やがて我が身は剣となる。   作:烏羽 黒

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  今回の一言
 紹介と伏線、面白いことは無いよ?

では、どうぞ


効果、それは呪い

 私は今、ダンジョン12階層のとあるルームに来ていた。かなり凄い格好で。

 このルームは、繋がる道が一本しかなく、中々明るい。壁も階層内で比較的硬く、ちょっとやそっとじゃ崩れないため、トレーニングには最適なのである。

 だが今日はトレーニングの為ではない。目的は試し斬り。昨日草薙さんから作ってもらった刀と『一閃』のだ。

 道中で『一閃』は試したが、最高だ。特に吸血。カッコいい!。

 試すのは一本ずつ。刀身が漆黒の刀を抜く。これに付けてもらった呪いは『非殺傷』。どう足掻いても生物を殺すことのできない刀だ。だがその代わり、体力や精神力を吸い取るんだとか。因みに吸った体力や精神力は刀の使用者に移るらしい。まぁ、実際に試してみるのが早い。

 丁度よくモンスターがやって来る。ってレアモンスターじゃないですか!くっ、非殺傷なのが惜しい。いや、いいのか?

 現れたモンスターの名は『タンクマウス』。体長が2M程あり、皮膚が硬い。レアモンスターで、落とすドロップアイテムも高価で、魔石は上層で一番大きく、体長に見合わない速さと、アホみたいに高い体力を武器としている。そして、とにかく逃げる。面倒だが、『おいしい』モンスター。

 このモンスターの武器は()()と速さ。なら、それを奪ってしまえば?

 ……好都合じゃないですか!!

 

「ギュルゥゥゥゥぅぅ」

 

 あ、そういえば、気持ち悪いことにも定評がある。だがそんなこと関係ない。

 出入り口の前で構え、逃げられないようにする。勿論逃げるために向かってきた。そいつを()()

 手ごたえはあったが、斬った感触が無い。何とも不思議な感覚だ。

 何が起きたのか理解できてないタンクマウスは隙だらけ、更に斬っていく。ついでに三段突き。刀の耐久を調べるためだ。だが刀は余裕で耐える。さすが一級品。

 三十秒くらいして、突然タンクマウスが伏せる。何かの攻撃かと思ったが、眼が完全に逝っていた。こりゃ体力が全部持ってかれたからか?そういえば、私の体は活力が漲っている。これは凄い。

 さて、この刀の名前は何にしようか。

 …刀身が黒だから『黒鉄』?う~ん、もう少しカッコいいの…

 体力や精神力を吸う…体力や精神力を食べる?食べるモンスター……食物連鎖…龍?

 あ、『黒龍』にしよ。カッコいいし。

 

 じゃあ次、もう一本の『非殺傷』。刀身は青光りしていて、装飾が無いのに、誰が見ても美しい刀だ。

 試しに一振り。重心の位置は『一閃』と同じ。けどこっちの方が軽い。刀の通った道には青色の残光が見え、暗い場所でやれば幻想的だろう。

 う~ん。この刀は何て名前にしようか…これも『非殺傷』だから双剣みたいに似た名前にするか。

 …青が印象的だから、『青龍』でいっか。

 

 じゃあ次、【ステイタス】補正の呪いが付いた刀。刀身は雪を彷彿させる色。だが、光りを反射し、一部銀色に見えるところがある。

 抜いた瞬間に少し目眩がしたが、急激な【ステイタス】の上昇によるものだろうか。

 斬れ味は……お、丁度いいところに地面に突っ伏してる硬い物が。

 太い首に刃を当て、差し込む。硬いはずの皮膚にいとも簡単に刃が通り、あっさり切断。断末魔を上げることなく魔石とドロップアイテムになる。おぉ、収穫収穫。ていってもバックパック持ってきてないから角に寄せるしかないんだけどね。

 とりあえず、斬れ味の凄まじさは理解した。だが、これじゃや【ステイタス】の補正度合いがわからんな。

 う~ん…全部試すか。

 

――――――

 

 ほいっと大体わかった。こりゃ凄い。

 私の元々の【ステイタス】が高いのも相俟ってか、

 力はLv.3 耐久はLv.2 器用はLv.6 敏捷はLv.5 魔力はLv.4

 くらいはあるんじゃないだろうか。比較対象がいないからわからんが

 因みに調べ方は殴る、殴られる。()る。走る。使う。という単純作業。

 チートだろ!とか思いたくなるけど、これ結構体に負担がかかったりする。

 さ~て、この刀は何て名前にしようか。

 刀身が雪みたいだから『雪斬』…いや性能も名前に入れたいな。

【ステイタス】に補正がかかることで、戦いを逆転させ、乱れさせることができる…繚乱?

 普通にくっつけて『雪斬繚乱(せつざんりょうらん)』とか?いいやそれで。

 

 はい次!もう名前は決めていた『紅蓮』。何故かって?この刀の呪いは『煉獄』。簡単に言うと炎を刀身に纏わせる刀だ。こういう名前が合うだろ?

 あと安心していい。柄は耐熱性の素材と耐熱の呪いを使っているため、常に常温だ。

 因みに、呪いの二つ以上の同時行使はかなり危険だ。でもできてしまうのが私である。

 この刀は抜刀と完全に同時に発炎(はっか)する。つまり、ゆっくり抜くと鞘が燃える。中々恐ろしい刀。鎮火するには納刀しないといけないため、両方、神速でやらなければならない。

 その間、柄に熱が伝わらなくとも、炎からの熱は感じる。我慢できるレベルだが。

 さて、と

―――――

 少し試し斬りをして、戻ってきた。 

 うん、普通に強い。斬ったら火傷と切り傷のコンボで大体痛みに悶えてくれるから、楽。

 あと、試してみたいことが出来た。

 神速で抜刀、今回も大丈夫。 

 

「【目覚めよ(テンペスト)】――【エアリアル】」

 

 魔法を使い、風を炎を纏った刀身に重ね掛けで纏わせる。するとどうだろう

 炎の刃がより一層強い炎を纏った。そして、風を少し動かす。イメージは伸びた刀身に風を纏わせるような動き。それによって、炎の刃が伸びる。やっぱりできた。射程(リーチ)を伸ばせる炎の剣。しかも、この炎が伸びたところは実態が無い。つまり、防げない、と言うことだ。強い…

 こっちはできた。ならもう一つはどうだろうか。

 風を刀身から、前方。ルームの通路がある壁と反対側の壁に収束。約三十秒それを続け、風を、空気を溜める。

 収束が解かれないように維持しながら、『紅蓮』を大上段に構える。

 成功することを祈りつつ、叫ぶ。

 

「焼き尽くせ!【ブレイズ・インフェルノ】!」

 

 それと同時に全力で振り下ろす。

 炎が収束された風に当たり、次の瞬間。熱と光。思わぬ不意打ちに目を瞑ってしまう。

 そして閉じた瞼を上げる。するとそこには比喩で作った技の名前の通りになっていた。

 【炎の地獄】の文字道理。そのまま。他に例える言葉が無い光景。

 ルームがさっきより広くなっていて、ダンジョンの壁が()()()()ていて、『紅蓮』を振った方向。そこには2M強の風穴ができていた。

 ダンジョンはすぐさま修復に入る。でもさすがに被害が大きすぎるのか、遅い。

 と言うより風穴って…未探索領域見つけちゃったよ。

 

 この技はしばらく封印だな。それと、一応風穴の先の探索もしておこう。

 

   

――――――

 

 風穴は3M近く空いていて、その先には逆円錐状の超巨大闘技場のようなルームとなっていた。高さは階層またいでぶち抜いてるほど。広さは、オラリオの円形闘技場(アンフィテアトルム)より広い。所々にモンスターがいるけど、全部Lv.1だし問題ない。

 うん、此処は秘密にしておこう。【猛者(おうじゃ)】と戦うのはここがいいな。

 

 確認も済み、振り返ると、私が空けた穴は既に半分ほど塞がれていた。身を小さくし、通ろうとしたが刀が突っかかってしまったため、『雪斬繚乱』で【ステイタス】を強化し、壁を壊して通り、小さいルームに戻る。すると壁の修復はまた始まり、見ていて気付いたが、此処の修復は他よりも全然早い。

 今日の用事は済んだため、帰ろうと歩みを進め、ルームへ出る寸前、あることに気づく。

 タンクマウスのドロップアイテムと魔石……焼き払ってた…

 

 

 

   * * *  

 

  余談

 

「ベル、どうかしたのですか?」

 

「うん。今日七階層まで潜ったんだけど、ダンジョンが凄い揺れてさ…ゴゴゴッ、って凄い音が響いたんだ。あれが怖くてさぁ~」

 

「……安心してくださいベル。何も怖がることはありません。もうやりませんから…」

 

「やらない?」

 

 

 

   * * *

 

  余談2

 

「シオン君。その恰好はどうなんだい?」

 

「どうって、何がですか?」

 

「防具を外してその代わりに刀を五本、しかも全部一級品…駆け出しがもつものじゃないよ…それと、刀の持ち方がおかしい」

 

「そうですか?」

 

「うん。腰の二本はまだわかるけど、日本刀を背中に下げるって…普通しないよ?あと、帯びる場所が無いからって五本目を手に持つのもやめようよ。帯びる場所がないならおいていきなよ…」

 

「いえ、今日は試し斬りなので問題ありません。それでは」

 

 

 

 




 ネーミングセンスに文句があるヤツ!許してくれ!これが私の限界だ!
 
 あと、そこには人口迷宮があるんじゃない?とか思っている人たちへ。
 人口迷宮はダンジョンに沿うように作られていますが、それはダンジョンを囲むように、と言う訳ではありません。あくまで片側、つまりもう片方は不明。なのでこんなのがあってもおかしくない!という独自解釈&独自設定です。

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