やがて我が身は剣となる。   作:烏羽 黒

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  今日の一言
 チートキャラの完成かな?

では、どうぞ


己、それは【ステイタス】

 

 私たちは今、幼女()に連れられ裏道を歩いていた。どうやら本屋へ向かっているらしい。

 目の前の幼女()は本人曰く、ヘスティアと言う無名の神らしい。

 ヘスティア様曰く、下界に降り立ってあまり経っておらず、ファミリアがいないため勧誘をしていたそうだ。そこで私たちに出会い勧誘を受け入れたため、ファミリアの証として、今から【神の恩恵(ファルナ)】を授けてくださるそう。

 

「さぁ着いたよ。おじさん! 二階の書庫を借りてもいいかい?」

 

 中に入ってみるとそこは、沢山の本が所狭しと並べられた書棚が幾個も存在する、木の香りがほどよい雰囲気を与えてくれる場所だと知れた。入り口の横にあるカウンターの席には、どこか合っていると感じる一人の老人が座ってる。

 

「ヘスティアちゃんかね。それは良いが、本は元の位置に戻しておくれよ」

 

「わかってるって。さ、行こうか」

 

 そう言われ二階へ上がると、そこにもまた本が広がっていた。一階にあった本の数よりも多いだろう。

 ヘスティア様はその中央、部屋の円模様が縫われた絨毯(じゅうたん)の中央へと座り、私たちに手招きをしていた。

 

「じゃあ、早速【神の恩恵】を刻もうか。上着を脱いでくれ」

 

 そう言われ上着に手を掛け脱ごうとすると、何故かヘスティア様が私の手を掴む。訝し気に視線を送ると、それに応える現在の体勢を堪えているせいか、若干苦し気な声。

 

「シオン君。君が脱ぐのは少し待ってくれないかい」

 

「何故でしょうか?」

 

「いやさ、いくら家族だからって年頃の男女が二人とも上半身裸になるのはねぇ…」

 

「……ヘスティア様、どうやら貴女にも勘違いされているようですね」

 

「へ?」

 

 神だと言うからこれくらいは見通していると思い込んでいた私が悪いか。誰もがお祖父さんのように神格者ではないのだとこの時知れたのは、少しばかりは感謝を送っておこう。

 

「しっかりとした自己紹介をしなかった私が悪いですね……では、改めて。私は、シオン・クラネル。ベル・クラネルの()です」

 

 呆けた面を(さら)し硬直するヘスティア。それを数秒見守っていると、はっ、と意識を取り戻したかのように硬直が解け、認めたくない現実を否定して欲しくて聞くかのような語気で問うてくる。

 

「……兄、と言うことは……君は男なのかい?」

 

「そうです。これで何度目でしょうか……」

 

「どんまい、シオン」

 

「ご、ごめんよシオン君」

 

 悪びれる気はあるようで、それで一先ず不問にしておこう。

 呆れはするが、実際自分の容姿が女性に近いと言うことはよくベルから言われているからある程度気づいてはいる。仕方のないこととは言わないが、それで激しく怒ったりはしない。

 

「いえ、お気になさらず。それより、【神の恩恵】を刻んでください」

 

「うん。じゃあお詫びとして、シオン君からね」

 

「はい、わかりました」

 

「ベル君。少し待っててね」

 

「はい! 神様」

 

 別に順番を気にする気は無いのだが、まぁ詫びと言っているのだ、素直に従っておこう。

 

   * * *

 

 今、羊皮紙に写されたステイタスを互いに見合って思った。

 

 ベル・クラネル

 Lv.1

 

 力:I 3

耐久:I 2

器用:I 5

敏捷:I 8

魔力:I 0

《魔法》

【 】

《スキル》

【 】

 

シオン・クラネル

 Lv.1

 力:I 82

耐久:I 39

器用:A873

敏捷:B746

魔力:D587

《魔法》

【エアリエル】

付与魔法(エンチャント)

・風属性

・詠唱式【目覚めよ(テンペスト)

 《スキル》

剣心一体(スパーダ・ディアミス)

・剣、刀を持つことで発動

・敏捷と器用に高補正

 

 

――――――――私って異常(イレギュラー)なのではないかと。

 

 

「ずるい! なんでシオンが魔法使えるの!」

 

「気にするところがそこですか……普通、この異常な【ステイタス】の方が気になると思うのですが……」

 

 他の人がどうかは知らないが、明らかだろう。これはオカシイ。

 魔法の発現は目に見えていたが、スキルは変わらず私だなと思わせられる。そしてなにより、アヴィリティの数値だ。

 ベルと比べてみれば歴然としている。異常なまでのこの差は一体どういうことなのか。昔から鍛えていたとしても、ここまで差が付くものなのだろうか。

 

「僕も魔法使いたい!」

 

「日々努力してください」

 

「うぅー」

 

 と言っても、日々の努力で魔法を使いたいのなら、魔法の勉強をして自分で作る他ないのだが。

 それに、私に発現したこの魔法はただの魔法では無いことを、もう既に理解している。

 

「ヘスティア様。私たちはこれからギルドに戻り、冒険者登録をしようと思っているのですが、どうしますか?」

 

「どうするというとなんだい?」

 

 押し黙ったベルを放っておき、話を一転させて聞いたが、今一真意は伝わらなかったらしく首を傾げて逆に聞かれてしまう。

 

「私たちは待ち合わせることが出来る場所など知りません。ですので、一度離れたら合流できなくなると思うのですが、どうしますか? と言うことです」

 

「あぁ、そういうことかい。ならもう少し付き合ってくれ。ボクのホームに案内しよう」

 

 意外なことに、ファミリア設立数分の神でもホームは存在するらしい。無いと思って待ち合わせ場所を聞いたのだが、まさかこう返されるとは思わなかった。

 

「わかりました。ベル、行きますよ」

 

「うん……」

 

 落ち込みが消えないベルを慰めながら、落ち着いた雰囲気の本屋を一つ挨拶を告げて去ったのだった。

 

 

  * * * 

 

 ついて行くこと三十分。現在、西と北西のメインストリートの間に存在する区画にある廃教会の中に居た。

 まさか、ここがホームなのか……と思っていると、ヘスティア様が正面奥右下部の壁に手を掛け、押した。すると、彼女の右側にある壁が動き、奥に階段が現れる。

 

「「おぉ~」」

 

 思わず声が出てしてしまう。このような仕掛けはお祖父さんから聞いた英雄譚でしか知らなかったので、実物を見て、興味を惹かれるのは当たり前だろう。

 

「この先だよ」

 

 そういってヘスティア様が階段を下りて行く。その後を私たちが軽い足取りで追う。

 二十何段か降りると、そこには部屋があった。

 決して綺麗な部屋と言うわけではないが絶対的に汚いというわけでもない。いや、結構汚いけど、それはこの神の性格のせいか。

 ベットやソファ、テーブルなどもあるため、日常生活には問題なさそうな部屋だ。

 そして、地下にあるということは……

 

「ベル、隠し部屋ですよ。昔から欲しがってましたよね」

 

 そう。ベルは昔から隠し部屋が欲しいと言っていた。これも男の浪漫(ろまん)らしい。私も中々にそう言う系統には興味を示す性質(たち)のせいで、今少しばかり高揚している。

 

「うん! 心が躍るなぁ」

 

「ヘスティア様。ここが私たち【ヘスティア・ファミリア】のホームですか?」

 

「うん、そうだよ。ここがボクたちのホーム。これから住む場所さ」

 

 なら一安心。これで動かない集合場所が確保できた。

 道中風景も憶えたし、これで迷うことはないだろう。

 

「ベル、道はちゃんと覚えましたか?」

 

「え……う~ん……憶えてない、かも……」

 

「やはりそうでしたか。憶えるまでは単独行動禁止ですね」

 

「……わかった」

 

 妥協するしかない点だ。道が分からず歩き回られて、知らないうちに気づいたら消えていたなんてことになったら、大惨事間違いなしである。

 

「では、ベル。ギルドに行きますよ。走れば間に合うと思いますから」

 

「うん。では神様、行ってきます」

 

「早めに戻ってくるんだよ~」

 

「わかりました!」

 

 元気よくベルが返事をしてホームを出る。そして共にギルドへと走り出した。

 

 温かく照らされる道、それは彼らの第一歩を称えているかのようだった。

 

 

 




【ステイタス】について。
今回、二人のステイタスは初めから上昇させましたが、原作ではどうか知りません。
なぜなら、【神に恩恵】を授かったばかりの人の【ステイタス】について示されて無かったからです。
 と言うわけで、経験を変換して強くなる【ステイタス】は、【神の恩恵】を授かる前までの経験が影響される、ということで。

  後書きの後書き
 コメントありがとうございます! どうやら、【ステイタス】はゼロから始まるようですね。ゼロから始める成長記録、のような感じかな? それはどうでもいいか。
 とにもかくにも、こういった指摘はとてもありがたいです。是非是非、気になること、『わけがわからないよ』と理解不能なところ。あればどうぞ、コメントにて。
 答えられる限り、答えますから。

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