ホワイト・エンゲージ   作:リファ

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第8話

思念集合体とかいうのに襲われていたファリニスを、ギリギリのところでなんとか助け出せた…。

思念集合体の腕の刃物を鉄パイプで砕き折って、ヤツが悶えながら離れていく。

 

 

 

 

「ファリニス、大丈夫か?」

 

 

 

 

ヤツがどんな攻撃を、いつしてくるかわからない…俺は前方の思念集合体から警戒心を解かないままファリニスの傷を気遣った。

 

 

 

 

 

 

「…はい、私は…大丈夫です」

 

 

 

 

そう言ったファリニスだが、腹の部分に深めの傷が見える…くそっ、間に合いはしたけどもう少し早く助け出せてれば…!

 

 

 

 

 

「でも、セグレトさんは…逃げてください…!ここは私に任せて、早くっ…!」

 

 

 

 

 

よろよろと立ち上がるファリニス、誰が見たってとても任せられる状態には見えない

俺はファリニスを制するきもちで、イヤだと答えた。

 

 

 

 

「ファリニス…これ」

 

 

 

 

ポケットから取り出したものを、ファリニスに手渡す。

先程鞄から取り出した、ロケットだ。

 

 

 

 

 

「こんな大事なもの…俺に預けないで、自分で持っておきなよ、大事なものなんだろ…?」

 

 

 

 

 

「…っ、でも、セグレトさんが…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここでファリニスを見捨てるくらいならっ、いっそ死ぬ!!」

 

 

 

 

 

 

「っ!」

 

 

 

 

 

 

じわりじわりと、思念集合体は損傷した腕を治している。

でも

 

 

 

逃げたくない

 

 

 

 

 

 

 

「俺は一度死んだんだ、それを助けてくれたファリニス…君のために、命を使いたいんだ!」

 

 

 

 

 

震えは止まらない、でも、逃げたくもない

うで全体が熱くなる、握りしめてたからだろうか?俺は…思念集合体を睨み付けて、鉄パイプを振りかぶる

 

 

 

 

 

「うりゃああああっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、思念集合体の腕の回復は終わっていた

 

再び刃物と化した腕が生え、鉄パイプを真っ二つにしてしまう。

俺はその衝撃で後ろに、ファリニスのすぐそばまで吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

「ぐあっ!」

 

 

 

 

 

「セグレトさん!」

 

 

 

 

 

 

鉄パイプはもう使えない、ヤツは刃物の腕がある…対抗する手立ても、ない。

 

 

 

 

 

 

「…くそっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

「…今からでも…セグレトさん、逃げて…っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ、いつもの俺なら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<てめえ、もう仕事やめちまえよ!>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<使えねぇやつをうちに置いておく余裕はねぇんだ!>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毎日の嫌なこととか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ちゃんと、頑張れてる?仕事…上手くいってる?>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろめたいことから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いままでの俺だったら きっとファリニスの言うとおりにして…逃げてた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いろんなことから逃げてたんだ、記憶が戻って…ようやく、思い出した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今は、イヤだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げるのは、もうおわりにする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今逃げたら自分のことを否定してる気がする、逃げたら俺の…セグレトの心を殺すことになる」

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ二つに割れた鉄パイプはもう、使えない

 

武器はなにもない、手立てもないかも知れないけど

 

 

 

 

 

「死にたくないから、死なせたくないから戦うんだ!死んだって、構うかっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それが、俺の生き方になるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった

 

 

 

 

 

 

右腕から、赤い光が迸る

 

 

激しく、強く、神々しく

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ…!?」

 

 

 

 

 

「光…、私と同じ…!」

 

 

 

 

 

腕から輝きだしたその光は、以前ファリニスの使った不思議な力の光に似ている。

温かくて、それでいて…身近に感じるような気がして…

 

 

 

 

 

(セグレトさんが覚醒してるのは、間違いなく…でも、そんな、彼をこんなことに…巻き込むなんて…)

 

 

 

 

 

「熱っ!」

 

 

 

 

 

腕が燃えてるかのような錯覚、まるで炎に包まれているような高温の体感だった。

もう片方の腕で掴んでみれば、右腕は全く熱を帯びていない。

でも、間違いなく右腕自身は、千切れるくらいの熱さを感じていた。

 

 

 

 

 

「ぐぅ…ぁっ!」

 

 

 

 

 

(どのみち、このままじゃセグレトさんの腕が持たない……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

ファリニスが重たく腰をあげて、傷を抱えながら起き上がる

そして、俺の右腕に手を添えて…目をつぶり集中するそぶりを見せた。

 

 

 

 

「ファリニス…?」

 

 

 

 

「落ち着いて、目をつぶってから私の呼吸にあわせて…ゆっくり……気持ちを整えてください」

 

 

 

 

 

言われたとおり、目をつぶったままファリニスの静かな呼吸に俺も合わせると、気持ちがだんだんと落ち着いてくる。

右腕に感じていた熱さは次第に落ち着いていき、覆うようだったほどの熱は右腕に馴染むように次第に落ち着いていった。

 

 

 

 

 

(熱が引いていく…もう、熱も感じない…でも、なんだろ?違和感があるな…?)

 

 

 

 

右腕には、熱こそなくなったけど…でもなんだろう?

毛が逆立つような、チリチリしてる感覚…右腕だけ…

 

 

違和感がわからず、俺は目を開けた

 

 

 

 

 

 

「ん…?」

 

 

 

 

 

そこには

 

 

 

 

腕が赤く、光に包まれているような

 

 

 

 

 

 

大きな爪のかたちをした赤い光が、俺の右腕の全体を纏っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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