ホワイト・エンゲージ   作:リファ

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第18話

「…ふぅ、美味しい」

 

 

 

 

あれからしばらくして俺たちはスタッフルームの中で注文していたコーヒーを飲んでいた、まだ熱く香ばしい香りを放つそれは先程までの張り詰めた空気から気持ちを和らげてくれる

俺はスティックタイプの砂糖をひと袋…そして、ファリニスは同じくひと袋の砂糖と1つのミルクを入れて飲んでいた…が、すこし顔をしかめている。

 

 

 

 

「あの…ごめんなさい、もうひとつお砂糖もらってもいいですか?」

 

 

 

「おおっと、かしこまりました‥すぐに持ってまいりましょう」

 

 

 

 

どうやら苦いのは苦手らしい…

スタッフルームの真ん中にある黒いテーブルの上にカップをおいて、ファリニスはふぅとため息のような声を出した。

 

 

 

 

「コーヒー…苦手なのか?」

 

 

 

 

「あんまり飲んだことなくて…あはは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…では、じっくりとお話の時間としましょう」

 

 

 

 

オーナーが砂糖を持ってきてしばらくして、ルゼフィアが戻ってきた。

…その頭には大きなたんこぶができていたが、まあ…何があったかあまり詳しく聞かないことに。

ガタガタとロッカーに掃除道具をしまいこんで、オーナーはルゼフィアの隣に座った。

 

 

 

 

「……あたしはわるくないよーだ」

 

 

 

 

「ルゼフィア?」

 

 

 

 

 

ムスっとしたままで否定の言葉を俺たちに言った。

ふたたび空気が張り詰める…が、ルゼフィアも気にせずにツーンとしている、そしてそのまま彼女は話を続けた。

 

 

 

 

「あたしのターゲットを奪ったほうが悪いのは、決まってるじゃん!あたしは悪くないよ!」

 

 

 

 

ここだ、よくわからないのは

ターゲットって意味もよくわからないし、それを奪うって意味もよくわからない…怪盗かなにかなのか?

しかし関わりを持ったこと無い以上、俺とは無縁な話のはずだ、誤解を解かないとな。

 

 

 

 

「セグレトさんも私も、この街にはきたばかりなんです、勘違いとしか…思えないのですが」

 

 

 

「いーや!あたしにはわかるよ!その頬の赤い模様がしょーこ!」

 

 

 

 

ビシッと、俺の顔に人差し指を向けて自信たっぷりの表情を見せた。

俺の頬には赤い模様が生まれつきあるが…これが、証拠?

 

 

「やはり…ルゼフィア、あのことですか」

 

 

オーナーは、なにか事情を知っているようだ

そもそもルゼフィアのことをオーナーは前から知っているようだったし…今回俺が襲われた原因も、わかっている?

 

 

 

 

「彼らは旅の人ですよ、事前に私も話を聞きましたし…なによりこのお店にいることが、証拠でしょう」

 

 

 

 

「でもでも!あの赤い模様!まさに聞いたとおりだよ、あたしのターゲット奪っていったやつ!」

 

 

 

 

「ちょっと…ちょっとまった!ターゲットってそもそもなんのことだ!?」

 

 

 

 

 

その俺の言葉のすぐ後に、ルゼフィアが俺に向かってなにかの手帳を突きつけてきた。

パスポートとは違った色の、真っ青な手帳で表紙に英語で<BOUNTY HUNTER>とかかれている。

 

 

 

 

「ば…バウンティハンター…?」

 

 

 

 

「そう、あたしもバウンティハンター!あんたと同じく、賞金首をとっ捕まえてがっぽり生活費稼ぐ賞金稼ぎ…ま、あんたのせいで今月の食事代すら危ういけどね」

 

 

 

 

 

「俺と同じって…俺は、バウンティハンターなんて、全然知らないぞ?」

 

 

 

 

「白々しいね!あんたのその頬の模様がなによりのしょーこ…目撃証言だってあるんだから!」

 

 

 

 

と、いうと彼女はメモ書きを一冊取り出して、ぺらぺらとめくってから書かれている文章を朗読する。

 

 

 

「<現場には、頬を真っ赤に染めた容疑者とみられる男性が立ちすくんでいたが、直ぐに立ち去った>…ってね!」

 

 

 

 

(まるで、恋愛漫画の描写みたいだな…って、そんなこと考えてる場合じゃないな)

 

 

 

 

メモ書きは誰かの言葉をそのまま書き写したものらしい…言葉遣いから察するに、警察だろうか?

たしかに俺の模様のことを行っているようにも聞こえるけど…

 

真っ赤に染めた…頬?

 

 

 

 

「その、現場って…どんな状況だったんだ?」

 

 

 

 

「あんた当事者だし、しってるでしょー…まあいいか」

 

 

 

 

 

面倒そうに椅子に腰をかけ、足を組んでから話を続けた。

 

 

 

 

「ひどいもんだね、あんな血みどろで凄惨な現場見たことないよ…路地裏の行き止まりの壁には血が飛び散って真っ赤…地面も血が滴り落ちて真っ赤…3人も犠牲者でたらしいけど、あそこまで血が出るもんかね、って思ったよ。」

 

 

 

 

言葉の上からでもわかるほどの、ひどい有様だということがわかった。

その後にオーナーが事件の補足をしたが、この事件が起こったのはつい3日ほど前で、その犠牲者の中にルゼフィアの狙っていたターゲットの賞金首がいたらしい…チャンスをうかがいながら追跡していたルゼフィアが少し目を離したすきに、すでに犠牲者はひどい有様だったという。

 

 

 

 

「それは…ひどい、事件ですね」

 

 

 

 

「ええ…あなたたちは今日この街にこらしたのでしょう?私のお店に来るのは大抵、初日に街に来られた旅のお方ですから」

 

 

 

 

「でっ‥でもさ!頬に赤の色を持って…」

 

 

 

 

「それなんですが…ルゼフィア‥さん?」

 

 

 

 

なに?とすごい剣幕で振り返るルゼフィアにファリニスは若干ビクビクしながら、なるべく気丈なふるまいをしようとこほんと咳払いしてから、気持ちを切り替えて話を続ける。

 

 

 

 

「頬の赤い色って‥その、<返り血>のことじゃあ‥?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、なるほど」

 

 

 

 

 

 

「いや、軽っ!!?」

 

 

 

 

先程までのすごい剣幕が消え、ルゼフィアの顔が明るくケロッとした顔つきに変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パスポートの入街日付も確認したし、ほんとにあんたらじゃないんだね…はあ、なんだよぉ…紛らわしいマーク付けちゃってさぁ」

 

 

 

 

ぐにーっと、俺の模様のついた方の頬をかなり強めにつねる、正直かなり痛い…

さっきのゴタゴタの時に銃の取り合いをした時には、華奢な体つきの割にはかなりの筋力の差を感じた…男女の差をもろともしないような感じだった。

 

 

 

 

「やめなさい、ルゼフィア…申し訳ありません、うちの関係者がお客様にご迷惑を」

 

 

 

 

オーナーに制されて、ルゼフィアが俺の頬から手を離す。

 

 

 

 

「関係者?というと…オーナーさんも、バウンティハンターを?」

 

 

 

 

 

「ああ、いえ私は…そうですね、管理者と言ったほうがよろしいでしょうか」

 

 

 

 

 

そういうとオーナーはスタッフルーム内のテーブルから、なにかのファイルを取り出す、厚さはかなりのもので国語辞典ほどあるんじゃないかと思われるほどだ。

その分厚いファイルをファリニスが受け取り、ペラペラとめくり始める…なかに挟まれた紙には、顔写真を貼り付けた<WANTED>と大きく書かれた紙のようだ…。

 

 

 

 

 

「これって…みんな、賞金首?」

 

 

 

 

「ええ、わたしは賞金稼ぎ…もとい、バウンティハンターの依頼を管理する立場です、このお店も元々は、バウンティハンターの為の交流の場として設立したのですよ」

 

 

 

 

「そもそもバウンティハンターというのは、この世の指名手配を受けた犯罪人を捕獲、あるいは始末を担当するお仕事…というのは、察しがつきますか?

その仕事内容は、毎日私のもとへこのような紙の手配書として届くのですよ、といっても様々な地域の手配書が来るので…ルメタルシティ付近の手配書のみ、そのファイルにまとめているのですよ」

 

 

 

 

「はえー…なるほどなぁ」

 

 

 

 

「んであたしは、オーナーのそのファイルを見てどの野郎をとっ捕まえるかを決める…って感じ、体も動かせてお金もがっぽりないい商売!ってなわけよ」

 

 

 

 

銃をくるくると回してルゼフィアは一枚、ファイルから手配書を取り出す。

そこにはバツマークの書かれた、ある初老の男の写真が載せられている…とおもったら

ルゼフィアは思い切り、その手配書をビリビリに破いてしまった。

 

 

 

 

「あたしは一刻も早く、横取り野郎を探さなきゃいけない…この街にどこかに、まだいるはずだからね」

 

 

 

 

「もしかしてその凄惨な事件は、まだ起こり続けて…?」

 

 

 

 

「ええ、実は…一昨日と昨日と、二日連続で」

 

 

 

 

 

犯行手口が全く同じ、そして現場も似たような路地裏…とオーナーは話す。

猟奇的な手口を続けている犯人の思考が読めず、おそらく愉快犯の犯行であろうと、警察も判断しているが…一向に手がかりもないという。

 

 

 

 

「よーし…じゃあセグレトっていったっけ?」

 

 

 

 

 

「うん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「犯人探し、手伝って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ええええええぇぇぇっ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

俺とファリニス、二人の絶叫がスタッフルームに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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