ餓鬼が・・・・! やっぱりそうなんだな・・・・! あ、あの餓鬼が! 響をタブらかして・・・・!!」

 

その時、洸の目が、血のように真っ赤に染まり、髪と瞳が淡く光った。

 

 

 

 

「あおい、こちらレグルス」

 

《レグルスくん? 響ちゃんと一緒にいるの!?》

 

レストランを出たレグルスと響の通信端末に、友里からの通信が入った。

通信回路に異常がないことを友里は弦十郎に報告して、弦十郎は現在の状況をレグルスと響に説明する。

 

《レグルスくんがそこにいるのは今は置いておく。手短に伝えるぞ。周到に仕組まれていたキャロルの計画が最後の段階に入ったようだ》

 

「えっ!?」

 

「・・・・」

 

《俺達は現在、東京に急行中。装者と聖闘士が揃い次第、迎撃に当たってもらう。それまでは・・・・》

 

 

「はい! レグルスくんと一緒に、避難誘導に当たり、被害の拡大を抑えます!」

 

響は弦十郎にそう言葉を返し、洸にも避難誘導を頼もうとするのだが・・・・。

 

「お父さん! みんなの避難を・・・・!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「お父さん・・・・?」

 

父・洸は、無言のまま顔をうつむかせていた。

 

「お父さん? どうしたの?」

 

「・・・・・・・・何で、ソイツが、いる?」

 

酷く低く、そして沸き上がる感情を押し殺すような声を上げる洸。

 

「・・・・お父さん?」

 

「響!」

 

「えっ?」

 

洸に近づこうとする響の肩をレグルスが掴んで止めた。

 

「響に触るなっっっ!!!!!!」

 

ブゥオアアアアアアアアアア・・・・!!

 

その瞬間。腹の底から感情を爆発させたように大声を上げた洸の身体から、どす黒いオーラ、イヤ、小宇宙<コスモ>が吹き出した。

 

「これは・・・・小宇宙<コスモ>っ!」

 

「っ!? お父さん・・・・っ!」

 

響は洸に向かって叫ぶが、洸のその瞳は、充血したかのように、イヤ、まるで血液が眼球を染め上げたかのように赤黒く染まり、憎悪と憤怒と怨嗟に満ちた眼差しをレグルスに向けていた。

 

「お前が! お前さえいなければ!! 全て元通りになるんだーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」

 

洸は懐から、『メダリオン』を取りだし、その『メダリオン』が光輝くと、洸のその身に血に汚れたような鎧が、その手にはジャマダハムが握られていた。

 

「あの鎧はまさか・・・・!」

 

「レグルスくん・・・・なんなのあれ?・・・・お父さんは、どうしちゃったの?」

 

響は、父の姿に愕然となりながらも、声を発し、レグルスも驚愕したように唇を開く。

 

「響の父さんが・・・・『戦いの神 アーレス』の闘士、『狂戦士<バーサーカー>』になった?!」

 

『戦神アーレス』の闘士、戦いに生きる狂戦士<バーサーカー>となった洸は、レグルスにその憎悪に満ちた眼差しを向けた。

 

 

 

ーアスプロスsideー

 

その頃シャトー内部では、キャロルの身体から発せられる莫大な小宇宙<コスモ>に、ウェルは怯んだ。

 

「父親から託されたものを、『なんか』と、お前は切って捨てたか!?」

 

キャロルはウェルの言葉に怒り、彼を睨み付ける。ウェルは目の前の小娘に臆してたまるかと、醜悪な顔をさらに汚く歪めて、キャロルを嘲笑するかのように吠える。

 

「冒したともさ! ハァンッ!! レディがそんなこんなでは、その命題とやらも解き明かせるのか疑わしいものだ!!」

 

「・・・・なに!?」

 

ウェルからの返答にキャロルはさらに不快な顔を浮かべ、小宇宙<コスモ>を上げるのだが、ウェルは内心怯えながらもと言葉を続ける。

 

「至高の英知を手にする等、天工を破れるのは英雄だけぇ!! 英雄の器が小学生サイズのレディには、荷が勝ちすぎる!! やはり世界に英雄は僕1人ぼっちぃ! 複数と並ぶものはなぁあああああいっ!!」

 

ウェルは興奮気味にそう叫び、キャロルの後ろの方へと走る。

 

「やはり僕だ!! 僕が、英雄となって!!」

 

「・・・・どうするつもりだ?」

 

「無論人類の為!! 善悪を超越した僕が、『チフォージュ・シャトー』を制御しグゲェェっ?!!」

 

散々人の命を弄び、命を奪うことに愉悦としてきた存在が、人類の為といけしゃあしゃあとほざき、ウェルが言いかけたその時、奇妙な事が起きた。

ウェルの『ネフェリムの細胞を移植した左腕』が、ウェルの首を掴んで、ウェルの首を握り潰そうとしていたのだ。

 

「な、なんれ<で>ぇぇ、僕の、腕がぁ・・・・!」

 

ウェルは目を見開き、戸惑いがちに、自分の腕を止めようと動かそうとするが、腕はウェルの意思に反して力を込めた。

 

「支離にして滅裂・・・・! 貴様のような左巻きが、英雄になれるものか・・・・!!」

 

そう言ったキャロルは、膝立ちになり首を握って悶えるウェルに、『ダウルダブラ』を取りだし、鋭利な突起を突き刺そうとする・・・・。

 

「止めろキャロル。君の楽器をこんな下劣な男に使ってはいけない・・・・」

 

ソッとアスプロスがキャロルの肩に手を置き、小宇宙<コスモ>をキャロルに流し込む。

 

「・・・・アスプロス」

 

「・・・・オートスコアラー」

 

「「「「!!」」」」

 

キャロルから離れたアスプロスが呼ぶと、『エレメントローブ』を纏ったガリィ、ファラ、レイア、ミカが、キャロルの囲うように四方に立つと、それぞれのメインカラーのオーラを纏い、キャロルから溢れる小宇宙<コスモ>を抑えた。

アスプロスはそれを見ると、ついに仰向けに倒れ、息が出来なくなってきたのか、顔色が紫色へと変色し、口の端から泡を吐くウェルを見下ろす。

 

「『ヤントラ・サルヴェスパ』の代用品として生かしておいたが、まさに自ら首を締めたな、ドクターウェル?」

 

「うっ、あっ・・・・! え、おぉ・・・・!」

 

アスプロスがそう言うと、ウェルは助けてくれ、と懇願するように、アスプロスに向けて右手を伸ばす。

 

「世界の腑分けは、俺達が執刀しよう・・・・。お前はもう、用済みだ」

 

「き、きゃお<かお>、は、やめ、へ<て>・・・・!!」

 

ウェルが無様に言うと、アスプロスは不意に、片眉をピクリと動かした。

 

「ほぉ、どうやら余興が始まったか。これを見ろ、ウェル」

 

アスプロスがウェルの目の前に空中ディスプレイを見せるとそこには、レグルスと響が映し出された。

 

「っっっ!!!!?」

 

レグルスの顔を見た瞬間、ウェルの脳裏、『忌々しい記憶』が何度も何度も再生された。

 

自分と言う英雄を『任務の邪魔程度』にしか見ていない山羊座<カプリコーン>。

自分と言う英雄の『生科学者としての矜持』を踏みにじった水瓶座<アクエリアス>。

自分と言う英雄を『ただの小悪党風情』と蔑んだ蟹座<キャンサー>。

自分と言う英雄に『何度も恥辱』を与えた蠍座<スコーピオン>。

自分と言う英雄を『薄汚いコソ泥』と見下す魚座<ピスケス>。

自分と言う英雄の『存在意義を否定』した『神に近い』等とホラを吹く乙女座<ヴァルゴ>。

そして、自分と言う英雄が進む筈だった『覇道』に一番最初に『汚辱』を与えた怪物、獅子座<レオ>。

 

「あ、ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!」

 

ウェルはレグルスの姿を捉えると、狂ったようにお叫びを上げて、ジタバタと身体を動かし、口からは涎を漏れ出て撒き散らさした。

それを見てアスプロスは、小さく口角を上げると、ウェルの頭を指差すと、ウェルの左腕は、ウェルの首から手を離した。

しかしウェルはそんな事を気にせず、憎悪に満ち満ちた瞳を大きく見開き、真っ赤な血の色に染めると、歯をギチギチ噛みしめる。

 

「見つけた、見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけたっ!! あの化け物だっ! アイツの、アイツのアイツのアイツのアイツのアイツのせいでっ!! この僕がぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!」

 

ウェルは懐から、『金色の結晶』を取りだし、床に叩きつけると、ソコから錬成陣が現れ、『ソコから現れた鎧』を纏いながら手すりの部分に走り、手すりを飛び越えていった。

 

「廃棄予定がいささか早まったな。それにしても、『託された信頼』も、『希望』も、『夢』も、『想い』も、『志』もなく。

『望まれる役割』も、『果たすべき役目』もなく。

ただ『自らの妄執』と『聖闘士への復讐』しか持っていないとは、憐れなヤツだ・・・・」

 

アスプロスは落ちていくウェルを憐憫な目で見下ろして呟く。

その時、小宇宙<コスモ>の吹き出しが収まったキャロルが、胸を押さえて苦しみ出す。

 

「うっぐ・・・・!」

 

「「「「マスター・・・・」」」」

 

オートスコアラーが、倒れそうになるキャロルを支える。

 

「くっ、立ち止まれるものか! 計画の、障害は、例外なく、排除するのだ・・・・!」

 

「まぁ少し待てキャロル。これから面白い『見世物』が見れるぞ?」

 

アスプロスが、パチンッ、と指を鳴らすと、大きめの空中ディスプレイが表示され、レグルス達の様子が映し出された。

 

 

 

ーレグルスsideー

 

ドゴォォォォォォォォォォォンンッ!!

 

「っ!?」

 

「何だ!?」

 

突然自分達の後ろから落ちてきた者に、レグルスと響が目を向けると、『金色の鎧』を纏ったウェルが狂った笑みを浮かべていた。

 

「ドクターウェルっ!?」

 

「えっ? ウェル博士!?」

 

レグルスがそう言って、響も驚愕したようにウェルを見る。

肌の色は灰色で、顔は皺まみれ、頭は禿ており、記憶にあるウェルよりも倍の年齢に見えるが、その顔にへばり付いた醜悪な顔だけが、唯一記憶と合致した。

 

「見ろ見ろ見ろ見ろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 刮目しろ化け物ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!! これが! 真の英雄であるこの僕が造り出した『究極の鎧』ぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!! 『雷の自然闘衣<エレメントローブ>』だぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!」 

 

叫んだウェルに呼応するように、『雷の自然闘衣<エレメントローブ>』から、稲妻が迸った。




青銅聖闘士は『ドックタグ』。
白銀聖闘士は『ブローチ』。
黄金聖闘士は『レリーフ』。
冥闘士は『勾玉』。
狂戦士の待機状態は、『白影 涅槃』様のご意見で、『メダリオン』にしました。

この先の展開は、オリジナルとなります。原作と違うから、執筆が遅れると思いますから、ご了承下さいm(__)m

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