ブラコン青年育成計画始動。
では、どうぞ
現在、豊饒の女主人前の屋根の上。独り気配を紛らわしていた。
結局、ベルは私の存在を思い出すことなく、豊饒の女主人に着いてしまった。そこまで行くのにベルトリリが仲睦まじく手を繋いでいた。一見、少年>少女に見えるが、現実は少年<少女である。見た目に騙されてはいけない。それにリリは変身魔法が使える可能性があるのだ。
余談だが、途中で聞き覚えのある叫び声が聞こえた気がした。
そして一時間。ずっと姿勢を変えぬままいた所為か、完全に同化していた――気配が――頃にようやくベルとリリが出てきた。入り口で別れ、リリはそそくさと裏道へ、ベルはバベルとは反対側の方へ歩いて行く。私は、裏道へ行ったリリを追った。何故かって?そりゃ簡単。リリが変身魔法を使えるかどうか確かめるため。あとついでに用事。
そして、三十分くらい歩き、とある宿屋の前に着く。そこでリリが頭の周りに手を置いた。そこで魔力の収束が見られる。
「【響く十二時のお告げ】」
それは恐らく詠唱式である、解除式。その証拠に、魔力の収束が切れ、リリが
「【貴方の
それは恐らく魔法の詠唱式、どうやらごく微量の魔力で済むらしい。
「【シンダー・エラ】」
魔法名だと思われる言葉を口にすると、リリが
「これで確信できました」
「…ッ!!」
「そんなに警戒しなくてもいいですよ。
今日は、だけどね。
「……見たんですか」
「ええ。大方検討はつけてましたが」
「…何しに来たんですか」
「一つ用件は済ませましたから、あと二つを終わらせに来ました」
「何ですか、早くしてくれますか」
おぉ中々の強気で。ちょと、楽しみだな。
「とりあえず、女の子に戻ってもらえます?できれば種族は
「な、何ですかいきなり…いいですけど…」
文句を言いながらもちゃんと魔法で姿を変えるリリ。あれ?根はいい子なのかな?泥棒に根も糞も無いと思うけど。
「よし。じゃあ失礼して…」
「何です…ひゃぅっ!」
私が今していることは、ケモミミの
いや~いくらアイズのことが大好きだからと言って、ケモミミを好きになっちゃいけない訳でも無い。
ある神は言っていた。『ケモミミは人類の秘宝だ』と。私もそう思う。ケモミミは最高だ…
だがしかし!この世界の獣人たちはどうだろうか!耳を触られるのは嫌と言い張っている!それは仕方ない。エルフが潔癖症なのと同じだ。
だがな、今私が触っているケモミミは本物であっても偽物…どういうことかと言うと、この耳は本物、だけど元は
あ、因みに私はしっぽ派ではなくみみ派だ。
いやでも~初めて触るが柔らかいな~もふもふしてて~ふわふわしてて~気持ちいな~
「うぅぅ…あ、あの!!」
「どうかしました~?今堪能中なんですが~」
「本当に……何しに来たんですか……」
あ、怒りでしっぽが荒ぶってる…みみはたたまれちゃったし…潮時か。
「ふぅ…とりあえず、用件の一つは終わりました。では次の要件に移動しますか」
「…獣人の耳を触ることが用件って…どうなんですか…」
『獣人の耳を触ること』ではない!ケモミミを堪能することだ!まぁ、この違いは一般人にはわからんか。
っとそんなことより、最後の目的を済ませなくては…
「もういいですか…リリはシオン様のことが嫌いなのであまり一所に居たくないんですが…ッ!」
リリが言い終える前に私は動いていた。
今日一本だけ持ってきていた刀、『一閃』を音も無く抜き、背後へと回る。いつぞやの時とは異なり、後ろから刀を首に
そして、今度は頭から生えた耳に一言。
「言い忘れてたんですが、次はありませんから」
そして、首を斬った。
斬りと落とした訳では無い。声帯を傷つけてやっただけだ。
「ぁ…ぐぁ、あぅぁぁ、ぁぁ……」
良い様だ。【ヘスティア・ナイフ】を盗んだ罰としては丁度いい。
「これば罰です。罪の制裁にはこれに限ります。あ、そのままでは死んでしまいますね。殺す気は無いので、これ、自由に使っていいですよ」
そうやって渡したのは
「それでは。もう会うことは無いと願いたいですね」
私が去る時、もうリリは
* * *
余談
「ミアハ様?」
「お、シオンではないか。丁度いい。ヘスティアを運んではくれないだろうか。飲み過ぎて酔ってしまってな、ぐっすり眠っているのだよ」
「ベルくんの…ばか…」
「ははは、なるほど、あのときの叫び声はヘスティア様でしたか…」
「ん?叫びとはなんだ?」
「いえ、お気になさらず。ミアハ様、後は私に任せてください」
「ああ、頼んだぞ」
* * *
「ぬぅぅぁあぁぁぁ!!!」
今響いたのは、二日酔いの頭痛による叫び。ここまでなると、同情を通り越して、哀れに思える。
「哀れなり、ヘスティア様」
「シオン⁉そんなこと言っちゃダメでしょ!神様?大丈夫ですか」
本気で心配するベル。本人は知らないだろうが、こうなった根本の原因は多分ベルだよ?
「す、すまない、ベル君。こんな見苦しいところを……」
「い、いえ。お気になさらないでください、仕方がありませんよ…なってる人はかなり辛いみたいですから…」
うんうん。とつい頷いてしまう。あれさ、痛みに慣れてててもかなり辛いんだよ。
あ、そうだ。ミアハ様に…
「ヘスティア様、こんなものを買っておきましたよ。使ってください」
「ん?なんだいそれは………こ、これは…鎮痛薬…」
昨日、ミアハ様にヘスティア様を受け渡された時、鎮痛薬を渡してきたので、流石に自業自得の駄女神の為にもらうのは気が引けたので、一様有り金――3万ヴァリスくらい――を渡しておいたから、買ったことになるだろう。
「ありがとうシオン君、助かるよ」
「お気になさらず、駄女神様」
「う~ん?今ので感動の気持ちがきれいさっぱり無くなったよ?」
別に感動の気持ちとか持たれたところで意味が無いんだが…
「あ、あの、神様。僕、最近稼げるようになったんですよ。ですから、日ごろのお礼として、シオンほどとはいきませんが、少し豪華な食事でも行きませんか?」
お、前に言ってたやつか
……これは、一役買って出ますか。
「いいんじゃないですかヘスティア様。
「ちょ、ちょっとシオン?何言ってるの?」
「デート…」
「神様?」
「行こう」
「へ?」
「今日行こう」
「はい?」
「今すぐ行こう!」
元気良くベットの上で立ち上がるヘスティア様。マナーはしっかりと守ってほしいが…。
ずどんと音をたて、ベットから飛び降り、私の隣を通ってクローゼットへ。酒臭い…
「あの…神様、二日酔いは…」
「今なおった!」
ベル効果抜群。もはやヘスティア様専用
ていうか、もしかして自分が臭いことに気づいてない?アホかよ。
流石に、
「酒臭い」
「なっ!」
驚きと同時にツインテールが逆立つ。うん、本当にわかりやすい。くんくんと、頻りに自身のにおいを嗅ぎ、自覚もしたようだ。
「ベル君!六時に南西のメインストリート、アモーレの広場に集合だ!」
ヘスティア様がそれに対しとった対策は、サムズアップしながら言ったことだった。
* * *
余談Ⅱ
「なあフィン。最近アイズが変わった気がするのだが…」
「何か気になることでもあるのかい?リヴェリア」
「あぁ、無茶をするところは変わらないのだが、以前は、『力量で倒す』が中心だったが、今は『技量で倒す』。と言う風に見えたのでな」
「ふ~ん。もしかしたら、技量で格上すら倒す、あの子に影響を受けたのかもね」
「そうかもしれんな」
* * *
余談Ⅲ
「そうだシオン。今って金庫にどれくらい入ってるの?」
「見てみます?」
「うん、お願い」
「………………………はい、こんな感じですよ」
「ふ~ん。刀とお金……
「まぁ、一応
「刀は?」
「危険ですので。うっかり触って死んじゃった、などを起こさないようにするためです」
「あはは、じゃあお金はどれくらいあるの?」
「…………見た感じ、930万ヴァリスくらいですかね」
「は?」