慧香サイド
「ところで、私達にはこれから何をすればいいんですか?」
「一度ロックラックにある対転生個体特別処理局の本部に顔を出さなければなりません。
それに、皆さんの実力を測ったレポートも提示しなければいけません」
するとローレさんはアイテムポーチとは別のポーチからクエストの契約書を取り出しました。臥
内容はナルガクルガ通常種二体の討伐で、時間帯と狩猟場所は渓流の夜間ですか・・・・・・。
「このクエストに
へぇぇ・・・・・・・・・・・・・・・え!?
「い、今からですか!?」
「そりゃ、なんとも急な話だな。ちなみに俺達はいつも通りの戦闘スタイルでいいんだよな?」
「はい、転生者や虛竜に対しては手加減なく完膚なきまでに心を折って殺さなければ死なない━━━」
え!?そんなのを相手にしなければならないんですか、私達は・・・・・・・・・。
「て、ことは無いんですが」
「無いんですか!?」
「そうですね、転生者には文字通り空想のような技を多用してきます。
油断してては逆に殺されかねません」
すると、ローレさんはおもむろに立ち上がり『それでは一刻後に集会浴場に来てください』と残して、出て行ってしまいました。
・・・・・・・・・・・・・・・一刻後・・・・・・・・・・・・・・・・
という訳で集会浴場にやってきた私たちですが昼間の狩りとは少し違った格好をしています。
私は太刀を交換しました。父さんから貰った『鉄臥刀』を置いてきて、母さんから貰った双剣『オラシオン・クロス』を背負っています。
水色の柄に左右に白の突起を施された鍔、切っ先は白く透き通るように白銀に光っている。
なんでも、母さんが昔使っていた片手剣を溶かして作ったらしいです。
アグナさんはあの日身に付けていた東洋の袴にサラシを巻いて、髪を後ろでまとめて背に流しています。
・・・・・・・・・やっぱり瓜二つなので恥ずかしいです、せめてサラシはやめてください。
アンディさんは・・・・・・・・・と、とても威圧感のある格好ですね、とても。
アンダースーツのようなの服の要所要所・・・・・・具体的には腰部、側腹部、肩部、肘に膝、踵とつま先、そして頭部に重厚な砂色のプロテクターがギッシリと付いています。
でも関節部分の内側は動きを阻害しないように布製になっているようです。
・・・・・・・・・しかし、なんで肝心の拳にはプロテクターがついていないんでしょうか。
「おーい!お待たせー!」
「お、どうやらローレかを来たらしいぞ」
どうやら、ローレさんも到着したようです。
それじゃぁ、狩猟開始です!
━━━━━ワールドマップ移動中━━━━━
「やっぱり、上位のクエストと同じでランダムにスタートなんですね」
地図が無いので正確な場所は分かりませんが、渓流の地形と龍脈の具合から見てエリア7辺りですかね。
「さてと、それじゃ行きますか。
今回の狩猟では皆さんの能力を見たいと思うので、アグナさんとアンディさんにはツーマンセルで1頭を狩猟してもらいたいと思います」
ローレさんの言葉を聞きながら私はこの地にある龍脈とその龍脈から漏れ出る龍脈の力を探ります。
G級の竜族達は存在するだけでかなりの龍脈の力を吸い取ります。
「・・・・・・・・・・・・エリア9に一体、もう一体はエリア5にいます」
「だそうだ。それじゃ、エリア9の方を狩りに行きますか」
エリア9に続く登り坂を抜けると案の定、ナルガクルガがケルビを捕食していた。
アンディさんがプロテクターの金具をチェックする傍らでアグナさんがいきなりサラシを脱ぎ去った・・・・・・・・・って!何してるのですか!!!!!
「ア!アグナさん!!何してるんですか!?
上!上着てください、上をぉ!!!!」
キシャャァァァァ!!!!!!
「おい慧香。お前のせいで敵にバレたぞ」
「だから上を着てから言ってくだ━━━━━っ!」
私はその時になってやっとアグナさんの背中に浮かび上がったあるものに気付きました。
アグナさんの背中の上部、脊椎にあたる部位の骨が浮き出て、そこから熱気が溢れています。
下位のハンターならそこに驚くでしょう。
しかし私が驚いたのはその部位が周囲の龍脈の力をものすごい勢いで吸収しているのが感じ取れたからです。
「アンディ!行くぞ!」
「おうよ!」
アンディさんが地を蹴り、ナルガクルガに向けて突進します。
その背を避けるようにアグナさんが熱線を掌から発射し、ナルガクルガはそれを嫌ってか飛び退くように避けます。
その着地点に待ち構えていたアンディさんを刃翼で切りつけようと横薙ぎに振るう。
しかしそれをアンディさんはプロテクターでいなし、刃翼に、
ガガガガキン!!!!
すれ違いざまに4発の拳撃を側面に叩き込んだ。
そこからバックステップで距離を取ろうとするナルガクルガに向けて更に懐に踏み込み、
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!!!!!」
ズダダダダダダダダダダタダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!!
怒涛のラッシュを雨のようにナルガクルガにうちこみました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・アンディさんって、いわゆる脳筋なのでしょうか?
ローレサイド
さてと、まずはアンディさんの戦闘スタイルの分析からですね。
アンディさんは典型的なインファイター、それも近距離どころか密着状態でのラッシュを得意としてるようですね。
武装もそれに伴って体の動きを阻害しないような形状をしつつ、肘や肩、それに膝のプロテクターは他の部位のものより厚く出来ているところから武器としても利用してるのでょう。
そしてなんと言っても異質なのはその拳の硬さですね。
アンディさんからの話から恐らく原型はディアブロスで間違いないんですが、その拳の硬さは通常種のディアブロスなんて目じゃないですね。
処理局の施設で正確に測ってもらい、そこから資料を作成しなければなりませんね。
それと声の大きいのは無視で。
「アッパァァァァァアアアア!!!!!」
続いてアグナさんの方なんですが・・・・・・・・・データが少ないですね。
アンディさんに敵の隙を的確に突けるように、そして邪魔にならないように援護しつつ後方の私たちに注意を向けさせないように立ち回りを調整している。
と、言うことぐらいしかわかりません。
「アンディ、あと5発で刃翼が破壊できる。破壊したら一度引け、後は俺が片付ける」
「わかった、そんじゃラスト!!」
ギシャャャァァァァァ!!!!
どうやら1頭目の狩猟はまもなく終わりそうですね。
というか、ほとんどアンディさんが敵の部位を破壊してるような・・・・・・やはりアグナさんはサポート役なんですかねぇ。
「━━━━━熱源開放、球状収縮開始━━━」
えぇ・・・・・な、なんだかアグナさんの手の中に赤い球体が生成され始めてますけど。
あ、アンディさんが全速力で下がって来ました・・・・・・というよりこちらに向けて全力疾走して来てますね。
「二人共伏せろ!とにかく頭を伏せろ!」
「え!?」「ひゃい!?」
いきなりアンディさんが竜化したと思ったら私たちを守るように自身が壁になるようにとぐろを巻きました。
━━━━━次の瞬間、
「━━━━『堕ちて空より、焼くは万象』」
轟音、熱風、衝撃波、爆炎のフルコースがアンディさんと包まれている私たちに襲いかかってきました。
轟音と衝撃波はすぐに止みましたが、アンディさんが私たちを解放した外ではまだ焼けるような熱風と草木全てを燃やし続けている劫炎が目に映りました。
その中にただ一人で立っているアグナさんの足元には完全に融解してしまったナルガクルガであったものが煌々と燃え盛っていた。
「・・・・前線でも活躍の期待あり、と・・・・・・・・・」