慧香サイド
「という訳でこれからドスファンゴの討伐に向いたいと思います」
「分かった。指示や作戦は慧香に一任するからしっかり駒として使ってくれ」
「おいアグナ、重い重い。それに相手も猪だから案外慧香一人で片付くんじゃないのか?」
という事で、私たち一行は水没林のエリア1を移動しています。
腰に付けた狩猟時に渡されたタイマーから一、二分ほどクエスト開始から経ちました。
今私たちの服装は全員、防具と武器を身につけています。
私は父さんと母さんが作ってくれた『凰墜シリーズ』という防具と、歪んでしまった太刀の代わりに父さんが鍛えてくれた新しい大刀の『
アグナさん達は何でも自分自身の素材から作ったと言っていたので、アグナXシリーズとディアブロXシリーズらしいんですが・・・・・・・・・。
「なんで私の武器以外中距離なんですか?」
「何言ってんだよ。ヘビーボウガンのアグナはともかく、俺はランスだぞ」
「アンディさんは性格的に大剣でしょう!?」
「突進好きを舐めんなよ!!」
なんで私が前線に立つこと前提なんですか!アグナさんもボウガンの調整ぜずに何とか言ってくださいよ!
ズギュュウウゥゥゥゥンン!!!!
「・・・・・・アグナさん?どうしてヘビーボウガンの砲身から熱線レーザーが出てくるんですか?」
「え?ヘビーボウガン=
「違います!何かが違います!」
今一瞬変な副音声が聞こえたような・・・・・・
アグナサイド
「ハァァァァァァアア!!!」
「ソイッ、ソイッ、セイヤァ!!!」
慧香の上段切りがドスファンゴの右腹部を切り裂き、アンディの三段突きがドスファンゴの顔と左腹部に突き刺さる。
ドスファンゴをエリア4で発見し戦闘を開始したのだが、今の所は順調に進んでいる。
まぁ、俺とアンディは実力でいえばG級クラスだし、慧香も素質と技量で俺らの知ってるG級ハンターと並ぶほどの実力を持っている。
今回の狩りも相手は上位、それも牙獣種だからすぐに終わるだろう。
「アグナさーん!そっち行きましたよ!!」
「OK、そんじゃ締めますか」
突っ込んでくるドスファンゴの鼻っぱしに向けて徹甲榴弾Lv.1を撃ち込み、反動を利用してバックステップの飛距離を延ばす。
そこから体を反時計回りに回転しドスファンゴの鼻っぱしに今度は徹甲榴弾Lv.2を同じ場所へ叩き込む。
一発目の徹甲榴弾と二発目の徹甲榴弾が衝突しドスファンゴの鼻先で爆花を咲かせる。
ドスファンゴは突然の大爆発に驚き止まる。さらに追撃しようとしたが視界の端に映ったものを確認しサイドステップで右に回避する。
━━━━━ほら来た。
「どけどけどけどけどけ!!!!」
不意にドスファンゴが後ろから突き飛ばされるようにして俺の背後にあった岩に切り立った刃で磔られた。
その切り立った刃はアンディのランスの矛先で既にドスファンゴの体を貫通している。
「あ、アンディさん。止めを刺しちゃいますか?」
「あんまり長引いてもやだしな、俺ここの湿気嫌いだし」
「そうなんですか・・・・・・アグナは辛くないんですか?」
「体温を上昇させれば撥水どころか上昇気流ができるから湿気なんて気にならない」
さてと、剥ぎ取りを済まして帰るとしま━━━━
「フハハハハ!!!下がれ雑魚が!」
突然、虚空に金色の波紋が浮かんだと思ったらそこから十数個の華美な装飾の施された武器群がアンディが磔ていたドスファンゴに突き刺さった。
アンディも巻き添えを喰らいかけたのでバックステップで距離を取った。
すると、空から一人の人影がゆっくりと落下してきた。
「で、お前なにしにきたんだよ。人様のクエストを横取りするったぁ。
しかもお前、ずっとコソコソ俺らのことつけてただろ」
「はっ!知ったこったねぇよ、雑魚は黙ってそこの美人二人寄越せ。
そしたら殺さず逃がしてやるよ」
・・・・・・・・・コイツはあの時、ユクモ村の集会浴場にいた金ピカのハンターか・・・全然覚える気もなかったわ。
それにこいつ馬鹿じゃないのか?俺のことを女と勘違いしてるようだし、それにあのアンディが不機嫌な状況で喧嘩を振ってくるとか、終わったかもな。
「・・・・・・・・・・・・は?」
「だーがーらー、そこにいる美人二人を置いてサッサと失せろって言ってんだよ」
金ピカのハンターは傍から見れば嫌悪感しか浮かばない笑みを浮かべて、アンディに近寄る。
アンディはランスを背に納刀して、金ピカのハンターの方を向く。
「・・・・・・ところでお前は俺がこいつらを引き渡した後、どうするつもりだよ」
「うっせえな、ただのモブに知る権利なんてないんだよ。
あーあ、せっかく見逃してやろうと思ったのになぁ
死ねよ、雑魚が」
金ピカのハンターの周囲に先ほどと同じ金色の波紋が浮かび上がり、そこから一本の槍が至近距離からアンディに向けて放たれた。
しかしその確実に人間・ ・を死に至らしめる攻撃をアンディは、背に納刀してあったランスの盾で弾いた。
「━━━━な、なんで今のに反応できんだよ。
そ、そうか!お前も転生者だな!?俺が真のオリ主なんだよ!
踏み台はさっさと退場し━━」
「おい、つまりお前は慧香を自分のものにしたいと、そう言ってるのだよな」
アンディの声には明らかに何かに対しての怒気が必死に抑えている。
しかしあの金ピカのハンターは妙に錯乱していてそれに気付いていない。
アンディは正面に浮かぶ幾つもの金色の波紋から次々と発射される武器を盾一つで淡々と弾き落とす。
「クソっ!クソっ!クソっ!クソっ!クソっ!クソっ!クソっ!クソっ!クソっ!!!!
なんで死なねぇんだよ!あのクソ神がぁ!」
もう訳の分からないことを喚き出した金ピカのハンターを尻目にアンディは右の手に装着した盾が正面を向くように左足を引いて、盾を持たない左手にランスを握る。
「クソっ!クソっ!!!!
ウザってぇんだよ!ただのモブが!俺のオリ主人生を邪魔すん━━━━」
「人の恋路を・・・・・・・・・」
一瞬にしてアンディが金ピカのハンターの背後に回る。
その速さはまるであの密林の黒い風のようだった。
そして、ぬかるんだ大地をくり抜かんばかりに右足を踏み締める。
「邪魔すんじゃねぇよ!!」
「ガッ━━━━━━━」
アンディは盾による突進で金ピカのハンターをドスファンゴを磔ていた岩に叩きつけた。
しかしそのスピードは音速の領域に迫る程だったため、アンディの持つ盾と岩の間から周囲に向けて赤いザクロのような何かが飛び散った。
慧香は突然の幕引きとその結末を目にしてしまい思わず目をそらした。
「・・・・・・・・・アグナ、これ燃やしとけ。血を洗ってくる」
そう言って、アンディは一人滝の方へと歩いていった。
アンディサイド
「クソ、凹凸の中の肉は流石に洗い流せねぇか」
あの屑ハンターの肉で汚れた盾を洗い流しながら、らしくない事をしたなとさっきの出来事を振り返る。
さっきはイラつきに任せてやってしまった結果、慧香にエラいものを見せてしまった。
「でもなぁ、あの二人の関係を見て楽しみこっちとしては、ああいう奴は殺すが一だな」
あの二人━━アグナと慧香の二人の関係は見てるこっちが面白い。
アグナは慧香のことを親友、ダチと思って近い距離で接している。
一方、慧香の方は・・・・・・アグナにガチで一目惚れしていて、でもその気持ちを伝えられずにモヤモヤとしたことと初めての感情にドキマギしてうまく気持ちがコントロール出来なくて━━━━初々しい。
「まぁ、あいつらの周りに集まる虫は俺が潰すか」
俺の唯一の相棒とその彼女のためにな・・・・・・