俺は私に逢いにいく   作:黒猫のロゼ

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今日から春休み計画始動!
春休み中は必ず一日に一本の小説を出します。
さらに、それはメインでやっているやつではなく、短編!
みなさんぜひ見てください( ー`дー´)キリッ


世界線の移動を試みた結果

 突然だが、俺たち人間は自分という存在をどんな風に感じているだろうか。それは誰もがどうでもいいと思いながらも、誰もがわからないことだろう。
 人は死に際に自分の幸せを理解するくらいだ。きっとみんなそんなこと知っているはず無いのだろう。
「なぁ……本当に俺は別の世界線に行けるんだよな?」
「大丈夫さ……試しがいないから確証はないけどね。でも、君は知りたいんだろう? 自分という存在が全く別の世界線ではどんな風になっていて、どんな風に人生を堪能しているのか」
言っている発言がとても厨二臭くも感じる。しかし、これは俺の望んだこと。今の世界では少しだけ有名な学者、冴之木 黒羽(さえのき くろは)に俺のこの馬鹿げたわがままを確かなものにしてくれたのだ。
 黒羽は、俺の親の幼馴染で親の息子である俺にもかなり優しく接してくれる。その上、彼女は研究熱心のため、俺の考えたことを面白半分で学研やらなんやらの上の偉い人たちに内緒でいろいろな研究・開発をしていた。
 今回の件もそれと同じだ。彼女は俺のわがままを聞き、そのわがままを基に世界線移動のマシンを開発したのだ。そして、その第一の犠牲者になるのがこの俺、桐ケ谷 咲良(きりがや さくら)。なぜ『犠牲者』というのかというと、ほんの極わずかだが失敗するケースもあるからだ。今回も失敗する可能性があるという恐怖心が少し心に不安を煽らせるが、俺はそんなことよりも早く試してみたいという考えに駆り立てられるのだ。
「じゃあ、いくよ……もう『やっぱ無し』はダメだぞ? 君のわがままだ。結果は絶対に受け入れろよ?」
「わかってるよ……俺ももう子供じゃないんだ。そんな心配はいらないよ」
俺はマシンの上に乗る。こんな機械に難しい理論やら数式が詰められていると考えるとゾッとする。
 目をつぶり、すぅっと息を吸う。そして、「カウントダウン」が始まる。
「……五……四……三……」
「カウントダウン」をされることで心臓の音がそれに比例し、どんどんと大きく、そして早くなっていく。あたりが無音のためか余計にその感覚が敏感になる。
「…………二…………一……」
次の瞬間、マシンはまばゆく光る。俺はその光に耐えられず、一瞬目を瞑る。
 その一瞬という間にはとても重い感覚があった。喜怒哀楽が入り混じった不思議な感覚だ。
 俺はゆっくりと目を開ける。先ほどと全く変わらない、黒羽の研究室だった。
「あれ? 実験は失敗しちゃったのかな?」
肩をすくめる。きっと成功してくれると信じていたことが失敗してしまったため。また、自分のわがままが叶えられないことを知ったため。
「うん? 君は誰だい? どうして私の研究室にいるんだ?」
黒羽は俺の存在を確認するなり、いきなりそんな質問を投げかけてくる。
「何言ってんだよ……黒羽姉。いまさっき世界線を移動する実験やって失敗したからって誤魔化すのは良くないぜ?」
「誤魔化すって……私は本当に君のことを知らないんだが……それよりも、世界線の移動ってどういう意味なんだい? 私はそっちのほうが気になるな……」
黒羽の顔は至って真剣だ。その表情を見ていると本当に世界線を移動してしまったのではないか。そう思わせるほどだった。
「ふむ……じゃあ、その世界線を移動したっていうことが事実で君はなんらかの原因で移動してきた者と……それで、移動した先がたまたま私。そして、君は私と面識があるようだね」
「……世界線の移動なんて…………俺の勝手なわがままに決まってる。もうそろそろやめろよ。黒羽姉の演技力の高いことはわかったから」
黒羽は困った顔をする。さらに、視線を泳がせる。そして、黒羽はいい案を思いついたように左手を皿のようにして、その上にポンっと右手をグーにして乗せる。
「じゃあ、外に出て君の他に知ってる人を訪ねてみるというのはどうだろう? きっとみんな知らないと答えるんじゃないだろうか?」
「……わかったよ」
俺は渋々研究室から出る。俺の身内というのはわりと少なかったりする。別に友人がいないわけじゃない。むしろ、RPGなどで言うスキルポイントをほぼ全てを世渡りに振り切ったような人間だ。両手両足の指を足しても数え切れないほどはいる……はずだ。実際、友人なんて相手がそう思っているかどうかだから、一人じゃわからない。
「まずは……どうしたものか……まぁ、無難に家に帰ってみるか」
いつもの帰路を歩く。全く俺の覚えのないものなど一つもない。いつもの街並みが俺を少しがっかりさせる。
「……本当に世界線が移動したのかな? 嘘だったら黒羽姉の顳顬をぐりぐりしてやる」
家の目の前に来る。そして、玄関のドアノブをゆっくりと触ろうとする。
「……誰?」
「……へ? いや、お前こそ誰だよ」
後ろから手を肩に乗せてきた彼女。俺には全く面識がない。こんな人俺の学校にいただろうか。俺の通う学校と同じ制服を着ている。
「えっと……そこの家の子です……」
「……は?」
あまりにも衝撃な出来事だったため、俺はその言葉が信じることができなかった。思えば、マシンを起動して以降全く俺は人のことを信用してないじゃないか。
「いやいやいや……お前、ここの子って桐ケ谷 咲良だけだろ? 何言ってんだ」
「そうだけど……私が桐ケ谷 咲良だよ?」
愕然とした。ポカンと口を開けて、彼女を見る顔はどれだけ間抜けだったのだろう。それを彼女はどうでもいいような顔で見て、
「あの……用事でしたら、親を呼んできましょうか?」
「あ……いや。ごめんな、なんでもない」
俺はそう言ってそそくさと走り去ることにした。向かう先は、取り敢えず黒羽の研究室に行くことにした。
 先程の女の子桐ケ谷 咲良の言葉で俺は確信を得ることが出来た。世界線を移動することができたんだ。そして、この世界線では俺は女の子として生きている。
喜びが心の底から溢れてきた。きっといま自分の顔は喜びのあまり気持ちの悪い形相をしているだろう。
「なぁ、黒羽姉!」
「ふぁっ!? い、いきなりどうしたんだい」
黒羽は俺がいきなり研究室のドアを開け、名前を叫んだためか腰を抜かして床に座り込む。
「……あ、ごめん」
「い、いや……いいんだ。それで、ここが君の知らない世界線だって言う確証が出来たようだけど……何があったんだい?」
「それがさ、この世界にいたんだ! 俺の存在を賄っている人物を!」
俺は少し興奮気味そう言った。黒羽は研究して、なにか新しいことを身につけると凄く飛び跳ねるように喜んでいる。きっと俺は今それくらいの喜びが心を踊らせているのだろう。
「そうか……それで? 君の役割を果たしている人物はどんな人なんだい? 私は君の名前を知らないんだ」
俺はさっき会った女の子の身体的特徴や、見た目からの性格などをできるだけ詳しく言った。それを聞いた黒羽は眉を寄せる。
「……嘘は……ついていないんだよね? それ」
「どういう意味だよ?」
「君が桐ケ谷 咲良だなんて……全く別人じゃないか。性格的にも、外見的にも……」
黒羽の言葉はたしかにそうだ。これが世界線の違いというものなのだと考えると世の中何が起こるかわからないものだ。しかし、そこで俺にはふと小さな疑問が生まれた。
「なんで……俺だけが違う世界なんだろうな」
「それ以外の人は変わらなかったのかい?」
俺は無言で頷く。俺が家に行く時、近隣の家の人達の顔を見たが誰一人顔を変わっていなかった。
 黒羽と俺はその後いろいろと考えてみたものの結局何の成果も得ることが出来なかった。
「……取り敢えず、今日は私の研究室に泊まっていくと良いさ。外に出たって、君の素性を知っている人間なんていないわけだしさ」
「ありがとな、黒羽姉」
「ふっ、礼には及ばないって奴さ」
今日は久々に黒羽の料理を食べることが出来る。科学的なことで全てを解決しようとしている黒羽も、料理だけは気持ちというのは大切だと言って、そういった料理を作る上ですべての工程をマシンに任せるなんてことはしないからだ。
 その御蔭で、黒羽の料理はとても美味しく、親に作ってもらうよりも家にいる気分になれるのだ。
「なぁ……今日は何作ってくれるんだ?」
「そっか、君は向こうの世界ではよく私と会話してたんだっけ。そりゃ、私の手料理も食べてるわけだ……今日はカレーを作るよ」
俺が個人的に一番気に入っている黒羽の料理、それが今日の晩飯だと考えると凄く嬉しい。今日は本当に嬉しんでばっかりかもしれない。
 俺は晩飯になるまで研究室で黒羽のこれまで作ってきたガラクタと呼んでも良いようなものをいろいろと弄んでいた。
「なぁ、咲良くん。もしもだよ? 君がこれからこの世界線に住むことになって、こっちの世界線の咲良くんの名前を呼ぶことになったらどうする?」
「どうするって……そういえばそうだな。そうだ、一文字抜いて咲って呼んでやる! どっちかが名前少し改めないといろいろ困ることになりそうだからな」
「……そうかい」
黒羽は晩飯のカレーを食べながら俺にそんな質問を問いかけてきたので俺はそう答えた。特に詳しく聞こうとかそういうことはなく今回の質問はあっさりと終わった。
「なぁ、黒羽姉。もしも俺がここからもとの世界線に帰りたいって言ったら、手助けしてくれるか? それとも、ここにずっといてほしいと思うか?」
「…………そうだね、私としては話し相手が普段いないから君がいてくれると凄く嬉しいが、やはりもといた世界にいく手助けをするだろうな。君にもいるべき場所があり、帰る場所があるんだ」
黒羽は研究室にずっと籠もって研究するような人だ。きっと俺が帰ると言ったら嫌だというと思ったが、なんだか黒羽らしい返事が来てしまったため俺は小さく「そっか」と、そっけない言葉を返してしまった。
 晩飯を食べ終わり、俺は風呂に入って、その後寝間着に着替えて寝る準備を整える。
「じゃあ、おやすみ」
黒羽は研究員にしてはとても睡眠が早い。睡眠時間を削ってもなんの得もないとか言って、なにかに没頭していてもいつも就寝する時間になったらすぐに寝てしまう。しかも睡眠時間はほぼきっちり七時間。健康にはしっかりしている。これで運動さえしていれば完璧だったのだが。
 黒羽が寝たあとも俺は今日のあまりにも非日常的なことに驚いてなかなか寝付けなかった。
「俺のいるべき場所ってどこなんだろうな?」
俺は誰に聞くわけでもなくそう呟く。
―お前なら知ってるのか? こっちの世界線の咲良
否、この世界線では俺はあいつのことを咲と呼ぶんだったか。俺はぶんぶんと頭の中で考えていたものを振り払うように頭を左右に振る。
 結局、寝たのは午前零時を過ぎてからだった。普段できるだけ規則正しい生活習慣を身に付けている俺にとってはかなりきつい時間だった。
「どうしたんだい? やけに眠そうじゃないか」
「……そうかな? ふあぁ」
俺は情けない大きな欠伸をする。その後気付いたが髪の毛もかなりボッサボサになっていた。
 取り敢えず、昨日の残りのカレーを朝食に食べる。現在、五時半。寝た時間の割に早く起きすぎた。俺はカレーを食べ終えると、再び寝床に戻りベッドにごろりと寝転がる。
「残念ながら君にそんなごろごろする時間はないぞ!」
俺は布団の端をギュッと掴んでいたがロボットの力で無理矢理に引剥された。
「……なんだよ。眠いのに」
「君は学生なんだ。いくら世界線移動しても学生であることは変わりない。だから、こっちの方でまた学校生活を楽しんでもらうよ」
「……は?」
俺がそう聞き返すと、ロボットが俺の目の前まで来て、世界線を移動しようとするまでずっと着ていた制服と学生証を渡される。
「……榊原 駿河(さかきばら するが)って……誰だよ」
「架空の人物さ。ただ、今日から君が日常で使う名前でもあるがね。まぁ、そんなこと、今は重要じゃない。早く着替えを済ませてくれ。荷物の準備はできているからな」
俺は少し納得できなかったが渋々ロボットに渡された服を着て、黒羽から荷物を受け取る。
「名前……絶対に間違えるなよ?」
「分かってるよ。それくらい」
学校には行き慣れている。ただ、違う世界線にまで来てなんで学校に行かないといけないのかと苛立ちを覚えた。
 俺が学校に行く最中、たまに俺の姿を見てもの珍しそうに見る生徒がちらほら。しかも、もといた場所では親しげに話していた人たちだ。
 俺はそんな視線を完全に無視して、学校について早速職員室に向かう。入校手続きやらなんやらを完全に終わらせる必要があったからだ。
「やあ、榊原くん。これからはこの学校の私のクラスで頑張ってくれよ?」
「……はい」
これから自分が入るクラスの担任がそう挨拶としていう。俺は返事をする気にあまりなれず、そっけない返事をする。
「みんな、今日からこのクラスで一緒に勉強する転校生、榊原 駿河くんだ」
「どうも……榊原 駿河です。これからよろしくお願いします」
自己紹介は一年の時と二年の時の学年の初めにしかしたことがなかったため、少し違和感を覚えたがテンプレートな感じに終わらせた。
 周囲を見渡して見て、誰がいるのかを確認してみる。その中に、まさかのこっちの世界線での俺がいたため少し焦ったが、表情にできるだけださないように努めた。悲しいことに、俺が紹介される時、一度として彼女は俺の方に顔を向けなかった。






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