聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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お待たせしました。



仕込まれた“毒”

ーミカsideー

 

『アナザーディメンション』で『チフォージュ・シャトー』に戻ったアスプロス達は、『自然界の武装<エレメントアームズ>』を制作した研究室へと到着した。

 

「ほほぅ~。ここで貴女方の鎧は造られたのですねぇ?」

 

髪の毛のほとんどが抜け落ち、頬は痩せこけ、顔は皺にまみれ、肌は左腕に移植した『ネフェリムの極一部の細胞』が少しずつ侵食された影響で、灰色となったジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスが、嫌らしい笑みを浮かべながら研究室を見渡した。

 

「しばらくはここで大人しく『自分専用の武装』を造ると良いだろう。ミカ、ドクターの護衛として残れ」

 

「了~解、ダゾ」

 

マスターであるキャロルと同等の命令権を持つアスプロスからの命令故に、『火の自然闘衣<エレメントローブ>』を纏ったミカは、嫌々ながらも了解を示した。

 

「おやおやぁ? 僕の事を信用できないのですかなぁ?」

 

「思い上がるなドクターウェル」

 

心外と言わんばかりに、わざとらしく肩を竦めるウェルに、キャロルが冷徹の目で睨んだ。

 

「お前はあくまで『ヤントラ・サルヴァスパの代用物』としてここに居られるのだ。自衛の為の装備を作らせてやろうと、この研究室に連れてきただけだ。余計な事を考えるな」

 

「これはこれは失礼いたしました。キャロル様」

 

慇懃無礼な態度をまるで崩さず、心にも無い謝意を述べるウェルに、キャロルは不快そうに眉をピクリと動かすが、アスプロスがその頭の上に手を置くと、大人しくなった。

 

「まぁ良いだろうキャロル。ドクターの好きにやらせておくと良い。しかし、まだ君は完全に信用された訳では無いのでね。だからミカを置いておけば、キャロル達も安心するので仕方のない措置なのだ」

 

「やれやれ、英雄であるこの僕を警戒するのは分かりますがね。まあ良いでしょう。真の英雄である僕の叡智を持ってすれば、新たな力を生み出し、世界が認めるラストアクションヒーローにふさわしい姿をお見せしましょう」

 

この英雄誇示の道化は、自分が目立って英雄として認知される事しか求めていない。

だが、だからこそアスプロスは、使えると判断したのだ。

 

「フフフフ、頑張りたまえドクター。しかし、また『道化』と呼ばれないように、気を付けるのだな?」

 

「(ピクッ!)・・・・・・・・違う、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない、僕は道化じゃない・・・・!!!」

 

アスプロスが言った『道化』と言う一言で、ウェルの瞳が大きく見開いて、呼吸が激しくなり、まるで自己暗示でもかけるように同じ言葉を何度も呟いた。

 

ーーーーーー『道化』。

 

その称号は、自らを『真の英雄』、『新時代のラストアクションヒーロー』と自己顕示し、自己崇拝するドクターウェルにとって、拭い去りたい『人生最大にして最悪最低な汚点であり心的外傷<トラウマ>』であった。

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

アスプロスとキャロルは、ブツブツと呟くウェルを無視して、『土の自然闘衣<エレメントローブ>』を纏ったレイアを引き連れ、再び『アナザーディメンション』で移動した。

 

「ヒヒ、ヒヒヒヒヒ! そうだぁ、僕だけが、僕こそが真の英雄なんだぁ・・・・! アイツらさえ、あの金メッキの骨董品共さえ始末すれば、アイツらの屍の上に立った時こそ、無知で凡庸な愚民は知ることになる・・・・!この僕が、このドクターウェルこそが! この世界の真の英雄! 真のラストアクションヒーローだと言うことをなっ!!」

 

アスプロス達が居なくなると、ウェルは仰々しく叫び声を上げ、食い入るように研究室のシステムを起動させると、『自分専用の武装』と『もう1つの道具』の制作を始めた。

 

「・・・・・・・・」

 

今自分の後ろにいる、護衛というよりも、監視役であるミカの存在など完全に眼中に入れていないように。

 

 

 

ーレグルスsideー

 

ズゥゥンン・・・・!

 

異次元空間に閉じ込められていたS.O.N.G.本部は、再び『深淵の竜宮』前の海中に戻された。

 

「本部基地、通常空間に戻りましたっ!」

 

「『深淵の竜宮』と風鳴邸の戦闘状況を報告しろ!」

 

弦十郎が叫ぶと、友里と藤尭と言ったオペレーター陣が状況分析を始めた。

 

「『深淵の竜宮』では、デジェルさん、クリスちゃん、マニゴルド、カルディア、切歌ちゃん、調ちゃんの姿を確認! アルカ・ノイズと交戦中、間もなく掃討を完了します!」

 

「風鳴邸では、翼さん、マリアさんは戦闘続行不能状態になり、エルシドとアルバフィカがオートスコアラーと交戦中です!」

 

レグルスは、画面に映る戦闘状況を鋭く見据えていた。

 

 

ーエルシドVSファラsideー

 

「疾っ!!」

 

「はっ!」

 

エルシドが放つ刃の斬撃を、ファラは空気の膜で防ごうとした。

 

 

「なっ! くぅ!!」

 

何と空気の膜を斬り裂き、ファラは一瞬驚くが、すぐに回避すると、『風の自然闘衣<エレメントローブ>』の装甲をわずかにかすった。

 

「流石は黄金の英雄。空気の膜で防げるような“安い刃”ではありませんわね?」

 

「・・・・・・・・」

 

ファラの言葉に答えようとせず、エルシドは手刀を構えて鋭く見据える。

 

「敵と無駄な会話は取らない。ただ敵を斬り裂くのみ。貴方はまさに剣その物ですね?」

 

「ただ敵を斬るだけの剣など、そこらの鈍でもできる。我が手刀が斬り裂くのは、世に災いをもたらす者のみ」

 

「私達が災いをもたらすと考えておられるのですね。まあ間違ってはいないですが」

 

ファラは大剣を頭上に掲げると、大剣から竜巻が巻き上がる。

 

「むっ」

 

「風、いや、竜巻だとっ!?」

 

少し離れた位置にいる翼が、ファラの大剣から生まれた竜巻を見て驚く。

 

「気圧を操るだけではなく、風も自在に操る我が『風の自然闘衣<エレメントローブ>』の真骨頂を、御堪能あれ!!」

 

「っ!」

 

ファラが竜巻を纏った大剣を振り下ろすと、竜巻がエルシドに襲いかかってきた!

 

「疾ッ!!」

 

エルシドは手刀の斬撃で竜巻を斬ろうとするが、斬撃は竜巻に阻まれエルシドに襲いくる!

 

「ぬぅっ!!」

 

「エルシドっ!」

 

竜巻に呑み込まれたエルシドは空高く吹き飛ぶが、空中で体勢を捻り、体勢を整えると、スタッと、着地した。

 

「この『自然闘衣<エレメントローブ>』を纏った私達なら、貴方達黄金聖闘士でも、敵いませんよ?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

エルシドは再び手刀を構えて、ファラを鋭く見据える。

 

 

 

ーアルバフィカVSガリィsideー

 

「『ピラニアンローズ』!」

 

「ウフフフフフ~♪」

 

アルバフィカが投擲した黒薔薇が、ガリィに向かって真っ直ぐ飛ぶが・・・・。

 

ピキーーーーーン・・・・。

 

黒薔薇はガリィに当たる寸前、全ての黒薔薇が凍りつき、ひび割れ砕けた。

 

「・・・・・・・・」

 

「アルバフィカの黒薔薇までもっ?」

 

マリアも驚愕したような顔となる。

 

「このガリィちゃんの『水の自然闘衣<エレメントローブ>』は水分さえあればどんな物でも凍てつかせるのよぉ~。貴方の主武器の薔薇が毒を持とうが、鉄をも噛み砕く力を持とうが、所詮は植物。水分が含まれている以上、凍らせるなんて目じゃないのよっ!」

 

ガリィは両手の鮫の形をした手甲から、氷で形成されたノコギリとハンマーを作り出して、アルバフィカに向かって、氷のノコギリを振り下ろした!

 

「っっ!」

 

アルバフィカは黒薔薇を手に持って、ガリィのノコギリを防ぐがーーー。

 

「ヒアッ!!」

 

ドゴンッ!!

 

「ぐぅっ!!」

 

ノコギリを防いでがら空きとなった腹部に、氷のハンマーがめり込んだ!

 

「アルバフィカっ!!」

 

「くっ・・・・『ローリングローズ』!!」

 

「おっとぉ!!」

 

アルバフィカは黒薔薇<『ピラニアンローズ』>を自身の周囲に竜巻のように巻き上げる攻防一体の技を展開させた。が、寸前でガリィが後方に跳んで回避する。

 

「アララ~。黒薔薇の竜巻で防いだようだけど、このままじゃ凍りついちゃいますよ?」

 

「何を・・・・っ!」

 

竜巻が収まると、アルバフィカの腹部が氷が張ってきた。

 

「まさか・・・・、そのハンマーで、殴られた箇所は凍りついてしまうと言う事か・・・・?」

 

「ご明察! ちなみにこのノコギリで切り裂かれれば、切られた傷口は凍てついてしまい、凍傷してしまうって優れものよぉ~。この両手の鮫の手甲はノコギリザメとハンマーヘッドシャークをモチーフとしているのよぉ~」

 

ガリィは、はしゃいでいるように武器の説明をした。

 

「さて、そろそろ終わらせ、ん?」

 

凍りついた箇所をおさえるアルバフィカに向けて武器を構えるガリィは、ふと身体を止め、目を細めると、物足りないと言わんばかりに顔をしかめた。

 

「えぇ~、せっかく良い感じだったのに~。・・・・・・・・はいはい分かりましたよ」

 

ガリィは不承不承と承諾すると跳び跳ねて、風鳴邸の屋根の上に着地すると、自分の隣にファラも飛んできて合流した。

 

「ガリィちゃん、お遊び時間はここまでよ」

 

「今聞いたわよ」

 

ファラとガリィが合流すると、エルシドと翼も、アルバフィカとアルバフィカに駆け寄ったマリアと合流し、翼がオートスコアラー2体を鋭く睨む。

 

「逃げるつもりかっ!?」

 

しかし、翼の言葉にガリィとファラは余裕の笑みを浮かべる。

 

「“逃げる~”? 逃げるって言うのは、劣勢な立場の雑魚がする行為よ~? こ・れ・は、“見逃して、く・れ・る♪”って言った方が良いわよ~☆」

 

「くっ!」

 

あきらかに戦況はオートスコアラーが優位。この状況で彼女達が退散するのは、確かに“逃げる”よりも“見逃す”と言った方が正しい。

苦虫を噛んだ顔をする翼に、ファラがフッと笑みを浮かべた。

 

「いつかショボいなどと言ってごめんなさいね。剣ちゃんの歌、素晴らしかったわ、本当に」

 

「私の、歌・・・・」

 

「フフフフ、まったく素晴らしく呪われた旋律だったわ」

 

「っ! “呪われた旋律”。確か以前、キャロルも言っていた・・・・」

 

「答えてもらうわ!」

 

マリアはアガートラームの短剣を構えた。

 

「バ~カ! 答えると思って「構わないわ」ハァッ!? 言っちゃうの?」

 

「今さら知ったところでどうする事もできないでしょう?」

 

「・・・・まぁ、それもそうか♪」

 

オートスコアラー達はニヤリと笑みを浮かべて、声を発する。

 

 

 

 

 

ークリスsideー

 

その頃、クリス達はアルカ・ノイズを殲滅させると、“キャロル達が再び『深淵の竜宮』に現れた”と報告を受け、聖闘士達がダメージを負った装者を担いで、急いで追跡を始めた。

 

「どこまで行けば良いデスかっ!?」

 

「いい加減、追い付いても良いのに!」

 

「ちっ! この道で間違いないんだろうなっ!?」

 

クリスが通信機で本部に怒鳴るように聞いてきた。

 

 

ー弦十郎sideー

 

「ああ! だが向こうも、巧みに追跡をかわして進行している」

 

「まるで、こっちの位置や選択ルートを把握しているみたいだね」

 

『っっ!!?』

 

レグルスが言った一言で、エルフナインや弦十郎達ははっ! となった。

 

「まさか、本部へのハッキング・・・・?!」

 

「知らずに、“毒”を仕込まれていたのかっ!?」

 

 

ーアスプロスsideー

 

「敵本部は、知らずに仕込まれていた“毒”に、派手に驚愕しているでしょう」

 

「フッ。懐があまりにも隙だらけな組織が、『人類最後の砦』とは、滑稽の極みだ」

 

「そう言うなキャロル。所詮は平穏な世界で安穏と過ごす牙の抜けた者達に、そんな事を言っては気の毒だぞ?」

 

“目的の場所”に向かうアスプロス達は、今頃になってようやく、“毒の存在”に気づいたS.O.N.G.を嘲弄するように含み笑みを浮かべていた。

 

 

ー響sideー

 

事態が急転直下している頃、響は一時シジフォスとアスミタに退室して貰って、未来に連絡を取っていた。

 

「ゴメンね。こんな夜中に、色々考えていたら眠れなくなっちゃって・・・・」

 

《ううん、気にしないで》

 

「ありがとう。もう一度だけ、お父さんと話をしてみようって、決心がついた」

 

《うん》

 

「だけどね、本当はまだ少し怖い。どうなるのか不安でしょうがないよ・・・・」

 

《響、“へいき、へっちゃら”!》

 

「えっ?」

 

《響の口癖だよ?》

 

それは、響が口にしてきた言葉だった。

 

「あぁっ、ハハハ、いつから口癖になったか分からないけど、どんなに辛い事になっても何とかなりそうな“魔法の言葉”なんだ・・・・」

 

《ホント単純なんだから》

 

「前向きと言ってくれたまえよ」

 

「《フフフ、ハハハハハハハ!》」

 

未来と響は可笑しそうに笑いあった。

 

「可笑しいの・・・・!」

 

《元気出たね、“魔法の言葉”に感謝しないと》

 

「うん。お父さんの事に決着付いたら、今度はもう1人と決着付けないと!」

 

響の脳裏に、未だ微妙に険悪な雰囲気になってしまった男の子の背中が浮かんだ。

 

《ようやくレグルスくんと仲直りする気になったの? ずっと逃げてたのに》

 

「アハハハ、その件に関しても、本当に申し訳ありませんでした・・・・」

 

《ううん、響が誰かと喧嘩して、険悪になるだなんて、見たこと無かったからちょっと驚いちゃったけど。どうしてレグルスだけにあんな態度を取ったの?》

 

響と一番長く一緒にいた未来も、響があそこまで意地を張る姿を見たのは初めてだった。

 

「・・・・私ね、多分いや、きっと、レグルスくんに“嫉妬”してたんだと思う」

 

《“嫉妬”?》

 

「うん。レグルスくんはいっぱい持ってる、“最速で最短で、真っ直ぐに手を伸ばせる力”、“お父さんから貰ったいっぱいの愛情”、私が無くしたり、欲しくて頑張っているものを持ってるレグルスくんに、私“嫉妬”してたんだ・・・・。多分、『ルナアタック』の頃から・・・・」

 

《そうだったんだ》

 

「でも、もう大丈夫だよ。ちゃんとレグルスくんと向き合って、そして、謝るつもりだから・・・・!」

 

《うん。頑張って響》

 

「ありがとう」

 

響は頷くと、未来との電話を切った。

 

「響くん。もういいかな?」

 

「あっ、シジフォスさん。どうぞどうぞ!」

 

響が扉に向かってそう言うと、シジフォスがまた病室に入ってきた。

 

「レグルスと、何か合ったのかい?」

 

「あぁその、叔父さんであるシジフォスさんには、少し言い辛いのですが・・・・」

 

「・・・・もう夜遅い。また今度でも良いが」

 

「イエイエ! もうなんか目が冴えちゃって、眠れないんです」

 

「そうか・・・・良ければ教えてくれないだろうか。私がいない間の、レグルスの足跡を・・・・」

 

「はい! 喜んで!!」

 

響はすっかりシジフォスに懐いたようで、嬉々としてシジフォスと話を始めた。

 

 

 

ー未来sideー

 

響との電話を終えた未来は、スッと目を閉じると、心の中で呟く。

 

「(また響に厳しく当たったんですかアスミタさん?)」

 

《あの未熟者は周りが甘やかすからな。私辺りが厳しくしなければ、すぐに図にのる》

 

未来は現在、響の病室から出たアスミタが未来に交信してきたので、応答していた。

 

「(アスミタさんは、響に凄く厳しいですよね? どうしてですか?)」

 

《・・・・あの未熟者は、“自分の言葉を虚言にしようとしているからだ”》

 

「(響が、ですか?)」

 

響の言葉が虚言になろうとしていると言う言葉に、未来は首を傾げる。

 

《あの未熟者は、風鳴翼、雪音クリス、暁切歌、月読調、マリア・カデンツァヴナ・イヴ、そして小日向未来、君達に言った、【誰とだって手を繋ぎ、分かり合える事ができる】。とな》

 

「(はい)」

 

《だが、“自分の父親とは、手を繋げられない”とほざいたのだ。散々皆に偉そうに高説を述べておきながら、自分の父親とは手を繋げられない、分かり合えないとほざく、これを虚言と言わず何と言う?》

 

「(あ・・・・!)」

 

《あの愚か者は“贅沢者”なのだ。“恵まれているのにそれに気づいていない”のだ》

 

「(響が、“恵まれている”?)」

 

《過去に言われなき罪状を被せられ、迫害を受けたが、あの者には“母親と祖母”、そして君のような“友”もいた。そして今、“失った絆を取り戻せる立場にいながら”、それを拒もうとする》

 

「(失った絆を・・・・)」

 

《そうだ。我等はその“絆”を持っていなかった。もしくは奪われてしまった。なのに、あの者はそれを拒む。取り戻せると言うのが、どれほど尊いモノなのか知ろうとせず、自分の不幸ばかりに目が行き、悲嘆しているだけなのだ》

 

「(でも、響はお父さんと向き合おうとしていますよ)」

 

アスミタの言いたい事が何となく理解できるが、未来は響は父親と向き合おうとしている事を告げる。

 

《フン。ならば、そこで見定めて見よう。しかし、また逃げ出し、自らが世界の不幸を全て背負っていると言わんばかりの情けない姿を晒さば、今度こそ私は見限るつもりだ》

 

「(大丈夫です。響ならきっと。だから、アスミタさんも信じてください)」

 

《・・・・・・・・私はあの未熟者に過分な期待を寄せるつもりはないが、あの未熟者を信じる君を信じよう、小日向未来》

 

そこで、アスミタとの交信を終えた未来は、土星のように輪を作った月を見上げていた。




次回、クリスちゃんが大活躍。そして・・・・。

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