腕から指の先まで全体を覆っていた赤い熱が、今度は腕から指の先までを赤い光が…
さらには手のひらと、手の甲から数㎝ほど浮いて…光で作られた巨大な爪をもつ手が構築されていた。
「うぇっ!?こっ、これ…なんだ!?」
急な体の変化に慌てて取り乱そうとするが、目の前には思念集合体がいる…油断できない。
思念集合体は今しがた腕の回復を完了させたのか、再び刃物の腕を生やしていた。
「よかった…間に合って」
今まで右腕に自信の右手を添えていたファリニスが、その手を離してゆっくりとしゃがみこんだ、その動きは遅く、傷口が痛々しい。
「これ…ファリニスが?」
「…私に、とっては…あまり気の進まない手段でした…でも、セグレトさんの、気持ちが…あなたの力を呼び起こした……だから、私も、セグレトさんの力の発揮をお手伝いしました」
「そっか…これ、ファリニスと同じ光に見えるけど…なんか関係あるのか?」
「詳しくは…わかりません、セグレトさんのその力がどんなものなのか…ですが、かなり強力なワザに…なるはずです」
冷静に分析を試みるファリニスだが、あまり詳細なことまではわからず…
ただ、分かるのはそれが強力であること…それが相手に通用するレベルなのかは、見ただけではわからなかった。
「やってみるしか、ないか」
相手の戦闘体勢を待っていたかのように、思念集合体はセグレトがこちらを向いた瞬間に独特な動きでズズッと素早く、セグレトに接近する
「きます!」
グッと足に力をいれ…勢いよく踏み出し、接近してくる思念集合体に向かって
セグレトも思いきって走りながら接近していく。
これはセグレトがファリニスのすぐそばにいたために、彼女の身を案じて戦闘の場になる所をファリニスから離れさせようとした結果である。
「うおおおりゃあああっ!」
巨大な爪の構築された右腕を振りかぶり、思念集合体の体に狙いを定めて振りおろす!
<!>
素早く思念集合体は反応、先程回復の完了した万全な刃物の腕で受け止めようとする。
しかし、次の瞬間
刃物が、まるで柔らかい氷を砕くように…あっさりと砕けた。
<!!>
「へ…?」
「うそ…」
呆然と、セグレト達は赤く光る爪の威力にただ呆然としてしまう。
両手持ちの鉄パイプでやっと折れる刃物を、ソレは…いとも簡単に粉々にする。
<…>
思念集合体も、一度怯んだが…すぐに腕の回復に力を使っているようで、距離を多目にとる。
「させるかっ!」
距離をとったことで、セグレトが素早く反応して距離を縮めるためにダッシュで近づいていく…!
「…いけない!セグレトさんっ、後ろです!」
後ろからみていたファリニスは、後ろからセグレトに接近していく何かにすぐさま気がつき、大声をあげてセグレトに指示を出した。
「えっ…うわっ?!」
バシィッと、鞭を激しく打ち付けるような大きな音と痛みがセグレトの胴体を捉えた!
ファリニスの呼び掛けが早かったために、セグレトはすんでのところで右腕を出しガードに成功する!
「っつ…!」
飛んできたのは2~3mほどの長い触手だった。
ガードされた触手は、ふわりとセグレトの上を通って思念集合体との間に立ち塞がるようにふわふわと浮いて留まる。
良くみれば、その触手は思念集合体から出てるように見える…!
「行かせないつもりか…くそっ!」
触手の動きは素早く、セグレトに絶えず攻撃してくるために隙がなく突破ができない!
迂闊に近づけば触手の猛攻にやられてしまう、あと一歩の踏み出しを止められてしまった。
「このっ…っつ!」
右へ左へと動くその触手は捉えることもできない…
その時、セグレトの頬をなにかの黒くて丸く小さな何かが速いスピードで通りすぎる。
その直後、触手がズガンッという音ともに弾けて消えた!
「まだヤツの回復は終わってません!今なら、とどめをさせるはず…っ、今のうちに…!」
後ろを見ると、ファリニスが息を切らしながら腕を突きだしているのが見える。
なにかしらのサポートか…と、セグレトは納得してすぐさま思念集合体の元に切り込む!
(こいつで…)
回復している途中の思念集合体は、まだ動けない!
走るスピードをまったく緩ませずに、大きな歩幅と頭を低くした低姿勢で切り込んで、巨大な爪を大きく振りかぶった。
「どうだぁっ!!」
すばやく振り抜かれた右腕
宙を舞ったのは、思念集合体の上半身だった。
屈強そうな胴体からはなにも出ずに、ただゼラチンのような質感の上半身と下半身、2つに別れた。
その後、弾けて四散した。
思念集合体は、もう動かなくなった。