シオンのチート度が増えた気がする…
では、どうぞ
謎、それは開拓
翌日、私はギルドにベルと共に来ていた。
ベルはエイナさんへの報告。私は情報収集のためだ。
先日、アイズから聞いた。花や芋虫とその人型モンスターについて調べるためだ。
希望は薄いが、情報掲示板を見る。やはり、情報規制の所為か、手がかりは無い。
まぁ、わかっていたことだ、問題は、ギルド内でもこの情報が規制されているかどうか。と言うことだ。
「ミイシャさん。ちょっといいですか?」
私が呼んだのはギルド受付嬢兼アドバイザーのミイシャ・フロットさん。私のアドバイザーと担当してもらっている。アドバイスは何もしてもらってないが、情報収集に役立つ人だ。
「あ、シオンくんじゃん。なになに?今度は何の情報が欲しいの?」
それをあちらも認識しているらしく、私が来る=情報をもらいに来た。ということらしい。事実だが。
因みに、ミイシャさんは私のことをちゃんと男と認識し、名前とくんを言う
「今日はモンスターについてです。あと、個室で良いですか?情報規制されていることなので」
「それを私に聞くんだ…」
「ミイシャさんだから聞くんですよ」
「…わかった。それじゃあ行こうか」
「ななぁかぁいそぉ~⁉」
私たちが個室に向かうとき、そんな叫び声がギルドに響いたが、気にしないことにした。
だってあれ、エイナさんの声だし。
* * *
「さて、シオンくん。そのモンスターってどんなモンスター?」
「緑色の芋虫型、それの巨大な人型、極彩色の花型。この三種についてです。恐らくギルドに登録されてない新種のモンスターです」
「う~ん。確かにそんな特徴のモンスターは登録されてないね。ギルドでもそんなこと言われてないし…ていうか、新種ってわかってて、私に聞くっておかしくない?」
ギルドでの情報規制も有り、か。なら、
「おかしくありませんよ、情報収集が趣味のミイシャさんなら何かしら知ってるかと」
「え?私シオンくんにそのこと言った?」
「いえ、言ってませんよ?一方的に知っているだけです。あとミイシャさんはかなり有名ですよ」
「え、ほんとに?」
「はい、巷では『情報の魔女』とか『ギルドの情報変態』とか呼ばれてます。と言うか、自分についての情報は入ってこないんですか?」
「いや、そのことは知ってた。けどね、自分のことだとは思わないじゃん!」
「そうですか。で『ギルドの情報変態』ことミイシャさんに聞きますが、それについての情報は入ってませんか?」
「……あ!思い出した!昨日ギルドに【ロキ・ファミリア】の【
「まぁ、そんなことより、本当にフィンさんが昨日ギルドに来てそのことを言っていたんですか?」
「うん。それは確かだよ」
なら今度、アイズに聞いてみようか。答えてくれるかはわからんが。
「ありがとうございました。その情報だけで十分です」
「そう?ならいいんだ、じゃあね~」
* * *
余談
「くしゅんっ」
「どうしたアイズ、風邪か?」
「たぶん、ちがう」
「誰かがアイズのこと噂してんのかもよ~」
「ティオナ。そしたらアイズはくしゃみがとまらないわよ」
「そうですよ!アイズさんは有名人なんですから!誰だって噂しちゃいますよ!」
「気を抜くな」
「はい団長!」
* * *
個室から出ると、すぐ近く、場所で言うとギルドの端っこにベルとエイナさんがいた。何やら背中を見せているが、【ステイタス】か?いやでもなんで。
「ぁ……も、もういいよ!」
近づいていくと、見せ終わったのか、ベルが上着を着た。心なしか二人の顔が赤い。
面白そうなので、気配を消す。それでこの二人くらいなら騙せる。
少し傍観していると、ベルが着替え終わる。そして、着替え終わったベルをエイナさんは全身くまなく隙間なく嘗め回すようにじっくりと見た。いや、流石に言い過ぎか。
「な、なんですかっ?」
そんな視線にベルは戸惑いを隠せない。元から見られるのに慣れていないのだ。私もだが。
「ベル君」
「は、はい?」
「明日、予定空いてるかな?」
「………へ?」
「デートですか」
「「うわぁ!!」」
いや、いきなり気配を出したからってそんなに驚かないでもらえます?
「って、デートじゃありません!」
「いやデートですよ。男女が二人っきりで、お出かけ…なんて…」
と言うことは、私はアイズとデートしたと言っていいのか?いいんだよね?
いや、見た目上ないか…もう、ほんとヤダ…
「シオン、どうかしたの?」
「いえ、言ってて自分が悲しくなってきただけです。気にせず明日のデートを楽しんでください」
「ですからデートじゃありません!」
* * *
時は行き過ぎ、翌日の早朝。私は人のデートの邪魔をしたくないので、ダンジョンに来ていた。因みに、未開拓領域の十二階層超巨大ルームだ。
入り方は簡単、風を『雪斬繚乱』に纏わせて本気で三段突き。それで壁をぶっ壊す。さすがに毎回『ブレイズ・インフェルノ』はやってらんない。
先日ここに来たときは、ただ見ただけなので、細かく探索をしていない。
一応、未開拓領域なので、念のため、いろいろな物を持ってきた。
そのほかにもあるが、まぁ、使わない可能性が高い。
捜索をするにあたり、まずは
それを地面に突き刺す。30Cくらいで問題ない。
次に羊皮紙の下辺に点を書き、そこから見える範囲での簡易地図を作成する。
―――――――
見える範囲が広すぎて時間が掛かったが、しっかり終わらせ、バックパックへ。
前よりモンスターが増えていたので注意しつつ、探索開始。
武器は基本、『一閃』と何か。最近挑戦している手数で攻める二刀流だ。
普通なら荒くなる二刀流でも、器用値が高い人ならかなり強い。
何故か集団になっているモンスターを殺しつつ、探索&
―――――――
簡易地図作成一旦終了!体内時計現在昼の一時。所要時間約八時間。
できそうなところまでやり、休憩。昼食だ。
持ってきたのは、サンドウィッチが三つ。短時間で簡単に作れる為、結構持ってくることが多い。
まぁ、サンドウィッチくらいなら、二分もあれば食べきれる。これじゃあ休憩にならないので今までの探索結果をまとめよう。
まず、ルームの広さ。歩数で測ってみたところ、直径は772Mとマジででかい。
高さ、これは目測だが、中心地から天井まで約200M。バベルよりは全然低い。
まぁ高いことには変わりないんだけどね。
次、出て来るモンスターの特徴。
基本的には上層のモンスター。だが、偶に中層のモンスターも見られる。
さらに言うと、そこらのモンスターより強く、魔石が大きい。所謂『強化種』だ。
一度しか遭遇しなかったが、『変異種』もいた。そいつは倒すのに少し手間取った。魔石もかなり大きい。恐らく下層レベル。下層のモンスターを見たこと無いからわからんが。
次、めちゃくちゃあった道。
すべての道を探索したが、ほとんどが行き止まり。数本の道には階段らしき物――段が
光源は意外と多く、中々明るい。
道端には剥き出しの鉱石や水晶。偶にきのこなんかもあった。実に不思議だ。
次こんなところがある理由。
現在不明。第一、ダンジョンに存在理由を求めてはいけない。求めたところで意味が無い。
っと、こんなもんか、まとめられてない気がするがいいか。本来の目的は休憩だ。
数分できたしいいや、体力や精神力はモンスターから奪えるし。私にとっての休憩は気持ち的な意味しかないからな。
と言う訳で探索&
―――――――
ほいっと。やってきました最後の道!結局、他の数本は長いだけで結局行き止まり。ここまで来るのに二時間もかからなかった。
最後の道は少し期待している。
この道は、階段らしき物が比較的整っていて、その代わりなのか、少し暗い。
入り口付近ではモンスターに遭遇せず、初めの捜索時、付近で生まれたモンスターが、本能的にか、ここから逃げた。
モンスターが逃げる。その原因は、例外を除けば『本能的に勝てない』と思った時だけ。つまり、この先には今までのとは比べ物にならないくらいの強いモンスターがいる。
変異種までここにはいるのだ。それは楽しみになるだろう。
ぴょんぴょんする心を落ち着かせ、抜刀。抜いたのは『一閃』と『雪斬繚乱』。
【ステイタス】の補正による目眩はもうない。何度もなり、慣れてしまった。
警戒を強め、走る。
曲がりくねった長い階段らしき物が終わり、先にあったのは直線の一本道。
少し走ると、強い光。その先に異様な気配。気配を紛らわせながら、突っ込む。
明るさの違いに目を細めたが、すぐ慣れさせる。その間に止まり、真正面へ構える。
異様な気配の根源は真正面にあり、そこへの警戒は最大限だ。
そして、見た。異様な気配の正体。そして、この光景。
青く生い茂った
そして、真正面。気配の正体は、巨木。目測で高さ約140M、幹の直径が約5M程。
巨木は綺麗な
周りの木のように水晶は生えておらず、葉の色は、紅。鮮血のような色。
発する気配は依然弱まらず、その気配がこの木が生きているように思わせた。
索敵を全方向へ………生物の気配および気配を消している存在なし。
もう一度巨木のみに集中……攻撃してくることは…恐らくない。
それがわかり、警戒は解かずに『雪斬繚乱』のみ納刀。これは負担が大きいからな。
まさか、こんな気配が
というか、これがモンスターが逃げた脅威か。モンスターじゃないのかよ。
とりあえず腰を下ろし、『一閃』を持ったまま巨木に寄りかかる。すると、背中から一定間隔で脈動を感じた。微弱だが、確かに動いている。
それが伝わってきたのは巨木、耳を当てると音も聞こえた。液体が下から上へ流れていく。それは水ではない。水はもっと滑らかに流れる。
試しに木の皮を斬る。刃が入るのに抵抗があった。地上にある木くらいなら、『一閃』を使えば抵抗なく切れる。わかってはいたが、地上の木とは全然違う。
5Cほど斬ると、少し違った感触がする。恐らく目的の液体だろう。刃を抜き切れ目を見る。少し経つと、その切れ目が赤色変わった。葉と同じ鮮血の
嗅ぎなれた
確認のためその液体を『一閃』に浸ける。『吸血』が起きたら確定だ。
浸けた液体は、刀に吸われ、消える。
本当にこの巨木から出た液体は血だ。でもどうして。
……あ、もしかして竜血樹か?いやあれは樹液か、鮮血が樹液なんて思いたくもないしな。
こりゃ考えるだけ無駄そうだ。わからん。正体不明。理解不能。八方塞がり。考えようがない。
やめだやめだ。なんも考えるな、頭が痛くなりそうだ。別ことを考えろ。
……そういや、さっきからモンスターが出てこないな…もしかして、この木のおかげ?
ここがダンジョンのエネルギーを吸って、周りにモンスターが生めない、のか?
そういえば十八階層もモンスターが生まれないんだったな。やっぱり同じなんだろうか。
確か、十八階層がその階層丸ごとだったらしいが、此処は精々一階層の四分の一くらいの広さだろう。
十八階層が『
ここは楽園と言うには小さすぎるし、公園と言うには広すぎる。まず公共施設じゃなし。
……安楽地?それなら広さも関係ないし、実際安らぐから呼び方としても問題ない。
『
さて、やること無くなったし、地図作りながら帰りますか。
『迷宮の安楽地』のネーミングセンスが雑なのは許してくれ