賞金稼ぎ、バウンティハンターのルゼフィアのターゲット横取りの容疑が、すっかり晴れた…
が、ルゼフィアからの思わぬ申し立てでまた問題を生むことになった。
「あんたには、あたしの犯人探しを手伝ってもらうよ!」
犯人探し、つまりここ最近の事件の犯人を一緒に探せということだ、当然ながらもともとこの街に来たばかりで関係のなかった俺は、強く否定する。
「ちょ…ちょっとまってくれよ、疑いも晴れたろ!?なら…」
「あたしさ…むしょーに、腹が立ってるわけよ」
ルゼフィアが強く拳を握り、ギリギリと音を立てた…かなりの握力がかかっているのが、見て分かるほどだ。
言葉から察するに彼女にとっては賞金首を捕まえることは仕事であって、生活の基盤を支える重要なものだろうし、その怒りは共感できる。
「だからさ、その頬の赤い印を見ただけでなんかこう…引き金引いちゃいそうなんだよね」
…怒りの矛先にはまったくもって共感できなかった
「だもんで、あんたがあたしと一緒に行動すれば間違えることもなくなるってわけよ!あんたたち、しばらくこの街にいるんでしょ?」
「まあ、そうですね…」
代わりにファリニスが、メモ帳を見ながら返事をした。
そのメモ帳にはスケジュールでも書いてあるんだろうか?
「だったら、ほら、もう一緒でしょ?」
「<引き金引いちゃいそうなんだよね>って言ってる人と行動するのこえぇよ…」
「だーいじょうぶだいじょうぶ!一緒にいればまあたぶん我慢できるできる!」
「そこは強く確実に否定しろよ!」
あの店内でのゴタゴタ時は、命の危険が目の前にあったからか、あんまりビビリはしなかったけど…今になると怖い。
一歩間違えれば脳天に風穴空いてただろうし…前の思念集合体の時よりも現実味があって恐ろしい。
そのとき、店の方から誰かが扉を開ける音が聞こえる。
オーナーは素早く席を立ってスタッフルームから顔だけ出して店内を見ている…おそらく、客が来たんだ。
確認してからオーナーが素早く店内に駆け出していった。
「おっと…ここまでかな?この店、あんまし客は来ないけど細かいこと気にするオーナーだからさ‥場所を移そうか」
「そうだな、もともと従業員でもないわけだし…ファリニス、足は大丈夫か?」
「はい、大丈夫です…っ!」
立ち上がろうとしたファリニスの足がガクンと崩れた、見てみると左足を庇って体勢を崩したようだ。
大丈夫か?と、俺は駆け寄って体制を低くしてファリニスの顔を見る…なんだか痛そうにしている。
「どうした?足、まだ痛むのか…?」
「鋭い痛みが足の裏に…ぃっ!」
ファリニスが自分で靴を脱いでみると…一筋の赤い液体が、足から流れている。
赤い液体は足の裏のちょうど真ん中あたりから流れているようで、そこにきらりと部屋の明かりで反射した透明なガラスが刺さっている。
「さっきのガラスが…」
「ありゃ…ごめんね、救急箱あるかオーナーに聞いてくるよ」
「ああ、頼んだ!」
店内に出たオーナーを追って、ルゼフィアがスタッフルームから出て行く。
残った俺はファリニスの傷口から流れている血を止めるために、近くのティッシュボックスから荒々しく紙を取り出して、傷口になるべく触れないように血を染み込ませる。
「…んっ」
ピクンと、ファリニスが体を震わせた。
「わるい、痛かったか!?」
「あ、いえ…違う…じゃなくて、あの…やっぱり‥痛かったです」
「‥???」
よくわからなかったけど、流れ出した分の血はあらかた拭き取れた。
クシャクシャに丸めてゴミ箱に投げ入れたあと、またティッシュボックスから一枚だけ紙を取り出してファリニスに手渡した。
「あとはこれで抑えておけば大丈夫…かな?」
「はい…その、ありがとうございます」
心なしか、少し顔を赤らめているようだけど…
そのとき扉が慌ただしく開いた、見るとルゼフィアが救急箱を抱えて息を切らしている。
「はぁっ…はぁっ、なかなか見つかんないもんで、遅れた!」
「お、じゃあさっそく消毒を…」
「じ、自分でやりますね!私なれてますから!」
頬を赤らめたままで、ファリニスは勢いよく救急箱を受け取るとそそくさと傷に消毒液をあてがうのだった・・・。