タイトル違うけど前回の続きですよ。
では、どうぞ
名前を呼ばれた【
いやそれは適切ではない。視認できない速度で移動した。と、言うべきか。
移動した先は私の横、大剣を横に薙ぐ構えをしている。
何故視認できないのに分かるか、それは簡単なこと。私の領域に入ったから。
私は戦闘時、とある三つの領域を作っている。これは【
【知覚領域】敵の場所、動きを感知できる領域。大きさは半径 10M
【絶刀領域】私が刀での対処が可能な領域。 大きさは半径 3M
【断頭領域】私が相手を殺すことが可能な領域。大きさは半径1.5M
そして、今【猛者】が居るのは【断頭領域】。つまり殺せる領域。
大剣が振るわれる。狙いは右腰。振るわれる大剣の刃に刀を
防御はされた。だが私とて、それを利用しない程甘くない。弾かれた反動を殺さず、一回転。あえて大振りにし、遠心力による威力上昇。狙いは右膝。刃が届く寸前、大剣で弾かれ鈍い金属音。その衝撃をまた利用。今回は大振りにせず最小限且つ威力を殺さない軌道で、狙うは左腕。
やはりと言うべきか、プロテクターで防御される。だが、
パキッ、と
刀は弾かれた。だがプロテクターを割ってやった。
それでだけで、
下方向に弾かれた刀の刃の向きを上から下に変え、そのまま振り下ろす。狙いは左脚。振り下ろした刀は【猛者】の耐久を突破し、腸骨筋から大腿直筋に刃が入る。さらに力を込め、関節まで行かせようとするが、左から大剣が迫り、やむ負えず刀を抜き、後ろへ回避。距離はギリギリ【絶刀領域】外。
――――――この間、約四秒。
さすがに強い。いつ以来だろうか。抜刀状態の私と対峙してこれほど耐えられたのは。
「一つ聞こう。お前の名は何だ」
「私の名はシオン・クラネル。未熟な剣士ですよ」
「フッ…そうか。憶えたぞ」
おや?これは…もしかして?認められた、とか?
「フレイヤ様。この者とは少し痛めつける程度では
「……しょうがないわね。聞き出すのは諦めるわ。気絶させなさい。本気でいいわ」
「御意」
その瞬間、腕が本能的に動いた。そして、いくつものことが
刀が弾かれ、罅が入り、肋骨と頸椎と鳩尾に衝撃があった。
吐血、それも夥しい量。骨折音、恐らく肋骨から。猛烈な痛みが走る。でも意識はまだある。
魔法で反撃しようとするが、遅過ぎる。
鳩尾に再度衝撃。後方に吹き飛ばされた。
数瞬後、さらに、背からの衝撃。今ので骨が数十本砕けた。内臓も何個か潰れただろう。
痛みなんて感じなかった。いや、実際はあったのだろう。でも許容範囲を超えていたからか、全く感じない。
体が動かない。視界は狭い。意識ははっきりしない。耳鳴りがする。
体のありとあらゆるところが異常を訴えていた。
だけど私はその訴えを聞くことは無く―――――
―――――――途絶えた。
* * *
視界が戻った。次第に目の焦点が合う。耳鳴りも消えている。
ここは何所だろうか。少なくとも、あの場所ではない。
体を起こす―――ちゃんと起こせた。体は動く。外傷は見当たらない。痛みも感じない。
周囲を見渡す。ベット、その横に机、机の上には籠、その中に刀と
…あぁそうだった。私は軽く死にかけたんだ、【猛者】攻撃で。
探知できなかった…受け流せなかった…何より。
――――――負けた。
一瞬で。圧倒的
はっ、何がLvを埋められるだけの技術だ。技術を発揮できなきゃそんなもん無いと変わんないじゃんか。
でも、仕方がないのか…
――――――仕方がない?
「ばかかよ」
そんなの言い訳だ。敗北を認められない自分への。
私はは負けたんだ。まずそれを認めろ。現実から逃げるな。
……クソッ、認めれば認めるだけ嫌になる。
そもそも何故負けた。相手はどこまで行っても人。それに変わりはない。なら勝てたはずだ。何が勝てなかった。
装備?いや、破壊が出来た時点で違う。
技術?いや、剣技は私の方が上だった。
覚悟?いや、剣の打ち合いで覚悟を無くしたことは無い。
体格?いや、傷を与えられた時点で関係ない。
じゃあなんだ、考えろ。
始めの数秒の打ち合いでは私が優勢だった。実際、私は無傷で【猛者】を負傷させた。その後、神フレイヤに『本気を出せ』と言われ、【猛者】は始めとは比べ物にならない強さを発揮した。つまりだ。
始めは手加減して、後から本気を出した。
なら勝機はあったはずだ。始めの手加減している内に、私が本気を出して攻めていれば、勝てた。なら何故そうしなかった。
自分の技量に慢心していた?―――違う。
相手の技量を見誤った?―――あり得る。だがそれだけで負けるか?
なら、なんだ…
―――――――私が【猛者】を嘗めていた。
「これだ、な」
はは。ふざけんなよ。相手は都市最強だぞ。それを、嘗めてた?
馬鹿だ馬鹿だ大馬鹿だ!
都市最強?Lv.7?そう言われてんだぞ。つまりはそれだけ数多くの苦難を乗り越えている。そんな相手を嘗める?剣士として、いや生物として最低だ。生きる価値が無いと言われても可笑しくないぞ。
あぁ、私は何時からこんなになってしまったのだろうか。
これは、慢心だな。自分の力に慢心してないと思っていたが、そうではないようだ。
『力を手に入れれば人は堕落する。力を手に入れたいのなら、常に自分は無力だと考えろ』
お祖父さんが稽古の度に必ず私に言っていたことだ。それすらも私は忘れていた。私は所詮無力なのだ。なのに私は自分に力があると思い込み、更にはその力を慢心した。これが堕落か…勘違いに近いんだな。
「なら、やることは一つだよな」
無力な自分を抜け出す。堕落なんてもうしない。
そして、
【猛者】を倒す!
そして、アイズを振り向かせる程の剣を持つ!
「なら早速、ダンジョンでも…」
…なんか忘れてないか?なんか今、引っかかるものがあったような…………
「………あっ」
ヤバイ…会いに行くってアイズに言ってた…
体内時計……現在夜の八時少し前。
さすがに…帰っちゃったかな?
仕方ない。明日にでもホームに行けばいいか。
いろいろ反省すべきところがあるシオンは。とりあえず、籠の中に入ってた、自分の装備を付け―――胸当ては無かったが―――その場を去ろうとすると、何かが落ちる小さな音が聞こえた。その音の方向には、黒色の封筒に、銀のシールが張られた物が一枚。何かと思い、開けると。
『また会いましょう――――フレイヤより』
簡潔に、それだけが書かれていた。
「どうやら気に入られてしまったみたいだ」
迷惑な話だ。私はそれほど会いたくないのだが。いや少し会いたいかもな。
「【猛者】。あなたとはもう一度戦えるのなら」
目的は、少し違くなるかもしれないけど。
戦闘シーンの文句は勘弁してくださいね?
あと、シオンが治ったのは勿論万能薬です。